問題解決に注目した研究に対して,近年,問題が明確でない状況におけるイノベーションの発生が示されている(石井 1993,2009,2014, Lester and Piore 2004, Von Hippel and Von Krogh 2016)。その分野の研究の一つであるVon Hippel and Von Krogh(2016)において,ニーズとソリューションのランドスケープ(情報分布域)と結合(ペアリング)との関係と,組合せの構造が示された。本研究はユーザー・イノベーションによる「ナルセペダル」の開発事例をもとに,Von Hippel and Von Krogh(2016)におけるランドスケープの生成と結合との関係を「対話のトライアングル」の枠組みを使い説明した。「対話のトライアングル」の存在によって,ランドスケープ間の結合の組合せの探索が促進され,同時にランドスケープの成長につながる可能性がある。さらにこの対話の枠組みを複数開発者あるいはユーザーが部分的に共有することによって,ランドスケープが拡張され新たな組合せの結合が発生し易くなることを示した。
この枠組みはユーザー・コミュニティによるイノベーション,ユーザーとメーカーの共創によるイノベーションへの展開可能性がある。
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