日本LCA学会誌
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13 巻, 3 号
農業LCAの20年
選択された号の論文の16件中1~16を表示しています
目次
巻頭言
特集「農業LCAの20年」
解説
  • 林 清忠
    2017 年 13 巻 3 号 p. 224-233
    発行日: 2017年
    公開日: 2019/12/15
    ジャーナル フリー

    農業LCAのこれまでの発展過程を、農業・食品LCA国際会議の開催状況を中心に検討した。まず、農業がLCAにおける重要なトピックであることを確認した上で、出発点ともいえるEUのハーモナイゼーション・プロジェクトを取り上げた。次いで、同国際会議の開催年、場所、主催等の提示の後、どのようなトピックが対象とされたかをレビューした。インベントリ分析、影響評価において農業に特徴的と考えられる事項は、開催当初より検討されているが、食行動、環境ラベルに関するトピックが議論されるようになったのは比較的最近であることを示した。さらに、今後の研究方向を検討するため、世界人口増加による食料需要増大、LCAの政策利用、農業生産の管理に関する検討を行った。

  • Vincent COLOMB, Hayo VAN DER WERF, 吉川 直樹
    2017 年 13 巻 3 号 p. 234-238
    発行日: 2017年
    公開日: 2019/12/15
    ジャーナル フリー

    AGRIBALYSEは農業製品のライフサイクルインベントリ(LCI)作成を目的としたフランスのプログラムである。本プログラムでは、環境ラベル政策とその農業部門における実践の支援のために、広くコンセンサスの得られるLCA手法の構築と、フランス農業製品の均質なLCIデータベースの提供に焦点を当てている。150の農業製品LCIが搭載されたAGRIBALYSE v1.3データベースは、計算ツール「MEANS-InOut」とともに2017年から利用可能となった。共同開発者がデータベースの改善や拡張に取り組んでおり、その課題の一つが、ユーザーの多様なニーズ(個別の農業システムから食生活の評価まで)を考慮しデータベースの適切な精度を定めることである。現在、農場段階から食品産業段階までデータベースの対象を広げることを計画しており、これによって食品のライフサイクル段階を網羅することができる。ADEME(フランス環境エネルギー管理庁)は、企業やサプライチェーンの戦略に環境パフォーマンスがより一層取り入れられるよう、今後、食料分野におけるエコデザインのアプローチを促進することに重点的に取り組む。本プログラムを通して、フランスは食料分野におけるLCAの発展とベンチマーキングの国際的な取り組みに貢献する。本プログラムでの経験を踏まえ、国家LCIデータベースが持続可能性への挑戦に貢献することと、国際レベルでの協働や透明性確保の重要性を示した。

  • Assumpció ANTÓN, 林 清忠, 湯 龍龍
    2017 年 13 巻 3 号 p. 239-244
    発行日: 2017年
    公開日: 2019/12/15
    ジャーナル フリー

    多くの国際的なイニシアティブは、生物の多様性は現在および将来世代にとって貴重な資産との認識を重視している。LCA研究においても、生物多様性消失の評価指標を提供するために多数の努力がなされている。土地利用由来の生物多様性消失をLCA研究の影響カテゴリーに含める重要性が認識されつつあることによって、UNEP-SETACライフサイクルイニシアティブが具体的な影響指標の使用に関するコンセンサスの構築とガイダンスの提供を後押ししている。本報告の目的は、LCAにおける最も一般的な生物多様性指標を紹介するとともに、UNEP-SETACが暫定的に推奨した土地利用に由来する生物多様性消失の評価方法を示す。最後に、現在の評価方法の課題と今後の展望を議論する。まだ多くの課題が残されているが、道筋ははっきりと示された。今後、より多くの事例評価が実施され、ローカルの特性化係数(CF: characterization factor)が開発されることにより、LCAにおける生物多様性評価がより容易になり、生物多様性を保護するための知見が蓄積されることを期待したい。

  • Peter FANTKE, Assumpció ANTÓN, Tim GRANT, 林 清忠
    2017 年 13 巻 3 号 p. 245-251
    発行日: 2017年
    公開日: 2019/12/15
    ジャーナル フリー

    推奨される農薬排出割合に関する合意を形成し、LCAにおけるデフォールト値を作成しようとする国際的取組みが開始された。評価フレームワークに関する合意内容は以下の通りである。(a)1次的分布(散布直後の排出)がライフサイクル影響評価(LCIA)のインプットとして使われる。(b)フレームワークならびにLCAでの利用のためのガイドラインとドキュメントが作成される。(c)排出フレームワークは既往の排出モデルの修正に基づく。(d)ドリフトの値は、専門のモデル作成者から提供される。(e)農薬散布シナリオは熱帯地域を対象として含む。(f)気象、土壌、農薬散布方法に関するシナリオは、感度分析に基づく。(g)デフォールトの排出割合の推定は、農薬生産量を用いた加重平均による。(h)排出割合は地理的および行政的空間ごとに示される。これらの合意に基づく推奨内容は以下の通りである。(a)LCAを実施する際には、農地がテクノスフェアとエコスフェアのどちらに属するかを表明すべきである。(b)農地への散布量等は、農薬排出の定量化のためのインベントリの一部として報告する必要がある。(c)農薬の1次的分布と2次的分布(運命分析の対象となる長期的視点からの排出)の双方を報告すべきである。(d)LCIAは、農地をテクノスフェアとする場合とエコスフェアとする場合の双方に対応すべきである。(e)LCIAは、作物吸収を含む運命・暴露の全体を対象とすべきである。(f)詳細なシナリオが得られない場合には、排出のデフォールト値を使用すべきである。(g)すべての仮定を報告すべきである。

  • 椛島 裕美枝
    2017 年 13 巻 3 号 p. 252-255
    発行日: 2017年
    公開日: 2019/12/15
    ジャーナル フリー

    本解説の目的は、国際的な消費財流通業界の持続可能性の取り組みについて、The Consumer Goods Forum(TCGF)の取り組みを例に取り上げ、LCAの取り組み動向について、その背景を紹介するとともに、関連する企業の事例としてイオンの取り組みについて紹介することである。まず、TCGF環境サステナビリティ・ピラーにおける冷媒、廃棄物、森林、メジャメントの各ワーキングのゴール、これまでの活動内容、今後の方向等を説明する。また、企業の視点から見た持続可能性の改善に向けた取り組みを説明するため、冷媒、食品廃棄物、持続可能な調達に関するイオンの取り組みを紹介する。

研究資料
  • 古島 康, 野田 英樹, 増田 昌彦, 野々村 善雄, 冨沢 宏, 江川 邦彦, 深沢 里美, 山中 泰礼, 竹村 正央
    2017 年 13 巻 3 号 p. 256-266
    発行日: 2017年
    公開日: 2019/12/15
    ジャーナル フリー

    重電・産業システム機器には電子回路基板が含まれており、メーカは温室効果ガス(GHG)およびCO2排出量のライフサイクルインベントリ(LCI)分析を実施する必要がある。しかしながら、電子回路基板は多数の部品から構成されるため、LCIに使用される電子回路基板の数値データを得ることは困難であり、LCI分析の推進には依然として課題が残っている。これらの問題を解決するため、日本電機工業会(JEMA)の重電・産業システム機器LCA検討WGでは、ガイドラインの作成と更新、また本報の前身である第一報の公開を通して、電子回路基板のGHGおよびCO2の排出原単位の算定に取り組んでいる。第一報において提案した電子回路基板のGHGおよびCO2排出原単位については、サンプル数が少なく、定量的な分析ができていない等の課題が残されていた。そこで、サンプルの追加と細分化によるサンプル数の増加や、また層数がGHGおよびCO2排出量に与える影響を分析し、電子回路基板の排出原単位の精度の向上を図った。その結果、面密度と層数をパラメータとして適用し電子回路基板の排出原単位を導出するフローチャートの構築、また層数を考慮した電子回路基板の排出原単位の計算式の作成を行うことができた。能動部品を含む電子回路基板の場合、層数に応じてGHG排出原単位は100~250 g-CO2eq/g、CO2排出原単位は65~215 g-CO2/gであった。一方、受動部品を含む電子回路基板の場合、層数によらずGHG排出原単位は45 g-CO2eq/g、CO2排出原単位は35 g-CO2/gであった。

  • 安藤 生大, 吉川 直樹
    2017 年 13 巻 3 号 p. 267-274
    発行日: 2017年
    公開日: 2019/12/15
    ジャーナル フリー

    Objective. This study estimates the life cycle CO2(LC-CO2)of the melon fruit(variety: Ams melon)grown in non-heated greenhouses in Choshi, Chiba Prefecture. We specified the highest emission stage and process of the LC-CO2 and clarified the reason of that. Our result was compared with the LC-CO2 of melons grown outdoors and the hybrid calculation method using an I-O table.

    Method. The functional unit is the weight of CO2 emission per kilogram of melon, otherwise known as its “carbon footprint(CFP)”. The lifecycle of a melon is classified into five stages, which can be divided into eight processes. LC-CO2 is calculated as the total amount of CO2 emitted from each process.

    Results and discussion. The estimated result of LC-CO2 of the melons produced in Choshi was 1,226.3 g-CO2eq/kg. The following is the result obtained from the five lifecycle stages. 1)The raw materials procurement stage: 806.5 g-CO2eq(component ratio: 65.8%), 2)the production stage: 262.0 g-CO2eq(21.4%), 3)the distribution and selling stage: 58.7 g-CO2eq(4.8%), 4)the operation and maintenance stage: 67.1g-CO2eq (5.5%), and 5)the disposal and recycling stage: 32.0 g-CO2eq(2.6%). As results of the comparison of the hybrid calculation method at the condition of heated greenhouse using fossil fuels and long transportation, our results are 1)the raw materials procurement stage over 80% of the total amount of LC-CO2 by the burning of fossil fuels, 2)the transportation process of the distribution and selling stage over 60% of the total amount of LC-CO2 by using air transportation, and 3)our estimation result at the same conditions(heating by fossil fuels and air transportation)are almost 4 times against the hybrid calculation method.

    Conclusions. Most of the CO2 is emitted from the field preparing process in the raw materials procurement stage, especially from the fertilizer, e.g. chemical and organic, which accounts for 45.8% of the total melon LC-CO2. And in our comparison research of the growing processes between outdoor and greenhouse farming, the greenhouse melons show about 10% higher LC-CO2 than melons grown in outdoors. This result indicates the importance of greenhouse lifespans, and the recycling of greenhouses components.

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