マーケティングジャーナル
Online ISSN : 2188-1669
Print ISSN : 0389-7265
40 巻, 4 号
ソーシャルメディア
選択された号の論文の12件中1~12を表示しています
巻頭言
  • 山本 晶
    2021 年 40 巻 4 号 p. 3-5
    発行日: 2021/03/31
    公開日: 2021/03/31
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    More than a decade has passed since the emergence of major social media services such as Twitter and Facebook, and these services have attracted considerable attention from both practitioners and academics. The aim of this special issue is to re-examine the impact of social media in marketing. Consumer engagement behavior on social media was expected to enhance the marketing activities of firms in various areas, including advertising, customer support, and new product development. Along with these high expectations, the negative impacts of social media, such as backlashes against certain people or brands, spread of fake news and fake reviews have also affected firms and consumers. In this special issue, we shed light on various aspects of social media, including consumer enthusiasm and collective behavior, the resulting positive and negative bursts in social media, product reviews and their helpfulness, and usage patterns of social media by user segment.

特集論文 / 招待査読論文
  • ― プロ野球ファンのツイートを分析する ―
    水野 誠, 佐野 幸恵, 笹原 和俊
    2021 年 40 巻 4 号 p. 6-18
    発行日: 2021/03/31
    公開日: 2021/03/31
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    パワーブランドのロイヤル顧客には,しばしば熱狂的なファンが含まれる。彼らがなぜ熱狂するのか,しかもなぜ熱狂が持続するのかを理解するため,われわれはファンの熱狂が典型的に現われるプロ野球に注目する。その際,集合行動としての熱狂に働く社会的相互作用について把握するには,ソーシャルメディアでのファンのコミュニケーションを分析するのが1つの有効な方法である。そこでわれわれはTwitterから2018年の日本のプロ野球に関するツイートを収集し,ファンの投稿頻度のみならずポジティブ/ネガティブな感情を測定し,試合の勝敗や優勝争いの展開でそれらがどのような影響を受けるかを分析する。また試合中にファンのツイートとリツイートが瞬間的に同期する現象をバーストとして分析を行う。これらの分析から,長期と短期の異なるタイムスケールで熱狂が変化している様子を把握し,ファンダムを形成し維持するための示唆を得る。

  • ― ツイッターデモはどう広がったか ―
    鳥海 不二夫
    2021 年 40 巻 4 号 p. 19-32
    発行日: 2021/03/31
    公開日: 2021/03/31
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    ネット上で大きな話題が生じた場合,現実社会にも影響を与えることも多い。例えば正の側面として「バズり」があり,負の側面として「炎上」がある。現代社会においては,マーケティングを考える上でネット上の社会現象を無視することはできない。一方で,ネット上での大規模な拡散事象が実社会の現象を反映していないこともある。すなわち,ネット世論と実際の世論との間に隔離が存在していることがある。そのためネット上で生じた現象を正しく理解するために,データから全体像を把握し,ネット上の現象が何なのかを正確に把握することが望まれる。本論文では検察庁法改正案を巡るツイッターデモを対象として,データを用いたバースト現象の詳細分析を行った。その結果,2%のアカウントが50%の投稿を行っていたことが分かり,一部のユーザによって拡散が水増しされた事実はあるものの,多様な人々によって支持されており,単なるノイジーマイノリティ現象でもなかったことが明らかとなった。本論文で紹介した分析は,炎上やバズりといったバースト現象においても応用可能であり,マーケティング分野における口コミの効果を分析する上で有用であると考えられる。

  • ― 質的・量的レビュー ―
    斉藤 嘉一
    2021 年 40 巻 4 号 p. 33-43
    発行日: 2021/03/31
    公開日: 2021/03/31
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    Amazon.comやTripAdvisorなど多くのクチコミサイトには,helpfulボタン(役に立ったボタン)が設置されており,読者はhelpfulボタンを押すことでレビューが役に立ったことを表明することができる。レビュー有用性,すなわち,レビューが獲得するhelpfulの数,あるいは割合がどんなレビュー特性,発信者特性,製品特性によって影響されるかは,マーケティンングと消費者行動,および情報システムの両方の領域において盛んに検討されてきた。本研究は,レビュー有用性の影響要因について,ナラティブレビュー(質的なレビュー)とメタ分析(量的なレビュー)を行った。その結果,テキストの長さと投稿者の写真の開示は,レビュー有用性とプラスの関係にあることが示された。一方,評価得点(星の数),および投稿者の名前や住所の開示と,レビュー有用性との関係については,既存研究において得られた実証結果は一貫したものではなかった。これらの一貫しない結果を整合的に説明するために,受信者のhelpful意思決定を検討することを提案した。

  • ― COVID-19のアウトブレイクにおけるソーシャルメディアの利用動向分析 ―
    西本 章宏, 勝又 壮太郎, 本橋 永至
    2021 年 40 巻 4 号 p. 44-57
    発行日: 2021/03/31
    公開日: 2021/03/31
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    本稿の目的は,COVID-19のアウトブレイクによって大きく市場環境が変化している今日のように,急激な環境変化による非連続な状況下において,次世代イノベーションの源泉として,創発的性質を有する消費者(ENCs)に着目する有用性を示すことである。本稿では,緊急事態宣言下を含むCOVID-19のアウトブレイク(第1波)を分析対象期間とし,消費者のスマートフォンのアプリ起動ログの収集と先端層調査を実施した。その結果,ENCsは同じ先端層であるリードユーザー(LUs)よりも環境変化に対して頑健であり,新しい生活様式に適応した消費者であることが明らかになった。また,ENCsのソーシャルメディアの利用動向はLUsや一般ユーザー(GUs)とは異なり,コロナ禍でも利用数は多いが,その変化量は少なった。このことから,ENCsは平常時からソーシャルメディアを他の消費者よりも広範かつ高頻度で利用している可能性が推察された。

レビュー論文 / 招待査読論文
  • 田中 祥子
    2021 年 40 巻 4 号 p. 58-65
    発行日: 2021/03/31
    公開日: 2021/03/31
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    企業の新製品開発において,ユーザー(消費者)のアイデアを反映したり,その意見を基に製品改良をしたりする「共創」の重要性が増している。ユーザーの意見を反映することは,市場のニーズに的確に応えられ,市場での優位性を得られるためだ。その共創で成果を出すには,ユーザーの参加や貢献の獲得が必須となる。本稿では,企業が関わる共創コミュニティへのユーザー参加動機について,既存研究を自己決定理論に基づき分類する。レビューの結果,既存研究を時間概念なし,初期参加動機,継続参加動機の3つに整理した上で,ユーザーの参加段階を考慮した動機は未探索の部分が多い点を指摘する。時間概念を含んだ動機を明らかにすることはユーザーの参加を促す施策立案のヒントととなり,共創を計画する企業や団体への貢献となるだろう。

  • 權 純鎬
    2021 年 40 巻 4 号 p. 66-74
    発行日: 2021/03/31
    公開日: 2021/03/31
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    インターネット通販をはじめとする電子商取引市場の拡大に伴い,デジタル環境における新しい消費者の行動を理解することに実務的にも学術的にも高い関心が寄せられている。本稿では,このような新しい環境における(1)製品の所有形態の多様化,(2)電子媒体のインターフェースによる触覚経験の相違という2つの変化が消費者の購買行動に及ぼす影響に注目しており,これら2つの変化は製品への心理的所有感(psychological ownership)の醸成に関連していること,また心理的所有感の知覚は製品の評価を高めることが先行研究によって示されている。そして,今後の研究課題として「デジタル環境における心理的所有感理論の再検討」,「製品の所有形態の細分化」,「心理的所有感と製品評価の関係の精緻化」の3つの課題を提示した。

  • 奥谷 孝司
    2021 年 40 巻 4 号 p. 75-83
    発行日: 2021/03/31
    公開日: 2021/03/31
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    本稿の目的は,消費者視点からのオムニチャネル買物価値(Omni-Channel Shopping Value)(Huré, Picot-Coupey, & Ackermann, 2017)の理解に求められる視座を提供することにある。小売業におけるテクノロジー活用の進展により,オムニチャネル・リテイリング(Brynjolfsson, Hu, & Rahman, 2013)の実現が進んでいる。この流れを受け小売業におけるオムニチャネル戦略の研究が企業の視点から展開されているが,これらの買物体験を消費者の視点から検討する先行研究は少ない。本稿では,オムニチャネル・ショッパー研究の現状を示した上で,その消費者行動の理解に寄与すると考えられる3つの研究領域についてレビューする。具体的には,技術受容モデルに基づくモバイルアプリ受容行動研究とショールーミング・ウェブルーミング行動研究,店頭受け取りサービス(Buy Online, Pick-Up In Store)研究の3つである。最後に,オムニチャネル買物価値の理解に求められる今後の研究課題を提示する。

マーケティングケース
  • 小谷 恵子
    2021 年 40 巻 4 号 p. 84-93
    発行日: 2021/03/31
    公開日: 2021/03/31
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    本ケースでは,日本のライフスタイルに大きな影響を与えたファッションブランド,ヴァン・ヂャケット(1954–1978)と,創業者の一人である石津謙介(1911–2005)に焦点を当てる。卓越した発想力で新しい顧客と価値を創造し,様々なマーケティング手法を駆使して頂点に上りつめたVANだが,その存在は顧客の高齢化に伴い失われつつある。従業員や顧客は,VANという学校に入学した順に後輩から先輩になり,OBになっていくという構造が,会社やブランドとの一体感を醸成した。当時の顧客や従業員は,今でもVANとの体験価値を自身のアイデンティティとして持ち続けている。本稿ではその軌跡をたどり,VANが創出した価値の再評価を行う。

  • ― クレストホールディングス株式会社を事例として ―
    須田 孝徳, 恩藏 直人
    2021 年 40 巻 4 号 p. 94-103
    発行日: 2021/03/31
    公開日: 2021/03/31
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    マーケティングでは以前から,ビジネスを実施する市場の特性に関する議論がなされてきた。とりわけ,市場の成長段階に注目し,成熟市場への参入は避けるべきであると主張されてきた。成熟が進んだ市場におけるビジネスの展開は,イノベーションの誘発が難しく,成熟から衰退という流れの渦に巻き込まれやすい。体力のある大企業であればまだしも,経営資源の不十分な中小企業ともなればなおさらである。そうした中,リアル店舗の看板製作をメイン事業として成長してきたクレストホールディングス株式会社(以下,クレストHD)は,デジタル化による経営効率化と,店舗設置型看板や広告の効果測定を可能とするカメラ「esasy(エサシー)」の開発によってイノベーションに成功した。本稿では,クレストHDが取り組むデジタル・イノベーション戦略に着目し,デジタル化による生産性の向上によって得られた収益をもとに,イノベーションへの投資を行うことでデジタルトランスフォーメーションを遂げる取り組みについて考察する。クレストHDの事例は,中小企業においても,デジタル化による経営効率化とイノベーションによって,成熟市場の中で再活性化ができることを示唆している。

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