マーケティングジャーナル
Online ISSN : 2188-1669
Print ISSN : 0389-7265
38 巻 , 1 号
デザインとイノベーションに関する最新の研究の取り組み
選択された号の論文の12件中1~12を表示しています
挨拶
巻頭言
特集論文 / 招待査読論文
  • ― デザイン思考を活用した潜入体験型リサーチ手法 ―
    井上 滋樹
    2018 年 38 巻 1 号 p. 7-20
    発行日: 2018/06/30
    公開日: 2018/12/14
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    途上国の貧困層向けに商品を販売することで貧困層の生活向上を促そうという「BOPビジネス」への取り組みが日本企業でも進んできた。途上国の富裕層を対象としたマーケティングに多くの経験をもつ日本企業にとっても「BOP」は未経験の対象者であるため,どのような方法で彼らの的確なニーズを把握することができるかわからないケースが多い。

    また,「BOP層」の定義は,Hart and London(2011)によると1人当たり年間所得が3000ドル以下の世帯を指し40億人とされているが,そもそも40億人もの多様な生活者をひとくくりに分類するのはマーケティング的にはありえない。「BOP」をビジネスの対象としてみるならば,その全体像をみるのではなく,住んでいる地域や文化,収入などを特定し,そのマーケットと生活者の実態を明らかにする必要がある。

    この論文では,Prahaladが「BOP」に着目してから20年を経た今日において,そもそも「BOP」をどう捉えたら良いかを整理した上で,具体的にインドネシアの特定地域に住む「BOP層」を対象にした調査から生活者の具体像を明らかにする。さらに,「BOP層」向けの新商品開発のために実施した調査手法を考察し,「BOP層」のニーズ把握のために開発した「デザイン思考を活用した潜入体験型リサーチ手法 DIVE(Diversity Inclusive Visionary Enhancement)」を示す。

  • 吉岡(小林) 徹
    2018 年 38 巻 1 号 p. 21-37
    発行日: 2018/06/30
    公開日: 2018/12/14
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    デザイナーが商品開発の上流工程から関わること,とくに,デザイナーが他の職能組織の活動に積極的に関与していくことは,製品・サービスのイノベーションの実現につながるのだろうか。本研究は,デザイナーによる他の職能組織の活動への関与の一つとして,技術開発への関与が,技術開発の質を高め,かつ,製品の質を高めているのかを,市場で成功を収めた事例の分析と,国際的なデザイン賞受賞製品90製品の調査により検証した。その結果,デザイナーの技術開発の関与は,①新たな要素技術を着想し,新規な製品コンセプトを実現する,②技術的課題を設定するか,技術開発チーム内での共有を促し,技術者の開発効率を高める,③他組織の技術を橋渡しし,新たな技術を生み出す,のいずれかの形で高い質の技術を生み,かつ,製品自体の質を高めていたことが確認できた。これらはデザイナー固有の寄与とまでは断言できないが,デザイナーの強みが生きた機能組織間連携の効果であると考えられる。

  • ― 科学技術と社会をつなぐシンセシスの役割 ―
    田浦 俊春, 妻屋 彰, 山田 香織
    原稿種別: 特集論文
    2018 年 38 巻 1 号 p. 38-55
    発行日: 2018/06/30
    公開日: 2018/12/14
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    本稿では,イノベーションの進む方向性とイノベーションのためのデザインに寄与する創造的思考について論じる。まず,イノベーションは利便性や効率を重視する「量的イノベーション」とライフスタイルや文化の変化をもたらす「質的イノベーション」に区分されるとし,現代社会では質的イノベーションへの転換が必要であることを述べる。次に,イノベーションのためのデザインを,プロダクトを介して科学技術と社会との間を橋渡しすることと捉えた上で,デザインの起因に注目し,それを社会のニーズにおく「ニーズ先導型」,科学技術の探求におく「シーズ先導型」,両者の橋渡しをするプロダクトの構想からはじめる「プロダクト先導型」に区分できることを示す。これらの区分を2軸として戦後日本のイノベーションを対象に事例調査を行った結果,質的イノベーションではプロダクト先導型のデザインが多くみられた。さらに,質的イノベーションに寄与する創造的思考について議論し,ブレンディング型のシンセシスやプロダクトと場の組合せ型のシンセシス,シンセシス型の創造的思考に則ったタイプのメタファ型のシンセシスを用いた創造的思考が効果的であることを述べる。

  • ― 商品アイデア比較実験 ―
    古江 奈々美
    2018 年 38 巻 1 号 p. 56-69
    発行日: 2018/06/30
    公開日: 2018/12/14
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    Govindarajan, Immert, and Trimble(2009)は,新興国で既存技術の組み合わせによるイノベーションが生まれ,最終的には先進国市場で普及する,これまでの先進国から新興国へという既存理論に逆行する“リバースイノベーション”を提唱している。産学ともにこの新しい現象に注目しているものの,一連のイノベーションのプロセスにおいて,新興国と先進国の間で具体的な違いが何であるのか言及している研究は少ない。本研究は,先進国と新興国の大学院生を対象とし,新商品開発を模したワークショップを通じて,アイデア作成の内容やその選抜を行う際の姿勢における違いを探索することを試みた。実験の結果,先進国と比べて,新興国のアイデアの方が,新規性・独創性が低く,投資リスクの低いアイデアを作成することがわかった。そして新興国の被験者は,先進国の被験者に比べ,常に自信を持ってアイデアを選抜する傾向が明らかとなった。加えて,これらの特徴を踏まえ,先進国人材,新興国人材それぞれが実務上どのような点に注力すべきかを,デザイン思考を用いて提示する。

レビュー論文 / 招待査読論文
  • 李 相典
    2018 年 38 巻 1 号 p. 70-77
    発行日: 2018/06/30
    公開日: 2018/12/14
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    デスティネーション・ブランド(Destination Brand)に関する研究は1990年代半ばから行われた。これまでデスティネーションに関するブランド視点からの研究は,観光機会の拡大,再訪問客の増加,そして他デスティネーションとの継続的な差別化による競争力確保の必要性が徐々に高くなっている観光環境から起因した。とりわけ,デスティネーション・ブランド・エクイティ(Destination Brand Equity)に関する研究は当該デスティネーションの持続的な競争力の増進による観光客の増加を目標として進められてきた。しかし,デスティネーション・ブランド・エクイティに関する研究はその理論的構造においての限界など,まだ多様な課題を抱えている。本稿では,デスティネーション・ブランドに関する研究の整理とともに,デスティネーション・ブランド・エクイティの特徴と今後の課題に関して検討した。

投稿査読論文
  • 高橋 史早
    2018 年 38 巻 1 号 p. 78-91
    発行日: 2018/06/30
    公開日: 2018/12/14
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    従来のサービス・クオリティ研究は,主要なサービス品質測定尺度であるSERVQUALを中心として発展するとともに,サービス品質と顧客満足を仲介する知覚価値についても検討してきた。本研究は,知識的な知覚価値である教養の獲得に着目し,生涯学習施設におけるサービス品質や施設に対する総合的な評価との関係を検討する。すなわち,本研究の目的は,教養の獲得が利用者の総合評価に関係しているかを検証し,利用者の教養獲得がどのようなサービスによって促されているのかを解明することにある。公立美術館の利用者122名に対して実施した質問紙調査データを分析した結果,(1)教養の獲得は総合評価を高めること,(2)展示方法と従業員サービスの2つのサービス品質が教養の獲得を促すこと,(3)施設の快適性は総合評価を高めていることが明らかとなった。これらの発見事実は,理論的・実践的観点から検討された。

  • ― 中山間地におけるソーシャル・キャピタルの測定から ―
    長尾 雅信, 山崎 義広, 八木 敏昭
    2018 年 38 巻 1 号 p. 92-107
    発行日: 2018/06/30
    公開日: 2018/12/14
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    地域ブランドの議論において,よそ者は積極的な役割が期待されてきた。しかし,よそ者の到来や地域側の受容は所与の前提とされ,十分な分析と議論が尽くされていない。本稿では,地域ブランド論と関連する内発的発展論や地域づくり論をレビューし,援用しうる知見を導出した。さらに中山間地域を対象とした定量と定性のトライアンギュレーション研究により,地域社会とよそ者の協働が生まれる条件,仕組みについて深耕を図った。それにより地域コミュニティの受容の様相は,ソーシャル・キャピタルの蓄積の程度によって三つに分類された。また,それに伴って受容されるよそ者も異なること,よそ者との交流や協働を促進するプラットフォームが必要であり,それもまたソーシャル・キャピタルの水準で変容しうることを明らかにした。

マーケティングケース
  • ― 株式会社サッポロドラッグストアー ―
    奥谷 孝司
    2018 年 38 巻 1 号 p. 120-137
    発行日: 2018/06/30
    公開日: 2018/12/14
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    近年ドラッグストアの市場拡大が顕著である。活発なM&A(企業の合併・買収),食品の取り扱いに見られる品揃えの強化,調剤薬局市場の取り込み,PB商品開発,ロイヤルティプログラムの充実,消費者のワンストップショッピングニーズへの迅速な対応で,高齢者や幅広い女性顧客層を他業界から取り込んでいる。そのような中,自社のリブランディングとリージョナルマーケティング,積極的なインバウンドニーズの取り込み,AI, IT活用によって独自の顧客基盤運営と新規事業開発で全国から注目を集める北海道を基盤とするドラッグストア(株)サッポロドラッグストアー(以下,サツドラ)の取材を行った。

    本ケーススタディにより小売業における新しいビジネスモデル構築とマーケティング戦略において以下5点の示唆が見出された。1)地域循環型顧客関係管理プラットフォーム構築の重要性,2)地域小売業がリージョナルマーケティングにおいて果たすべき役割,3)販売チャネル「場」の新しい価値創造,4)Customer Engagement構築の重要性,5)地域コミュニティ・マーケットにおけるCollaborative Consumption(共創消費)構築の可能性

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