ラテンアメリカ・レポート
Online ISSN : 2434-0812
Print ISSN : 0910-3317
最新号
選択された号の論文の9件中1~9を表示しています
論稿
  • 三浦 航太
    原稿種別: 論稿
    2022 年 39 巻 1 号 p. 1-17
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/07/31
    解説誌・一般情報誌 フリー HTML

    2021年12月に行われたチリの大統領選挙の結果、急進左派連合のガブリエル・ボリッチが勝利し、1990年の民主化以来初めてとなる、左右二大連合に属さない勢力による政権が誕生した。本稿では、代表制の危機という視点から、2010年代のチリの政治社会変動、新しい政治勢力が台頭した2021年選挙、今後のボリッチ政権の課題について考察することを目的とする。チリは、既存の左右二大連合政治に対する不信を起点に、投票率の低下、抗議行動の活発化、2019年のチリ史上最大級の抗議行動「社会の暴発」を経験してきた。さらに近年では、代表制の危機の表れとしてポピュリズム的性格をもった政治勢力の出現もみられ、新しい政治構図のもとで2021年大統領・議会選挙が行われた。ボリッチ新政権には、新自由主義からの転換という大きな目標があるが、その目標の実現のためには、いまだ解消されない代表制の危機という課題にも同時に取り組むことが求められている。

  • 柴田 修子
    原稿種別: 論稿
    2022 年 39 巻 1 号 p. 18-31
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/07/31
    解説誌・一般情報誌 フリー HTML

    2018年に就任したドゥケ政権下では、コロンビア国民の分断を象徴するかのような大規模な抗議行動が展開され、多数の死者を出してきた。本稿ではまず、ドゥケ政権下で広がった全国ストや大規模デモなどの抗議行動の経緯と争点を整理する。つぎに、それらはドゥケ政権下で高まった国民の漠とした不安が政策への不満と結びついた結果起きたものととらえ、抗議行動の背景として政治不信があることを指摘する。そして政治不信を生み出すものとして、汚職問題、選別的殺人の増加、和平合意の進展状況を分析する。

  • 中沢 知史
    原稿種別: 論稿
    2022 年 39 巻 1 号 p. 32-45
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/07/31
    解説誌・一般情報誌 フリー HTML

    ウルグアイで2020年3月に成立したラカジェ・ポウ大統領率いる右派連合政権は、2019年大統領選挙決選投票において5党による選挙協力を行って勝利して以降、安定して政権を運営している。本稿では、任期半ばにさしかかるラカジェ・ポウ政権について、2019年選挙の過程から2022年3月27日実施の国民投票までを記述し、その施政の中間評価を行う。まず第1節では、右派連合政権の成立過程を辿る。つぎに第2節では、ラカジェ・ポウ政権最初の政策を、労働組合との関係、コロナ対策、対外関係、治安政策、そして緊急法の制定に分けて概括する。そして第3節では、任期前半における最大の政治イベントとなった国民投票について、最大の争点となった治安問題の観点から述べ、結果を分析する。最後に、国民投票結果を受けた任期後半および次期大統領選の展望について述べる。本稿を通じて、これまで先行研究で指摘されてきたウルグアイ有権者の投票行動と似た傾向が観察され、高度に制度化された政党政治が堅持されていることを示す。

  • 浜端 喬
    原稿種別: 論稿
    2022 年 39 巻 1 号 p. 46-59
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/07/31
    解説誌・一般情報誌 フリー HTML

    2021年11月7日、ニカラグアで総選挙(大統領選挙、国会議員選挙、中米議会議員選挙)が実施された。2018年4月に発生した全国規模の反オルテガ抗議活動以降初めてとなる大統領選挙で、現職のダニエル・オルテガ大統領は75%を超える得票率で、再選を果たした。国会議員選挙でも、与党サンディニスタ民族解放戦線は議席を増やしたことで、彼が国民から強い支持を得たことを「証明」したかのようにみえる。他方、彼は投票日までに野党の有力な大統領候補者を逮捕し拘留してきた。

    オルテガは、これまでの発言のなかで、2018年の社会動乱は反体制派によるクーデターであるとしたうえで、彼らを「テロリスト」と呼び、自身が行ってきた抑圧を正当化してきた。しかし、世論調査で、ほとんどの反体制派の候補者が彼より支持を集めていることが明らかとなった。与党の支持率やこれまでの選挙での経験から、選挙での敗北を恐れた結果、抑圧に至ったものとみられる。またオルテガは、政権寄りの国内企業家団体、福音派教会、ロシアや中国など新たなパートナーとの関係を深めることで、権力の維持を図っている。

  • 近田 亮平
    原稿種別: 論稿
    2022 年 39 巻 1 号 p. 60-75
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/07/31
    解説誌・一般情報誌 フリー HTML

    グローバル化の進展や紛争により多くの人々が国境を越えて移動し、先進国地域や世界の主要都市に外国人が集まる傾向が強まった。そして、国内に流入する外国人をめぐるさまざまな問題への関心が高まり、外国人や外国系住民のおかれた状況をはじめ、受け入れ社会の雇用環境、経済成長、社会保障に与える影響などに関する研究が行われてきた。外国人の流入という点において、ブラジルは歴史的に移民大国であるとともに難民も多く受け入れ、民族の多様性や人種混交により寛容性の高い国として知られている。ただし、ブラジル最大の都市サンパウロは、多発する日常的な犯罪に加え南米最大級の麻薬組織の拠点であるため、治安は劣悪な状況となっている。

    本稿では、外国人の受け入れで先駆的な国であるブラジルのサンパウロを事例として、外国人の犯罪被害と安全への取り組みを定性的に分析する。「サンパウロの外国人は犯罪被害に関してどのような問題を抱え、それらに対して官民問わずどのような取り組みが行われ、課題があるか」という問いを立てる。そして、外国人は不法滞在や違法労働などの問題から安全に関する取り組みへのアクセスが困難となり、犯罪被害に遭う可能性が高くなると指摘する。また、流入外国人の質量ともの変化に対応した安全への取り組みが試みられているが、問題の改善には受け入れ側だけでなく外国人自身による取り組みが重要だと論じる。

資料紹介
feedback
Top