ロジスティクス活動が克服しなければならないトレイドオフ関連にある諸課題への方策が企業連携の推進である。この推進に求められる諸要素を探るために、垂直統合・サプライチェーン化・水平統合・ネットワーク統合の4類型に対応した10事例の分析を行った。
分析の視点は、連携の基本目標、主体関連、連携の深化・拡大に求められるロジスティクス活動の諸要素を知見することにある。この結果、経営資源、この資源を束ねるシステム力、そしてシステムを改善・高度化するマネジメント力を主要素として摘出した。これら3要素を総合したロジスティクスに関わる企業力をロジスティクス力と呼称することとする。
このロジスティクス力の構造はわが国の経営風土に符合し、企業連携に止まらず各企業におけるロジスティクス活動の高度化にも通じるものである。ロジスティクス力の一つである物流資源には物的資源と質的資源があり、質的資源には情報的資源と企業文化等からなる非情報的資源がある。顕在・潜在しているこれらの資源は自社内に止まらず広く社外にも求められている。
トレイドオフ関連にある諸課題への方策を鮮明にするためにも、目標の設定力が看過できない。これらに基ずくシステム構築力には、統一・標準・モジュール化を進める上での個人力・組織力等が必要である.また、このシステムをさらに改善・高度化する上で不可欠なのは、評価力等から成るマネジメント力である。激変を重ねる環境に迅速に対応するロジスティクス活動の高度化に必要な上記3要素を向上する上で重要なことは、広く諸情報を共有し、現場力の高揚を支援する全社的な体制の確立である。
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