マツダ技報
Online ISSN : 2186-3490
Print ISSN : 0288-0601
36 巻
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巻頭言
特集:新型MAZDA3
  • 別府 耕太, 柴田 恵一郎, 木下 勝之, 岩本 信也, 宮本 健作
    原稿種別: 特集
    2019 年 36 巻 p. 3-10
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/12/02
    研究報告書・技術報告書 フリー

    MAZDA3は長きにわたりお客様との絆を深めてきた,マツダブランドの顔ともいえる特別なモデルである。近年の自動車産業にとって構造改革が迫られるほどの変化が起きている中で,世界中の全てのお客様に再び驚きと歓びを与えるために,マツダはこの特別なモデルであるMAZDA3を新世代商品群の幕開けを飾るモデルとして世に送り出した。

    新型MAZDA3が目指したのは,「誰もが羨望するクルマ」になることである。奇をてらうことなく,走り・静粛性・クラフトマンシップ・環境性能・デザインなどクルマとして当たり前のことを,徹底的な人間研究に基づき感動のレベルまで高めることに挑戦した。

    まるで歩いているかのような自然な運転感覚。人間の耳が感じる音の変化や届き方までコントロールした静粛性。あらゆる音域をクリアに好みに合わせて楽しむことができるオーディオシステム。ハッチバック(ファストバック)とセダン,それぞれのボディタイプで強い個性を持たせたエクステリアデザイン。

    これらの魅力に溢れた新型MAZDA3がお客様の日常をより色鮮やかに輝かせる存在になると確信している。

  • 土田 康剛
    原稿種別: 特集
    2019 年 36 巻 p. 11-15
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/12/02
    研究報告書・技術報告書 フリー

    2010年に掲げたマツダのデザインテーマ「魂動(こどう)-SOUL of MOTION」で統一した商品群が一巡し,新型MAZDA3から魂動デザイン第2章の幕開けとなる。新世代への深化として日本の美意識に基づいた「引き算の美学」の体現を目指した。その上で,これまでよりデザイン表現の幅を拡げていく戦略を取る。

    セダンは「凛」とした品格を備えた大人のセダン,ファストバックを「艶」っぽくスポーティなデザインとし,新世代の幕開けを飾るに相応しい二つの個性豊かなデザインを与えた。

    エクステリアでは引き算の美学の考え方の下,従来の自動車デザインに用いられてきたシャープなキャラクターラインを廃し,リフレクションによる面造形で新世代の生命感表現に挑戦した。

    インテリアでは人とクルマの一体感を作る心地よい空間を表現した。

  • 磯部 利太郎, 遠藤 孝次, 末岡 賢也
    原稿種別: 特集
    2019 年 36 巻 p. 16-23
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/12/02
    研究報告書・技術報告書 フリー

    SKYACTIV-Xは,SKYACTIV-Gから始めた理想の内燃機関追求のゴールに向けた第2弾である。2nd Stepでは熱効率向上として比熱比の改善を取り上げた。具体的にはリーン燃焼に取り組み,その実現のために圧縮着火を取り入れた。圧縮着火をさまざまな環境条件で成立させるためには多くの課題に対してのブレークスルーが必要であった。

    主要課題は,圧縮着火燃焼範囲を拡大しつつ,燃焼の切り替えを完全に制御することであり,この課題をブレークスルーしたのが燃焼方式SPCCI(「火花点火制御圧縮着火」の略)で,圧縮着火燃焼を火花点火で制御した燃焼である。

    商品化にあたってはSPCCI燃焼技術を日常の使われ方の中で,いかに多くの場面で使えるようにするかが重要であり,燃焼制御,熱マネージメント技術やNV対応技術に関しても多くの新しい技術を取り入れた結果,SKYACTIV-G比, 全域で約10%以上のトルク改善を図りつつ,NEDCモード燃費で前モデルに対し約30%の燃費改善を図った。

  • 漆原 友則, 松本 浩太, 末岡 賢也, 井上 淳, 丸山 慶士, 山口 直宏, 森本 博貴, 松尾 佳朋
    原稿種別: 特集
    2019 年 36 巻 p. 24-31
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/12/02
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    SKYACTIV-Xではこれまでに例を見ない高圧縮比を採用した。これにより,部分負荷運転時に圧縮自己着火燃焼を発現させることによって,高希釈/希薄燃焼を可能とし,実用運転時の燃費を改善することができた。他方,高負荷条件においては高圧縮比化に伴い,伝ぱ燃焼に引き続き発生する自己着火燃焼が大きく生じる傾向となる。SKYACTIV-Xでは全負荷の自己着火燃焼を穏やかにかつ安定的に発生させることにより,高圧縮比下でも十分な軸トルクを発生させることができた。

    部分負荷並びに全負荷で実施したこの火炎伝ぱと自己着火の併用燃焼をSPCCI(Spark Controlled Compression Ignition)と呼び,本報ではSPCCI燃焼をどのように実現したかを報告する。

  • 幸徳 正信, 早川 元雄, 宮本 晃一, 石原 太郎, 岡村 和美, 菅崎 健二, 引谷 晋一, 高籏 達也
    原稿種別: 特集
    2019 年 36 巻 p. 32-37
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/12/02
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    新型MAZDA3に搭載されたSKYACTIV-Xは,火花点火制御圧縮着火(以下SPCCI)燃焼の実現に向けた熱マネージメント技術(以下熱マネ技術)に,車両全体で取り組んでいる。この熱マネ技術によって,お客様が使われるさまざまな環境条件でも,新しく導入したSPCCI燃焼が実現できることをねらいとしている。エンジン自体の燃焼効率が大幅に改善されたことで,従来のエンジンよりも昇温に活用できる熱エネルギーが減少しており,限られた熱エネルギーを有効に活用し,SPCCI燃焼に必要なエンジンの筒内状態量を実現させる技術に取り組んでいる。

    上記技術の確立に向け,机上解析と基礎実験による熱エネルギーのメカニズム解明を行い,燃費性能と同時にNVH性能や空力性能及び室内の快適性改善にも同時に貢献できる熱マネ技術を実現することができた。

  • 神田 靖典, 藤川 智士, 升岡 大智, 須藤 康博, 新田 雅俊, 山本 高弘, 松本 貢典
    原稿種別: 特集
    2019 年 36 巻 p. 38-43
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/12/02
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    CO2排出量の削減に最も寄与する内燃機関の理想追求に向け,リーン圧縮着火による熱効率向上を実現する新世代ガソリンエンジンSKYACTIV-Xを開発した。

    圧縮着火による燃焼騒音増大に対し,燃焼騒音のメカニズムに基づき,『起振力である燃焼刺激力の制御』,『ピストン~エンジン表面の振動伝達特性』,『エンジン表面で生じた空気振動の吸遮音減衰特性』に最適機能配分することで,従来の火炎伝ぱ燃焼のSKYACTIV-Gと同等の車室内騒音レベルを達成した。

  • 河野 通治, 本田 雄哉, 和田 好隆, 上村 匠, 植木 義治, 横畑 英明
    原稿種別: 特集
    2019 年 36 巻 p. 44-50
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/12/02
    研究報告書・技術報告書 フリー

    CO2排出量の削減に最も寄与する内燃機関の理想追求に向け,リーン圧縮着火による熱効率向上を実現する次世代ガソリンエンジンSKYACTIV-Xを開発した。SKYACTIV-Xでは,圧縮着火・ノッキングのように,混合気の化学反応によっておこる自着火現象を完全に制御する必要があり,その実現のために予測技術を用いたモデルベース開発は重要な役割を担う。そこで,基礎研究による現象解明を通じて,これまで開発してきた流動・噴霧予測技術を高精度化し,新たに素反応を考慮した燃焼予測技術を構築した。加えて,本予測技術を用いて,高速高負荷域で発生するノッキング現象を分析し,その抑制の方向性を確認した。

  • 西田 良太郎, 中原 康志, 西田 正美, 山谷 光隆, 加藤 二郎, 高籏 達也, 岡澤 寿史, 福馬 真生
    原稿種別: 論文・解説
    2019 年 36 巻 p. 51-58
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/12/02
    研究報告書・技術報告書 フリー

    マツダは2030年を見据えた技術開発の長期ビジョン「サスティナブル"Zoom-Zoom"宣言2030」を発表し,「走る歓び」によって,「地球」「社会」「人」それぞれの課題解決を目指す新しいチャレンジに取り組んでいる。この中でマツダは「Well-to-Wheel」での企業平均CO2排出量を 2050年までに2010年比90%削減することを視野に,2030年までに50%削減するという具体的目標を定めている。このビジョンの実現に向けて,ガソリンエンジンにおける圧縮着火を世界で初めて実用化した次世代エンジン「SKYACTIV-X」を開発した。このエンジンは「SKYACTIV-G」 から始めた理想の内燃機関を追求する2nd Stepにあたり,更なる高圧縮比化やリーンバーンによる比熱比改善,それらを達成させるSPCCI(火花点火制御圧縮着火)を実現させた。結果,SKYACTIV-Gに対して 全域で10%以上のトルク改善を図りつつも,量産ガソリンエンジンとしては世界最高レベルの燃費率を達成した。本稿では主にエンジンのハード構成を紹介する。

  • 津村 雄一郎, 楠 友邦, 竹本 和洋, 木下 真幸, 寺元 亮, 伊藤 剛豊
    原稿種別: 特集
    2019 年 36 巻 p. 59-65
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/12/02
    研究報告書・技術報告書 フリー

    SKYACTIV-Xでは,SPCCI(火花点火圧縮着火)燃焼を実現するため,従来のガソリンエンジンには搭載されていないさまざまな新規デバイスを含む新たな制御システムを開発した。燃焼を制御する機能を実現するソフトウェア的な構造を示したのち,制御ハードウェアシステムの概略及び主要な制御機能について,量産部品として世界初の筒内圧力センサーを含む燃焼検出システムとその活用も含め,新規要素を中心に紹介する。

  • 森本 昌介, 大塚 雄太, 枝廣 育実, 内藤 潤, 岡田 久伸, 白石 啓光, 清水 正寛, 栗原 健
    原稿種別: 特集
    2019 年 36 巻 p. 66-70
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/12/02
    研究報告書・技術報告書 フリー

    マツダは,技術開発の長期ビジョンである「サステイナブル"Zoom-Zoom"宣言2030」に基づき,「ビルディングブロック戦略」を推進している。車の基本となる内燃機関の効率改善,車両の軽量化などを実施し,効率的な電動化技術を組み合わせることで,CO2の総排出量を削減していく。i-stop, i-ELOOPに続く電動化技術として,新たに回生協調ブレーキとM Hybrid batteryを採用し,減速エネルギーの回生機能を向上させたM Hybridを導入する。更に,ベルト伝達,Integrated Starter-Generator(以下,ISG)を採用することで,燃費とドライバビリティーを改善することを可能とした。新型MAZDA3にM Hybrid技術を導入したので紹介する。

  • 吉田 勝正, 田村 和寛, 中上 信宏, 西田 史彦, 坂上 翔, 仲間 彰子, 楊 殿宇, 中村 浩之
    原稿種別: 特集
    2019 年 36 巻 p. 71-77
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/12/02
    研究報告書・技術報告書 フリー

    マツダでは,CO2排出削減・燃費向上の目標達成に向け「ビルディングブロック戦略」を推進している。今後も,内燃機関はグローバル市場における自動車の主要な動力技術であり続けるとの予測に基づき,内燃機関の理想を追求し続けつつ,最適な制御技術や効率的な電動化技術を組み合わせてゆく戦略である。

    今回,お客様へ優れた環境性能を提供し,かつ人間中心を考慮した電動化技術を目指して,新型MAZDA3では新たにM Hybridを開発した。減速エネルギーの回生,モータアシストにより燃費を向上,更に迅速再始動や変速アシストによりドライバビリティを改善した。また,居住空間を犠牲にせず重量等配分・低重心にも貢献するパッケージングを実現している。本稿では,中核デバイスとなるM Hybrid battery,Integrated Starter-Generator(以下,ISG),DC/DCコンバーターについて紹介する。

  • 佐藤 健一, 川野 晃寛, 中内 繁, 後藤 英貴, 亀井 丈広, 田中 潤一
    原稿種別: 特集
    2019 年 36 巻 p. 78-82
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/12/02
    研究報告書・技術報告書 フリー

    新型MAZDA3は人間中心を突き詰めて生み出した次世代車両構造技術SKYACTIV-VEHICLE ARCHI-TECTUREを初めて採用したモデルである。先代モデルで採用した基本骨格の「ストレート化」,「連続化」,「マルチロードパス」のコンセプトを進化させ,更なる高剛性化と,振動エネルギーを集めて減衰させるという新しいアイデアを取り入れたボディーを新規開発した。本稿では,人間中心の考え方を突き詰め,高い操縦安定性,乗り心地性能及び静粛性を達成するための軽量・高剛性ボディー開発について紹介する。

  • 髙谷 洋隆, 髙橋 信之, 雪田 恭兵, 黒木 大史, 松並 裕美子
    原稿種別: 特集
    2019 年 36 巻 p. 83-89
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/12/02
    研究報告書・技術報告書 フリー

    新型MAZDA3の開発にあたり,ドア開発チームは,「静粛性」をドアシステムの中心性能と位置づけ,開発を行った。狙いとする性能は,以下3つの技術コンセプト「① 面の連続化+通気経路のゼロ化による空力騒音の低減」,「② 質量則使い切り+多重壁化による透過・伝ぱ音の低減」,「③ ガラスの膜振動最小化によるドアガラスからの透過音低減」を適用し,具体化した。空力騒音の低減に対しては,キャビン周りで発生する空気渦を抑制するため,サッシュやピラーガーニッシュの段差や形状を適正化した。更に,通気をなくした新構造のアウターハンドルを採用した。透過・伝ぱ音の低減に対しては,シールの連続性とベルトライン下インナーパネルエリアの穴隙ゼロ化を追求した。インナーパネルエリアに関しては,「直通の穴」と「透過損失の穴」を無くす取り組みを行った結果,透過損失のロスを従来の半分以下とし,総質量を殆ど増加させずに遮音性能を向上させた。車両全体での徹底した穴隙ゼロ化の取り組みにより,背反性能であるドア閉まり性との両立が問題となったが,この問題に対しては,「ドア開閉連動の空調制御」と「閉まり性を向上させたドアチェッカー」の適用により,静粛性を一切犠牲にせず,滑らかで心地のよいドア開閉操作性とを両立させた。

  • 塚根 芳将, 富家 進, 元吉 菜緒子, 吉村 匡史
    原稿種別: 特集
    2019 年 36 巻 p. 90-95
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/12/02
    研究報告書・技術報告書 フリー

    新型MAZDA3では人馬一体の走る歓びを更に進化させるために人の行動原理を分析,人が普段から歩行する際に使っているバランス保持能力に着目した。そして運転中でもバランス保持能力を発揮できることが,車と人を一体に感じさせる車のあり方であると考え,シート,車体,サスペンション,タイヤの機能を根本から見直し,新たな車両構造技術(SKYACTIV-VEHICLE ARCHITECTURE)を開発した。その結果,新型MAZDA3では,まるで自分の手足のように違和感なく運転でき,長時間運転しても疲れを感じない運動性能を実現させ,人馬一体の向上と走りの質を高めることができた。

  • 伊藤 肇, 富士田 拓也, 黒川 将, 大森 和也, 石塚 勝, 上田 高裕
    原稿種別: 特集
    2019 年 36 巻 p. 96-101
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/12/02
    研究報告書・技術報告書 フリー

    静かな空間の中にも,乗員が車外の状況が分かることで,安心して充実したドライブを楽しんでいただきたい。新型MAZDA3では,人が音を感じるメカニズムを探求し,単に「静かな」だけではなく「質の高い静粛性」を追求し,次世代にふさわしいNV性能を実現した。

    人は,音の大きさだけではなく,音の到来方向や音が減衰する時間にも大事な要素であるとの考えの基,これまでの音の大きさや到来方向に加えて,時間変化に関わる新たな指標を作成した。目標実現のため,音源の低減,振動伝達特性や空気伝ぱ音の改善に関して,それぞれをコントロールするための考え方を決め,新たな構造や材料を駆使し,関係部門と共創することで「質の高い静粛性」を実現した。

  • 久我 秀功, 太田 健太郎, 伊川 雄希, 坂下 泰靖, 西田 周平, 溝兼 通矢, 岡本 哲
    原稿種別: 特集
    2019 年 36 巻 p. 102-106
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/12/02
    研究報告書・技術報告書 フリー

    新型MAZDA3の開発では,CO2排出量低減技術の一環として,実際の市場環境に近い走行状態で車両全体の風流れの運動エネルギーマネジメントを行い,空気抵抗の低減とサーマルマネジメント効率化の両立を目指した。この実現にむけ,フロントグリルを通過する風を用いてラジエーターを効率的に冷却するための導風構造を設定し,無駄な風を極限まで減らした。そして,アクティブエアシャッターをラジエーターの全面に配置し,シャッター開度を6段階で制御することで,走行シーン毎にエンジンルーム内の部品温度をコントロールするとともに,排出する際に生じる風流れの運動エネルギー損失が最少となる風量にコントロールした。更に,冷却に用いた風を排出する際,車両周りの風流れの運動エネルギー損失量が最少となるように構造を作り込むことで,クラストップレベルの空気抵抗係数とCO2排出量の低減に貢献した。

  • 池見 清, 加村 孝信, 開原 真一, 丹羽 正浩
    原稿種別: 特集
    2019 年 36 巻 p. 107-112
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/12/02
    研究報告書・技術報告書 フリー

    マツダは新世代商品群の第一弾として,新型MAZDA3を発表した。新世代商品群ではカーライフを通じて人生の輝きを人々に提供するべく,人間の身体特性を考慮してビークルダイナミクスを再検討し,人馬一体の実現と環境性能の両立を図った。ブレーキ性能においても,クルマをコントロールするために必要な減速度やペダル踏力の物理量について,人間の感覚量と一致させる性能目標を定めた。次に,その性能目標を達成するための部品特性を再検討した。新型MAZDA3のブレーキは,シーンに応じて必要な減速度までスムーズに立ち上げ,かつ緩めることが直観的にでき,渋滞の中や駐車場でも扱いやすく,同乗者にも優しいブレーキフィーリングを達成した。また,M Hybrid搭載モデルに採用した回生協調ブレーキシステムにおいても同等のブレーキフィールを達成し,かつ回生ブレーキ量の増減に応じて自動的に摩擦ブレーキ量を協調させることで,違和感の少ないブレーキフィーリングを実現した。

  • 竹村 征樹, 木戸 啓人, 石川 靖, 川本 篤史, 井上 伸生, 田口 征吾, 鬼頭 応時, 丸山 勉
    原稿種別: 特集
    2019 年 36 巻 p. 113-118
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/12/02
    研究報告書・技術報告書 フリー

    マツダでは「走る歓び」と「優れた環境・安全性能」を目標に,安全・安心なクルマと社会の実現を目指した商品開発を実施している。その中で,衝突安全性能開発は,安全性能と軽量化という背反する課題を両立させるために,MBD(Model Based Development)を駆使して車両構造を開発している。SKYACTIV-VEHICLE ARCHITECTUREに代表される車体開発では,高精度CAE 技術を用いて,衝突荷重を効率的に分散させるマルチロードパスを進化させた新しい構造を作り上げた。

    新型MAZDA3では,各国の衝突安全法規制をクリアするだけでなく,更に高いレベルの衝突安全性能を目指し,衝突安全アセスメント(New Car Assessment Program:NCAP)で世界トップレベルの性能評価を得ることに加え,市場におけるさまざまな事故・傷害形態の分析と人間研究を軸として,万一の事故の際に乗員や歩行者をしっかり保護することを目標として開発した。

  • 六浦 潔, 若松 功二, 山中 尋詞, 平尾 幸樹, 西嶋 孝祥, 手島 由裕
    原稿種別: 特集
    2019 年 36 巻 p. 119-124
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/12/02
    研究報告書・技術報告書 フリー

    新型MAZDA3では,マツダが考える音響性能の理想を定義し,量産性を見据え機能配分しスピーカーユニット,レイアウトを一新した。理想の音響性能を追求するため,CAE技術による車室内の音場特性の可視化を行いスピーカーユニットの最適な配置場所を見出した。容量3リットルのバスレフ型ウーファーのカウルサイド配置と,スコーカーとツィーターのドア上部への配置をベースとするシステムで,新型MAZDA3のサウンドは新世代商品群のリードとなる車種にふさわしい音響性能を実現した。本稿では,その内容について紹介する。

  • 志村 俊幸, 重田 一生, 長嶺 晋路, 森 大輝, 田中 真帆, 島谷 信行, 沼元 正樹, 三宅 弘一
    原稿種別: 特集
    2019 年 36 巻 p. 125-129
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/12/02
    研究報告書・技術報告書 フリー

    無線通信技術の進化に伴い,車外と「つながる」機能は,「走る」「曲がる」「止まる」と並ぶ車の基本機能と位置づけられている。このうち,AM/FMラジオ,デジタルラジオや地デジ等の放送受信システムは,エンターテイメントや交通情報等を手軽に入手する手段として,今後も車にとって欠かせない装備である。放送受信システムのアンテナとしては,セダン系車種を中心にリアガラスアンテナが多く採用されている。一方で,SUV等のハッチバック系車種においては,性能確保やノイズ対策の難しさから,シャークフィンアンテナ等のルーフに設置するタイプのアンテナが主に用いられており,デザインに制約を与えていた。マツダは,強みであるデザインの魅力を最大化させるため,ハッチバック系車種に適用可能なリアガラスアンテナの開発に取り組んだ。その結果,アンテナ素子の工夫や構造要件を見出すことで,ハッチバック系車種に適用可能とし,FMダイバーシティーやDAB(Digital Audio Broadcasting)等の新メディアの受信にも対応可能な新世代リアガラスアンテナを開発し,新型MAZDA3に導入した。

  • 後藤 誠二, 峯岸 由佳, 山本 直樹, 森谷 貴行, 中村 創, 片山 翔太
    原稿種別: 特集
    2019 年 36 巻 p. 130-135
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/12/02
    研究報告書・技術報告書 フリー

    危険な状況に陥ってから対処するのではなく,危険自体を回避する「MAZDA PROACTIVE SAFETY(マツダ・プロアクティブ・セーフティ)」は,ドライバーの認知・判断・操作をサポートし,事故のリスクを最小限に抑えるマツダの安全思想である。この安全思想に基づき,ドライバーに危険を気づかせて安全運転をサポート,または事故の被害を軽減する先進安全技術「i-ACTIVSENSE」を2012年に市場導入し,それ以降も機能進化を続けている。

    ドライバーの認知・判断・操作をサポートするためには,ドライバーの危険な状態・行動を検知し,いち早く危険な状況に気づかせる安全技術が必要となる。今回,ドライバーの顔表情・視線をとらえることが可能なカメラ技術の採用により,ドライバー状態とドライバー行動の検知を行う新技術「ドライバー・モニタリング」を,新型MAZDA3へ新たに導入したので,その開発成果を紹介する。

  • 日原 圭祐, 平嶋 秀一, 藤丸 翔太, 古屋 勝俊, 伊藤 裕規, 節家 淳, 中尾 堅志, 赤坂 佳紀, 岡野 英紀
    原稿種別: 特集
    2019 年 36 巻 p. 136-143
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/12/02
    研究報告書・技術報告書 フリー

    モバイルデータ通信の高速化や通信技術の進歩により,クルマがネットワークにつながり新たなサービスや機能を創造する“コネクティッドカー”への需要が高まる中,マツダは人間中心の考え方で,マツダらしい価値“生きる歓び”を創造するコネクティビティ技術の開発に挑んでいる。その中核システムであるマツダコネクトも,ヒューマンマシンインターフェースの進化,車載電子取扱説明書の導入,ナビゲーション機能の改良,さらにコネクティッドサービス対応などのお客様への価値創造を継続しており,その進化点について本稿で詳しく説明する。

  • 近藤 啓介, 畠中 威, 山内 一平, 青木 茂, 井上 俊一, 伊藤 孝治
    原稿種別: 特集
    2019 年 36 巻 p. 144-148
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/12/02
    研究報告書・技術報告書 フリー

    新型MAZDA3から始まる新世代商品群は「走る歓び」を全領域で進化させている。新型MAZDA3の開発に当たっては新世代商品群のトップバッターとして人間中心の考え方のもと人馬一体をこれまで以上に極めることが使命であった。いかなる環境下においても意のままに操れるクルマを実現するためには見たい時に見るべきものがストレスなく見える視界視認性は非常に重要な要素となる。ワイパーにおいては晴天と同じように運転できる安全と安心を提供することが必要である。そこで,ワイパーの原理原則に基づいて基本機能に立ち戻り,目標を設定し直した。その実現のために取り組んだのがワイパーモーター制御を中心に据えた機能進化である。新型MAZDA3では速度,位置の制御によってワイパーの多くの課題を解消した。本稿では新世代ワイパー開発における機能進化の考え方,採用した技術,実現のための活動内容について紹介する。

  • 薬師寺 英明
    原稿種別: 特集
    2019 年 36 巻 p. 149-153
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/12/02
    研究報告書・技術報告書 フリー

    マツダは,お客様の安心・安全・快適を更に高めるべく,クルマを日々進化させ続けている。その進化を下支えする車両電子制御においては,大幅な機能追加に加え,車両全体が連携する複雑な処理が必要不可欠となっている。

    新型MAZDA3では,今後の車両進化の加速に対応するために,車両電子制御に必要な情報・処理を頭脳ECU(Electric Control Unit)に集約した新たな車両電子制御システムを開発した。新型MAZDA3で実現した車両電子制御システムについて,車両電子制御の機能集約の視点での進化を報告する。

特集:新世代商品群の生産技術
  • 安達 範久
    原稿種別: 特集
    2019 年 36 巻 p. 154-158
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/12/02
    研究報告書・技術報告書 フリー

    近年,自動運転やカーシェアリングなど,お客様のクルマの使い方と求める価値が急激に変化しており,その対応には,IT関連などのこれまでの自動車以外の技術と融合した大規模な技術開発が必要となってきている。この状況の中で,自動車メーカーとしてスモールプレーヤーであるマツダが生き残るためには,ブランド構築を核とした高付加価値&ニッチ戦略が必須であり,生産技術は,ビジネス効率 = 価値/コスト(以下"E=V/C")を向上させるために,機能的価値と意味的価値の同時進化を目指した「Mass Craftsmanship(職人技の量産化)」の実現に取り組んでいる。本稿では,この概念と具体的な取組みを紹介する。

  • ~金型加工精度を向上させる空調空間の造り込み~
    中山 教憲, 名越 慶, 森下 喬, 井川 史朗, 木谷 英治
    原稿種別: 特集
    2019 年 36 巻 p. 159-164
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/12/02
    研究報告書・技術報告書 フリー

    生命感・躍動感をカタチにする「魂動デザイン」は,「クルマに命を宿す」ことを普遍的なものとして,新世代デザインでは「引き算の美学」により要素を削ぎ落したシンプルなフォルムとし,より研ぎ澄まされた繊細な光の表現を追求している。そのデザインの深化は「魂動デザイン」を量産する生産技術の進化なしには実現できない。金型加工ではその新世代デザインの繊細な造形をカタチ造るため加工精度を更に向上させる必要がある。本稿では,金型加工精度を向上させるために,加工精度に影響する金型加工機周辺の温度環境について,気流シミュレーションを用いて必要最小エネルギーで金型加工精度向上を実現した取り組みについて紹介する。

  • 久保 祐貴, 須賀 実, 大谷 卓史, 加藤 康裕, 江草 秀幸, 大田 敦史
    原稿種別: 特集
    2019 年 36 巻 p. 165-170
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/12/02
    研究報告書・技術報告書 フリー

    マツダは,クルマ造りに想いを込めている。クルマに命を宿す「魂動デザイン」は,随所にデザイナーの想いを込めている。その想いを実現していくことがマツダブランドの構築に重要である。マツダの金型製作部門では,この「魂動デザイン」を実現するために,Mass Craftsmanship(職人技の量産化)を積極的に取り組んでいる。長年かけて培われる匠技をもつ技能者の動作をモーションキャプチャーで計測し,眼球運動と筋骨格運動を併せて分析することで匠技の見える化に取り組んでいる。更に,技能カルテを用いて,定量的に技能を比較し,技能者の早期育成を進めている。本稿では,「魂動デザイン」を支える金型製作部門の新たな技能伝承の取り組みについて紹介する。

  • 垰 慎一, 田中 宣隆, 田中 慶和, 影本 真也
    原稿種別: 特集
    2019 年 36 巻 p. 171-176
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/12/02
    研究報告書・技術報告書 フリー

    マツダは,シンプルなフォルムと繊細な光の表現でクルマに命を吹き込むことを目指し,「魂動デザイン」を深化させている。その中で生産技術部門として,滑らかに繋がる面の流れによって感じる「塊感」を量産車で実現するため,車両外装の隣り合う部品が一枚の面であるかのような連続感の実現に向け取り組んできた。本稿では,バンパー樹脂成形において,デザイナーの意図をより正確に実現する生産工程設計と新たなプロセスについて紹介する。

  • 福永 明, 井上 大河, 土井 洋子, 髙本 尚志, 金 壯憲, 鈴村 竜司
    原稿種別: 特集
    2019 年 36 巻 p. 177-184
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/12/02
    研究報告書・技術報告書 フリー

    マツダは,“人間中心のものづくり”を一貫した哲学として掲げ,まるで自分の体の一部のように動かせる,ドライバーの意思とクルマの動きの一体感を追い求める。そこにある安全に,快適に,思いどおりに操れる走りこそ,マツダの目指す「人馬一体」である。それを実現するために,人間特性に合わせた車両運動特性を定義し,車両組立工程においてはその車両運動特性を忠実に実現する車両構造設計と生産工程設計を行う活動に取り組んできた。現状は四輪ダイナミックアライメントテスターにより空車状態のホイールアライメントを保証している。更に,車両運動特性に直結する走行中のタイヤの動きをねらいどおりにコントロールするべきと考え,車高変化に応じたホイールアライメントの変化量(以下動的ホイールアライメント)に着目した。本稿では新型MAZDA3の量産準備での動的ホイールアライメントの造り込み活動の事例を報告する。

  • 服部 博晃, 石崎 剛, 福田 靖英, 辻 雅一
    原稿種別: 特集
    2019 年 36 巻 p. 185-191
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/12/02
    研究報告書・技術報告書 フリー

    新型MAZDA3では,「魂動デザイン」の更なる深化に向けて,リヤホイールアーチのフランジを従来の90度折り曲げて接合するL型構造から180度折り曲げて接合するヘミング構造へ変更することによってタイヤを極限まで車両の外側に出し,ボディーとタイヤの一体感,強い踏ん張り感を実現した。

    しかし,ヘミング構造を採用するにあたって,目視確認できないヘミング部の防錆保証とタイヤとのクリアランス確保を両立させる必要があった。本稿では,ヘミング部の防錆保証のために,ねらいの厚みで塗布する高精度シーリング及び全数保証検査システムを開発し,日本・メキシコ・タイ・中国の工場へ導入したので,その紹介を行う。

  • 酒井 明, 松本 茂, 矢野 峰治, 田丸 真司, 新井 直樹, 吉崎 真吾, 庄司 庸平, 末長 昭大
    原稿種別: 特集
    2019 年 36 巻 p. 192-198
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/12/02
    研究報告書・技術報告書 フリー

    ドライバーの手足のように意のままに動く「人馬一体」のドライブフィールと安全性を兼ね備えた車を実現するためにボディーの軽量化と高強度化に日々取り組んでいる。ボディーの軽量化にはCFRP,アルミ等の材料置換もあるが,我々はお客様がお求めやすく,軽量化と高強度化を同時に達成できる高張力鋼板冷間プレスの技術開発にこだわった。鋼板の高張力化に伴う成形性・寸法精度及びせん断加工性の変化に対応するため,プレス工法・形状凍結技術の開発やせん断加工の適正化に取り組んだ。その成果として,世界で初めてボディー構造用に1310MPa級高張力鋼板(以下,1310MPa材)を採用した冷間プレス部品の量産化に成功した。また,ボディーを組立てる際の溶接性への対応は,これまで溶接条件パターンを最適化することで適正電流範囲を確保したが,1310MPa材では更に,加圧力の適正化とそれに基づいた熱量コントロールを行うことで狙いの溶接強度を実現した。本稿では,これら人馬一体を実現するために取り組んだ自動車ボディーの造り込み技術を紹介する。

  • 中野 直樹, 中林 裕介, 庄司 光宏
    原稿種別: 特集
    2019 年 36 巻 p. 199-206
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/12/02
    研究報告書・技術報告書 フリー

    マツダは生命感あふれる躍動的な造形美「魂動デザイン」を追求している。その美しいデザインの意匠をお客様にお届けするためには,各部品精度及びドアやボンネットフードなどの蓋物部品組付・折合精度の更なる向上と長期的な安定が必要となる。車体組立領域における蓋物組付工程は,ロボットによる自動組付作業と作業者による折合調整作業で構成する。技能による造り込み“希少性・感動”と生産性の高さ“高速・高精度”を両立させる自動化技術“Mass Craftsmanship(職人技の量産化)”の取り組みとして,ドア自動組付工程の飛躍的な折合精度向上に挑戦した。組付・折合精度の向上には,そのばらつき発生のメカニズムの解明と構造的な課題に対する確実な対策が必要であった。本対策導入後には,作業者と同等の折合精度で自動組付作業を維持し続けている。本稿では,ばらつき発生の要因とその対策内容について紹介する。

  • 榎本 智章, 林 一哉, 増田 雅彦, 森本 博幸, 藤原 秀行
    原稿種別: 特集
    2019 年 36 巻 p. 207-211
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/12/02
    研究報告書・技術報告書 フリー

    次世代商品群のエンジン部品は高機能化により,その加工時間は常に増える傾向である。そのため,加工品質を保証しつつ,更に高能率で加工を行うためには,加工中の切削状態を把握し,切削力に合わせて切削条件を適切にコントロールする必要がある。

    これを実現するため,①正味切削力を高精度に計測する「切削力センシング技術」,②この技術により得られた実切削力とCAEとの整合取りを行い,最大切削効率となる切削力の目標値をCAEで予測する「切削力決定方式」,③これらの技術をベースとし,刃具摩耗や被削材硬度の変化に対し,常に最大切削能率となるように切削条件をコントロールする「適応制御技術」を開発した。これらの取り組みについて紹介する。

  • 國松 大知, 菅谷 智, 橋本 修一, 村瀨 宏治, 小杉 一浩, 丸尾 幸治
    原稿種別: 特集
    2019 年 36 巻 p. 212-218
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/12/02
    研究報告書・技術報告書 フリー

    ブランドエッセンスの「走る歓び」を実現するため,シリンダーヘッド素材領域でも「軽量化」を重要課題として取り組んでいる。しかし,軽量化として薄肉化を追求すると製品の機能限界に到達するため,各部位での限界を精度良く予測する技術が必要である。そのためには運転時に発生する応力に加え,製造時に製品内に残留する応力分布の考慮が不可欠であると考えた。そこで,残留応力予測技術を開発し,その結果を開発部門の機能評価に組み込む製品開発プロセスを構築した。

    今回,この技術を用いて新型MAZDA3シリンダーヘッドをモデルベース開発し,製品機能を維持しつつ業界TOPレベルの薄肉軽量化を実現した。本稿ではその取り組みについて報告する。

論文・解説
  • 山本 修弘, 西田 芳伸, 伏見 亮, 國本 拓也, 野村 裕之, 中矢 健次
    原稿種別: 論文・解説
    2019 年 36 巻 p. 219-224
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/12/02
    研究報告書・技術報告書 フリー

    NAロードスターレストアサービスは,Webで申し込みいただいたお客様のお車を,近くの販売会社様で事前確認し,その後,広島の宇品工場の中にある(株)マツダE&Tの工房で作業する。そのプロセスは受付検査から始まり,分解,塗装,組立,完成検査,TUV(テュフラインランド社様)の認証を取得する。また,車両をレストアするだけでなく,お客様のクルマの分解前後の検査記録,記録写真,お客様のロードスターとの想い出,ロードスター誕生の記録などを収めたフォトブックをお渡しする。レストアサービスと同時に復刻部品の検討も行い,現時点で170部品を復刻した。レストアサービスとパーツ供給サービスを継続することで,愛するロードスターを長く乗り続けてもらえる環境と,古いクルマを大切にする自動車文化に貢献していく。

  • 一原 洋平
    原稿種別: 論文・解説
    2019 年 36 巻 p. 225-228
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/12/02
    研究報告書・技術報告書 フリー

    マツダはこれまで「環境性」「商品性」「経済性」を両立できるバイオエンジニアリングプラスチックを開発し,現在国内で販売している全ての乗用車の内装意匠部品や外装意匠部品に採用している。今回開発した技術は,更に「商品性」を向上させた技術である。環境に優しく透明性のあるバイオエンジニアリングプラスチックを使用した表層と,基材表面に柄を刻み込んだ基材樹脂との2層成形により,深みのある色合いと精緻感,陰影感など,従来の技術では実現困難な意匠を実現させた。本技術課題は,自動車内装意匠部品に要求される「表面意匠性」「表面意匠耐久性」「機械物性」「生産性」を両立させることであるが,マツダは「材料」「構造」「工法」の3つの因子を用いることで樹脂部品性能をコントロールし,課題を解決することができた。 本技術は,新型MAZDA3のシフトパネル,カップホルダーリッドパネルに採用している。今後も引き続き「環境性」「商品性」「経済性」を高いレベルで両立できる新技術開発に取り組んでいく。

  • 德光 文広, 鐡本 雄一
    原稿種別: 論文・解説
    2019 年 36 巻 p. 229-234
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/12/02
    研究報告書・技術報告書 フリー

    お客様が車両を運転操作した際に,「こう動かしたい」と描いたイメージと車両の応答や挙動が一致することで得られる達成感や高揚感によって,適度に脳を活性化させて元気にする。加齢に伴う脳や身体の劣化の傾きも鈍化させる人間中心開発に取り組んでいる。お客様がこう動かしたいと描いたイメージと車両の応答や挙動が一致している状態を「理想の状態」「達成感を得た良い状態」として定義し,この理想の状態を実現できる設計諸元を最高の生産効率で導出する手段としてModel Base Development(以下,MBD)を活用している。理想の状態を実現できる設計諸元を導出するためには,まず設計諸元と運転操作の因果関係を解明する必要がある。ドアの開閉においてもボタン操作においても,上腕だけの局部的な運動に留まらず全身運動を伴うため,人間の運動行動の網羅的な定量化が必要となる。

    本稿では,設計諸元と運転操作の因果関係を解明する前段階として,車両を運転する人間の全身運動を網羅的に定量化する計測技術および分析技術を開発して,人間の運動行動の本質を観察した結果を報告する。

  • 梅津 大輔, 高原 康典, 砂原 修, 加藤 史律, 津村 和典
    原稿種別: 論文・解説
    2019 年 36 巻 p. 235-240
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/12/02
    研究報告書・技術報告書 フリー

    車両の横加加速度に基づき,前後加速度制御と直接ヨーモーメント制御を連係させる G-Vectoring Control Plus を開発した。本制御技術はエンジン駆動トルク制御とブレーキ制御を用いており,旋回中のヨー,ロール,ピッチ姿勢の過渡的な動きをスムーズに連係させることで,ドライバーの運転操作を安定化し,車両限界性能を向上することができる。

  • 丸岡 規之, 平林 千典, 福馬 真生, 森永 真一, 牛谷 真樹, 三村 勇樹
    原稿種別: 論文・解説
    2019 年 36 巻 p. 241-246
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/12/02
    研究報告書・技術報告書 フリー

    SKYACTIV-D 2.2とSKYACTIV-D 1.5では,超低圧縮比と高効率過給をイネーブラにした燃焼コンセプトによって,幅広いユーザーへトルクフルかつ伸びやかな走り,クラストップレベルの燃費,NOx触媒を用いずに最新の排気規制に適合するクリーン排気の提供を実現した。この価値を日常的に使用されるシーンにおいて,更に高いレベルで「走る歓び」と「優れた環境性能」の両立を狙ったSKYACTIV-D 1.8を新たに開発し,新型MAZDA CX-3に搭載した。本報ではこの新型エンジンの開発コンセプトと,新たに採用した技術について紹介する。

  • 山﨑 篤史, 名越 匡宏, 津田 顕, 石山 雄貴, 多田 努, 渡部 雅晃
    原稿種別: 論文・解説
    2019 年 36 巻 p. 247-252
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/12/02
    研究報告書・技術報告書 フリー

    "人馬一体"とは「ドライバーが車との一体感を感じること」,「意図どおりにクルマが動くこと」とマツダは定義し,ダイナミック性能共通のねらいとして一貫した取り組みを行っている。マツダはこれまで"人馬一体"を体現するため研究を積み重ね,製品へ織り込みを継続してきた(1)(2)

    新型MAZDA3から始まる新世代商品群では,ドライバーの体の一部のように動かせることをねらいとし,人間の自然な動作と車両挙動を合わせるため,遅れやノイズなく,人間の基本行動特性に合うリニアな挙動の実現を目指した。本稿では,"人馬一体"を実現する新たな駆動力制御システムについて紹介する。

  • 竹本 明, 安原 潤紀, 髙田 純司, 戸手 孝則, 戸井 隆史
    原稿種別: 論文・解説
    2019 年 36 巻 p. 253-258
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/12/02
    研究報告書・技術報告書 フリー

    マツダが目指すエレキシステム開発を実現するため,部門の垣根を越えてシステム設計からハーネス設計まで一気通貫で行う開発プロセスを構築し,車一台の電気回路をモデル化した。新世代商品群から量産開発に適用した全社レベルでの取組内容と将来展望について報告する。

  • 大杉 郁代, 井野 寿信, 大池 太郎, 浜田 康, 手島 由裕
    原稿種別: 論文・解説
    2019 年 36 巻 p. 259-264
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/12/02
    研究報告書・技術報告書 フリー

    情報伝達音とはクルマから人に注意を促す音と,車両の機能を操作するシーンで受付状況を伝える音が対象で,コクピットにおけるヒューマン・マシン・インターフェース(HMI)の認知インターフェースの1つである。

    ドライバーはクルマを運転する中で五感を通じ多くの情報を知覚・認知し,総合的に判断しながら運転操作につなげるタスクを繰り返し行っている。マツダは従来から走行安全最優先の哲学の下,コクピットHMI開発を行っている。先進安全制御システムやインフォテイメントシステムの進化に伴いドライバーに伝える情報量が増加の一途をたどる中で,この哲学を守りながら人間特性の研究と実現手段の技術開発に取り組んでいる。

    新型MAZDA3の情報伝達音はメーターのワーニング文言表示など視覚情報と連携し,聴覚刺激の機能を有効に果たす制御因子を特定した音創りにより,コクピットHMIの進化を実現している。

  • 葛 晰遥, 原田 雄司, 清末 涼, 山下 洋幸, 山本 寿英
    原稿種別: 論文・解説
    2019 年 36 巻 p. 265-271
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/12/02
    研究報告書・技術報告書 フリー

    高圧縮比エンジンでは,ノッキングに代表される異常燃焼の抑制が課題であり,水添加による燃焼制御技術が提案されている。本研究では詳細化学反応計算を用い,水の化学的特性が自着火・燃焼化学反応に与える影響について,一般的なノッキング抑制手段であるEGR(Exhaust Gas Recirculation)ガス添加と比較した。その結果,水添加は,「EGRガス添加に比べて自着火に至る過程の反応を抑制する効果が小さい」,「EGR添加とは違い自着火後の燃焼反応を活性化する効果がある」ことが分かった。この差は,燃焼過程におけるOHの挙動に違いがあることによる。

  • 釼持 寛正, 小平 剛央
    原稿種別: 論文・解説
    2019 年 36 巻 p. 272-276
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/12/02
    研究報告書・技術報告書 フリー

    マツダでは,軽量かつ高性能な車体構造の実現のため,車体構造最適化技術(MDO:Multidisciplinary Design Optimization)を用いている。しかし,シミュレーションで定量的に解析できない性能は取り扱えないため,MDOで求められた結果からだけでは商品に反映する仕様を設計者で判断できないという問題を抱えていた。そこで,性能と設計変数との関係を関数式で表現し,設計変数の性能への影響度を質量効率として定量化する新たな寄与・可視化分析手法を開発した。本手法の特徴は,設計者の意思決定・判断の支援を目的に,設計者の構造発想を促すための可視化方法を取り入れていることである。本手法を商品開発に適用した結果,性能間のトレードオフ関係の定量的な可視化が可能になり,質量効率の高い構造仕様決定を効率的に行える開発プロセスへ改善することで,軽量化と性能の両立に貢献した。

  • 三根生 晋, 國府田 由紀, 百﨑 賢二郎, 中西 美恵, 住田 弘祐
    原稿種別: 論文・解説
    2019 年 36 巻 p. 277-282
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/12/02
    研究報告書・技術報告書 フリー

    自動車の進化は,お客様のより豊かなカーライフを実現するために必要不可欠である。その進化には各部品を構成する材料の高性能化が求められ,これに応えて革新的な材料を継続的かつ効率的に創出するためには,車両機能からバックキャストして,原子・分子レベルの挙動から機能発現メカニズムを解明し,モデル表現とその統合により材料・部品特性までをつなぐモデルベースリサーチ(MBR)が必要である。原子・分子レベルでの挙動解明には従来の実験室系分析装置では成し得ない方法が必要であり,幅広い材料に対応するために,放射光を活用した分析解析技術を構築している。本報では,材料高機能化のため,ナノ粒子分散樹脂複合材料を小角X線散乱法,ゴム材料をX線吸収分光法,薄膜材料を硬X線光電子分光法で分析解析した事例を紹介する。

  • 山本 研一, 中川 興也, 氷室 雄也, 渡邊 重昭, 小橋 正信, 吉田 智也, 三好 雄二, 伊藤 司, 鍵元 皇樹, 八巻 悟, 片岡 ...
    原稿種別: 論文・解説
    2019 年 36 巻 p. 283-288
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/12/02
    研究報告書・技術報告書 フリー

    車両の軽量化と乗心地の向上,ロードノイズ低減との両立をねらい,振動の伝達系にあたる車体フレームを対象とした減衰制御構造(減衰節構造,減衰ウェルドボンド接合),及び本構造に使用する振動減衰性に優れた構造用接着剤を新たに開発した。減衰節構造について,同等質量の簡易フレームを用いて基礎検証した結果,剛性に加えて減衰性が向上し,高い質量効率で振動が低減することを確認した。実車を用いた効果検証では,車体の振動が低減したとともに,100km/h走行時のロードノイズが運転席で最大5dB低減することを確認した。

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