マーケティングジャーナル
Online ISSN : 2188-1669
Print ISSN : 0389-7265
39 巻 , 4 号
観光マーケティング
選択された号の論文の14件中1~14を表示しています
巻頭言
特集論文 / 招待査読論文
  • ― SATOYAMA EXPERIENCEと「アクティベータ」 ―
    廣田 章光
    2020 年 39 巻 4 号 p. 7-19
    発行日: 2020/03/31
    公開日: 2020/03/31
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    本研究では「規律・統制型」(Shikita, Morishige, Nakamura, 2012)地域における観光産業の創造を,地域生活と観光産業との共生の観点から考察した。我が国観光産業の拡大における課題の1つとして,欧米豪の旅行者数の拡大がある(Atkinson, 2015; Sightseeing vision concept meeting to support tomorrow’s Japan, 2017)。欧米豪旅行者は,日本独自の景観,歴史,文化への関心が高い(Atkinson, 2015; Sightseeing vision concept meeting to support tomorrow’s Japan, 2017)。一方,日本独自の景観,歴史,文化が維持されている地域は,一般的に地域に閉じ,地域住民間の関係が強い「規律・統制型」の特性がある。「規律・統制型」地域における景観,歴史,文化の資源を旅行者に提供するためには,外部への閉鎖性,内部者の関係の強さから困難が生じる。この問題を解決するためのプラットフォームのあり方を相互作用の観点から考察した。そして,地域と共生し,欧米豪の個人旅行者を創造する観光プラットフォームの必要性と,相互作用促進における「アクティベータ」の重要性を提示した。

  • 畢 滔滔
    2020 年 39 巻 4 号 p. 20-29
    発行日: 2020/03/31
    公開日: 2020/03/31
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    本論文では,米国のカリフォルニアキュイジーヌに関する事例研究を通じて,料理文化遺産が存在しない地域において,スローツーリストを誘引するためのスローフードをつくりだす方法を検討する。本論文の結論は2点にまとめられる。第一に,カリフォルニアキュイジーヌがスローフードとして高い集客力を誇るようになった要因は,料理自体が持つ優れた特性のみならず,料理が生まれるまでのストーリーにある。第二に,そのストーリーは,スローツーリストがもつ「不純物,虚像,作り話,大量生産のもの」に溢れた生活空間から離れたいという要求や,米国の文化を知りたいというニーズ,さらに倫理的消費を重視する価値観に合致することで,スローツーリストの経験価値の向上に寄与している。ストーリーづくりの過程においては,地元の文化に関する深い知識を持った上で,倫理的消費を個人の快楽と同様に重視するスローツーリストの特徴を十分に考慮する必要がある。本論文では,こうしたストーリーづくりから生まれる観光マーケティングの可能性が示唆される。

  • ― ハワイにおけるツアーオペレーターの果たした役割 ―
    柏木 千春
    2020 年 39 巻 4 号 p. 30-41
    発行日: 2020/03/31
    公開日: 2020/03/31
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    ハワイでは,誰が,いかにして,日本市場向けの観光ビジネスエコシステムを形成していったのか。本論文では,この問いに応えるために,国際的なツアーオペレーターであるJTBハワイの行動に着目し,観光地経営の視座に立った事例研究を試みる。日本企業が,時代の変化に適応しながら,各種の観光関連事業者や地域コミュニティと共に日本市場向けの観光事業を発展させていく過程を追跡する。結論として,本研究は,JTBハワイの行動には,①経済的価値と社会的価値を共創しようとする2方向の形成過程があること,②独自の事業が地域全体の観光事業の基盤として拡大し,定着していったこと,③民間企業の生き残り策が公的サービス組織を生み出したことを提示する。

  • 森藤 ちひろ
    2020 年 39 巻 4 号 p. 42-52
    発行日: 2020/03/31
    公開日: 2020/03/31
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    本稿の目的は,国内メディカルツーリズムにおける消費者の移動動機を考察することである。既存研究では,国際メディカルツーリズムに焦点があてられ,国内メディカルツーリズムに関する研究は少ないが,我が国の国内メディカルツーリズム市場は拡大している。本稿では,金沢市に拠点を置くメディカル・ウェルネス複合施設を事例として,健診・人間ドック受診患者に関する分析を行った。その結果,患者は遠方から移動や宿泊コストをかけて訪れていたことが明らかになった。push要因として,患者の健康意識の高さ,健康関連サービスに対するリテラシーの高さ,情報収集のしやすさが患者の移動動機を醸成していることが示唆された。pull要因としては,観光地としての目的地の魅力,交通の利便性,メディカル・ウェルネスサービスの融合,サービス提供施設のホスピタリティが抽出された。これらの要因が包括的に消費者の移動動機に影響していたと考えられる。また,メディカルサービスの品質によって顧客との信頼関係が構築され,その信頼がウェルネスサービスの知覚品質に影響を及ぼし,顧客の健康関連サービスに対するニーズを喚起し,消費行動を促進している可能性が示唆された。

レビュー論文 / 招待査読論文
  • 胡 怡
    2020 年 39 巻 4 号 p. 53-59
    発行日: 2020/03/31
    公開日: 2020/03/31
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    顧客は,企業の価値創造活動においてますます重要な役割を果たしている。顧客との価値共創は,サービス・エンカウンターからサービス失敗後のリカバリープロセスまで,あらゆる接点で起こりうる。サービス・リカバリーにおける価値共創は,少ない費用で効果的に顧客満足を回復させ,再購買意欲を高めることができるリカバリー方法として,近年注目されている。本稿では,サービス・リカバリーにおける価値共創に関する既存研究を整理する。すなわち,以下の二つの研究潮流,(1)サービス・リカバリーにおける価値共創の有効性に影響を及ぼす要因に関する研究,(2)サービス・リカバリーにおける価値共創の先行要因に関する研究に分類して,レビューを実施する。また,研究の現状を踏まえながら,今後の研究課題を提示する。

  • 本庄 加代子
    2020 年 39 巻 4 号 p. 60-65
    発行日: 2020/03/31
    公開日: 2020/03/31
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    本稿は,消費文化論とブランド研究の架け橋とされるHoltのカルチュラルブランディングについて,問題意識,依拠する学問,ブランドの捉え方に注目し,ブランド研究に対する意義を考察する。同モデルは文化とブランドという超越的な概念とその形成の道筋を扱っている。これは,解釈主義に位置づけられるが,共約不可能とされる伝統的パラダイムを補完し,更に戦略的柔軟性と実践性を備えている。ここでは,ブランドは,強くなればなるほど社会的批判を受けやすくなることが問題として示されている。このことから,ブランドの理想形とは社会的問題の解決手段でもあり,絶対的資質のものではなく,経営目標と合致する“状態”である可能性を示している。その動態性を前提とした理論の更なる洗練が必要であることが指摘できる。

投稿査読論文
  • ― アパレル業界を対象とした実証分析 ―
    結城 祥
    2020 年 39 巻 4 号 p. 66-76
    発行日: 2020/03/31
    公開日: 2020/03/31
    [早期公開] 公開日: 2020/03/11
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    わが国のアパレル業界においては,需要不確実性と在庫リスクを吸収すべく,期中生産・期中企画(シーズン中の追加的な発注・企画)が推進されている。果たして,こうした取り組みは不良在庫の削減に寄与しているのであろうか。この問いに実証的な回答を与えることが,本論の目的である。アパレル・メーカーから得られたサーベイ・データを分析した結果,①期中生産は不良在庫の削減に貢献すること,②期中企画は,小売段階を外部化した状況でそれを実施すると不良在庫が増大し,小売段階の一部あるいは全てを統合している場合でも在庫削減効果を持たないことが見出された。期中企画を実施する際には,小売段階をどの程度コントロール可能か,追加企画製品の生産・発注量の意思決定精度を高水準に保つ能力が備わっているか,という点に留意する必要がある。

マーケティングケース
  • ― 兵庫県城崎温泉西村屋 ―
    グェン フォン バオ チャウ
    2020 年 39 巻 4 号 p. 77-85
    発行日: 2020/03/31
    公開日: 2020/03/31
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    訪日外国人旅行者数は2010年代から増え続けている。中でも兵庫県豊岡市にある城崎温泉は,5年間で外国人旅行者数を36倍増加させることに成功した。このケースはその城崎温泉にある100年以上の歴史を持つ温泉旅館「西村屋」が外国人宿泊者に向けて行っている取り組みについて紹介する。「外国人にも日本人と同じ体験をしてもらう」という考えのもと,施設内の多言語化や外国語人材の確保と育成を積極的に行っている。さらに,モノ消費からコト消費へと外国人旅行者の動向が変わりつつある中,今後も新しい体験を提供できるように試みている。常務取締役の池上桂一郎氏と海外戦略担当のフカイ・コリン氏のインタビューに基づき,城崎の共存共栄精神を維持しながら,差別化を図る西村屋の戦略について見る。

  • ― 技術のダイキンによる新たな挑戦 ―
    權 純鎬, 恩藏 直人
    2020 年 39 巻 4 号 p. 86-96
    発行日: 2020/03/31
    公開日: 2020/03/31
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    ダイキン工業株式会社は90年以上を超える歴史の中で,優れた製品開発によって成長を遂げてきた。近年,同社は製品志向から顧客志向への転換を試み始め,空調設備のサブスクリプション・サービス「AaaS(エアアズアサービス)」で成果をあげつつある。AaaSは空調設備ではなく空気を提供するという発想であり,月額料金で空調設備の設置工事から最適な運用の提案,メインテナンス,アフターサービスに至るまで,快適な空気を安定的に供給するための一連のサービスである。顧客自身も気づかない潜在的なニーズに注目したダイキンは,既存のモノ売り発想では対応が困難であった課題をコト売り発想への転換によって解決を試みた。同サービスは空調の最適化を実現することでランニングコストを削減するなど,コストの面においても顧客にメリットをもたらしている。昨今のコモディティ化の深化に伴い,製品の機能や品質だけで競争優位性を保つことが困難になってきている中,ダイキン工業のAaaS事例は,製品志向から顧客志向に組織の軸足を移すことで,提供製品を変えることなく新しい価値を提供できることを示唆している。

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