哺乳類科学
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56 巻 , 1 号
選択された号の論文の12件中1~12を表示しています
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巻頭言
原著論文
  • 有本 勲, 小池 伸介, 岡村 寛, 山﨑 晃司, 梶 光一
    56 巻 (2016) 1 号 p. 5-16
    公開日: 2016/07/01
    ジャーナル フリー
    2000年代に普及したGPS(Global Positioning System)内蔵型首輪によって,以前より高精度かつ高頻度な陸上哺乳類の位置情報の測位データが得られるようになった.GPSの測位データを対象動物の行動解析に供するためには,GPSの観測誤差の補正と移動や滞在などの行動区分が重要な課題であり,それらを同時に処理できるモデルとして,スイッチング状態空間モデル(Switching state-space model,以下「SSSM」)が提案されている.GPSを用いた位置情報取得では,研究目的や電池寿命との兼ね合いによって様々な測位間隔が用いられるため,同じ解析を行っても測位間隔によって全く異なった結論が導かれる可能性がある.そこで,本研究では,ツキノワグマUrsus thibetanusを例として,GPSによって5分間隔および30分間隔で測位したデータから様々な測位間隔のデータを発生させ,SSSMの推定結果に測位間隔が与える影響を検証した.その結果,SSSMとGPS首輪に内蔵された活動量センサーを組み合わせることにより,5分~120分間隔では,ツキノワグマの行動が移動,滞在中の探餌および休息の3つに区分された.しかし,240分~360分間隔では活動量センサーによる探餌と休息の区分が難しいことから,移動と滞在の2区分を使用するのが妥当と考えられた.また,集中利用地点を認識する時空間スケールは測位間隔が長くなるほど大きくなった.移動距離はいずれの測位間隔でも相対的な比較が可能であったが,位置情報が重要となる生息地選択の解析は30分以下の短い測位間隔を用いた方が良いことが明らかになった.SSSMは測位間隔を変えることによって様々な目的に供することができる.これまで,陸上哺乳類では詳細な時空間スケールでの研究に制限があったが,GPSで高頻度の測位データが得られること,SSSMで定量的な行動解析が可能となったことから,5分~30分間隔程度の短い間隔の測位データにSSSMを適用することでより多くの新たな知見が得られると期待される.
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  • 足立 高行, 植原 彰, 桑原 佳子, 高槻 成紀
    56 巻 (2016) 1 号 p. 17-25
    公開日: 2016/07/01
    ジャーナル フリー
    2006年から2012年までの7年間,山梨県北部の乙女高原のホンドテンMartes melampus melampusの食性を糞分析法により調べた(n=756).秋と冬のベリー(多肉果実,出現頻度80%以上),夏の昆虫類(40~80%),冬と春の哺乳類(60~80%)が特徴的だった.哺乳類ではネズミ類が高頻度(30~50%)で,ニホンジカCervus nipponは10%未満だった.昆虫類ではセミの幼虫(46.7%)とカマドウマ類(10~40%)が高頻度であった.ベリーの種子が非常に高頻度に出現したが,そのうちサルナシActinidia arguta(33.6%)とヤマブドウVitis coignetiae(19.5%)の種子は秋から冬にとくに頻度が高かった.出現した種子10種3属のうちの約半数(5種1属)は林縁種であり,その頻度は種子全体の79.9%に達し,調査地の群落面積を考えると強く林縁種に偏っていた.ホンドテンは森林性とされるが,果実利用という点では林内ではなく林縁に偏った利用をすると考えられる.シカの出現に年変動は認められず,2006年時点ですでに利用が始まっていたと判断された.
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短報
報告
  • 出羽 寛, 斎藤 久, 小林 功
    56 巻 (2016) 1 号 p. 43-46
    公開日: 2016/07/01
    ジャーナル フリー
    北海道旭川市で1個体のニホンジネズミCrocidura dsinezumiが捕獲された.これは旭川市での初記録で,日本における最北端の捕獲記録である.2014年10月17日に捕獲されたこの雌成体は,体重6.3 g,頭胴長74.0 mm,尾長53.0 mm,後足長(爪なし)14.0 mm,前足長8.0 mmであった.捕獲された環境は水田を主とする農耕地帯を流れる忠別川の河畔林で,ヤナギ類Salix spp.を主体とする林床にはススキMiscanthus sinensisが密生,土壌は拳大の礫が多く,腐植層は薄かった.
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  • 池田 敬, 児玉 大夢, 松浦 友紀子, 高橋 裕史, 東谷 宗光, 丸 智明, 吉田 剛司, 伊吾田 宏正
    56 巻 (2016) 1 号 p. 47-52
    公開日: 2016/07/01
    ジャーナル フリー
    ニホンジカ(Cervus nippon)を効率的に捕獲する際に,給餌に醤油を用いた場合の選択効果を実証することを目的として,採食試験を実施した.調査は北海道洞爺湖中島において,4地域9地点の給餌場所で2012年11月7日~17日に行った.醤油区と牧草区,醤油を散布した牧草区(醤油牧草区)の3種類の給餌区を設定し,期間中に3回~5回給餌し,自動撮影カメラを利用して各区に対するシカの選択頻度(1時間当たりの撮影頭数)を算出した.各給餌区の選択頻度は(1)調査期間を通しての各給餌回後および全体についてと,(2)各給餌後24時間以内の時系列データに再配列したデータセットでの2時間毎の頻度の二つの区分で別々に評価した.醤油区の場合,二つの区分の両方で選択頻度が低かった.給餌後の変化を見ると(1)の区分では,牧草区と醤油牧草区の選択頻度は1回目の給餌で少なく,回を重ねるごとに増加した.醤油牧草区の選択頻度は,5回目を除いて他の2区と比べて有意に高かった.一方,(2)の区分では,醤油区の選択頻度は他の2区よりも明らかに低く,醤油牧草区の選択頻度は全体的に牧草区よりも高かった.結果的に,醤油単体を給餌した場合はニホンジカに選択されにくいものの,醤油を散布した誘引餌は通常の餌よりもニホンジカに選択されやすいことが示された.
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  • 池田 敬, 内田 健太, 渋谷 未央, 大熊 勳, 石橋 悠樹, 嶌本 樹, 片平 浩孝
    56 巻 (2016) 1 号 p. 53-60
    公開日: 2016/07/01
    ジャーナル フリー
    2015年9月に,北海道において学生や若手研究者が中心となり,哺乳類研究に関する研究交流会を行った.参加者は,道内外合わせて31名で,学部生からポストドクターまで幅広い学年構成となった.参加者の年齢層,所属大学,研究対象種の多様性が本交流会の特色であり参加者間の活発な交流を後押ししていた.研究交流会の参加者に配布したアンケートでは,参加者は交流会自体に満足しており,「一年に一回」あるいは「半年に一回」のように定期的な開催を望んでいた.また,参加者は「研究交流会」だけではなく,「調査法に関する企画」や「進学・就職案内に関する企画」など様々な内容を望んでおり,学生のニーズに合わせた内容を企画する必要がある.一方で,参加者の約80%は交流会の開催を「知人から聞いた」と回答しており,内輪での開催と解釈されることは否めない.このため,今後の開催は広域のメーリングリストなどによって情報を普及し,参加者を広く募り,事前にアンケートを取り参加者の意見を反映させた内容を企画することも重要である.今回の交流会の成果と課題を反映することで,若手研究者が持つ研究意欲が活性化され,哺乳類研究がより発展していくのではないだろうか.
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  • 松浦 友紀子, 伊吾田 宏正, 宇野 裕之, 赤坂 猛, 鈴木 正嗣, 東谷 宗光, ヒーリー ノーマン
    56 巻 (2016) 1 号 p. 61-69
    公開日: 2016/07/01
    ジャーナル フリー
    野生動物管理のための個体数調整捕獲が各地で行われているが,十分な成果を上げている例は少ない.その要因の一つとして,野生動物管理者や捕獲の担い手の育成不足があげられる.そこで,野生動物管理の担い手像を考えるシンポジウムを2015年2月14日に札幌で開催したので,その内容を報告する.シンポジウムでは,イングランド森林委員会で国有林のシカ類管理を統括しているノーマン・ヒーリー(Norman Healy)氏が,英国の野生動物管理者の教育システム,シカ猟認証制度(Deer Stalking Certificate)の概要及びシカ類を資源利用して得た収入を森林管理に還元する仕組み等について基調講演を行った.北海道の取組みについては,人材育成の必要性は認識されていたものの,狩猟者の育成にとどまり十分には為されてこなかった実情について報告した.また,現状ではニホンジカ(Cervus nippon)の個体群管理の目標達成が困難であること,その要因として実行体制と人的資源の欠如があることを指摘した.さらに,今後のニホンジカ管理においては,趣味の狩猟者である「ハンター」と,個体数調整捕獲に職業として従事する「カラー」を明確に区分し,カラーを捕獲プログラムの中で活用する体制を作る必要性を指摘した.これらを踏まえて,具体的な人材育成の取り組みとして,2015年度から開始が予定される新しいシカ捕獲認証について話題提供をした.この認証制度は,イングランドのDeer Stalking Certificateをモデルとしながら日本向けに改善したものである.以上から,捕獲をコーディネートできる人材やカラーなど,日本の野生動物管理を担う人材育成の仕組みを提案した.
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  • 福田 知子, 押田 龍夫, Nevedomskaya Irina A., Bobyr Igor G., 八木 欣平, 河合 久仁子, 白岩 ...
    56 巻 (2016) 1 号 p. 71-76
    公開日: 2016/07/01
    ジャーナル フリー
    ロシアの国家自然保護区機関の管轄する「国後島自然保護区クリリスキー」によって,保全・研究・環境教育を目的とした「ストルボフスキー生態観察路」が2001年に国後島中部に設置された.現在でも「クリリスキー」が本生態観察路の管理・整備を担当している.本生態観察路の優占樹種はオヒョウUlmus laciniata,ハルニレUlmus davidiana,エゾイタヤAcer pictum,ケヤマハンノキAlnus hirsuta であり,林床ではクマイザサSasa senanensis,オニシモツケFilipendula camtschatica,エゾイラクサUrtica platyphyllaとアキタブキPetasites japonicusが小班状に優占する.昆虫類では多くの甲虫類およびチョウ類種が確認されているが,国後島の他地域と比べた場合,特にチョウ類の種数が多いことが報告されている.鳥類については,本生態観察路を含む国後島中部から46種が確認されている.国後島には26種の陸棲哺乳類が生息するが,2015年8月15日~16日に本観察路で実施した哺乳類調査の結果,シマリスTamias sibiricus 1個体,キツネVulpes vulpesの糞を12個(この内10個にはネズミ類の体毛が多く含まれていた),クロテンMartes zibellinaの糞を1個,さらにヒグマUrsus arctosの糞1個を確認することができた.本観察路の自然は良く保全されており,少なくとも数種の哺乳類種に利用されていることが明らかになったが,同時にヒグマによる人身事故,およびキツネの糞を介したヒトへのエキノコックス症感染の可能性も危惧され,今後島民に対する適切な啓蒙活動が必要であることが示唆された.
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