マーケティングジャーナル
Online ISSN : 2188-1669
Print ISSN : 0389-7265
最新号
グローバルツーリズム時代の訪日旅行者の心理
選択された号の論文の15件中1~15を表示しています
巻頭言
  • ― 多文化環境下の知覚・意思決定・満足 ―
    小野 晃典
    2026 年46 巻3 号 p. 227-230
    発行日: 2026/06/30
    公開日: 2026/06/30
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    電子付録

    Despite the global prominence of inbound travel, research has rarely examined travelers’ internal psychological processes, particularly in the Japanese context. This preface reviews five featured articles that collectively advance a deeper understanding of how inbound travelers perceive, decide, and evaluate their experiences within multicultural tourism environments. The first article investigates how travelers make dining decisions when confronted with conflicting evaluations from different social groups, highlighting the role of social identity motives. The second examines how inbound tourists dynamically update their internal reference prices as they adapt to Japanese market conditions. The third analyzes how metaphor-based advertising shapes destination image formation across cultural contexts. The fourth explores cross-national differences in country stereotypes—specifically warmth and competence—and their influence on intentions to visit Japan. The fifth article evaluates the dual effects of cross-cultural service on domestic tourists’ satisfaction, revealing both positive and negative consequences. Drawing on quantitative data collected in travelers’ home countries and in Japan, these studies offer theoretical contributions to tourism psychology and practical implications for destination marketing, pricing, and service management. Together, they illuminate emerging directions in the study of inbound tourism behavior.

特集論文 / 招待査読論文
  • 丘 尚知, 孫 涛, 呉 燁
    2026 年46 巻3 号 p. 231-241
    発行日: 2026/06/30
    公開日: 2026/06/30
    [早期公開] 公開日: 2026/06/04
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    電子付録

    日本において,食の体験は国際観光の中核的な要素として重要性を高めている。しかし,情報通信技術が発達した旅行環境の中で,観光客はしばしば「準拠集団間の対立」に直面する。これは,異なる社会集団が同一の飲食店に対して大きく異なる評価を示す状況を指す。本研究は,社会的アイデンティティ理論および自己イメージの概念に基づき,中国人観光客が「同胞(中国人)」「外国人観光客」「日本人居住者」という三つの異なる集団からの相反する推薦をどのように判断・選択するのかを検討する。シナリオを用いた実験の結果,集団への帰属意識が強い観光客は同胞である中国人観光客の推薦に従う傾向が示されたが,この傾向は他者と異なりたいという欲求によって弱められることが明らかとなった。特に,「流行志向の人」という理想的な社会的自己イメージをもつ観光客は,他者との差異を求める場合,外国人観光客による評価を優先する傾向を示した。一方で,日本人居住者による推薦に対する選好と自己イメージとの間には,有意な関連は確認されなかった。本研究は,飲食選択における新たな分析枠組みとして「準拠集団間の対立」を提示するとともに,日本の観光振興および観光地の運営に対して重要な示唆を提供するものである。

  • ― 出身地域差と製品差に着目した非線形階層ベイズモデリング ―
    北澤 涼平, 加藤 瑞樹
    2026 年46 巻3 号 p. 242-253
    発行日: 2026/06/30
    公開日: 2026/06/30
    [早期公開] 公開日: 2026/06/04
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    J-STAGE Data 電子付録

    本研究は,訪日旅客の日本製品に対する内的参照価格が,日本における滞在日数の増加とともにどのように更新されるかを検討した。提唱された仮説の妥当性を吟味するために,東京の有名観光地において,中国・韓国・香港からの訪日旅客を対象として,日本のビール,ソフトドリンク,鉄道運賃に対する内的参照価格に関する質問を行うインターセプト調査を実施した。指数関数的な収束過程を組み込んだモデルをマルコフ連鎖モンテカルロ法によって推定した結果,(1)訪日旅客の内的参照価格は,滞在日数の増加に伴い,出身地域基準の価格水準から日本基準の価格水準へと更新されていくということと,(2)出身地域の製品価格が日本の製品価格より高い下方修正文脈における更新速度は,出身地域の製品価格が日本の製品価格より低い上方修正文脈における更新速度より速いということを支持する経験的証拠が得られた。本研究の知見は,訪日旅客の旅行先の自治体や企業のマーケターが策定する価格戦略に対して指針を提供する。

  • ― 日本国内居住者と見込み国外旅客 ―
    竹内 亮介, 王 珏, 兪 嘉寧
    2026 年46 巻3 号 p. 254-264
    発行日: 2026/06/30
    公開日: 2026/06/30
    [早期公開] 公開日: 2026/06/13
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    J-STAGE Data 電子付録

    世界的な旅行需要が堅調に成長を続けている一方で,多くの観光地マーケティング組織は,国内外の旅客にブランドイメージを形成してもらうことに苦戦している。この状況を打開しうる戦略の一つがメタファー広告であり,それによって視聴者は,広告対象の観光地のことを著名な別の観光地の観点から理解できるようになる。学術的にも実務的にも意義があるにもかかわらず,先行研究は,起点観光地のグローバル性・地理的範囲・標的視聴者の潜在的な相乗効果には焦点を合わせてこなかった。そこで,起点観光地のグローバル性と地理的範囲が標的視聴者の観光地イメージをいかに形成するかについて,日本と中国における二つの実験を通じて検討することを本研究の目的に設定する。スタディ1は,日本居住者を対象に,二つの効果的な組み合わせを識別する。具体的には,メタファー広告が(1)高度にグローバルな起点観光地と地域レベルの範囲を組み合わせる場合か,(2)適度にグローバルな起点観光地と大陸レベルの範囲を組み合わせる場合に,彼らは好ましい観光地イメージを形成する。スタディ2は,中国在住の見込み国外旅客を対象に,スタディ1とは異なるパターンとして,起点観光地が高度にグローバルと知覚される場合であっても地域レベルの範囲が優位でなくなることを見出す。本研究は,いかにメタファー表現が観光地イメージを形成するかについて明確化することによって,観光地広告研究の知見を拡張する。また,国内居住者のみ・国外旅客のみ・両方をそれぞれ標的視聴者に設定する三つのシナリオに沿って,観光地マーケティング組織に実践的な指針を提供する。

  • ― 訪日意図の国際比較分析 ―
    石井 隆太, 丸山 雄大, ルー ゴック, 菊盛 真衣
    2026 年46 巻3 号 p. 265-276
    発行日: 2026/06/30
    公開日: 2026/06/30
    [早期公開] 公開日: 2026/06/18
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    J-STAGE Data 電子付録

    本研究は,非アジア圏からの長距離観光客を対象に,カントリーステレオタイプがどのように形成されるのか,および,それが訪日意図にどのような影響を及ぼすのかを検討する。具体的には,カントリーステレオタイプを,温かさ(warmth)と有能さ(competence)から捉えて,これらの次元が過去の訪日経験によってどのように変化するのか,さらに,それらが訪問意図に及ぼす影響が先進国市場と新興国市場でどのように異なるのかを探究する。Study 1では,4か国から収集したデータを用いて,訪日経験有無とカントリーステレオタイプの関係を検討した。分析の結果,訪日経験は,有能さの知覚よりも温かさの知覚を強く高めることが示された。Study 2では,先進国市場(英国)と新興国市場(メキシコ)を対象に国際比較分析を行った。分析の結果,先進国市場の文脈では,温かさが訪問意図のより重要な規定要因となる一方,新興国市場の文脈では,有能さがより重要な規定要因となることが示された。本研究は,カントリーステレオタイプと訪問意図の理解を進展させることによって,国際マーケティング研究の前進に一定の貢献を成すとともに,観光業界における実務家および政策立案者に対して実務的示唆を提示する。

  • 千葉 貴宏
    2026 年46 巻3 号 p. 277-287
    発行日: 2026/06/30
    公開日: 2026/06/30
    [早期公開] 公開日: 2026/05/21
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    J-STAGE Data 電子付録

    異文化の顧客に対するサービス提供者の文化的適応,すなわち文化横断的サービスの提供は,その顧客にとっては好ましいだろうが,同一サービス環境には国内旅行客もまた存在している。しかし,文化横断的サービスが国内旅行客の満足度へ正負の影響を及ぼしうると指摘した研究は存在しない。そこで本研究は,インバウンド客に対する高水準の異文化適応が,国内旅行客へのサービス水準を低下させる点,および,国内旅行客の不衡平感を生じさせる点に着目し,文化横断的サービスが有する正負の影響を仮説化した。構造方程式モデリングの結果,文化横断的サービスは,1)インバウンド客に比べて通常サービスの相対水準が低下するという不均衡を感じさせ,国内旅行客の満足度を低める一方,2)サービス提供者の有能さを感じさせ,国内旅行客の満足度を高めるが,3)通常サービスの絶対水準の低下には結びつかないということが示された。加えて,ブートストラップ法による間接効果の検定の結果,4)通常サービスの絶対水準の低下が知覚されると,満足度の低下の度合いが大きいということが示された。

受賞論文 / 招待査読論文
  • ― 抽象的マインドセットの時に消費者は「自己とブランドのつながり」を重視する ―
    杉谷 陽子, 外川 拓
    2026 年46 巻3 号 p. 288-298
    発行日: 2026/06/30
    公開日: 2026/06/30
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    消費者の購買意図は,自己とブランドのつながり(self-brand connection; SBC)などの個人的要因と,社会規範などの社会的要因の双方から影響を受ける。しかし現実には,「私はブランドAが好きだが,友人はブランドBを薦めてくる」といったように,両者が葛藤する場面も少なくない。このような葛藤状況において,個人的評価と社会的評価のどちらが意思決定で優先されるのかは,先行研究では十分に明らかにされていない。そこで本研究は,解釈レベル理論を用いて,ブランド購買において消費者が本質的に重視しているものは何かを検討した。解釈レベル理論によると,人は抽象的マインドセットの時には,自身の行動目標に強く関連のある本質的な要素を重視するが,具体的マインドセットにおいては,目標と関連の薄い,物事の副次的な側面にも注目するようになる。3つの研究を通じて,抽象的マインドセットの消費者はブランド選択において個人的評価(自己とブランドのつながり)のみを重視するが,具体的マインドセットの消費者は個人的評価に加えて社会的要因(社会規範)も重視することが明らかになった。この結果は,ブランド購買において消費者が本質的に求めているのは,ブランドの社会的評価ではなく,個人的評価(自己とブランドのつながり)であることを示唆している。

レビュー論文 / 招待査読論文
  • ― 体系的文献レビューと統合的次元フレームワーク ―
    桂 隠
    2026 年46 巻3 号 p. 299-306
    発行日: 2026/06/30
    公開日: 2026/06/30
    [早期公開] 公開日: 2026/04/18
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    電子付録

    ソーシャルメディア・コミュニケーションにおいてインフルエンサーの普及の進展に伴い,エンゲージメントはインフルエンサー・マーケティングの効果を評価する主要指標として位置づけられるようになった。しかし,エンゲージメントの概念化と測定に関する研究は依然として断片的な状況にある。本研究では文献スクリーニングにPRISMAプロセスを採用し,2020年から2025年までの18件の研究を「理論・文脈・特性・方法」フレームワークを用いて文献レビューを実施した。

    研究結果によれば,大半の研究は行動的エンゲージメント指標,特に「いいね」や「コメント」といった容易に定量化可能な行動に焦点を当てている一方,認知的・感情的次元の測定は著しく未発達である。購買意図や行動をエンゲージメント枠組みに組み込む研究もあれば,これらを結果変数や別個の変数として扱う研究もある。さらに,対象も研究によって異なり,ブランドを重視する研究もあればインフルエンサーに焦点を当てる研究もあり,エンゲージメントの概念的明確性を複雑化させている。本レビューは,インフルエンサー・マーケティング研究におけるエンゲージメント理解を深める理論的な示唆を提示する。

  • ― ブランドの世界観研究への接続 ―
    深澤 幸村
    2026 年46 巻3 号 p. 307-316
    発行日: 2026/06/30
    公開日: 2026/06/30
    [早期公開] 公開日: 2026/05/08
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    本稿は,近年ブランドの実務で重視されるブランドの世界観について,その理論的基盤を明らかにすることを目的に,コンテンツ研究における世界構築研究を探索的にレビューした。まず,世界観の一般的用法やブランド研究における議論を整理し,近接概念との違いを検討したうえで,世界構築の研究を概念,構成要素,構築プロセス,効果の観点から整理した。その結果,世界構築は物語の背景となる世界の構築プロセスであり,その効果として,物語理解や没入への影響などが示唆された。これらの議論を踏まえブランドの世界観を,ブランド・コミュニケーションの基盤となる,一貫性のある要素や設定によって豊かに意味付けされた世界やその価値観として位置付けた。さらに,空間的・時間的・社会的要素によって構成され,協働者やファンによっても構築,拡張されるとともに,その効果として,ブランドへの理解や愛着の促進などが期待されることを示し,今後の研究課題を提示した。

投稿査読レター論文
  • ― 「家計調査」ミクロデータに基づく日本の調理食品を対象とした検証 ―
    日高 優一郎
    2026 年46 巻3 号 p. 317-320
    発行日: 2026/06/30
    公開日: 2026/06/30
    [早期公開] 公開日: 2026/03/13
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    電子付録

    家事の外部化とは,料理や育児など家族のケアに関わる家事を市場化された製品で賄う消費行動である。先行して共働き化が進展した欧米を対象とした研究では,共働き化の影響は,世帯年収と世帯のライフステージを考慮すれば確認できないことが複数報告されているが,時系列変化に対する視点の欠如が指摘されてきたほか,元来的に構築された家族規範が異なれば影響は異なる可能性がある。本研究は,日本での共働き化が家事の外部化に与える影響を,1990~2020年の総務省「家計調査」のミクロデータで検証する。①先行研究とは異なり,日本では共働き化の影響は確認される一方,②共働き世帯と専業世帯の間の家事の外部化に関する差異が僅少化していくことを示し,考えられる可能性や研究課題を示す。

マーケティングケース
  • ― 大丸東京店「明日見世」の事例 ―
    田中 倫美
    2026 年46 巻3 号 p. 321-328
    発行日: 2026/06/30
    公開日: 2026/06/30
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    2020年以降のパンデミックおよび急速なDXの進展という環境変化の中で,日本の百貨店が新たに展開した「ショールーミング型店舗(売らない店舗)」の誕生と定着プロセスを考察する。株式会社大丸松坂屋百貨店が大丸東京店で運営する「明日見世(あすみせ)」では,伝統的な百貨店ビジネスモデルとの乖離を,D2Cブランドへのターゲットシフトによって克服したことが明らかとなった。さらに,2024年9月の移設増床に伴う「物販の開始」は,顧客と出店ブランド双方のニーズに適応した進化であり,単なる「売らない店」から「ブランド体験と購買が融合した複合型ストア」へとその存在意義を変化させている。本ケースは,小売の伝統的プレイヤーである百貨店が,戦略的な位置づけを確保しながら,新たなブランド体験を通じた新たな収益モデルの構築と顧客価値を創出している実態を提示する。

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