日本LCA学会誌
Online ISSN : 1881-0519
Print ISSN : 1880-2761
ISSN-L : 1880-2761
14 巻, 4 号
選択された号の論文の18件中1~18を表示しています
目次
巻頭言
特集「サプライチェーンリスクマネジメント」
解説
  • 青地 忠浩
    2018 年 14 巻 4 号 p. 256-266
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/12/01
    ジャーナル フリー

    サプライチェーンリスクマネジメント(SCRM)とは、サプライチェーンに影響を及ぼす様々なリスクを体系的に特定・分析・評価し、リスクを低減するための戦略と対策を策定・実行し、継続的に管理していくためのプロセスのことである。本稿では、SCRMの基本的な考え方と、自然災害、政治・地政学リスク、情報セキュリティ、枯渇性資源や紛争鉱物、環境問題、人権問題といった注目すべきサプライチェーンリスクを紹介する。また、SCRMの実践において重要なレジリエンスの考え方と、それを踏まえてSCRMを体系的かつ継続的に行うために必要な要素を整理する。さらに、基本方針の策定および現状分析から、リスク戦略の策定、監視・検知・対応計画、実施・運用・改善に至るまでのSCRM構築のフレームワークを解説する。

  • 平沼 光
    2018 年 14 巻 4 号 p. 267-276
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/12/01
    ジャーナル フリー

    シェールガス革命や歴史的な原油価格の下落、また気候変動問題への対処による再生可能エネルギーの急激な普及など、エネルギーを巡るかつてない様々な出来事を背景に世界は今、エネルギーの需給構造が大きく変化する「エネルギー転換」の真っただ中にある。かつて、18 世紀の産業革命では、石炭をエネルギー源とする蒸気機関の発明により社会の生産性を飛躍的に向上させている。その後、20世紀中頃には石炭よりも利便性の高い石油の登場が石炭に代わるエネルギー転換を起こし、世界の産業、経済、そしてライフスタイルにまで大きな影響を及ぼしている。本稿では、現在再び起こっている新たなエネルギー転換の動きについて、その具体像を明らかにするとともに、エネルギー転換が日本に及ぼすリスクについて分析する。

  • 岸本 充生
    2018 年 14 巻 4 号 p. 277-283
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/12/01
    ジャーナル フリー

    何か事故や事件が起きてから、再発防止という名目で社会の多大なリソースが費やされることが多い。すなわち、実際に起きたことに注目が集まりすぎ、次に何が起こりそうかにはあまり注意が払われない。本解説の目的は、社会が直面する多様なリスクに対して、リスクレベルに基づいて優先順位を付けて、社会全体のリスクを最小にするように予防的に対処するために必要な考え方やツールをまとめて示すことである。そのためにはまず、安全を「許容できないリスクがないこと」と定義する。この定義に基づけば、伝統的な科学だけで安全を定義することはできないことが容易に理解できる。安全であることを示すためには、伝統的な科学と政策の間のギャップを埋めるレギュラトリーサイエンスを発展させることが必要不可欠である。そして政策を決めるためには、複数のオプションを、各種インパクトアセスメント(影響評価)を用いて評価する必要がある。代表的なものとして規制影響評価とプライバシー影響評価を挙げた。これらの考え方やツールは、意思決定プロセスに効果的に組み込まれる必要がある。

  • 正畠 宏一
    2018 年 14 巻 4 号 p. 284-291
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/12/01
    ジャーナル フリー

    SDGs、ESG、非財務情報を含む報告の規格など、持続可能性の定量化を巡る動きの中で、社会LCAに対する要請も高まってきている。本稿では、一度に多くの社会指標をスクリーニング評価することができる社会ホットスポット分析について解説を行った。また、評価で必要となる社会 LCA データベースの構造や、影響評価手法、算定で導き出される結果とその解釈、課題等についてまとめた。

  • 中谷 隼, 南斉 規介
    2018 年 14 巻 4 号 p. 292-301
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/12/01
    ジャーナル フリー

    サプライチェーンのグローバル化の進展や複雑化、近年の自然災害によるサプライチェーン寸断の事例を 背景に、サプライチェーンリスク管理(SCRM)が重要性を増しており、LCA研究を含めたSCRMへの科学的な貢献が期待されている。本稿では、これまでにLCA研究者が中心的な役割を担ったサプライチェーンリスクに 関わる研究事例として、地政学的な供給リスクをライフサイクル持続可能性評価の枠組みへ統合することを企図した一連の研究や、多地域間産業連関モデルを基礎とした金属資源の供給リスクの定量化、ライフサイクルインベントリのデータベースを用いたサプライチェーンの脆弱性評価についてレビューする。さらに、これらの研究の科学的な貢献と限界について考察し、SCRMへのアプローチの今後の発展可能性について議論する。

研究論文
  • 福島 康裕, 中村 遼太郎, 大野 肇, 小原 聡, 菊池 康紀, 大内田 弘太朗, 寺島 義文, 服部 太一朗, 杉本 明
    2018 年 14 巻 4 号 p. 302-318
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/10/25
    ジャーナル フリー

    植物資源利用システムにおいて、農業(品種改良や営農操作など)、工業(原料抽出や加工など)の両サブシステムを大域的に最適化するために、ライフサイクル思考を適用して設計された変更案を用いることが収益性の向上や環境影響の低減に有効となりうる。そのような設計を行う際には、植物の特徴である気象要因の変動への感応性の違いを適切に考慮し、反映することが肝要である。そこで、本論文では、サトウキビを事例として、品種育成時に試験圃場で測定される一般的なデータ、気象庁の気象観測データ、農家圃場の生長状況データを統計的に解析することにより、ある地域における特定の品種の気象感応性を数理化し、品種ごと、面積あたりの生産性(単収)予測モデルを作成した。さらに、このモデルを用いて既往研究で構築された農工横断型生産シミュレーターを拡張し、将来の気象要因の変動を想定すれば、現地の事情に密接に対応した農業・工業の両システムの設計が可能であることを示した。気象要因の変動を考慮することによって品種間の優位性の評価結果が変わる可能性があることも明らかとなった。

研究論文
  • 片桐 究, 溝口 修史, 松八重 一代, 長坂 徹也
    2018 年 14 巻 4 号 p. 319-331
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/10/25
    ジャーナル フリー

    経済圏で利用される窒素はアンモニアを開始形態とし、肥料だけでなく化学繊維や樹脂、半導体などの化学製品を通して私たちの生活に大きくかかわっている。本論文の目的はマテリアルフロー分析(MFA)により、2005 年から2015 年にかけての日本国内の反応性窒素(Nr)のフローを定量化し、その経年変化を分析することで、国内におけるNr、特にアンモニアを開始形態とした窒素(NH3-N)需要の傾向と特徴を整理し、将来の経済構造・技術変化に伴うNr・NH3-N フローへの影響に関する情報を得ることである。MFA の結果より、2005年と2015年で食料・飼料部門から家計部門へのNr フロー量は898 kt-N ならびに775 kt-N、化学産業分野から肥料への投入は632 kt-N ならびに500 kt-N、そして下水汚泥から肥料として回収されるのが28.6 kt-N ならびに68.3 kt-N であった。2005年から2015年にかけて食料・飼料分野、化学産業分野、肥料分野それぞれで、流出入するNr・NH3-N量の減少が見られた(食料分野:13%,化学産業分野:26%,肥料分野:7%)。国内化学産業分野において需要されるNH3-N は減少傾向にあるが、工業用途や環境保全用途のNH3-N 量は884 kt-N(2005年)、623 kt-N(2015年)であり、それらの化学産業全体におけるシェアは期間を通じて50% 以上であったことが明らかとなった。この数値は、世界全体のアンモニア生産量のうち工業用途の占める比率として報告されている約20% という値に比べてかなり大きいことが分かった。また、工業用 NH3-N フローのうち、半導体産業へのフローは、2005年には0.21%、2011年は0.57% そして2015年は1.03% であり、年々拡大傾向にあった。今後、我が国のNr,・NH3-N フロー管理を進めるうえで、工業活動や環境保全に用いられる窒素化合物の管理保全がますます重要になっていくことが予想される。

諸報
コラム
研究室紹介
賛助会員紹介
年間通し目次
賛助会員
会務報告
各種ご案内
feedback
Top