マーケティングジャーナル
Online ISSN : 2188-1669
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最新号
デザインとマーケティング
選択された号の論文の13件中1~13を表示しています
巻頭言
  • 上原 渉
    2026 年46 巻4 号 p. 335-337
    発行日: 2026/09/30
    公開日: 2026/09/30
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    本特集では,デザイン研究とマーケティング研究の関係に焦点を当てる。マーケティング研究におけるデザインの議論は,製品デザインやパッケージデザインに限定されていた。近年,デザインの意味や適用範囲が拡大し,複雑な経営課題や社会課題へのアプローチの1つとしてデザインが広く定義されるようになったものの,デザインを企業経営の中でどのように位置づけ,どのように受け入れるかという点ではまだ課題がある。ユーザーを起点とする発想という点ではマーケティングとデザインは類似しており,近接分野としてマーケティングとの関係を理解する必要がある。目指す課題解決の方法やプロセスといった方法論の違いについて相互の理解を深め,研究・実務における架橋を期待したい。

特集論文 / 招待査読論文
  • 鷲田 祐一, 肥後 愛
    2026 年46 巻4 号 p. 338-349
    発行日: 2026/09/30
    公開日: 2026/09/30
    [早期公開] 公開日: 2026/04/17
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    電子付録

    本研究では, インハウスデザイン組織を持つ日本の大企業のべ80社が参加して, 統一的な質問紙を用いた各社内での活動評価調査を4年間にわたって実施した。筆者らはすべてのデータを集計し, 主成分分析をした結果, インハウスデザイン組織の機能・役割を表象する7つの成分を抽出することができた。彼らはこの調査システムと抽出された成分をD-KPIと命名し, すべての企業に対して自由かつ無料での参加が可能になるよう開放された持続的なプログラムとして運営している。このような体制を土台にして, 彼らがD-KPIデータと企業業績データの関係を慎重に探求した結果, 「提案力・情報提供」成分について, 企業業績に対するポジティブな相関関係が確認された。インハウスデザイン組織が, 高い水準で「提案力・情報提供」成分についての評価を獲得している企業は, その翌年に高い水準のROEを実現する可能性が高いことが検証された。より詳細にこの相関関係を検証した結果, ROEと「提案力・情報提供」成分は互いに高めあう相乗効果を持っていると推察された。さらに, インハウスデザイン組織が伝統的な狭い意味の「デザイン」を超えて, 広い意味の「デザイン」を実践する組織へと変化する過程にあることも実証的に検証された。

  • ― 因果関係の探索と研究課題の抽出 ―
    黒岩 健一郎
    2026 年46 巻4 号 p. 350-359
    発行日: 2026/09/30
    公開日: 2026/09/30
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    本稿では,デザイン思考を機能させるために不可欠な「デザイン態度」を育む手段として,インプロビゼーション(以下「インプロ」)が与える影響と今後の研究課題について考察した。デザイン態度とインプロに関する先行研究のレビューを通じて,インプロの実践がデザイン態度の構成要素のうち,特に「不確実性・曖昧性への耐性」「共感」「多様な視点の統合」という3つの能力を育む可能性を導き出した。今後の研究課題として,①概念定義の確立と測定指標の開発,②効果の持続性や内面化・定着プロセスの解明,③年齢や心理的安全性といった影響を調整する変数の探索の3点を提示した。本稿の理論的貢献は,インプロをたんなるアイスブレイクではなく,デザイン思考を支える態度的基盤を育む実践として位置づけた点にある。

  • ― 提示手法が消費者のフィードバックの量に及ぼす影響 ―
    古江 奈々美
    2026 年46 巻4 号 p. 360-369
    発行日: 2026/09/30
    公開日: 2026/09/30
    [早期公開] 公開日: 2026/06/18
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    J-STAGE Data

    本研究は,革新的コンセプトの可視化の効果的な方法の在り方を模索するために,消費者に対する製品コンセプトの提示手法が,消費者が行うフィードバックの量に及ぼす影響を検討することを目的とする。計468名を対象に,架空のコンセプトを,9種類の異なる方法で提示する実験を行った結果,フィードバックの量に影響するルートには,理解の容易性が直接駆動するルートと,知覚された努力が返報性を介して駆動するルートの二系統が存在することが示された。さらに,追加分析の結果,提示手法によりフィードバックを促進するルートが異なる傾向が確認された。具体的には,動画や擬人化等の提示方法では,理解の容易性ルートが機能するのに対し,比喩等の提示方法は,コンセプトの具体性から提案者の努力が知覚され,それがフィードバックを誘発する。また,利用者目線でのナラティブな説明を用いた提示方法は,両方のルートが駆動するバランス型であることが明らかになった。本研究の一連の結果は,提示手法の選択が単なる情報の伝達効率の問題ではなく,受け手がコンセプトに向き合う心構えを規定している可能性を示唆している。

  • ― 早期起業家教育へのデザイン思考アプローチ ―
    羽山 康之, 平井 康之
    2026 年46 巻4 号 p. 370-380
    発行日: 2026/09/30
    公開日: 2026/09/30
    [早期公開] 公開日: 2026/08/21
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    デザイン思考は,創造的な問題解決やユーザー中心のイノベーションを促す手法として,高等教育における起業家教育に広く導入されている。しかし,小・中学生のような低年齢層の起業家マインド育成に対する同アプローチの適用可能性については,実践的・学術的な知見が依然として不足している。本研究は,低年齢層の起業家精神育成におけるデザイン思考の有効性を実証的に探ることを目的とする。福岡市,民間企業,および国立大学の産官学連携によって実施された「FUKUOKA オープンイノベーションキャンプ 2024」を事例として分析した結果,多様な大人との共創環境による心理的安全性の担保と,試行錯誤(プロトタイピング)の経験が,児童の起業意向やオープンイノベーションへの理解度を向上させることが示唆された。本稿は,早期起業家教育におけるデザイン思考の実践的価値と,地域全体でのイノベーション人材育成のあり方を提示する。

  • ― 世代間の比較とアイ・トラッキングによる分析 ―
    丘 增平, 黄 國睿
    2026 年46 巻4 号 p. 381-391
    発行日: 2026/09/30
    公開日: 2026/09/30
    [早期公開] 公開日: 2026/09/24
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    電子付録

    本研究は,モバイル・バンキングのアプリに使われる擬人化されたキャラクターが,どのようにコミュニケーションのエージェントとして機能するかを検証した。研究1では,X世代,Y世代,Z世代のユーザー計485名を対象にサーベイ調査を実施し,モバイル・バンキングに対する期待と実際の体験を世代間で比較した。その結果,セキュリティ,プロフェッショナリズム,サービスの円滑さ,利便性において大きな期待との乖離が明らかになり,特にZ世代では,シームレスで魅力的なサービス体験に関する期待が満たされていない傾向が全般的に見られた。研究2では,Y世代およびZ世代のユーザーを対象に探索的なアイ・トラッキング実験を行った。実用的,あるいは快楽的なモバイル・バンキング・タスクにおいて,文章のみの場合とキャラクターを伴った文章の場合とを比較した。その結果,ユーザーの注意は主にタスクとの関連性によって導かれていることが示唆された。具体的には,擬人化されたキャラクターは,周辺的なインターフェース要素として使用された場合には限定的な注意しか引き付けなかったが,簡潔でタスクに関連するメッセージと直接結び付けられた場合には,効果的なコミュニケーションエージェントとなった。キャラクターを活用したコミュニケーションは,快楽志向のタスクにおいて,視覚的な顕著性が高まるという予備的な傾向を示した。これらの知見を総合すると,擬人化されたキャラクターの価値は,単に視覚的な魅力にあるだけでなく,サービス・ジャーニーの適切なタイミングで顧客とのコミュニケーションを支援する能力にあるという探索的な証拠が得られた。本研究は,モバイルサービス体験および擬人化されたコミュニケーションの研究に貢献するとともに,世代に応じた金融インターフェースを設計するための実践的な指針を提供するものである。

受賞論文 / 招待査読論文
  • ― 消費者ウェルビーイングを促進させる自己拡大と自己拡張の効果検証 ―
    西本 章宏
    2026 年46 巻4 号 p. 392-402
    発行日: 2026/09/30
    公開日: 2026/09/30
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    J-STAGE Data

    本研究は,AI搭載のスマートスピーカー(smart voice assistants: SVAs)の2つの主要なインテリジェンス特性が消費者のウェルビーイングに与えるメカニズムを,手段-目的連鎖モデルの視座から検討する。本研究では,SVAsのユーザー234名に対してオンライン調査を行い,構造方程式モデリングによって分析を行った。その結果,自律性は主に消費者の自己拡大を引き起こし,その相互作用経験は直接的にSVAsとの共同生活に対する主観的ウェルビーイングを高め,間接的にもSVAsに対する擬人化と親近感を媒介して高めることがわかった。一方で,双方向性は消費者の自己拡張のみを引き起こし,その相互作用経験は直接的にSVAsとの共同生活に対する主観的ウェルビーイングを高め,間接的にはSVAsに対して親近感のみを媒介して高めることがわかった。

レビュー論文 / 招待査読論文
  • ― 先行要因・形成プロセス・成果の統合的レビュー ―
    西川 郷介
    2026 年46 巻4 号 p. 403-412
    発行日: 2026/09/30
    公開日: 2026/09/30
    [早期公開] 公開日: 2026/06/26
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    電子付録

    本研究は,企業間(B2B)取引におけるデジタル・コンテンツ・マーケティング(DCM)が顧客企業のエンゲージメント(CE)をどのように形成し,どのような成果へ結びつくのかを体系的に明らかにすることを目的として,システマティックレビューを実施した。その結果,B2B DCMはコンテンツ特性,顧客特性,カスタマージャーニー(CJ)という複数の要因によってCEを喚起し,その反応は認知→感情→行動へと段階的に進展することが確認された。さらに,CEは関係的信頼,関係価値の深化,パートナーシップ形成,営業生産性,売上・利益,さらには組織レベルの成果へと波及する多層的な成果をもたらすことが示された。一方で,CEの生成メカニズムの精緻化,B2B特有の複雑性の統合,成果への因果経路の解明といった重要な研究ギャップも明らかとなった。本研究は,B2B DCMとCEの統合的理解を進めるとともに,今後の理論発展と実務的応用に向けた研究課題を提示するものである。

  • ― TCCMフレームワークを用いた文献レビュー ―
    岡部 沙麗
    2026 年46 巻4 号 p. 413-423
    発行日: 2026/09/30
    公開日: 2026/09/30
    [早期公開] 公開日: 2026/09/24
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    多様性,包摂性,公平性に対する社会的関心の高まりにより,障害を有する消費者に対する学術的関心も高まっている。しかしながら,既存研究の多くは身体障害に焦点を当てており,知的障害および発達障害を有する個人に関する消費者行動研究は十分に発展していない。本研究では,TCCM(理論,コンテクスト,特性,方法論)フレームワークを用いて関連する27本の文献について包括的なスコーピングレビューを実施し,既存研究を体系的に整理するとともに,今後の研究課題を提示する。理論には多様性が見られるものの,複数の研究に共通して用いられている理論は限られており,本分野が依然として理論発展の初期段階にあることが示唆される。コンテクストの観点からは,デジタル技術,特有の消費行動,ソーシャルメディアの利用に焦点を当てた研究が多く見られる。今後は,人工知能,インフルエンサー,社会的相互作用といった新たなトピックが取り上げられる可能性が高い。特性の観点では,参加者のタイプ,障害の種類および度合い,従属変数に基づいて既存研究を分類することが可能である。今後の研究では,より詳細なセグメンテーション,他のアイデンティティとの相互作用,企業のマーケティング戦略の影響などを検討することが期待される。方法論の面では,多くの研究がインタビューや調査を用いているが,言語的コミュニケーションに困難を抱える消費者の理解を深めるためには,多様な手法を組み合わせることが有効であると考えられる。また,時間的・社会的影響を考慮するために,縦断的研究も不可欠である。

投稿査読レター論文
  • ― 日本の消費者パネルデータを用いたTanusondjaja et al.(2021)の再現と拡張 ―
    原 拓也
    2026 年46 巻4 号 p. 424-427
    発行日: 2026/09/30
    公開日: 2026/09/30
    [早期公開] 公開日: 2026/06/16
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    本研究は,Tanusondjaja et al.(2021)の発見を日本市場において再検証し,市場の「粒度」に着目した拡張分析を行うものである。Tanusondjaja et al.(2021)は英米の小売スキャナーデータを用いた分析で,「小規模な企業は市場シェア獲得(SG),大規模な企業はカテゴリー拡大(CG)と売上成長の関連が強い」ことを示した。本研究では,日本の消費者パネルデータ(2020–2024年,11カテゴリー/62サブカテゴリー,6,010社)を用いて同様の分析を行い,この発見が日本市場においても成立することを確認した。さらに,市場の「粒度」に着目した拡張分析により,カテゴリー視点では小規模であっても,サブカテゴリー視点で大規模な企業では,サブカテゴリーのCGと売上成長の関連が相対的に強まることを示した。これらの結果は,企業が市場をどの粒度で定義するかによって有効な成長戦略が異なりうることを示唆し,市場選択を主体的な戦略課題として捉え直す重要性を示唆する。

マーケティングケース
  • ― SPACE SHOWER SWEET LOVE SHOWERにみる場所体験・メディア体験・関係価値への3つの価値変換 ―
    濵田 俊也
    2026 年46 巻4 号 p. 428-437
    発行日: 2026/09/30
    公開日: 2026/09/30
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    音楽フェスティバルであるSPACE SHOWER SWEET LOVE SHOWERのブランド形成を,主催者による価値の変換に注目し検討した。第1に,日比谷野外大音楽堂から山中湖への開催地の移行により,ライブ鑑賞を中心とする体験は,富士山や湖畔の景観,移動,滞在を含む,場所体験へと変換された。第2に,Space Shower TVの放送,配信,公式サイト,SNSにより,現地での体験はメディア体験へ変換された。第3に,有料会員サービスのラブシャビレッジにより,参加体験は1回の来場経験にとどまらず継続的な関係価値へと変換されつつある。主催企業からは,Space Shower TVを中心としたメディア展開が,告知や記録に加え,開催前の期待形成,当日の共有,開催後の再体験を通じて,現地体験を年間を通じたブランド接点へ拡張する役割を担っていることが示された。以上の事例は,音楽フェスティバルだけでなく他のエンタテインメント・ビジネスに対しても示唆を有する。特に現地体験をメディア体験へと変換し,さらにDXとUXを通じて継続的な関係構築へと接続する上で,メディアの活用とメディア編集力が重要な役割を果たすことを示している。

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