マーケティングジャーナル
Online ISSN : 2188-1669
Print ISSN : 0389-7265
37 巻 , 4 号
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巻頭言
論文
  • 栗木 契
    2018 年 37 巻 4 号 p. 5-15
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/05/31
    ジャーナル フリー

    未来の予測は成り立つか,成り立たないか。いずれを前提とするかによって,合理的なマーケティング活動の進め方は,大きく異なることになる。

    STP マーケティングは,市場の先行きを予測できることを前提としている。しかし,マーケティングという営みにおいて,この未来の予測が困難となるのであれば,新たなマーケティング活動の進め方を再検討することが不可避となる。すなわち,予測に頼ることなく未来を切り開いていくプロセスを有効なものとする行動の原則を,企業は見定めることを求められる。

    本稿では,S. サラスバシのエフェクチュエーションを手がかりに,予測に頼ることが有効ではない状況を第3 の不確実性とむすびつけてとらえる。そのうえで本稿では新たに,エフェクチェエーションの行動原則をSTP マーケティングの補完に用いるうえで,省察が果たす役割を検討し,マーケティング研究が取り組むべき今後の課題を浮き彫りにする。

  • 吉田 満梨
    2018 年 37 巻 4 号 p. 16-32
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/05/31
    ジャーナル フリー

    本研究の目的は,不確実性の高い市場環境に直面したマーケターが,いかに課題解決を行うのかを分析し,近年アントレプレナーシップ研究を中心に注目されている「エフェクチュエーション」(Sarasvathy 2001, 2008)の論理のマーケティング課題への適用可能性を明らかにすることにある。具体的には,マーケターを対象に,マーケティング実践における8つの意思決定課題への回答を,シンクアラウド法による発話プロトコルデータとして収集する調査を実施した。分析の結果,第一に,市場創造の経験を持つマーケターが課題解決においてエフェクチュエーションに基づく意思決定を行っていること,第二に,起業家ではなくマーケターの文脈における,エフェクチュエーションに基づく意思決定の様式が明らかになった。以上から,起業家の論理としてのエフェクチュエーションを,大企業におけるマーケティングや新規事業開発にも有用な知識として精緻化し,既存のマーケティング理論を補完する知識開発に寄与できる可能性が示された。

  • ― サイバーエージェントが実践からつかんだ知見 ―
    曽山 哲人, 栗木 契
    2018 年 37 巻 4 号 p. 33-46
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/05/31
    ジャーナル フリー

    本論文では,エフェクチュエーションを支える制度を,組織としていかに構築していくかを探索する。そのために本論文は,株式会社サイバーエージェントという社内スタートアップの創出に長けた企業が,その社内制度をどのような試行錯誤のなかから編み出してきたかを,同社の社内資料をもとに振り返る。その結果として見えてくるのは,サイバーエージェントでは,大量の提案を生み出す制度,より多くの社員のあいだに決断経験の機会を広げる制度,スタートアップの撤退ラインを明文化した制度,そして非金銭的報酬を重視した制度の充実が,その社内でのエフェクチュアルな行動をうながしているという関係である。

  • ―企業の周辺的活動に注目する意味とリレーションシップ・マーケティングに対する含意 ―
    大森 信, 滝本 優枝
    2018 年 37 巻 4 号 p. 47-65
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/05/31
    ジャーナル フリー

    本稿は,欧州で経営戦略論の新しい研究アプローチとして進展してきた Strategy as Practice (SaP)から,Strategizing Activities and Practices (SAP)へと移行する現在までの過程に着目し,SAPの現状と課題を指摘し,その可能性について示す。日本では SaPの研究は少しずつ浸透しつつあるものの,SAPについての論考は未だ見当たらない。経営学と隣接する分野であり,市場戦略や競争戦略について研究展開がなされてきたマーケティング分野において両者の関係性について検討しておく必要性は少なくないと考える。本稿では,プラクティス理論に基づいた SAPの観点から,特に日本企業の周辺的活動が継続され習慣化されていく過程に着目する必要性を提示する。また研究の進展を通じて,新たな経営戦略観ならびに組織観を示すことができるとともに,特にリレーションシップ・マーケティングに対する含意も少なくないことを指摘する。

  • ― 消費者による医薬品情報の自己管理に向けて ―
    上西 智子
    2018 年 37 巻 4 号 p. 66-87
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/05/31
    ジャーナル フリー

    本研究では,消費者のセルフケア行動に対する医薬品情報提供サービスのあり方をサービス・ドミナント・ロジックの観点から検討する。消費者は自身の健康管理において健康に関するさまざまな情報を利用し,セルフケア行動を通して健康を維持するという価値を創造している。そのセルフケア行動において,OTC医薬品を活用して行うセルフメディケーションの場合,医薬品の外箱や添付の説明書などの情報を利用することになる。それらは製品の機能や特徴に関する情報が主体となっており,使用中のどの段階で必要になる情報なのか,時系列管理できる情報デザインとはなっていない。これは,製品(モノ)の情報提供サービスと考えられ,消費者の健康価値創造に対するサービスとはなっていないと考えられる。そこで,OTC医薬品の情報提供サービスの現状を,消費者のセルフケア行動に対する価値提案,自己管理用の情報デザイン,情報提供及び管理資源の構成の視点から見直し,さらに,医療サービスの領域で既に活用されている自己管理のための医薬品情報提供サービスについて同様の観点から検討し,消費者のセルフケア行動に対する医薬品情報提供サービスのあり方を考察する。

取材レポート
テーマ書評
  • 鴇田 彩夏
    2018 年 37 巻 4 号 p. 119-131
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/05/31
    ジャーナル フリー

    本稿の目的は,同族企業を5つの経済モデルから概観し,今後のマーケティング研究に同族企業の行動原理やその特徴から生まれる新しい視点を提供することにある。本稿では,同族企業特有の企業行動が「社会情緒資産理論」で主張される社会情緒資産を目的として採用されていると考える。

    マーケティングと企業の業績の関係について様々な研究が行われてきたものの,日本企業の大部分を占める同族企業の視点からの研究はあまり見られなかった。同族企業の行動原理やその特徴は,非同族企業とは大きく異なっているため,財務的利益のみを追求することに焦点を当てたマーケティング計画やそれを前提としたマーケティング研究は同族企業の文脈には即さない。本稿では,これらを理解し,それに即したマーケティング研究を行うことで,よりリアリティを持ち,有効な調査を行うことができると考え,同族企業の行動原理と特徴への理解を深めていく。

書評
編集後記
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