蝶と蛾
Online ISSN : 1880-8077
Print ISSN : 0024-0974
52 巻, 3 号
選択された号の論文の23件中1~23を表示しています
  • 原稿種別: 表紙
    2001 年 52 巻 3 号 p. Cover1-
    発行日: 2001/06/30
    公開日: 2017/08/10
    ジャーナル フリー
  • 原稿種別: 付録等
    2001 年 52 巻 3 号 p. App1-
    発行日: 2001/06/30
    公開日: 2017/08/10
    ジャーナル フリー
  • 原稿種別: 付録等
    2001 年 52 巻 3 号 p. App2-
    発行日: 2001/06/30
    公開日: 2017/08/10
    ジャーナル フリー
  • 原稿種別: 付録等
    2001 年 52 巻 3 号 p. App3-
    発行日: 2001/06/30
    公開日: 2017/08/10
    ジャーナル フリー
  • 原稿種別: 付録等
    2001 年 52 巻 3 号 p. App4-
    発行日: 2001/06/30
    公開日: 2017/08/10
    ジャーナル フリー
  • 原稿種別: 付録等
    2001 年 52 巻 3 号 p. App5-
    発行日: 2001/06/30
    公開日: 2017/08/10
    ジャーナル フリー
  • 宮田 彬
    原稿種別: 本文
    2001 年 52 巻 3 号 p. 115-121
    発行日: 2001/06/30
    公開日: 2017/08/10
    ジャーナル フリー
    筆者の知る限りでは,ヒメジャノメとヒメウラナミジャノメの「縄張り行動」に関する具体的な報告はない.「縄張り」と関係深い「一定の場所に滞在し見張る」,「同種個体あるいは異種のチョウを追跡する」などの行動は,ジャノメチョウ科に限らず多くの科でも観察されているが,当たり前の現象なのか意外に記録が少ない.そこで予報としてヒメジャノメとヒメウラナミジャノメについて観察した事実を記録し,チョウ類同好者の注意を喚起したい.観察場所は,大分市富士見ヶ丘の自宅の庭とその付近である.ヒメジャノメM-1個体:2000年7月27日-8月1日まで,B地点の数本のベニカナメモチが植わったやや暗い一角に本種の雄がおり,早朝,いつも高さ約1mあたりから飛び出した.夜はその辺りで眠ったらしい.8月1日,捕えマークした(M-1).その雄は8月5日まで5日間毎日同じ場所に出現したが,その日から8月8日まで留守をし,帰宅後は見られなかった.マーク前の7月27日から31日まで見られた個体も同一個体と思われ,それはベニカナメモチの垣根を中心に直径約2-3mほどの狭い「縄張り」を10日間も占拠していた.その間,同種または異種のチョウとの関係は観察出来なかった.ヒメジャノメM-2とM-3:8月8日以来,新鮮な雄がBの外側の隣家のヤマモモの木陰付近を占拠していた.8月12日,早朝,Bに来たので,捕らえマークした(M-2).翌日の朝,M-2はAのアラカシの高さ160-170cmの葉上にいた.午前8時30分,そこから2mほど南のAのブルーベリーの葉上に別の新鮮な雄(M-3)がいた.その時,M-2の所在は分からなかった.午後6時50分,M-2が突然Eの池の縁に現れ,やがて東側のアジサイの茂みに姿を消した.その後,両個体とも二度と見られなかった.マーク前の8月8日から11日まで4日間見られた雄と,M-2は同一個体らしい.8月13日に縄張り外のAやEに姿を見せたのは,別の雄M-3がAに現れたことと関係があるかも知れない.ヒメウラナミジャノメの場合:8月27日からDのアベリアの垣根で毎日見かけた雌と同一と思われる個体が,30-31日,アベリアの高さ60cmの下草で翅を閉じぶら下がり眠っていた.その雌はマーク後もDの狭い場所に留まり,9月2日まで見られ,縄張り内のキク科植物の花をよく吸蜜し,また時々ガクアジサイの葉上で翅を半開きにして静止していた.この個体も同種の他個体または異種と接触する場面は観察出来なかった.
  • 高桑 正敏, 中村 進一
    原稿種別: 本文
    2001 年 52 巻 3 号 p. 122-126
    発行日: 2001/06/30
    公開日: 2017/08/10
    ジャーナル フリー
    ギフチョウを半自然状態で飼育したところ,観察台上でまたは蛹化準備中の幼虫の計10個体を観察できた.これらのうち少なくとも5例は,多少とも粗い縞状もしくはメッシュ状,クモの巣状に糸が張られた中で蛹となっていた.この事実から,本種には蛹化時に巣を造る習性のあることが確かめられた.これは外界と遮断するための蛹室の形成を示すものと思われるが,糸自体はきわめて脆弱である.こうした造巣習性は種としてばかりでなく,本種が所属する属あるいは族のレベルで初めての報告と思われ,系統的な視点からもきわめて興味深い.
  • 森中 定治, 船橋 勝幸, Ida Ketut GINARSA, 宮田 正, 田中 健治
    原稿種別: 本文
    2001 年 52 巻 3 号 p. 127-135
    発行日: 2001/06/30
    公開日: 2017/08/10
    ジャーナル フリー
    ニューギニア島高地において同所共存するカザリシロチョウの種類が複数の地区から報告され,幾つかの知見を踏まえて,ニューギニア島高地に生息するカザリシロチョウは少なくとも5種以上の同所共存が通常の生態であることが見いだされた.一方,東南アジアにおいては,高地でも低地でも単独か2-3種の共存が通常である(一部に例外的な地域はあるが限られる).さらに,ニューギニア島高地と東南アジアの島嶼(>100,000km^2)に生息するカザリシロチョウの総種数と固有種種数との比較(Table 1)から,ニューギニア島に生息するカザリシロチョウが特に著しく多種化したことが示された.それらの種分化機構については一般的に地理的な隔離によると考えられている.我々はその種分化機構について,Baliem Valleyを挟む2地域の同種あるいは姉妹種の形態学的比較(Figs 7-12)から地理的な隔離が遺伝子の交流を妨げ,種分化を引き起こしていることを複数種の具体的事例によって明らかにした.しかしながら,このような分断された地形(Fig.13)はニューギニア島高地のみならず東南アジアの山岳地帯にも見られるが,それらからは複数種のこのような同種間の著しい斑紋の差異は知られていない.それゆえ,地理的な隔離(生物地理学的分断)だけでこのような著しい多種化が引き起こされ,維持されているとは考え難い.ニューギニア島高地における幼生期の生態は殆ど知られていないが,幾つかの種において幼虫がヤドリギを食すことが確認されており,ニューギニア島高地においても一般にそのホストはヤドリギと推察される.ヤドリギがニューギニア島において特に著しく多種化したという報告はなく,ホストの特別な種分化に付随した特殊な現象とも考え難い.ニューギニア島に生息するカザリシロチョウにほぼ固有の現象である著しい種分化とそれらの同所共存が何故起こったのか,どのような機構でそれが維持されているのか,それはその地にたまたま偶然起こったことなのか,それともその地ではそうならねばならない必然的な理由があるのか,この多種化およびその共存機構へのさらに深い探求は,生物多様性の成因解明にもつながる興味深くかつ重要なテーマであると考えられた.
  • 吉野 和義
    原稿種別: 本文
    2001 年 52 巻 3 号 p. 136-138
    発行日: 2001/06/30
    公開日: 2017/08/10
    ジャーナル フリー
    Chilasa agestor kuangtungensis(Mell)(Figs 1,2) Papilio agestor kuangtungensis Mell,1935,Mitt.dt.ent.Ges.6:36.Chilasa agestor moritai Shinkai,1996,Wallace 2:43-44,figs 5,6.Syn.nov.基産地は広東北部の連平など3地点.本亜種は広西チワン自治区,広東省,福建省,浙江省の中国南部および東部に分布する.現在,アレキサンダーケーニッヒ博物館に保存されているヘーネコレクションのsyntype(ラベルにはparatype?とされていた)を図示する.広西チワン自治区から記載されたChilasa agesto moritai Shinkai,1996はkuangtungensisと全く区別できないのでシノニムとした.Pazala hoenei(Mell),stat.nov.(Figs 3,4)Papilio tamerlanus hoenei Mell,1935,Mitt.dt.ent.Ges.6:36.Pazala sichuanica Koiwaya,1993,Stud.chin.Butterflies 2:77,figs 138,139,144,145,256,263,271,275,284.Syn.nov.アレキサンダーケーニッヒ博物館に保存されるsyntypeの♂を調べたところ,Pazala sichuanica Koiwaya,1993と同じものであることが分かった.Mell(1935)はhoeneiをPapilio tamerlanusの亜種として記載したが,Koiwaya(1993)が扱ったように本タクソンは独立種で,四川省西部ではPazala tamerlanaと同所的に産する場所のあることが知られている.本種では,後翅中室の外側(中室上脈と中室端脈)が黒く縁取られるが,この特徴はよく似たPazala tamerlana,P.incerta,P.timur,P.alebionでは見られない標徴である.基産地は浙江省の西・東天目山と広東省北部.広東省,広西チワン自治区,福建省,浙江省,陜西省,四川省の中国南半分に幅広く分布する.私の観察では広西チワンでは多産していた.南に行くほど個体数が多くなるようだ.地理的変異はない.Papilio tamerlanus hoenei Mell,1935は33頭の標本に基づいて記載され,holotypeもparatypeもあるように書かれているが,どの個体がholotypeなのか本文中では指定されておらず,これらはsyntypesと看做すしかない.ただし,中国東南部にはPazala tamerlanaが分布しないことや,私自身の採集経験からみてこれらが同一種であることはまず違いなく(=複数の種を含むとは考え難く),lectotypeの指定は行わないことにした.
  • 加藤 義臣
    原稿種別: 本文
    2001 年 52 巻 3 号 p. 139-149
    発行日: 2001/06/30
    公開日: 2017/08/10
    ジャーナル フリー
    Flight season of Atrophaneura alcinous was compared between the lowland and mountain populations in the Kanto District, eastern Japan. Occurrence of the early stages in A. alcinous and its host-plant seasonality were also investigated in the field. In the lowland population of Fuchu (50m in altitude), which uses Aristolochia debilis, adults are seen from late April to early October with four peaks of flight, while in the mountain population of Gotenba (800m in altitude) using different host-plant species, Ar. kaempferi, adult flight occurred from mid May to early September with two peaks, showing a high peak followed by a low one. Timing of occurrence of eggs and larvae approximately corresponded to the season of adult flight. For host plants, Ar. debilis had new and tender leaves throughout the season, while Ar. kaempferi grew new and relatively tender leaves during May and June and then stopped growing young veins and leaves. The results suggest that flight season of this butterfly depends not only on air temperature, but also on the adaptation to host-plant species showing different quality and phenology.
  • 吉本 浩
    原稿種別: 本文
    2001 年 52 巻 3 号 p. 150-156
    発行日: 2001/06/30
    公開日: 2017/08/10
    ジャーナル フリー
    Diomea Walker,1858とCorsa Walker,1858の模式種が同属の可能性の高いことは以前にも触れたことがあるが(吉本,1994),本報では改めてこれらを互いにシノニムと認め,その属名には,同じ日付で公表されたDiomeaとCorsaの2つの内,Diomeaを残すこととした.ただし,現在Corsaに置かれる種は,模式種のlignicolora Walker以外はDiomeaとは無縁で,別の属に配置すべきと考えられる.特に,日本のオオトウアツバは,その斑紋や♂交尾器の形状からもDiomeaとは程遠く,むしろ斑紋や♂交尾器の類似性などから,Panilla Moore,1885に置くのが穏当である.なお,本報ではDiomeaの次の2新種も記載した.Dimea insulana sp.n.ミナミマエヘリモンクチバ(新称)D.jankowskii(Oberthur)マエヘリモンクチバやインド,ネパールに産するD.livida Hampsonに酷似するが,♂交尾器が異なる.模式産地は沖縄本島北部の国頭村.台湾にも産する.Diomea ferrosticta sp.n.後翅内縁が幅広く橙褐色を呈する種で,属内に近似のものはいない.模式産地はミャンマー北部のKachin県Putao.
  • 船越 進太郎
    原稿種別: 本文
    2001 年 52 巻 3 号 p. 157-162
    発行日: 2001/06/30
    公開日: 2017/08/10
    ジャーナル フリー
    1995年から1999年にかけて岐阜県谷汲村の神社拝殿で夏眠をするAmphipyra属6種,カラスヨトウA.livida corvina,ツマジロカラスヨトウA.schrenckii,オオウスヅマカラスヨトウA.erebina,シロスジカラスヨトウA.tripartita,オオシマカラスヨトウA.monolitha surniaとナンカイカラスヨトウA.horieiの個体数の変動を調べた.夏眠個体のカウントにおいてオオシマカラスヨトウとナンカイカラスヨトウの種同定は不可能であり,これらは同一種として数えた.この調査地点ではカラスヨトウが常に優占し,50m^2余りの小さな神社拝殿軒下に静止する個体数は多い時で248個体を数えた.その他の種はいずれも個体数が少なく,特にツマジロカラスヨトウは5年の調査期間に5個体しか出現しなかった.夏眠個体数は年によって,また季節によって大きく変動したが,最大個体数を示す年は,種ごとに異なっていた.東海地方におけるそれぞれの種の夏眠期間は,これまで調べられたようにほぼ決まっていた.また,岐阜市周辺の夏眠場所で1987年および1995年から1998年にかけてカラスヨトウを採集し,性を記録すると共に体重を測定した.カラスヨトウ雄成虫は,この属の他種には見られない触角のわずかな鋸歯構造で雌から区別できるが,夏眠後半の個体ではこの特徴が消失する(おそらくすり減るものと思われる).そのため全ての個体を二酸化炭素で短時間の麻酔にかけ,双眼実体顕微鏡により後翅の翅棘で性を確認した.体重は電子自動上皿天秤であらかじめ重量を計ったプラスチック容器に調査個体を移動して測定した.その結果,6月中旬から10月上旬まで,夏眠個体の雄と雌の比は,ほぼ1:1であったが,10月中旬より雄の個体数は減少し,雌の占める割合が増加した.また,体重は9月下旬までは多少雌の方が上回ったがほとんど差はなく,10月上旬になって明らかな差が現われた.その後,体重差は益々広がった.これらの現象は夏眠覚醒の季節とほぼ同時に始まっており,カラスヨトウ成虫に生理的な変化が起こっていることが明らかになった.カラスヨトウは夏眠期間中は,ほとんど光源や糖蜜に誘引されず,交尾行動も見られないことがこれまでの調査で確かめられている.覚醒の後,雄個体は交尾相手を求めて夏眠場所を離れ,活発に活動するためエネルギーを消費し,体重が激減するものと思われる.一方,雌は雄から精包を受け取り,卵が発育するために体重が増加するものと考えられる.しかしながら,夏眠期間中の体重維持や少し早めの体重増加などから,カラスヨトウ類は夏眠期間中も餌をとっていると推定された.
  • 八木 孝司, 尾本 惠一
    原稿種別: 本文
    2001 年 52 巻 3 号 p. 163-167
    発行日: 2001/06/30
    公開日: 2017/08/10
    ジャーナル フリー
    北海道中央部のウスバシロチョウ・ヒメウスバシロチョウ混棲地には両種の中間的な淡黄色(ウスバシロチョウ橙色,ヒメウスバシロチョウ灰色)の体毛を持つ個体が10-25%存在することが知られる.北原・川田の精力的な研究によれば,両種のハンドペアリングによる人工交雑はメスのウスバシロチョウとオスのヒメウスバシロチョウとの間でのみ容易に成立し,その雑種第一代は正常に発育して,淡黄色の体毛を持つ成虫となる.このことから混棲地における淡黄色体毛を持つ個体は両種の自然交雑体であると推測されてきた.我々はミトコンドリアの母系遺伝を利用して,混棲地で採集された淡黄色体毛を持つ個体の母親種がウスバシロチョウかヒメウスバシロチョウかどちらであるか知ることを試みた.その結果,調べた5個体全てのミトコンドリアDNAの塩基配列はウスバシロチョウのものと一致し,それらの母親はウスバシロチョウであることがわかった.この結果と北原・川田らの結果により,混棲地における淡黄色体毛を持つ個体はメスのウスバシロチョウとオスのヒメウスバシロチョウとの自然交雑体であると結論できる.
  • 井出 純哉
    原稿種別: 本文
    2001 年 52 巻 3 号 p. 168-170
    発行日: 2001/06/30
    公開日: 2017/08/10
    ジャーナル フリー
    ヒカゲチョウ(ジャノメチョウ亜科)の雄は配偶行動としてなわばり行動を行う.3年間の調査の結果,本種の成虫は6月から9月まで出現し6月と9月にはなわばり行動が見られるが,7-8月には見られないことがわかった.同属のクロヒカゲと同様,暑い時期には体温が上がり過ぎないように,なわばり行動をやめている可能性がある.
  • 津吹 卓, 瀬田 和明
    原稿種別: 本文
    2001 年 52 巻 3 号 p. 171-182
    発行日: 2001/06/30
    公開日: 2017/08/10
    ジャーナル フリー
    The daily flight and sleeping activities of Idea leuconoe in a greenhouse were studied in relation to the environmental factors from the viewpoint of thermoregulation. In addition, the sleeping position and posture were described.
  • 長田 志朗
    原稿種別: 本文
    2001 年 52 巻 3 号 p. 183-186
    発行日: 2001/06/30
    公開日: 2017/08/10
    ジャーナル フリー
    インドネシア・スラウェシ島南部及び中部で得られたミツオシジミ属の1新種,Horaga sohmaiを記載した.本種は同島で活躍されていた相馬州彦氏によって発見されたものである.本種は♂後翅表面に性標を備える点,及び♂ゲニタリアが良く似ている点でHoraga amethysta H.H.Druce,1903に近縁と考えられるが,♂表面地色の青色は光沢がありしかも前後翅のコントラストが強い特異な色調であるため,翅斑紋のみでH.amethystaをはじめ本属の他種との識別は極めて容易である.♀は本属の中に表面の翅斑紋がよく似た種が存在するので,識別には裏面斑紋,色相などを慎重に比較する必要があろう.ただし,スラウェシ島からは現在までに本種と混同の恐れのある種は発見されていない.なお,Cowan(1966)はH.amethystaのニアス産亜種isnaの♂ゲニタリアを図示したが,ボルネオ産原名亜種のそれと比較するとisnaはかなり特化しておりamethystaの亜種とするよりは独立種の可能性の方が高いと考えられる.ただし,現在までにisnaの標本を所見する機会が無かったのでこの問題については将来の課題としたい.
  • Axel KALLIES, 有田 豊
    原稿種別: 本文
    2001 年 52 巻 3 号 p. 187-235
    発行日: 2001/06/30
    公開日: 2017/08/10
    ジャーナル フリー
    ここ10年くらいの間にベトナムの鱗翅目相がかなり解明されてきた.スカシバガ科も多数の昆虫研究者の協力によってかなりの資料が得られるようになった.著者らも1996年よりベトナムでの調査を開始し,1997年よりスカシバガ科の合成性フェロモンを使用することにより多数の種類と多くの個体を収集することができた.近年のベトナムのスカシバガ科の報告は,Romieuxによって1950年に採集され,主にスイスのジュネーブ博物館に保存されている資料によってなされている(Gorbunov,1988;Gorbunov&Arita,1995a,1995b,1995c,1996,1997).また,著者らの資料による報告もなされつつある(Arita&Gorbunov,2000a,2000b,2000c;Gorbunov&Arita,2000a;Arita&Kallies,2000).本報告では,スカシバガ科,ヒメスカシバガ亜科に所属する21種を報告した.ヒメスカシバガ亜科を調べた結果,他の鱗翅目と同様に,北ベトナムのファウナは北東インドや南中国と関係が深いことが明らかになった.すなわち,Trichocerota.dizona Hampson,1919,T.radians Hampson,1919およびT.proxima Le Cerf,1916などは北東インドから知られており,今回北ベトナムからも記録された.さらに,Caudicornia tonkinensis sp.nov.,Entrichella pogonias Bryk,1947およびTrichocerota melli sp.nov.などは南中国からも記録された.Subfamily Tinthiinae Le Cerf,1917 Tinthiini Le Cerf,1917 Ceratocorema Hampson,1893,gen.rev.=Neotinthia Hampson,1919,syn nov.C.hyalina sp.nov.(Figs 2,31,45)非常に小さいスカシバガでこの属の他の種類はインド,ミヤンマー,ラオス,マレーシアなどから知られている.C.yoshiyasui sp.nov.(Figs 3,46)前種同様に小さい種で北ベトナムのクックホンで得られた.Parathrenopsis Le Cerf,1911=Oligophlebiella Strand,1916,syn.nov.P.flaviventris sp.nov.(Figs 4,47)この属の種類は,東アジアと東南アジアから5種類が知られているのみである.Caudicornia Bryk,1947 C.xanthopimpla Bryk,1947(Figs 5,32)この種類は北部ミャンマーから知られていたが,今回北ベトナムの最高峰のファンシーパン山の近くのサパ(標高1,950mのところ)で合成性フェロモンによって採集された.C.tonkinensis sp.nov.(Figs 6,7,33,48)図示したように際だった性的二型の種類である.幼虫はキイチゴの一種の前年茎の基部近くに潜っているのが発見され,飼育の結果本種の雌が羽化した.雄は午後に合成性フェロモンに飛来した.本種は南中国からも発見された.Entrichella Bryk,1947 E.pogonias Bryk,1947(Figs 8,9,10,34)本種は,中国のE.leiaeformis(Walker,1865)や同じく中国のE.meilinensis(Xu&Liu,1993)や韓国のE.shakojianus(Matsumura,1931)などに酷似している.再調査が必要である.E.tricolor sp.nov.(Figs 11,12,34,49)この種は腹部第4と5節の橙黄色と白の帯によってこの属の他の種類と容易に区別される.南中国からも記録された.Trichocerota Hampson,1893 T.proxima Le Cerf,1916,comb.rev.(Figs 13,36)本種は腹部基半分が黒褐色で残りの半分が灰色がかった黄色の2色で,他の種類とは際だって異なる.北部ミャンマーから知られていたが,北部ベトナムからも記録された.T.radians Hampson,1919(Figs 14,15)本種も前翅の長い透明部分から他の種と容易に区別される.北東インドから知られていたが,北部ベトナムからも記録された.T.spilogastra(Le Cerf,1916),comb.rev.本種はすでに,Gorbunov&Arita(1995c)によってベトナムより記録された.T.melli sp.nov.(Figs 16,17,37,50)本種の前翅の青い輝きはこの属の種としては非常に特徴的である.中国南東部と北ベトナムから記録された.Paradoxecia Hampson,1919=Paranthrenina Bryk,1947,syn.nov.P.myrmekomorpha(Bryk,1947),comb.nov.(Figs 18,19,38)本種は腹部基半分が黒褐色で,外半分が灰黄色である.北部ミャンマーから知られていたが,今回北ベトナムからも発見された.P.vietnamica Gorbunov&Arita,1997本種は,Gorbunov&Arita(1997)によって記載された1雌が知られているのみである.P.luteocincta sp.nov.(Fig.20)本種は腹部の幅広い2本の帯が特徴的である.P.karubei sp.nov.(Figs 21,51)本種は腹部の幅広い橙黄色の帯が特徴的である.P.dizona(Hampson,1919),comb.nov.(Figs 22,23,39,52)本種は北東インドから知られていたが,今回北ベトナムから発見された.P.tristis sp.nov.(Figs 24,25,40,53)本種は腹部に帯が全く現われないことからこの属の他の種類から区別される.Rectala Bryk,1947 R.magnifica sp.nov.(Figs 26,27,41,54)本種は雌雄ともに腹部に幅広い黄色の帯が存在することにより他種と間違うことはない.Pennisetiini Naumann,1971 Corematosetia gen.nov.翅脈はヒメスカシバガ亜科のPennisetia属に似るが,雄の触角がPennisetia属ではbipectinate(両櫛歯状)であるのに対して本属では単毛である.また雄のゲニタリアではバルバが大変異なる.C.naumanni sp.nov.(Figs 28,42,43)北ベトナムのタムダオで1雄が得られているのみである.Similipepsini Spatenka et al.,1993 Similipepsis Le Cerf,1911=Vespaegeria Strand,1913 S.helicellus sp.nov.(Figs 29,30,44)本種は開張15mmと大変小さく,また腹部が強くくびれており,チビドロバチに非常によく擬態している.Milisipepsis Gorbunov&Arita,1995 M.bicingulata(Gorbunov&Arita,1995)本種は,Gorubunov&Arita(1995c)によって記載されたホロタイプのみが知られている.
  • 原稿種別: 付録等
    2001 年 52 巻 3 号 p. App6-
    発行日: 2001/06/30
    公開日: 2017/08/10
    ジャーナル フリー
  • 原稿種別: 付録等
    2001 年 52 巻 3 号 p. App7-
    発行日: 2001/06/30
    公開日: 2017/08/10
    ジャーナル フリー
  • 原稿種別: 付録等
    2001 年 52 巻 3 号 p. App8-
    発行日: 2001/06/30
    公開日: 2017/08/10
    ジャーナル フリー
  • 原稿種別: 表紙
    2001 年 52 巻 3 号 p. Cover2-
    発行日: 2001/06/30
    公開日: 2017/08/10
    ジャーナル フリー
  • 原稿種別: 表紙
    2001 年 52 巻 3 号 p. Cover3-
    発行日: 2001/06/30
    公開日: 2017/08/10
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