日本LCA学会誌
Online ISSN : 1881-0519
Print ISSN : 1880-2761
ISSN-L : 1880-2761
14 巻, 1 号
選択された号の論文の19件中1~19を表示しています
目次
新春巻頭言
特集1「第12回日本LCA 学会研究発表会からの投稿」
研究論文
  • 森 健太朗, 本藤 祐樹
    2018 年 14 巻 1 号 p. 2-12
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/01/25
    ジャーナル フリー
    近年、環境教育への新たな取り組みとして、ライフサイクル思考を学ぶ環境教育(以下、LCT 環境教育)が注目されている。LCT 環境教育を通して、学習者が製品やサービスのライフサイクルを意識することで、日常生活と環境問題の「つながり」を理解そして実感し、環境配慮行動を高めることが期待されている。本研究の目的は、LCT 環境教育プログラムの効果を評価する上で鍵となる、この「つながり感」の測定尺度を作成することである。本研究では、第一に、既往研究を参考に「つながり感」を定義し、「つながり感」を測るための複数の質問項目から成る質問紙を作成している。第二に、その質問紙を用いて523 名の高校生を対象とした予備調査を実施して、質問項目を洗練し「つながり感」尺度を提示している。最後に、この「つながり感」尺度を用いた質問紙調査を553 名の高校生に実施し、「つながり感」尺度の信頼性と妥当性を検証している。算出したクロンバックのα 係数や因子分析の結果から、「つながり感」尺度は高い信頼性と妥当性を持つことが認められる。
  • 山末 英嗣, 安永 玲華, ジョルディ クラビオット, トラン デュック フイ, デュック クワン グエン
    2018 年 14 巻 1 号 p. 13-20
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/01/25
    ジャーナル フリー
    本研究は、タイ、ベトナム、日本で家電製品 4 品目(エアコン・洗濯機・冷蔵庫・テレビ)の素材リサイクルによるTMR(関与物質総量:Total Material Requirement)削減ポテンシャル量を推算し、その潜在的効果を評価した。TMR 削減量は、製品を1次資源から生産した場合と、2次資源で生産した場合のTMRの差分を意味し、これを推算することで、素材リサイクルの有効性を定量的に示すことができる。分析の結果、各国の年間家電需要量を全て再生資源由来にした場合、タイで 8.5×106 t-TMR、ベトナムで 10.6×106 t-TMR、日本で 43×106 t-TMRのTMR削減ポテンシャル量があることが示された。また、3ヵ国とも、エアコンのリサイクル、銅のリサイクルによるTMR削減効果が高いことが示唆された。これらの結果から、タイ・ベトナムで家電リサイクルの向上を図ること、特に、エアコンと銅の適切な回収・処理が喫緊の課題であることがわかった
  • 山口 陽平, 田村 賢人, 吉川 直樹, 天野 耕二, 橋本 征二
    2018 年 14 巻 1 号 p. 21-35
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/01/25
    ジャーナル フリー
    本研究では、食料消費に関わる灌漑用水消費に焦点を当て、水ストレス指標により、世界全体の淡水資源需給バランスに対する国際貿易の影響を評価した。淡水資源消費量については、ウォーター・フットプリントにより、各国の国内生産による淡水資源の直接消費量と、当該国の他国からの国際貿易に伴う淡水資源の間接消費量に分けて評価した。さらに、灌漑効率を用いて、淡水資源消費量を淡水資源取水量に換算した。淡水資源利用可能量は、農業において最大限利用可能な淡水資源量として定義した。2010年時点において、41ヶ国が高いストレス(28ヶ国、19億人)または中位のストレス(13ヶ国、18億人)に直面している可能性が示唆された。このうち8ヶ国では、他国への食料輸出により水ストレスが強まっている可能性が示唆された。Thailandの場合、輸出向け食料の生産に要する同国の灌漑用水取水量の86%(26.7km3)を占める米の輸出によって、同国の水ストレスが強められている可能性が示唆された。
  • 佐藤 聖史, 徐 維那, 堂脇 清志
    2018 年 14 巻 1 号 p. 36-45
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/01/25
    ジャーナル フリー
    近年、家庭部門の地球温暖化対策と分散型電源の需要の高まりから日本において、家庭用燃料電池の販売が拡大されており、欧州でも需要が拡大されるとみこまれているため注目されている。国際電気標準化会議/技術委員会105(International Electrotechnical Commission/Technical Committee 105: IEC/TC 105)においては、燃料電池の安全面、性能面、及び環境面を考慮した統合的な指標により製品の品質の向上を目指したスキームを検討している。本研究では、家庭用燃料電池コジェネレーションシステムとして販売されている固体高分子形燃料電池コージェネレーションシステム(Polymer Electrolyte Fuel Cell Cogeneration System: PEFC-CGS)、及び家庭用固体酸化物形燃料電池コージェネレーションシステム(Solid Oxide Fuel Cell Cogeneration System:SOFC-CGS)を対象に、ライフサイクルアセスメント(Life Cycle Assessment: LCA)を行い、得られた環境影響値に包絡分析法(Data Envelop Analysis: DEA)を適用することで環境性と性能を考慮した指標(DEA による効率値を定義し、以下、FC-DEA と表記する。)を提案した。この結果、FC-DEA はPEFC-CGS は0.846、平板型セル・スタックを使用したSOFC-CGS は0.648、アノード支持型のセル・スタックを使用したSOFC-CGS は1.000となり、アノード支持型のセル・スタックを使用したSOFC-CGS が最も環境性と運転性能を両立した製品であると評価された。
事例論文
  • 黒川 賢治, 小野 雄也, 小関 康雄, 杉本 和明, 大熊 那夫紀, 伊坪 徳宏
    2018 年 14 巻 1 号 p. 46-54
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/01/25
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は国内の海水淡水化施設を対象にCO2や水消費、ライフサイクルコストを評価すること、さらに計画値と実測値を基に両者の差異を測定することである。評価の結果、環境負荷とコストは計画値よりも実測値の方が1m3あたりの負荷は大きいことがわかった。ライフサイクルCO2の大部分は電気に由来し、水消費では化学製品による間接的な負荷が全体に大きな影響(CO2:95 - 99%, 水消費:50 - 95%)を与えていることがわかった。これは沖縄における電気が石炭火力、福岡が天然ガスを用いた火力電力を用いている影響に由来し、水消費は逆浸透膜洗浄のための化学製品による影響に由来する。また、稼働率の低い(8%)沖縄における機能単位あたりの実測値のライフサイクルコストは計画値の5.5倍となることがわかった。最後に既存研究との比較及び感度分析の結果から本研究と既存研究との整合性が見られ、電源構成の変更によりCO2の削減が可能であることが示された。
特集2「LCA/MFA と製品寿命」
総説
  • Tim COOPER, 西嶋 大輔
    2018 年 14 巻 1 号 p. 55-63
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/12/15
    ジャーナル フリー

    近年、廃棄物の発生抑制、資源効率の改善、そして低炭素社会や循環経済(circular economy)の形成に対する必要性への関心に促され、耐久消費財の製品寿命に対する関心が高まってきている。本稿では、その製品寿命への関心の高まりについて述べ、産業や政府にとってのその意味について議論する。ライフサイクルアセスメント(LCA)といった環境分析ツールや手法における製品の長寿命化にまつわる議論の重要性について触れながら、製品寿命を製品ライフサイクルと区別する重要性について説明する。また、経験ベースの製品寿命に関する知見の増加がLCAの研究において用いられる不正確な仮定によるリスクを減じることについて論じるとともに、環境影響を最小化するためのエネルギー使用製品の最適な買い替え時期の推計のためにLCA研究が用いられていることについて述べる。そして、経済面、環境面、社会面での持続可能性における製品寿命の重要性や、製品の長寿命化の促進が消費者にもたらす潜在的な便益についても考える。それらの問題は時折複雑であるため、本稿では、技術的により高いエネルギー効率をもつ製品の開発が可能である場合に生じ得る環境面でのトレードオフに関する議論について述べる。製品寿命に対する理解の深化に努めている学術研究コミュニティの成長について示し、近年の製品寿命についての知見や政策の進展について説明する。本稿の最後の節では、欧州委員会によるEU循環経済政策パッケージによって促されてきた、国際機関、政府部門や公的機関の委託による最近の調査研究について見ていく。これらの内容は、廃棄物管理から廃棄物発生抑制、線形経済(linear economy)から循環経済への戦略的転換に対する必要性についての合意の高まりを示している。

解説
  • 小口 正弘
    2018 年 14 巻 1 号 p. 64-69
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/12/15
    ジャーナル フリー

    本稿では、社会における製品の寿命についての異なる様々な概念や定義について解説した。製品のライフサイクルに沿った様々な製品寿命の定義を示した上で、実際に報告されている観測データの定義が多様であること、いくつかの製品寿命の定義については明確な区別が必要であることから、利用目的に応じて適切な定義の製品寿命データを選択すべきであることを指摘した。また、推定方法と推定のための元データを適切に選択することで、任意の定義の製品寿命を推定できることも紹介した。

  • 醍醐 市朗, 小口 正弘
    2018 年 14 巻 1 号 p. 70-76
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/12/15
    ジャーナル フリー

    製品寿命は、LCAやMFAにおける1つの重要なパラメータである。製品寿命は、一般にある製品群の製品寿命分布の平均値として得られる。一方、その平均値は、分布の定義に応じて変わり得る。本稿では、製品寿命分布の6つの異なる定義を概説した。これらの定義は、累積分布か確率分布、分布を描く際の基準とする年、確率に変換する際の分母とする集団によって分類した。この分類に従って、これらの異なる分布の特長について考察した。

  • 山末 英嗣, 光斎 翔貴, ジョルディ クラビオット, 安永 玲華, デュック クワン グエン, 梅田 靖
    2018 年 14 巻 1 号 p. 77-84
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/12/15
    ジャーナル フリー

    本稿では主に東南アジア地域を中心とし、筆者らが電気電子機器の保有状況および使用年数について調査してきた結果について報告を行った。調査はテレビ、冷蔵庫、洗濯機、エアコン、PC、携帯電話を中心とする電気電子機器に対して行った。調査方法はベトナムを対象としたアンケート調査 (2006年、2013年) で世帯当たりの保有台数、中古製品の保有割合、そして所有機器の使用年数を調べた。また、ベトナムに限らず可能な限り多くの国々における電気電子機器の使用年数を文献調査に基づいて収集した。ベトナムのハノイ市とホーチミン市では、2013年における4家電製品の世帯当たりの平均保有台数は2006年における最高収入世帯層と同程度に高いことが分かった。また、中古製品の保有率 (新製品と中古製品の保有台数合計に対する中古製品の割合) は2006年のハノイではおよそ50%であった一方、2013年は両都市において2.5~17.3%程度であった。またハノイ市の方がホーチミン市より中古製品の保有割合が低い傾向にあった。さらに電気電子機器の使用年数分布をワイブル分布を仮定して見積もった結果、2013年において得られた平均使用年数は2006年に比べ大幅に減少していることが分かった。次に、種々の国々について平均使用年数と1人当たりのGDP (購買力平価) の関係を調べた結果、冷蔵庫、洗濯機、エアコンについては1人当たりのGDP (購買力平価) が増加するとともに平均使用年数は下がるが、それがある閾値を超えると使用年数は増加に転じるU字状の傾向が見られた。一方、テレビ、PC、携帯電話については製品の平均使用年数と1人当たりのGDP (購買力平価) に強い相関は見られなかった。最後にU字状の傾向が見られるメカニズム、そしてそのような傾向の差異の要因について考察を行った。

一般投稿
研究論文
  • 原 卓也
    2018 年 14 巻 1 号 p. 85-98
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/01/25
    ジャーナル フリー
    本論文では、日本国内の二輪車のストック・フローに関するデータ間の整合性を検証することで、二輪車の保有台数が過大評価となっている可能性を検討する。保有台数について、公式データである検査・届出台数と、軽自動車税課税台数、税収納率、自賠責保険加入台数、消費実態調査から推定される保有台数などを比較・分析する。その結果として、車検制度対象外の車種である軽二輪や原付の公式データ保有台数は、より実態に近いと考えられる他のデータより過大になっていることを示す。車検制度対象車種の小型二輪については、実態に近いことを示唆するデータと過大であることを示唆するデータの両方があり、今回の分析からは結論付けられないが、車検制度対象外の車種と比べれば、過大評価の程度は小さいことを示す。
諸報
コラム
研究室紹介
賛助会員紹介
第9回日本LCA学会学会賞 各賞受賞者発表
賛助会員名簿
会務報告及び編集委員会からの報告事項(会務報告・編集後記・奥付)
feedback
Top