日本LCA学会誌
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13 巻, 4 号
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目次
巻頭言
特集「エネルギーのLCA」
総説
  • 本藤 祐樹
    2017 年 13 巻 4 号 p. 290-297
    発行日: 2017年
    公開日: 2019/12/15
    ジャーナル フリー

    「エネルギーのLCA」という言葉は両義性を持つ。その言葉は、第一に、環境負荷のひとつとしてエネルギー投入量に着目したLCAを意味する。例えば、自動車や食品など様々な製品のライフサイクルにわたる累積的なエネルギー投入量はどのくらいかを明らかにすることである。第二に、エネルギーを供給するシステムや技術を対象としたLCAという意味も持つ。例えば、太陽光発電のライフサイクルにわたるCO2排出量や廃棄物発生量などの環境負荷を明らかにすることである。本稿では、「エネルギーのLCA」という言葉の両義性を踏まえて、過去から現在にわたり行われてきた様々な取り組みに関して概観し、その上で、エネルギー・環境政策の立案への寄与という観点から、「エネルギーのLCA」の今後を展望したい。

解説
  • 吉田 好邦
    2017 年 13 巻 4 号 p. 298-302
    発行日: 2017年
    公開日: 2019/12/15
    ジャーナル フリー

    本稿では発電システムを対象としてLCAの過去から現在に至る分析手法をレビューし、主にLCCO2(Life Cycle CO2 emissions)の評価について、系統電力、再生可能エネルギーによる電力、分散電源を対象として主要な評価結果と評価における課題について述べる。燃料を除く投入エネルギーに対する産出エネルギーの比であるエネルギー収支は、発電システムの技術が成立するかについての重要な指標だったが、地球温暖化問題への関心とLCAの広まりとともに主要な指標はLCCO2に置き換わっている。系統電力や主な再生可能エネルギーについてはオーソライズされたLCCO2評価が存在するが、水素やバイオマスなどを利用する分散電源のLCCO2評価についてはデータの取得や評価手法の点で依然困難な問題が残されている。

  • 八木田 浩史
    2017 年 13 巻 4 号 p. 303-310
    発行日: 2017年
    公開日: 2019/12/15
    ジャーナル フリー

    本解説の目的は、エネルギーの変換・利用など関して総合的な環境影響評価を行う方法について、いくつかの事例紹介を含めて、その概要を説明することである。エネルギーは、化石燃料を原料すなわちエネルギー源とする場合が多いことから、変換・利用時に排出される温室効果ガスの排出量および地球温暖化への影響に着目した評価がなされることが多い。化石燃料を代替する新エネルギー・再生可能エネルギーの評価においても同様である。もちろん環境影響は地球温暖化のみではなく、エネルギーに関しても総合的な環境影響を行うことが必要である。

  • 森泉 由恵
    2017 年 13 巻 4 号 p. 311-317
    発行日: 2017年
    公開日: 2019/12/15
    ジャーナル フリー

    再生可能エネルギーは、環境負荷の低減と、社会経済的課題の解決を同時に達成する手段の一つとして期待されている。しかし、実際にそれをどのように具体化するかについては、いまだ模索の段階である。本稿は、再生可能エネルギーの導入にともなう雇用機会の創出に関する議論を紹介する。これまでの研究を、1) 再生可能エネルギー政策による雇用効果の定量化に焦点をあてた研究、2) 地域で生まれる雇用に着目した研究、3) 様々な再生可能エネルギー技術の差異に焦点をあてた研究、という3つの視点から概観するとともに、今後、進展が期待される研究テーマについて考察した。

  • 安原 清英, 永村 知之
    2017 年 13 巻 4 号 p. 318-324
    発行日: 2017年
    公開日: 2019/12/15
    ジャーナル フリー

    バイオエタノールは、ガソリン代替のバイオ燃料であり、温室効果ガス (GHG) 排出量の削減策として、世界的に導入が進められている。一方、バイオエタノールは、原料や製造方法等によって、GHG排出削減効果が異なる。そのため、LCAを実施し、真にGHG排出削減効果の高いバイオエタノールの導入を進めることで、効果的にGHG排出削減をしていくことが必要である。本稿では、エネルギー分野におけるLCAの活用事例として、日本のバイオエタノールの導入等に関する取組である「エネルギー供給構造高度化法」の内容について紹介する。

  • 和田口 達也, 越智 崇充, 大我 さやか, 庵原 一水, 鶴田 祥一郎, 中野 勝行
    2017 年 13 巻 4 号 p. 325-331
    発行日: 2017年
    公開日: 2019/12/15
    ジャーナル フリー

    エネルギーキャリアとしての水素利活用は、有力な地球温暖化対策の一つとして諸外国で導入が進められつつあるが、水素エネルギーの利活用にあたっては、利用時の温室効果ガス排出量削減効果のみならず、水素製造から利用までを通じた一連のプロセスにおいて、削減効果を有することの確認が求められる。そのため、環境省では、製品又はサービスのライフサイクルを通じた環境への影響を評価する手法であるLCA (Life Cycle Assessment : ライフサイクルアセスメント) が必要と考え、今後、水素エネルギーの製造事業者、販売事業者又は利用者等が日本国内において自らの水素エネルギー事業を評価する際に活用することを目的とし、LCAガイドラインを策定した。同時に算定の負荷低減及び算定の誤り軽減のため、積み上げ型及び産業連関型の2種類のLCIデータベースを搭載したLCA計算ツールを開発し、そのマニュアル及びサンプル集も作成し、環境省ホームページにて公開した。

一般投稿
研究論文
  • 上原 恵美, 畠中 智史, 中谷 隼, 菊池 康紀, 高岡 由紀子, 平尾 雅彦
    2017 年 13 巻 4 号 p. 332-348
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/10/25
    ジャーナル フリー
    本論文は消費者のライフサイクル思考(LCT: Life Cycle Thinking)支援のための環境情報提供方法の開発を目的とする。中学生を対象とした環境教育プログラム、及び、消費者の製品利用に伴う環境影響評価のためのシナリオ分析ソフトウェアを開発した。また、これらの情報提供方法の効果を、LCT に基づく環境配慮行動設計に必要な能力の向上という観点から評価した。情報提供においては、使い捨てのレジ袋と再利用可能なマイバッグの比較を製品比較の題材として用いた。環境教育プログラムは LCT の体系的な学習を目的とし、総合的な学習の時間を利用してプログラムを実施した。効果分析において、プログラム実施による参加者の LCT 能力の向上が認められた。一方、シナリオ分析ソフトウェアはレジ袋とマイバッグの利用時の意思決定に伴う環境影響評価を目的とし、現状の意思決定に伴う CO2 排出量の評価と、CO2 排出量削減のための対策の提案を行うことができる。開発したソフトウェアをウェブアンケートにより配布し、回答者に対して同様の効果分析を行った。その結果、ソフトウェアによる情報提供を行った回答者群において、環境問題に対する関心及び LCT 能力の向上が認められた。以上の結果より、提案する環境情報提供方法の、消費者の LCT 能力の向上に対する有効性が示された。
事例論文
  • 田高 初奈, 平山 世志衣, 高岡 由紀子, 津田 祥子, 水野 建樹, 松本 真哉
    2017 年 13 巻 4 号 p. 349-359
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/10/25
    ジャーナル フリー
    A primary survey on the time-dependent influence of life cycle thinking-based environmental education (LCT-EE) on pro-environmental awareness and behavior was carried out for learners who took a class of LCT-EE for the detailed design of a survey on the education effects of LCT-EE. The present survey was performed by using a questionnaire form. In this form, survey respondents were asked three question items with respect to a change in pro-environmental awareness and behavior before and after the class. The reasons for their responses to the two items on pro-environmental behavior were also asked in a multiplechoice method on the basis of the other related research results. We sent a questionnaire to 96 learners and we had a response from 77 learners. The result suggested that the exposure to LCT-EE contributed to a positive change in pro-environmental awareness after the elapse of a certain period of time. We also obtained two important potentials with regard to the influence of the learning of LCT on pro-environmental awareness and behavior. We will continue this project towards the detailed survey on the education effects of LCT-EE in order to interpret the mechanism of a change in pro-environmental behavior based on the learning of LCT.
  • 天野 耕二, 土居 義浩, 福原 大祐, 吉川 直樹, 島田 幸司
    2017 年 13 巻 4 号 p. 360-369
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/10/25
    ジャーナル フリー
    太陽光発電と蓄電池を活用した独立系直流 LED 照明システムの導入に伴う一般戸建て住宅の電力消費由来 CO2 排出削減量と CO2 ペイバックタイムを推計した。独立系直流 LED 照明システムの中では、蓄電容量を夜間照明消費分に留めた LED 照明システムの CO2 排出削減効果が比較的大きいことがわかった。蓄電容量を昼間の余剰電力全てを蓄電できるまで増やしたシステムにおいては、毎日深放電を繰り返すことで蓄電池の寿命年数が相対的に短くなることが年間当たりの製造段階における排出量の増大に影響していた。独立系直流 LED 照明システムのCO2 ペイバックタイムは 1.5 年から 2 年程度となったが、系統電力の CO2 排出係数に加えて、PV の発電電力、蓄電池の充放電深度から生じる製品寿命などの地域差によるばらつきが見られた。
解説
  • 天沢 逸里
    2017 年 13 巻 4 号 p. 370-377
    発行日: 2017年
    公開日: 2019/12/15
    ジャーナル フリー

    本稿では、サステイナビリティ学における人間の消費行動とライフスタイルに関する論文をレビューし、研究の特徴を抽出・解析した結果を総括する。持続可能な社会の構築のための生産と消費パターンの転換は、長らく国際会議の場で議論されてきたが、講じられた方策は技術開発による生産の効率化に着目したものであった。消費側への働きかけが急がれるなか、近年サステイナビリティ学において消費行動とライフスタイルに関する研究が活発になっている。サステイナビリティ学という学際的な学問がどのように消費行動とライフスタイルの問題にアプローチしているのかを調査するため、サステイナビリティ学主要雑誌において文献レビューを行った。その結果、3つの研究クラスター (Consumer behavior, Intervention, and Method and framework) を検出した。消費行動と環境影響の因果関係の究明に関する論文が大半を占め、経済と社会への影響を考慮した論文はごくわずかであった。サステイナビリティ学の特徴を生かす、Well-beingといった社会経済的側面も統合した研究の発展が望まれる。

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