マーケティングジャーナル
Online ISSN : 2188-1669
Print ISSN : 0389-7265
36 巻 , 4 号
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巻頭言
ご挨拶
論文
  • ― ユーザー・イノベーションによる踏み間違い動作を解消する自動車ペダル「ナルセペダル」の開発 ―
    廣田 章光
    2017 年 36 巻 4 号 p. 6-23
    発行日: 2017/03/31
    公開日: 2020/03/17
    ジャーナル フリー

    問題解決に注目した研究に対して,近年,問題が明確でない状況におけるイノベーションの発生が示されている(石井 1993,2009,2014, Lester and Piore 2004, Von Hippel and Von Krogh 2016)。その分野の研究の一つであるVon Hippel and Von Krogh(2016)において,ニーズとソリューションのランドスケープ(情報分布域)と結合(ペアリング)との関係と,組合せの構造が示された。本研究はユーザー・イノベーションによる「ナルセペダル」の開発事例をもとに,Von Hippel and Von Krogh(2016)におけるランドスケープの生成と結合との関係を「対話のトライアングル」の枠組みを使い説明した。「対話のトライアングル」の存在によって,ランドスケープ間の結合の組合せの探索が促進され,同時にランドスケープの成長につながる可能性がある。さらにこの対話の枠組みを複数開発者あるいはユーザーが部分的に共有することによって,ランドスケープが拡張され新たな組合せの結合が発生し易くなることを示した。
    この枠組みはユーザー・コミュニティによるイノベーション,ユーザーとメーカーの共創によるイノベーションへの展開可能性がある。

  • ― ミニ四駆のイノベーション・コミュニティ ―
    大久保 直也, 西川 英彦
    2017 年 36 巻 4 号 p. 24-39
    発行日: 2017/03/31
    公開日: 2020/03/17
    ジャーナル フリー

    本研究の目的は,ユーザー・イノベーションが生まれるイノベーション・コミュニティ,なかでも共創しつつその成果を活用して競争するミニ四駆のコミュニティを対象に,共創・競争志向と,ユーザー・イノベーションとの関係を実証的に明らかにするものである。本研究の発見としては,両志向は,ユーザー・イノベーションの質・量・活用という成果に対して異なる影響を与えていたことである。競争志向は,ユーザー・イノベーション活用の成果(競技成績)に正の影響を与え,一方の共創志向は,ユーザー・イノベーションの質(機能性)に正の影響を与えていたが,ユーザー・イノベーションの量(回数および発生の有無)に影響を与えてはいなかった。競争志向が低い場合にのみ,共創志向はユーザー・イノベーションの量に正の影響を与えていた。さらに,先行研究の整理によって,イノベーション・コミュニティを,非競争・開発型,非競争・活用型,競争・開発型,競争・活用型と4類型化したことも本研究の成果である。

  • ─ ユーザー発の会社とその生産性の実証研究 ─
    于 キン
    2017 年 36 巻 4 号 p. 40-57
    発行日: 2017/03/31
    公開日: 2020/03/17
    ジャーナル フリー

    本稿の目的は,ユーザー発の会社と非ユーザー発の会社との間の生産性(社員一人あたりの製品売上)の差を考察することである。生産性の差をもたらすものには,ユーザー発と非ユーザー発という新規ビジネスの源泉の他に,開発・生産・販売の仕組みが挙げられる。そこで,本稿では,新規ビジネスの源泉,製品開発のコーペティション,生産工程の外注,電子商取引などの要素を統合して,その組合せが生産性に与える影響を分析した。ファジイ集合の質的比較分析の結果に基づき,ユーザー発の会社が低い生産性を脱する要素および非ユーザー発の会社が生産性を高める要素を命題として提案した。最後に,ユーザーイノベーション論と合わせて,本稿の理論的かつ実務的な示唆を議論した。

  • ─ 企業ユーザーイノベーターの探索法 ─
    水野 学
    2017 年 36 巻 4 号 p. 58-75
    発行日: 2017/03/31
    公開日: 2020/03/17
    ジャーナル フリー

    本稿の目的は,産業財においてメーカーとユーザーの共創的製品開発を実現するために,メーカーがユーザーイノベーターを探索するための方法について議論することである。近年,消費財分野ではメーカーとユーザーが共同でイノベーションに取り組む共創型製品開発が広がりつつある。ユーザーイノベーターと呼ばれる革新的な製品の使い手が,メーカーとは違った視点から革新を起こすことがあることは,すでに先行研究から明らかである。消費者イノベーターの力を使って,実際に成果を上げている企業も存在する。その方法を産業財分野に応用するための最初の取り組みとして,本稿ではユーザーイノベーターの探索方法に焦点をあてる。まず先行研究および筆者らの研究プロジェクトで行ったサーベイの結果をもとに,ユーザーイノベーターとの共創活動に適性が高い産業の抽出を行った。さらに現在も進行しているインタビュー調査の成果を加えながら,その産業の中でより有益なユーザーイノベーターを探し出すための評価基準についても仮説的に提示している。

  • 山本 晶, 松村 真宏
    2017 年 36 巻 4 号 p. 76-93
    発行日: 2017/03/31
    公開日: 2020/03/17
    ジャーナル フリー

    メディアの発展に伴い,消費者は受動的なターゲットではなく,コンテンツを創造,投稿,共有するマーケティング活動の共同開発者として位置づけられるようになった。つまり,消費者は購買行動以外の行動によっても企業に価値をもたらすようになっている。こうしたなかで,消費者のエンゲージメント行動の重要性が近年高まっている。
    本研究においては携帯コンテンツ・プロバイダーの協力を得て,SNSサイトのユーザーによる仮想通貨の獲得・消費行動および友人紹介データを用いて,エンゲージメント行動から得られる価値の測定を試みた。具体的には顧客のクチコミ・ネットワークとSNS上のインタラクション・ネットワークを用いて,各ユーザーの金銭的価値,クチコミ価値,影響価値の測定を行った。そのうえで,エンゲージメント価値を構成する複数の価値の間の関係の解明を試みた。分析の結果,ある価値側面で高い価値を持つ顧客は,別の価値側面においても常に高い価値を持つわけではないことが明らかになった。また,顧客のエンゲージメント行動には閾値が存在し,ある一定の回数を超えるとエンゲージメント行動が発生しやすいことが明らかになった。

取材レポート
テーマ書評
  • 小野 雅琴
    2017 年 36 巻 4 号 p. 146-156
    発行日: 2017/03/31
    公開日: 2020/03/17
    ジャーナル フリー

    本論は,食品の健康強調表示に対する米国の法規制が消費者の食品選択に及ぼす影響に関する既存のマーケティング研究を再吟味することによって,日本の保健機能食品制度が及ぼす影響に関するマーケティング研究の進展に貢献しようとするものである。本論が主張することには,米国の既存研究は,主として,(1) 健康強調表示の解禁前後を比較した研究群,(2) 政府によって表示が義務づけられた栄養成分表と,企業によって任意に表示された健康強調表示の両者に対する消費者の反応を分析した研究群,および,(3) 疾病リスクを抑えるという健康強調表示に対する賛否両論の事前情報が存在する場合の当該の健康強調表示に対する消費者の反応を分析した研究群という,3つの研究潮流によって分類される。一方,日本の保健機能食品制度を研究する際に留意すべき,米国の健康表示規制にはない特徴として,トクホマークという高品質シグナルを発する記号が存在するということと,パッケージ裏面には米国の栄養成分表示に類する表示が限定的にしか行われないという2つの特徴が存在している。それゆえ,日本における研究を独自に展開する余地は大きいということが主張された。

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