マーケティングジャーナル
Online ISSN : 2188-1669
Print ISSN : 0389-7265
41 巻, 2 号
デジタル・マーケティング
選択された号の論文の11件中1~11を表示しています
巻頭言
  • 西川 英彦
    2021 年 41 巻 2 号 p. 3-6
    発行日: 2021/09/30
    公開日: 2021/09/30
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    In a nutshell, digital marketing is marketing that utilizes digital technology. Digital marketing began about 30 years ago and has spread throughout society with the increased use of smartphones and new digital technologies, to the point where all marketing is now related to digital marketing. In response to these developments, there has been a great deal of research on digital marketing. The framework for understanding this research is based on digital technology and is organized into elements related to the digital environment, market research, marketing actions, marketing outcomes, and marketing strategy. This special issue includes five recent studies that focus on different areas of expertise in this research framework, but are all closely related to each other. Therefore, the results of these diverse studies assist with understanding of many different issues and will help both researchers and practitioners to broaden their horizons, beyond the marketing field. Furthermore, the rate of change of digital technology is causing many companies to use this technology in practice without full verification, and interactions between practitioners and researchers are needed to deepen knowledge in this area. Findings from the academy can promote these deeper interactions.

特集論文 / 招待査読論文
  • 山本 晶
    2021 年 41 巻 2 号 p. 7-18
    発行日: 2021/09/30
    公開日: 2021/09/30
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    オンライン・プラットフォームの成長に伴い,リユース行動の選択肢が広まっている。本研究では一時的所有行動という概念を提示し,その定義を明らかにした上でなぜいま本概念に着目するべきなのかを論じる。また,先行研究の詳細なレビューからリキッド消費,アクセス・ベース消費,共同消費,シェアリング・エコノミーといった近年登場した概念および従来の所有行動や共有行動と本概念との相違点を明らかにし,今後の研究機会を示す。本研究の貢献は近年注目される所有から利用への進化に着目し,一時的所有という新しい所有の在り方に焦点を当てることによって,既存のリキッド消費および所有行動の議論を補完するものである。

  • 根来 龍之, 足代 訓史
    2021 年 41 巻 2 号 p. 19-32
    発行日: 2021/09/30
    公開日: 2021/09/30
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    本稿は,マーケティング機能を対象に,媒介型プラットフォーム(Platform: PF)におけるPFと補完者(個別事業者)との関係の相互作用的進化について論じる。その目的は,既存のPF研究が基本的に依拠する,「PFを中心に据えて,PFとその補完者との間の関係を論じる見方」とは異なる関係モデルと一般化仮説を提示することである。そのために本稿では,飲食店チェーン業界において,PFと個別事業者との間で,顧客接点機能を相互発展させている現象を事例分析する。事例研究の結果として,以下の命題を主張する。媒介型PFと個別事業者のマーケティング機能は,相互的機能拡張競争によって発展する。また,個別事業者は媒介型PFのネットワーク効果を活用するために,協業的にPF機能の開発を行うことがある。

  • 遊橋 裕泰, 森田 純哉
    2021 年 41 巻 2 号 p. 33-45
    発行日: 2021/09/30
    公開日: 2021/09/30
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    GAFAに代表されるプラットフォーマーが世界を席巻している。彼らは,クロスプラットフォーム環境下において,ビッグデータの分析に基づくパーソナライゼーションサービスを提供している。だが,ローカルエリアやニッチマーケットまで彼らに情報流通を委ねてしまって良いのだろうか。本研究では,地域情報ポータルを運営する企業はまぞうと連携し,地域リソース(ブログ記事)のテキストマイニング分析をおこなった。その結果を踏まえ,マーケティング3.0に基づく感性検索サービスを企画・開発した。そして,感性検索サービスを市場投入する試行実験で,A/Bテストなどから評価をおこなった。一連の取り組みを通じ,パーソナライゼーションとは異なる,オルタナティブな知的情報サービスの出現可能性を示すことができた。

  • ― 探索的な消費者調査 ―
    西原 彰宏, 新倉 貴士
    2021 年 41 巻 2 号 p. 46-59
    発行日: 2021/09/30
    公開日: 2021/09/30
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    デジタル変革により流通機能の脱構築が進行している。これを受けた小売現場では,多様な流通ビジネスモデルが展開されている。こうしたビジネスモデルを背後に,消費者には様々な機能を兼ね備えたモバイルアプリが提供されている。消費者に提供される製品カテゴリーの総合性と提供される機能の統合性を軸にすると,多様なモバイルアプリの競争的な類型化が可能になる。マス・マーケットを対象とすると,製品カテゴリーの総合性と機能の統合性を高く保持するリーダー型のモバイルアプリの存在が見いだせる。逆に個のマーケットを対象とすると,それらの軸の逆方向に,市場特化型のモバイルアプリと機能特化型のモバイルアプリが見いだせる。本稿では,それぞれの流通ビジネスモデルを反映するモバイルアプリの競争類型を念頭におき,モバイルアプリに期待される買物のスマートさと買物の楽しさを中心にモバイルアプリの利用実態とその認識に関する調査結果を報告する。

  • ― 解釈レベル理論による効果の検討 ―
    須田 孝徳, 石井 裕明, 外川 拓, 山岡 隆志
    2021 年 41 巻 2 号 p. 60-71
    発行日: 2021/09/30
    公開日: 2021/09/30
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    消費者が使用するデバイスの多様化とともに,デバイスが消費者行動に及ぼす影響に注目が集まっている。本研究では,デバイスの違い(スマートフォン/PC)が消費者の解釈レベルに及ぼす影響を検討するとともに,デバイス特性と解釈レベルの一致が,消費者の評価や行動に及ぼす影響について検討する。本研究では3つのオンライン実験と,1つのフィールド調査を通した検証を試みる。研究1では,スマートフォン(vs. PC)で対象を見たとき,消費者はその対象をより近いと知覚することを明らかにする。研究2では,スマートフォン(vs. PC)を使用した場合,消費者の解釈レベルが低次になることを確認し,研究3では,スマートフォン(vs. PC)の使用が,低次の解釈レベルに対応した広告の評価に正の影響を及ぼすことを確認する。最後に研究4では,実際の購買データを分析することで,研究1~3で得られた知見の実務への応用可能性を検討する。

レビュー論文 / 招待査読論文
  • 森 直也
    2021 年 41 巻 2 号 p. 72-80
    発行日: 2021/09/30
    公開日: 2021/09/30
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    企業が実施するセールス・プロモーションとして,確定インセンティブおよび不確定インセンティブは共に頻繁に用いられている。一方の確定インセンティブとは,消費者がポイントなどの報酬を必ず獲得できる形態のインセンティブであり,他方の不確定インセンティブとは,消費者がポイントなどの報酬を抽選によって獲得できる形態のインセンティブである。これまで,インセンティブに関する研究の大半は,消費者のリスク回避性に着目し,必ずしも望ましい報酬を獲得できるとは限らないというリスクと結びついている不確定インセンティブは,確定インセンティブほど選好されないと主張してきた。しかしながら,近年では,不確定インセンティブに対して肯定的な研究が増加しており,注目を集めている。インセンティブに対する実務的および学術的な関心が高まっている状況に鑑みると,これまでのインセンティブに関する研究知見を整理し,残された課題を明確化することは,有意義な試みであると言いうるであろう。そこで本論は,確定インセンティブおよび不確定インセンティブに対して肯定的な既存研究を概観する。そして,今後の研究には,新たな研究潮流の形成が求められるということを指摘する。

  • 河股 久司
    2021 年 41 巻 2 号 p. 81-89
    発行日: 2021/09/30
    公開日: 2021/09/30
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    本論文は,2015年以降の色彩に関する研究をレビューすることによって,近年の色彩研究の潮流を把握することを目的とする。色に関する研究を,色の三属性である色相・明度・彩度それぞれの視点による研究と,モノクロとカラーの比較による研究の4つに大別してレビューを行った。その上で,色とマーケティングミックスとの関連を検討したところ,今回のレビューの範囲においては,色相に関する研究は,マーケティングミックスの各要素と関連するものが実施されていることが確認できた。一方,彩度に関してはマーケティングミックスのうち製品との関連のみ,明度に関しては製品と流通チャネルとの関連に限られた研究が実施されていることが明らかになった。また,クロスモーダル効果に着目すると,色と味覚や聴覚,触覚との関連についての研究はなされているものの,色と嗅覚との関係を検討している研究がないことが確認された。

マーケティングケース
  • ― 「はらぺこあおむし」ブランド市場拡大要因の考察 ―
    加藤 薫
    2021 年 41 巻 2 号 p. 90-99
    発行日: 2021/09/30
    公開日: 2021/09/30
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    本事例では,累計発行部数800万部を誇る大人気ロングセラー絵本「はらぺこあおむし」(エリック・カール作)がどのようにブランドとしてその市場を拡大していったのか,ブランド成長の変遷にそって要因を辿る。「はらぺこあおむし」は,日本では1976年に翻訳版絵本が出版された。しかし,ブランドビジネスはそれより遅れて2005年,ライセンスエージェントであるコスモマーチャンダイズィングがアメリカの企業と日本におけるエージェント契約を締結したことから始まった。今では約80社のライセンシーとともに様々な商品・サービスを提供するブランドに成長している。ライセンサーの方針の下,ライセンスエージェントとしてコスモマーチャンダイズィングのとってきたマーケティング戦略に注目しながら,ブランド市場拡大に導いた要因について考察していく。

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