マーケティングジャーナル
Online ISSN : 2188-1669
Print ISSN : 0389-7265
44 巻, 2 号
観光業のレジリエンス
選択された号の論文の13件中1~13を表示しています
巻頭言
  • 上原 渉
    2024 年44 巻2 号 p. 107-108
    発行日: 2024/09/30
    公開日: 2024/09/30
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    This special issue is dedicated to the resilience of tourism. In addition to the COVID-19 pandemic, Japan has been hit by numerous earthquakes and natural disasters. Tourism is characterized by its vulnerability and susceptibility to these disasters. In response to these crises, the tourism industry has taken various steps to restore demand. It is important for the sustainability of the industry to consider the measures taken before, during and after the crisis, in response to external factors beyond its control. The five papers in this issue discuss resilience from different perspectives, including recovery of business sales, community systems, and natural resources. The accumulation of such interdisciplinary knowledge will help with preparation for the next crisis.

特集論文 / 招待査読論文
  • ― SNSグループの分析 ―
    髙井 典子, 原 忠之
    2024 年44 巻2 号 p. 109-118
    発行日: 2024/09/30
    公開日: 2024/09/30
    [早期公開] 公開日: 2024/08/10
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    本稿の目的は,コロナ禍で立ち上がったインバウンド観光業界オンライン・コミュニティの活動がメンバーに対してソーシャル・キャピタル(SC)をもたらしたのか,それらは個々のメンバーのビジネスにおけるレジリエンスにつながったのかを検討することである。質問紙調査から得られたデータを分析した結果,全回答者の約3割が活動をとおしてSCを形成し,レジリエンスにつながった実感を持っていた。危機が観光業界内で業種と規模を横断する越境的ネットワークを生み,そこに積極的に参加した人びとがSCを形成しレジリエンスを駆動したことを示した本研究は,SCが危機対応に役立つという先行研究の知見に加えて,逆に危機がSCを生みレジリエンスを駆動する可能性を示した。

  • ― 近年の地震災害とコロナ禍を対象に ―
    栗原 剛, 新庄 瑳やか
    2024 年44 巻2 号 p. 119-128
    発行日: 2024/09/30
    公開日: 2024/09/30
    [早期公開] 公開日: 2024/08/08
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    持続可能な地域形成の重要性が高まる中,巨大地震をはじめとする自然災害や感染症といった観光需要に対して負のインパクトを与える事象からいかに回復できるかが一つの論点となり得る。本研究では,地域が受け入れる平時の観光需要集中度に着目して,負のイベントからの観光需要回復力との関連を検証し,観光地域における今後のマーケティング政策への知見を得ることを目的とする。本稿では,観光地が受け入れる国籍別の宿泊客数を集中度と定義し,近年国内で発生した地震災害および新型コロナウイルス感染症を対象に回復力との関連を検証した。結果,先行研究で提案された集計値としての外客割合と回復力との関連は支持されず,本研究で提案した集中度と回復力とは一定の関連が示唆された。

  • 沢柳 知彦
    2024 年44 巻2 号 p. 129-137
    発行日: 2024/09/30
    公開日: 2024/09/30
    [早期公開] 公開日: 2024/08/10
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    電子付録

    2020年3月から2022年9月までの日本における新型コロナウィルスの流行期には,価格水準に関係なく従来の宿泊需要が不足したため,ダイナミック・プライシングによる客室売上最大化のためのホテルレベニューマネジメントのメカニズムが機能しなかった。このような状況は,ケインズ経済学の世界における金融政策上の流動性の罠に似ており,その状況下では金利がゼロに近づいて下がっても投資が喚起されない。かかる状況下,ホテル経営者は生き残るために,単なるダイナミック・プライシングではなく,他の方法やビジネスモデルで収益を上げる必要があった。本研究は,東京のビジネスホテルセクターのケースにおいて,客室料金引き下げがパンデミック時の客室需要を開拓しないという流動性の罠がホテルレベニューマネジメントにおいて存在したことを証明するものである。また,このような流動性の罠の下で,ホテルマネジャーが手持ちの経営資源を再配置することで,勃興する非伝統的な需要を取り込み,売上を生み出す方法がいくつかあったことも明らかになった。

  • ― 浜の暮らしのはまぐり堂を事例に ―
    鎌田 裕美
    2024 年44 巻2 号 p. 138-148
    発行日: 2024/09/30
    公開日: 2024/09/30
    [早期公開] 公開日: 2024/08/09
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    観光地は自然資源に依存していることが多く,災害への対処や災害後の復興は重要である。復興は災害前の状態に戻ることのみではなく,新しい社会生態システムが出現することをも意味し,それに果たす観光の役割は大きい。本研究は,宮城県石巻市蛤浜にある浜の暮らしのはまぐり堂を事例に,インタビュー調査を通じて,東日本大震災後の集落の復興における観光の役割を考察した。はまぐり堂はカフェを中心に地域資源の活用や地域課題の事業化を通じて,集落に新しい社会生態システムを構築している。復興における観光の役割は,災害により地域が外に開かれ,1)人を呼ぶきっかけとなり,2)外部の人との共創で価値を見つけ,3)自然や社会の生態系を循環させることである。

  • ― 多層的な需要とその持続可能性 ―
    エバーソール ドーラン, ペング マーカス, 樽井 礼, 柘植 隆宏
    2024 年44 巻2 号 p. 149-157
    発行日: 2024/09/30
    公開日: 2024/09/30
    [早期公開] 公開日: 2024/08/23
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    本論文では米国ハワイ州オアフ島の観光需要を多角的に推計する。環境価値評価に関する文献は,対象となる場所・活動に関して単一の使用または目的に対する支払意志額の推定に焦点を当てることが多い。本研究では現地調査のデータを利用して多層的な観光,つまりオアフ島旅行全体と島内各地のビーチ訪問に関する需要を複数のトラベルコスト法を用いて推定する。調査データは,オアフ島を複数回訪問した経験がある旅行者についてもビーチ訪問回数は減少しないことを示唆する。オアフ島訪問についての消費者余剰推定値は一人一回訪問あたり3,400~5,480ドルとなり,離島リゾートへの旅行費用に関する文献と整合的な結果となる。訪問者の総余剰は210億ドルから340億ドルにのぼる。消費者余剰は各旅行中のビーチ訪問回数に応じて増加する傾向があり,ビーチを維持することが観光の持続可能性に貢献することを示唆する。訪問客のビーチ需要推定結果によると島内各ビーチ間の代替可能性は限られており,あるビーチの損失が他のビーチへのアクセスによって補われる可能性が低いことが示唆される。

受賞論文 / 招待査読論文
  • 河股 久司, 守口 剛
    2024 年44 巻2 号 p. 158-166
    発行日: 2024/09/30
    公開日: 2024/09/30
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    近年,ブランド・ロゴの変更を行う企業が増えている。変更の仕方はさまざまであるが,ロゴの形状は変えずに,色だけを変更する企業も挙げられる。そこで,本研究は,ブランド・ロゴの変更時における彩度の変化が消費者のブランド態度に与える影響を検討する。色の鮮やかさを示す彩度は,消費者に活力やはつらつさといった印象を与えることが知られている。そこで,ブランド・ロゴの変更時における彩度の変化が,ブランドの活力感や,ブランド態度に与える影響を検討した。3つの実験を通じて,1)彩度が高いロゴマークはブランドの活力感の知覚を高める,2)ロゴ・カラー変更時に彩度を高めることで,ブランドの活力感の知覚が高まり,その結果として,ブランドへの態度を高める,3)ブランドの活力感知覚がブランドへの態度に与える影響は,国際展開しているブランドのほうが,国内展開のみのブランドよりも強まることが明らかとなった。ブランド・ロゴ変更時に彩度がもたらす影響とブランド態度の関係を明らかにした本研究は,ロゴの変更を検討する企業に対して多くの示唆を提供すると考えられる。

レビュー論文 / 招待査読論文
  • 北澤 涼平
    2024 年44 巻2 号 p. 167-173
    発行日: 2024/09/30
    公開日: 2024/09/30
    [早期公開] 公開日: 2024/08/23
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    電子付録

    UberやRent the Runwayなどのプラットフォームを媒介して,消費者が製品を所有することなく利用することができるサービスのことを,アクセスベース・サービスと呼ぶ。この新しいサービスの実務的流行を受けて,その選択要因を探究する研究が増加している。しかしながら,既存研究の知見を包括的に整序する試みは,存在しない。そこで,本論は,2017年以降の最新のマーケティング研究によって見出されたアクセスベース・サービスの選択要因を,(1)アクセス独自要因,(2)社会的要因,(3)心理的要因,(4)技術的要因という4つの要因に分類する。そうすることで,本論は,今後の研究の方向性として,所有とアクセスとの間の選択課題の吟味,および,無形コンテンツカテゴリーにおける選択要因の探究という2点を指摘する。そして,プラットフォームのマーケターや経営者に対して,どのような施策が自社プラットフォームの収益性に良い影響を及ぼすのかという戦略上の指針を提供する。

  • ― 技術的品質と機能的品質に注目して ―
    川上 和真
    2024 年44 巻2 号 p. 174-181
    発行日: 2024/09/30
    公開日: 2024/09/30
    [早期公開] 公開日: 2024/08/01
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    近年,スポーツ産業は多面的な産業へと進化し,変化を続けている。とりわけ,観戦型スポーツにも注目が集まり,関連するマーケティング研究も盛んである。一般的に,顧客満足やロイヤルティが形成される過程で,先行因子となる知覚品質には多くの研究者が関心を向けてきた。知覚品質は,技術的品質(結果)と機能的品質(プロセス)の側面を有しており,観戦型スポーツの文脈では,技術的品質が顧客満足の強い予測因子であり,機能的品質の役割が相対的に弱いことが示唆された。しかし,研究結果の表面的な解釈は問題を引き起こすかもしれない。観戦型スポーツは,サービスの生産と消費の大部分が同じ空間に存在し,サービス提供者と顧客が相互作用する時間は,他のサービスよりも相対的に長くなる。また,選手のパフォーマンスは技術的品質として議論されるが,機能的品質の側面を内包する場合がある。サービスはプロセスの消費であり,今後は複雑な相互作用プロセスのブラック・ボックスを解明し,多様な要素の組合せによるサービス全体としてのマーケティングが重要となる。

マーケティングケース
  • ― ユナイテッドアローズの共創プロジェクト ―
    渡邉 裕也, 西川 英彦
    2024 年44 巻2 号 p. 182-189
    発行日: 2024/09/30
    公開日: 2024/09/30
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    電子付録

    米国に比べ日本の小売業の生産性が低いという課題に対し,本稿は小売店舗販売員の新たな価値を提示するものである。それは,小売店舗販売員によるイノベーションという価値である。日本のアパレル小売業であるユナイテッドアローズ社のグリーンレーベルリラクシングでは,企業内リードユーザーである店舗販売員のアイデアを起点に共創プロジェクトを立ち上げ,成果をあげている。まず,共創プロジェクト導入の背景およびその概要,その新製品を説明する。次に,店舗販売員がイノベーションに貢献できる要因と,共創プロジェクトと通常の企画開発との成果の比較を解説する。最後に,共創プロジェクトが成果をあげる要因を2点に整理する。第1に,アイデア公募によって,リードユーザーネスが高く,自身と顧客ニーズを融合できている店舗販売員を巻き込めている点である。このリードユーザーネスの高さが,市場成果やアイデアの評価を高めることにつながっている。第2に,共創プロジェクトでの企画開発部門との共創や,モチベーションの向上が,共創プロジェクトを有効に機能させている点である。この共創プロジェクトが,市場成果やアイデアの評価を高めることにつながっている。

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