マーケティングジャーナル
Online ISSN : 2188-1669
Print ISSN : 0389-7265
34 巻, 3 号
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巻頭言
論文
  • 藤崎 実, 徳力 基彦
    2015 年 34 巻 3 号 p. 5-26
    発行日: 2015/01/09
    公開日: 2020/06/02
    ジャーナル フリー

    ソーシャルメディアの普及と発展はインターネット上に消費者発信による大量の情報を生み出した。それは従来おこなわれてきたマスメディアを活用したリーチを重視したマーケティングコミュニケーションの世界に対して,ユーザーやファンによるクチコミを通じた新しいコミュニケーションの可能性を生みだしている。
    本稿では,このような環境変化のなかで,自ら積極的に商品,サービス,企業やブランドについて情報を発信したり語ったりする新しいタイプの顧客に注目する。
    そして,その新しいタイプの顧客を見つけだし,企業が公認し,積極的にクチコミをしてくれる発信力のある顧客を「アンバサダー」と定義し,企業が実際の顧客であるアンバサダーと一緒になって永続的に企業のマーケティング活動をおこなっていく活動について論じる。
    またその際のクチコミには,従来のマス広告を通じたコミュニケーションに対してどのような違いや可能性や課題があるのか,さらにアンバサダーのクチコミには広告価値がある,ということの検証方法について論じたい。

  • 武田 隆
    2015 年 34 巻 3 号 p. 28-45
    発行日: 2015/01/09
    公開日: 2020/06/02
    ジャーナル フリー

    ソーシャルメディアの利用者が5000万人を超え,対コンシューマー企業各社は,ソーシャルメディアをマーケティングの現場に活用するための試行錯誤を加速させている。そうした試みの中,外部のソーシャルメディアを利用するのではなく,企業自身が自社のウェブサイト(オウンド・メディア)にソーシャルメディアを開設し,ファン組織を形成する「消費者コミュニティ」の方法に関心が集まっている。消費者コミュニティとは何か?今そこでなにが起きているのか?本稿では,まず,ソーシャルメディアを4つの特性に分類し,消費者コミュニティの開設に最適なエリアを探る。次に,消費者コミュニティを活性させるための運営モデルについて解説する。最後に,株式会社ドクターシーラボと森永乳業株式会社による消費者コミュニティのマーケティングへの活用事例をもとに,コミュニティへの関与と購買との相関,ファン化とそのプロセス,コ・クリエーションの可能性までを概観する。

  • 柴内 康文
    2015 年 34 巻 3 号 p. 46-56
    発行日: 2015/01/09
    公開日: 2020/06/02
    ジャーナル フリー

    ソーシャルメディア等の普及により,オンラインコミュニティに対するマーケティング上の関心が高まっていると思われるが,それを参加者間のネットワークによって形成された「場」と考えるとき,コミュニティをどのように捉え,アプローチするかについての枠組みが求められることになろう。本稿では,近年のコミュニティ理解においてやはり関心の高い「社会関係資本」概念を取り上げ,特にそれをマクロ的に捉えた場合の特徴について,代表的論者の一人のPutnamの議論をふまえながら作用のメカニズム,影響の範囲,その種別の三点から整理した上で,このような特徴に基づき特にオンラインコミュニティが内包する論点および課題について考察を行った。

  • ─ 市場の理解とソーシャルメディア・データのバイアス ─
    大西 浩志
    2015 年 34 巻 3 号 p. 58-68
    発行日: 2015/01/09
    公開日: 2020/06/02
    ジャーナル フリー

    本稿では,企業が市場を理解するために,ソーシャルメディア・データを意思決定の判断材料として活用する際に注意すべきデータに内在するバイアスについて解説する。近年のマーケティング研究では,消費者の口コミの意見形成と意見表明の各プロセスにおいて,個人の異質性や製品属性によるバイアスや口コミが発信される場の選択バイアスに加えて,それら種々のバイアスが複合的に組み合わさることで,動的にバイアスが拡大する現象が明らかにされている。本論では,企業の実務でソーシャルメディア・データを扱うマーケッターが,日々の業務でデータを分析活用する際に注意するべきポイントを論じる。

  • ─ 環境,概念,戦略,戦術,指標と測定 ─
    丸岡 吉人
    2015 年 34 巻 3 号 p. 69-82
    発行日: 2015/01/09
    公開日: 2020/06/02
    ジャーナル フリー

    10代の1日のネット利用時間は,2005年にはテレビ視聴時間よりも1時間以上も短かったが,その差は徐々に縮まり,2012年には両者の逆転が起こった(橋元,2014)。これと呼応するように,日本の広告費支出の媒体別内訳は,2008年にインターネット広告費が新聞広告費を抜き,それ以来テレビ媒体広告費に次ぐ第2位の座を維持している(電通,2014)。これらデータは,私たちの情報動態が構造的に大きく変わり始めていることを示唆している。
    本稿ではまず,情報動態変化の全体像を構造的に検討し,これからのマーケティングコミュニケーション環境として,(1)消費者の能動化,(2)消費者の常時接続化,(3)個々人のミクロ情報環境の異質化と慣性化促進,(4)自律的情報循環の増加,(5)自律的情報蓄積の増加,を前提とすべきことを指摘した。そして,この新しい事態に対応して,マーケティングコミュニケーション概念を拡張して,マーケティングコミュニケーションのエコシステムを構築する戦略目標を持ち,戦術的対応方針としてリアルタイムマーケティングを実践することを提唱した。あわせて,コミュニケーション効果指標と効果測定の方向性を示した。

  • ─ BIF尺度に注目して ─
    井上 裕珠, 阿久津 聡
    2015 年 34 巻 3 号 p. 83-98
    発行日: 2015/01/09
    公開日: 2020/06/02
    ジャーナル フリー

    解釈レベル理論では,「今ここにいる自分」と出来事との心理的距離によって出来事の解釈の具体/抽象レベルが変わると想定されており,消費者行動研究をはじめとした多くの研究において解釈レベルの違いが後続の評価や態度,行動に影響することが示されてきた。
    本稿では消費者行動分野における解釈レベル理論研究の動向をレビューしたうえで,多くの消費者行動研究で扱われてきた,個人のある時点の「状態」としての解釈レベルではなく,個人の持続的「特性」としての解釈レベルにも焦点を当てていく必要性を議論する。特に,異なる社会的カテゴリ間における解釈レベルの違いを検討する際に「特性」としての解釈レベルを考慮に入れることの重要性や必要性を指摘する。

  • ─ 自動車産業に対する定性調査による考察 ─
    岩下 仁, 大平 進, 石田 大典, 外川 拓, 恩藏 直人
    2015 年 34 巻 3 号 p. 99-116
    発行日: 2015/01/09
    公開日: 2020/06/02
    ジャーナル フリー

    本研究では,製品開発の際に鍵となる製品デザイン要素の解明を試みている。まず,マーケティング研究において製品デザイン要素を扱った先行研究のレビューを実施した。続いて,優れた製品を開発している国内外の自動車メーカー5社へのインタビューを実施すると共に,公表されている資料に基づいて製品デザイン要素の存在を確かめている。最終的には,製品デザイン要素として8つの要素を導出している。

取材レポート
テーマ書評
  • 飯野 純彦
    2015 年 34 巻 3 号 p. 161-180
    発行日: 2015/01/09
    公開日: 2020/06/02
    ジャーナル フリー

    店頭の陳列を見渡せば,非常に多くの商品であふれている。このような状況を目の当たりにした消費者は,比較検討して選択することが面倒になり,妥協した選択をしたり,購買そのものを延期することが予想される。選択肢が多くなると迷いが生じてかえって購入率が下がるというような現象は「決定麻痺現象」と呼ばれ,質問紙実験を用いて実証されてきた。またIyengar and Lepper(2000)は,フィールド実験を通じてこうした現象が現実の消費者行動でも発生していることを指摘している。消費者行動を能動的な問題解決行動であり,目標志向的と捉えると,自ら目標を制御する「制御動機づけられた消費者」の選択行動を考えることで,前述したような予想される行動の回避策が提案できる。そこで本稿では,第1に「妥協効果」研究を整理することで,制御動機づけられた消費者が妥協的な選択行動を回避すべく,新たな妥協効果の軽減要因を検討している近年の研究を紹介する。また,選択肢が多すぎる現象に対しては,主に,「選択肢の数」に焦点をあてた研究と,「品揃えの大きさ」に焦点をあてた2つの研究視点から,制御動機づけられた消費者の選択行動における対応策を考えることができる。しかし,これらの既存研究の多くは,消費者の意思決定が時間や空間といった「心理的距離」にどれほど依存しているかを考慮していない。そこで本稿では,時間軸に焦点をあて,第2に「異時点間選択」研究について,経済学的視点と心理学的視点から整理する。特に,近年注目されている心理的距離を考慮した「解釈レベル理論」研究について詳細に議論し,時間軸を考慮した,より制御動機づけられた消費者にマッチした品揃えを提案する新たな研究を紹介する。

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編集後記
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