蝶と蛾
Online ISSN : 1880-8077
Print ISSN : 0024-0974
48 巻, 4 号
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  • 原稿種別: 表紙
    1997 年 48 巻 4 号 p. Cover1-
    発行日: 1997/11/30
    公開日: 2017/08/10
    ジャーナル フリー
  • 原稿種別: 付録等
    1997 年 48 巻 4 号 p. App1-
    発行日: 1997/11/30
    公開日: 2017/08/10
    ジャーナル フリー
  • 原稿種別: 付録等
    1997 年 48 巻 4 号 p. App2-
    発行日: 1997/11/30
    公開日: 2017/08/10
    ジャーナル フリー
  • 原稿種別: 付録等
    1997 年 48 巻 4 号 p. App3-
    発行日: 1997/11/30
    公開日: 2017/08/10
    ジャーナル フリー
  • V. V. DUBATOLOV, A. L. LVOVSKY, 吉本 浩
    原稿種別: 本文
    1997 年 48 巻 4 号 p. 191-198
    発行日: 1997/11/30
    公開日: 2017/08/10
    ジャーナル フリー
    St-Petersburgのロシア科学アカデミー動物学研究室に保管されているSatyrus motschulskyi Bremer&Grey,1852とYpthima amphithea Menetries,1859の模式標本を調べた結果,それらは同一種であることが分かった.両タクサの後模式標本とそれらの♂交尾器を図示した.チョウセンウラナミジャノメの学名はYpthima motschulskyi(Bremer&Gray)となるが,中国北部および韓国のものを原名亜種,沿海州のものを亜種amphithea Menetriesとした.沿海州の亜種は原名亜種よりも小型,後翅裏面は全体に暗く,波状模様もあまり明瞭でない.Y.motschulskyiがチョウセンウラナミジャノメの有効名となる関係で,ウラナミジャノメの有効名には台湾から記載されたY.multistriata Butler,1883が昇格する.原名亜種は台湾及び中国東部に産し,日本本土亜種はniphonica Murayama,1969,対馬亜種はtsushimana Murayama,1969となる.韓国産はtsushimanaよりも裏面の波状紋の発達が弱い点で区別されるが,Y.obscura Elwes&Edwards,1893,Y.elongatum Matsumura,1929はいずれもmotsculskyiのシノニムで,韓国産multistriataの亜種名として適格なものがないため,新亜種koreana ssp.n.を記載した.
  • 有田 豊, Oleg G. GORBUNOV, 池田 真澄, 平尾 和昭
    原稿種別: 本文
    1997 年 48 巻 4 号 p. 199-202
    発行日: 1997/11/30
    公開日: 2017/08/10
    ジャーナル フリー
    スカシバガ科のヒメコスカシバのSynanthedon tenue(Butler)は多食性のスカシバガであり(Arita&Gorbunov,1995),いままでに次の5種類の食餌植物が記録されている:カキノキ(カキノキ科),ヤナギの1種(ヤナギ科),クリ,カシワ(ブナ科),クマイチゴ(バラ科)(Yano,1961;有田ほか,1994;Arita,1994;Arita&Gorbunov,1995).今回,さらに次の3科にわたる4種類の植物が新たに食餌植物として確認されたので記録する.フジWesteria floribunda(マメ科Leguminoseae)の細いツルにゴールを形成し(Fig.10),ゴールから本種の成虫が羽化してきた(Figs 1,2,8).クマシデCarpinus japonica(カバノキ科Beturaceae)の太い主幹の樹皮下に潜り(Fig.9),そこから成虫が羽化した(Figs 3,4).カワラハンノキAlnus serrulatoides(カバノキ科Beturaceae)の細い幹に潜り,そこから成虫が羽化してきた(Figs 5,6).アラカシQuercus glauca(ブナ科Fagaceae)の樹幹の樹皮下を食害しているカシコスカシバSynanthedon quercus(Matsumura,1911)の幼虫を木屑とともに採集し,飼育をしていたところカシコスカシバと共に本種が羽化してきた(Fig.7).ヒメコスカシバの食餌植物は6科9種類が記録されたことになる.
  • 吉安 裕
    原稿種別: 本文
    1997 年 48 巻 4 号 p. 203-204
    発行日: 1997/11/30
    公開日: 2017/08/10
    ジャーナル フリー
    植物検疫(神戸植物防疫所)で輸入阻止されたスリランカ産水草Cryptocoryne wendtii(サトイモ科)寄生のミズメイガ,Agassiziella angulipennis(Hampson)を記録した.これまでの検疫では,Parapoynxイネミズメイガ属の種は記録されていたが,本属の種は筆者の知る限り初めて見つかった.本種幼虫は沈水葉植物を摂食し,分岐した気管鰓をもつなど,イネミズメイガ属の種と類似するが,成虫は前翅基部から亜外縁の白色帯まで広く暗茶褐色で,中室内に黒褐色の斑点があり,後翅翅縁が翅頂下で大きく丸くえぐれ,中央部に広い白色帯があることなどでイネミズメイガ属の種とは異なる.
  • 井上 武夫, Callegari C. Ivan
    原稿種別: 本文
    1997 年 48 巻 4 号 p. 205-206
    発行日: 1997/11/30
    公開日: 2017/08/10
    ジャーナル フリー
    ベアータアグリアス後翅裏面の斑紋は個体により千差万別であるが,眼状紋を形成する外側3列の黒色斑は比較的安定している.この3列の黒色斑が全て癒合した雄個体を採集したので報告する.写真1は表面で,Agrias beata beata Staudingerと比較して前後翅とも外側の緑色帯は狭く,その内側にある青色帯はより広い.写真2は裏面で,後翅外側の眼状紋は不明瞭であり,第2室から7室までの外側3列の黒色斑が融合して棍棒状になっている.第1b室では,2個ある眼状白紋が融合して,柱状の黒色斑を上下に分断している.後翅基部の赤色斑は中室の一部に拡がり,第1b室では1b翅脈ぎりぎりまで拡がっている.これらから,本個体はAgrias b.beata f.staudingeri Michaelの変異体と考えられる.しかし,前翅裏面には赤色斑が認められず,黒色の範囲が通常より狭いなど,典型的ではない.本個体は1995年11月26日ペルーウカヤリ州アタラヤ近くのキパチャリ川で採集された.その後1997年6月末までに10頭のベアータアグリアスを同地で採集したが,本個体にみられる異常斑は認められなかった.この事実から,同地にこのような異常斑を持つベアータアグリアスの集団は存在せず,一個体にのみ出現した突然変異と考えられる.
  • 井上 武夫, 新井 久保
    原稿種別: 本文
    1997 年 48 巻 4 号 p. 207-213
    発行日: 1997/11/30
    公開日: 2017/08/10
    ジャーナル フリー
    黄色と赤色はベアータアグリアス裏面の基本色ではあるが,ペルー産の表面に現われることは稀であり,後翅前縁第7室に黄色斑をともなうA.b.stuarti var.fulvescens Rebillardが唯一記載されているにすぎない.著者らは1984年以来ペルー国内で500頭以上のベアータアグリアスを収集してきたが,雌1頭,雄7頭の前翅前縁に黄色または赤色紋を認めた.写真1,2は1987年9月22日にイキトスで採集された雌で,前翅前縁と第12翅脈との間の第12室,および第11,12翅脈間の第11室に黄褐色紋が認められる.拡大写真では多数の黄褐色鱗粉が第11,12室に認められ,中室にも広く散見される.また,第10翅脈上にも少数認められる.写真17はその裏面であり,後翅基部の黄褐色斑は大きくA.b.stuarti f.micaela(Biedermann)と同定できる.写真3,4は1986年8月3日にイキトスで採集された雄で,前翅前縁第11室に黄褐色紋が認められる.拡大写真では多数の黄褐色鱗粉が第11室に認められ,第10,12室と中室,および第10翅脈上にも認められる.写真18はその裏面であり,後翅基部の黄褐色斑は大きくA.b.stuarti f.micaelaと同定できる.写真5,6は1987年1月31日にイキトスで採集された雄で,前翅前縁基部に黄褐色紋が認められる.拡大写真では多数の黄褐色鱗粉が第12室基部に認められ,少数は第11室,および第12翅脈上にも認められる.写真19はその裏面であり,後翅基部の黄褐色斑は大きくA.b.stuarti f.micaelaと同定できる.写真7,8は1993年8月にイキトスで採集された雄で,前翅前縁第11,12翅脈が黄褐色になっている.拡大写真では多数の黄褐色鱗粉が第11,12翅脈上に認められ,第9,10翅脈上にも散見される.また,前縁と第12室基部にも多数認められる.写真20はその裏面であり,後翅基部の黄褐色斑は大きくA.b.stuarti f.micaelaと同定できる.写真9,10は1993年9月にヤバリ河で採集された雄で,前翅前縁基部に黄褐色紋が認められる.拡大写真では多数の黄褐色鱗粉が第11,12室基部,および第11,12翅脈上に認められる.写真21はその裏面であり,後翅基部の黄褐色斑は大きくA.b.stuarti f.micaelaと同定できる.写真11,12は1991年11月13日にペバスで採集された雄で,前翅前縁基部に赤色紋が認められる.拡大写真では多数の赤色鱗粉が前縁と第12翅脈上基部に認められ,少数は第11,12室にも認められる.第11,12室には青色鱗粉も認められる.写真22はその裏面であり,後翅基部の鮮紅色は大きく,中室内に退色した黒色斑を認め,A.b.beatifica var.incarnata Michaelと同定できる.写真13,14は1996年10月1日にアタラヤで採集された雄で,前翅前縁第11室に赤色紋が認められる.拡大写真では多数の赤色鱗粉が第11室に認められ,第10,12室と中室にも認められる.第11室基部には青色鱗粉が認められる.写真23はその裏面であり,後翅基部の赤色斑は中室基部まで拡がっておりA.b.beata f.staudingeri Michaelと同定できる.写真15,16は1996年9月5日にサティポで採集された雄で,前翅前縁第11室に赤色紋が認められる.拡大写真では多数の赤色鱗粉が第11室に認められ,第10,12室と中室にも認められる.第11室基部には青色鱗粉が認められる.写真24はその裏面であり,後翅基部の赤色斑は小さくA.b.beata Staudingerと同定できる.以上,ペルー産ベアータの5変異体のうちA.b.beata f.pherenice Fruhstorferを除く4変異体の前翅前縁に黄色または赤色紋を認めた.ブラジル産のA.b.hewitsonius Batesには前翅前縁に大きな黄色斑が出現することは周知の事実であるが,ペルー産では知られていなかった.A.phalcidon fournierae var.viola Fasslを連想して,著者らはこれら8頭をpseudoviolaと呼んでいる.
  • 吉本 浩
    原稿種別: 本文
    1997 年 48 巻 4 号 p. 214-216
    発行日: 1997/11/30
    公開日: 2017/08/10
    ジャーナル フリー
    Tipasa renalis (Moore) is recorded from Japan for the first time. Adult and the male genitalia are illustrated and described, and syntypes of renalis and its synonym, rubrirena Hampson, are figured.
  • 瀬田 和明
    原稿種別: 本文
    1997 年 48 巻 4 号 p. 217-222
    発行日: 1997/11/30
    公開日: 2017/08/10
    ジャーナル フリー
    Hybridization of Byasa alcinous miyakoensis Omoto and two other subspecies (B.a. alcinous and B.a. bradanus) was studied. All hydrids proved to be fertile, but F_1 hybrid females between B.a. alcinous female and B.a. miyakoensis male suffered an impediment in their developmental process.
  • 平井 規央, 石井 実
    原稿種別: 本文
    1997 年 48 巻 4 号 p. 223-233
    発行日: 1997/11/30
    公開日: 2017/08/10
    ジャーナル フリー
    アサギマダラPrantica sitaを15,20,25℃の12時間および16時間日長の6条件で飼育したところ,卵,幼虫,蛹のどの発育段階でも休眠は認められず,25,20,15℃における平均卵期間はそれぞれ,約5,7,12日,同様に平均幼虫期間は約18,23,40日,平均蛹期間は約10,15,27日であった.また,飼育実験により得られた雌成虫は,25℃でも羽化後半数の個体が成熟卵を持つようになるまで,2週間前後を要した.さらに野外での本種の季節消長を知るために,海岸線近くの生息地として江須崎(和歌山県すさみ町,標高約20m),低山地の生息地として山田(和歌山県橋本市,標高約360m),および高山の生息地として和佐又山(奈良県上北山村,調査地点の標高約1,100m)の紀伊半島に位置する3地点を選び,卵,幼虫,蛹,成虫の密度調査をおこなった.その結果,江須崎は主として本種の越冬地として利用されており,冬季には多数の幼虫が見られたが,夏期には本種の卵-蛹が見られない時期があった.山田では,越冬世代の他,夏の間も少ないながら卵,幼虫,蛹が確認された.両調査地ともに,10-11月に卵が増加したが,密度は江須崎の方が高かった.和佐又山では,6月から9月にかけて成虫が見られ,7-8月にピークが認められた.また,持ち込んだキジョランには卵と3齢幼虫が,自生の落葉性のイケマ(ガガイモ科)でも卵および3齢以下の若齢幼虫がそれぞれ認められた.飼育結果と気温から,各調査地での本種の世代数を推定したところ,春から秋にかけての世代数は実際の野外調査の結果と完全には合致しなかった.これは本種の高い移動性によるものと考えられる.
  • 船越 進太郎
    原稿種別: 本文
    1997 年 48 巻 4 号 p. 234-238
    発行日: 1997/11/30
    公開日: 2017/08/10
    ジャーナル フリー
    カラスヨトウAmphipyra livida corvina Motschulskyの幼虫-蛹期の発育零点と有効積算温量は,三重県産の材料をもとに津金(1975)によりそれぞれ8.7℃および約840日度と求められている.岐阜県産の材料をもとに,幼虫にタンポポやハコベを与えて6つの温度条件下(10℃,13℃,15℃,20℃,25℃,30℃)で追試したところ,発育零点は8.9℃,有効積算温量は784日度となり,津金(1975)とほとんど同じ結果が得られた.なお,温度(t)と発育速度(V)の関係を一次式で示すと,V=-114.09+12.76tであった.また各温度条件でみると,10℃では2個体のみが前蛹まで進んだが蛹化には至らず,また30℃では蛹にまでなった個体はわずかに1匹であった.岐阜市での8.9℃以上の年間積算温度量は約2,650日度であり,数字だけからみれば本州中部地方において十分に年2化性をとることのできる昆虫といえる.しかし,1齢幼虫が花や新芽にしか食いつかず,また30℃のような高温では幼虫がうまく生育しないことを考えると,カラスヨトウは成虫が夏眠することで高温期をやり過ごすよう温帯に適応したものかも知れない.また,食草確保の手間を省くため,カイコの人工餌(KIT-32)を使った飼育試験も行った.その結果,幼虫は全体的に体色が白っぽくなり,生育に要した幼虫および蛹期間はわずかに長かったものの,前蛹期間は短く,蛹重量も雌雄とも勝っていた.カラスヨトウに対して人工餌は良好な飼育結果が期待できるものと考えられる.
  • 斎藤 和夫, 高橋 真弓
    原稿種別: 本文
    1997 年 48 巻 4 号 p. 239-242
    発行日: 1997/11/30
    公開日: 2017/08/10
    ジャーナル フリー
    The haploid chromosome number in males of Neope goschkevitschii from Iwata-shi and Nobeoka-shi is 46, with a single element which can be distinguished from the rest by its larger size. The chromosome constitutions in two examined males of Neope niphonica niphonica from Chichigatani of Miyagawa-mura (Mie-ken) differ from each other. The male, No.1, has an n, 28-karyotype. In the male, No.2, the haploid chromosomes total 29 in primary spermatocytes and both n, 29- and n, 28-secondary spermatocytes are observed in the second division. The n, 29-spermatocyte retains one B chromosome which is the smallest in the complement.
  • 顔 聖紘, 楊 平世, 吉本 浩
    原稿種別: 本文
    1997 年 48 巻 4 号 p. 243-263
    発行日: 1997/11/30
    公開日: 2017/08/10
    ジャーナル フリー
    成虫および幼虫の形質に基づき,東南アジアのマダラガの2新属を記載し,これらの系統関係を議論した.新属はシロシタホタルに対するNeochalcosia(模式種はEterusia remota Walker,1854)とヒメホタルガに対するPseudopirorus(模式種はAglaope fasciata Felder&Felder,1862).前者はこれまでChalcosia属の一員として,後者はPidorus属の一員として扱われていた.
  • 伊藤 靖子, 井上 智典, 孔 維華, 山中 明, 遠藤 克彦
    原稿種別: 本文
    1997 年 48 巻 4 号 p. 264-270
    発行日: 1997/11/30
    公開日: 2017/08/10
    ジャーナル フリー
    日本国内では,5,000種を越える蛾の採集記録があり,山口県内でも,その1/3に当たる1,700種の蛾の採集報告がある.これら蛾類の個体数と種類数が,山口県中部の山間地域で季節的にどのように変化するか,また個体数と種数の占める割合が大きいヤガ科Noctuidae,シャクガ科Geometridaeおよびメイガ科(広義)Pyralidae(s.l.)の個体数と種数の全体に占める割合が,季節的にどのように変化するのかを検討した.その結果,ライトトラップで採集される蛾類の個体数は6月と9月にピークを持つ双峰的な変化を示し,その構成種類数もそれと似た変化を示すと推定された.また,ヤガ科Noctuidaeの個体数(または種類数)が占める割合は,季節的に殆ど変化しないが,シャクガ科Geometridaeとメイガ科Pyralidaeの個体数(または種類数)の割合は季節によって大きく異なり,シャクガ科Geometridaeは夏と秋にその占める割合が高く,メイガ科Pyralidaeは夏に占める割合が高くなるという対照的なものであった.これら野外調査で観察された蛾類の個体数と種類数および割合の変化は,野外における蛾類の個体群の変化を反映したものであると推察された.
  • 広渡 俊哉
    原稿種別: 本文
    1997 年 48 巻 4 号 p. 271-290
    発行日: 1997/11/30
    公開日: 2017/08/10
    ジャーナル フリー
    これまで,Adela属の種として日本からミドリヒゲナガA.reaumurella(Linnaeus)とケブカヒゲナガの2種のみが知られていた.今回,日本産Adela属の分類学的再検討を行った結果,A.nobilis Christophとされていたケブカヒゲナガは,独立種であることが明らかになり,A.praepilosa sp.nov.として記載した.さらに,2新種A.luteocilis sp.nov.(アトキケブカヒゲナガ:新称),A.luminaris sp.nov.(ムモンケブカヒゲナガ:新称)を見いだし,計4種が日本に分布することがわかった.なお,A.nobilis Christoph,1882は,基産地であるウラジオストク周辺のロシア沿海州などに分布し,おそらく日本には分布しない.Adela属は,♂の触角第8-9鞭節に特異な突起(hook-peg)を持つことによって特徴づけられる.日本産Adela属は,ミドリヒゲナガとそれ以外の3種にグルーピングできる.ミドリヒゲナガでは,transtilla側背面の突起がヘラ状で,ケブカヒゲナガを含む他の3種では,刺状.また,ケブカヒゲナガを含む3種では雌交尾器のvestibulumに顕著な板状の骨片(vestibular lamella)が存在するが,ミドリヒゲナガではこれを欠く.日本産の種はいずれも平地では4月下旬-5月上旬,山地などでは5月-6月に見られる.成虫はカエデ類の花などに集まる.Adela属では,♀に比べて♂の触角が長く複眼が大きいという性差が見られる,今回扱った種では,♂の複眼の大きさや触角の長さに種間差が認められた.複眼の大きさ,触角の長さは,それぞれhd/md(複眼の水平直径/複眼間の最短距離),al/fl(触角長/前翅長)で表した.Nielsen(1980)は,Adela属とNemophora属の種で,♂の複眼が大きいものはスウォーム(群飛)するものが多いとしている.実際,ケブカヒゲナガ.A.praepilosa sp.nov.の♂の複眼は大きく,スウォームすることが知られている.一方,アトキケブカヒゲナガA.luteocilis sp.nov.とムモンケブカヒゲナガA.luminaris sp.nov.では,♂の複眼は小さく,触角が長いが,これらの種がスウォームするかどうかは観察されていない.日本産のAdela属とNemophora属でスウォームしないとされているのは,現在のところクロハネシロヒゲナガNemophora albiantennella Issiki 1種のみである(Hirowatari&Yamanaka,1996).クロハネシロヒゲナガでは♂の触角が長く(al/fl:3.36±0.02),複眼の大きさに性差は認められない(hd/md:♂0.44±0.03,♀0.42±0.2).ヒゲナガガ科では,他個体の認識はすべて視覚によってなされていると考えられている.しかし,複眼が小さく,スウォームしないクロハネシロヒゲナガの♂は,単独で飛翔して♀を探索するが,この時視覚以外の感覚(嗅覚など)を用いていることも充分考えられる.今回,雄交尾器,特にvalva形態から,複眼が小さく触角の長いムモンケブカヒゲナガと,複眼が大きく触角の短いケブカヒゲナガがもっとも近縁であると推定された.従って,♂の複眼の大きさや触角の長さは,各種でおそらく配偶行動と密接に関係しながら独立に進化したと考えられる.さらに,これらの種では複眼が大きいと触角が短く,複眼が小さいと触角が長かった.ただし,ムモンケブカヒゲナガとアトキケブカヒガナガでは,複眼が小さいといっても♀よりは相対的に大きく,視覚で他個体を認識している可能性が高いが,その際,長い触角で嗅覚等,視覚以外の感覚を相補的に用いているのかもしれない.ヒゲナガガ科の配偶行動とそれに関わる形態の進化については,さらに多くの種で詳しく調べる必要がある.以下に日本産各種の形態的特徴と分布などを示す.A.reaumurella(Linnaeus,1758)ミドリヒゲナガ分布:北海道,本州,九州;ヨーロッパ.前後翅とも一様に暗緑色の金属光沢を有しており,日本では他種と混同されることはない.雄交尾器のtegumen後端の形態がヨーロッパ産のものに比べて異なっており(森内,1982),♂の複眼の大きさもヨーロッパ産のものよりやや小さいと思われるが,複眼の大きさは地理的変異があるという報告例もあるので(Kozlov&Robinson,1996),ここでは従来の扱いのままで保留した.A.luteocilis sp.nov.(新種)アトキケブカヒゲナガ(新称)分布:本州(長野県,岐阜県,滋賀県,和歌山県,奈良県[伯母子岳,大台ヶ原]).♂の複眼は小さく(hd/md:0.86±0.03),触角は長い(al/fl:3.33±0.14).♂の頭頂毛,触角間毛は黄色.♀の触角の基部約3分の1が黒色鱗で覆われる.雌雄とも後翅の中室端から前縁部にかけて淡色の斑紋がある.後翅の縁毛が黄色であることで,他種と区別できる.A.luminaris sp.nov.(新種)ムモンケブカヒゲナガ(新称)分布:本州(大山),九州(福岡県[英彦山,犬鳴山]).♂の複眼は小さく(hd/md:0.83±0.05),触角は長い(al/fl:3.63±0.21).♂の頭頂毛,触角間毛は黄色.♀の触角の基半部が黒色鱗で覆われる.雌雄ともに,後翅の中室端から前縁部にかけて淡色のパッチがなく,一様に茶褐色-黒紫色であることで,他種と区別できる.A.praepilosa sp.nov.(新種)ケブカヒゲナガ分布:本州,四国,九州.これまで,A.nobilisと混同されてきた.♂の下唇鬚は密に長毛で覆われる.♂の頭頂毛,触角間毛は黒色.♂の複眼は大きく(hd/md:1.87±0.17),触角は比較的短い(al/fl:2.27±0.16).♀の触角の基半部が黒色鱗で覆われる.雌雄とも後翅の中室端から前縁部にかけて淡色の斑紋がある.後翅の縁毛は茶褐色.雄交尾器,特にvalvaの形状から,ムモンケブカヒゲナガに近縁であると思われる.これまで混同されていたA.nobilisとは,valvaの形状の違いで区別できる.♂成虫はカエデ,コバノミツバツツジ,ユキヤナギの花の上でスウォームする.
  • 原稿種別: 付録等
    1997 年 48 巻 4 号 p. App4-
    発行日: 1997/11/30
    公開日: 2017/08/10
    ジャーナル フリー
  • 原稿種別: 目次
    1997 年 48 巻 4 号 p. Toc1-_ii_
    発行日: 1997/11/30
    公開日: 2017/08/10
    ジャーナル フリー
  • 原稿種別: 付録等
    1997 年 48 巻 4 号 p. App5-
    発行日: 1997/11/30
    公開日: 2017/08/10
    ジャーナル フリー
  • 原稿種別: 付録等
    1997 年 48 巻 4 号 p. App6-
    発行日: 1997/11/30
    公開日: 2017/08/10
    ジャーナル フリー
  • 原稿種別: 表紙
    1997 年 48 巻 4 号 p. Cover2-
    発行日: 1997/11/30
    公開日: 2017/08/10
    ジャーナル フリー
  • 原稿種別: 表紙
    1997 年 48 巻 4 号 p. Cover3-
    発行日: 1997/11/30
    公開日: 2017/08/10
    ジャーナル フリー
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