日本LCA学会誌
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15 巻, 4 号
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目次
巻頭言
特集「持続可能性のための技術評価」
総説
  • 菊池 康紀, 福島 康裕
    2019 年 15 巻 4 号 p. 316-324
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/10/25
    ジャーナル フリー

    将来社会のビジョンに向けて、適用可能な技術・社会・経済のシステムオプションが複雑化する一方で、 評価すべき観点も多様化している。爆発的に増加傾向にあるライフサイクル評価に関連する新たな学術的知見や 事例を全て把握し続けることは現実的ではない。本稿では、既往の文献を計量書誌分析により体系的に整理し、ライフサイクル思考による技術評価の必要性を議論する。Web of Science に掲載された“life cycle assessment”、“life cycle analysis”、“life cycle thinking”のいずれかを、文献の Title, Keywords, Abstract に含む article、review paper、letter である 19,327 報(2019 年 8 月 10 日現在)に対し、学術俯瞰システムを用いた計量書誌分析を行った。論文群を掲載された期間に基づき 4 グループ(~ 2005, 2006 ~ 2010, 2011 ~ 2015, 2016 ~ 2019)に分割しテキストマイニングとネットワーク分析による論文間の引用関係をクラスタリングして可視化した。食料、エネルギー、バイオマスといった対象技術と、土地利用、水使用・消費、指標間の相互依存性などといった観点が、 いずれも複雑化・多様化する中で、手法選択、バウンダリと機能単位の設定、データ収集といった LCA の基礎的な手順を適確に実施していくことが肝要といえる。

解説
  • 小原 聡, 菊池 康紀
    2019 年 15 巻 4 号 p. 325-331
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/10/25
    ジャーナル フリー

    技術やシステムを評価する際、環境影響評価や経済性分析は重要である。本稿では、技術経済性分析の例として、製造コストや収益、事業採算性評価について簡単に紹介し、学術論文における技術経済性分析の最近の傾向について解説する。またケーススタディとして、多収性サトウキビからの砂糖・エタノール・電力同時増産システムを海外に展開する場合の技術経済性分析を例として取り上げ、実例を基に進め方や課題について紹介する。

  • 福島 康裕
    2019 年 15 巻 4 号 p. 332-335
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/10/25
    ジャーナル フリー

    持続可能な社会の構築のために、多くの技術開発事業が行われている。提案されているビジョンの達成のために、どのように当該技術が貢献するのかは、経済性に劣らず重要な事項として繰り返し検討が行われる。複数の技術を比較して議論する一つの方法として技術選択モデルを用いる方法がある。本稿の目的はこの方法の基礎を 解説することである。技術選択のモデルは数理的には従来型の LCA のモデルの延長線上で定式化できること、 そうして構築されたモデルには様々な応用可能性があることを示す。

  • 本藤 祐樹
    2019 年 15 巻 4 号 p. 336-342
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/10/25
    ジャーナル フリー

    本稿では、幅広い分野において様々な技術評価がなされてきたことを概観した上で、技術評価が重層的な 概念であることを指摘する。技術評価という言葉は 1960 年代の米国で生まれ、その後、技術を評価するための様々な方法が開発され、実践されてきた。技術評価という概念は、工学的な技術特性の評価、社会的な技術特性の評価、そして、技術の社会的な価値付けから構成されている。技術評価に関する深い理解は、持続可能な社会の構築に 向けて、如何なる技術評価が求められるのか、そして、それはどのような役割を担うべきなのか、について議論するきっかけを提供する。

研究論文
  • 中井 美和, 栗栖 俊之, 神園 奉和, 柿内 康志, 大久保 達也, 菊池 康紀
    2019 年 15 巻 4 号 p. 343-359
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/10/25
    ジャーナル フリー

    日本はエネルギー資源の過度な海外依存や、再生可能資源由来エネルギーの導入の遅れなど、解決すべき 課題に直面している。これらへの対応として、更なる技術開発ならびにシステム改革・導入に加え、環境や経済的側面を考慮したエネルギーの選択が消費者に対し期待されており、その実現のためには個々人のエネルギーリテラシーの向上が必須といえる。一方、エネルギー関連技術やシステムの革新と再生可能エネルギーへの変遷により、必要とされるエネルギーに関する知識は益々複雑化しており、市民のエネルギーリテラシーを向上させる効果的な手法を開発していくことが重要である。本研究では、将来のエネルギーの選択者である高校生に着目し、エネルギーの経験学習がエネルギーリテラシー、および、エネルギー選択の基礎となる選好性にどのような影響を及ぼすのかについて、定量的に分析を行うことを目的とする。鹿児島県立種子島高等学校の生徒を事例対象とし、エネルギーリテラシーを「知識」、「積極性」、「省エネ行動」の 3 つの観点から測定した。選好性の分析には選択型実験を用いることで、電力プランの意思決定に影響を与えうる要因の支払意思額を推計した。経験学習はエネルギーリテラシーの「知識」の向上には貢献したが、「積極性」、「省エネ行動」、および、選好性には有意な影響を与えなかったことが明らかとなった。

  • 尾下 優子, 兵法 彩, 大内田 弘太朗, 兼松 祐一郎, 福島 康裕, 菊池 康紀
    2019 年 15 巻 4 号 p. 360-376
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/10/25
    ジャーナル フリー

    技術や政策の実施による地域の社会経済効果を産業連関モデルを用いて分析する場合、地域固有の産業構造をよりよく表すためには、地域の産業連関表が必要である。一方で、完全な地域産業連関表の作成には多大なコストが必要なため、様々な仮定のもと代替的な手法が検討されるべきである。本研究では、種子島地域における分散型エネルギー技術の導入による社会経済的効果をケーススタディとして、以下の 3 つの産業連関表の違いによる結果の相違について分析を行う。分析に用いる産業連関表は、地域の産業連関表(ケース I、種子島地域、基準値)、県の産業連関表(ケース II、鹿児島県)、県の産業連関表に一部の地域部門を拡張したハイブリッド型の産業連関表(ケース III)である。分析の結果、技術導入による域内生産額の増加は、ケース I に比べてケース II では27.2% の過少評価となり、この差は、主に分散型エネルギー部門に燃料資源を供給する部門の投入構造の違いによって生じることが明らかになった。そのため、これらの部門の投入構造を地域産業連関表の値に改善したケース IIIでは、ケース I に対する域内生産額の差は +7.4% まで縮小した。これらの結果は、分散型エネルギーシステムの導入による社会経済効果の分析において、資源供給を行う地域部門を都道府県産業連関表に拡張したハイブリット型の手法が、完全な地域産業連関表の作成の多大なコストを抑えつつも、地域の意思決定者に対して有益な予測情報が提供可能なことを示唆している。

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