マツダ技報
Online ISSN : 2186-3490
Print ISSN : 0288-0601
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巻頭言
特集:MAZDA CX-90
  • 脇家 満, 岡沢 恭久, 芦原 友惟奈, 伊藤 宏明
    原稿種別: 特集
    2023 年 40 巻 p. 3-6
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/12/22
    研究報告書・技術報告書 フリー

    CX-90は,本質的なCO2削減を実現するマルチソリューション戦略の下,マツダらしさを体現するどこまでも続く運転の愉しさを実現するパワートレイン&プラットフォームと,深化した魂動デザインに加え,3列ミッドサイズSUVに必要な家族全員がゆとりをもって過ごせる室内空間や,体験の幅を広げる利便機能,事故リスクを軽減させる進化した安全技術を備えた商品である。開発チームが取り組んだ,顧客像の特定から価値実現手段の内容や特徴までを紹介する。

  • 椿 貴紀
    原稿種別: 特集
    2023 年 40 巻 p. 7-12
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/12/22
    研究報告書・技術報告書 フリー

    マツダが,2030年までの電動化戦略のフェーズ1として投入する,「走る歓び」と「環境安全性能」を両立させたラージ商品群の第二弾がCX-90である。基本プラットフォームや主要コンポーネントを先行導入したCX-60と共通としながら,ロングホイールベース化やボディー拡幅など,メインターゲットとなる北米ファミリー層にフィットする空間とデザインに仕立てあげた。特に,ラージプラットフォームの素性の良さを活かした,求められる室内空間と美しいプロポーションを両立したそのデザインは,CX-90の提供価値におけるハイライトのひとつである。

    CX-90のデザインは,機能もスタイルも妥協しないオーナーの揺るぎない価値観と,賢く本質を見極める選択眼を体現する。そして,美しい光の動きを纏いながら駆け抜けるその姿は,街行く人の眼を奪い,心昂らせる。見るたびに心が躍り,自らの選択に誇りを感じられる。これが,CX-90のデザインにおいて提供したいと考えた価値である。

  • 清水 幸一, 山谷 光隆, 山口 直宏, 松尾 佳朋, 志々目 宏二, 西村 和浩
    原稿種別: 特集
    2023 年 40 巻 p. 13-19
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/12/22
    研究報告書・技術報告書 フリー

    カーボンニュートラル社会に向けた再生可能エネルギーによる発電への過渡期において,Well-to-Wheel及びライフサイクル視点でCO2を現実的かつ効果的に低減するためには,マツダは地域のエネルギー事情に応じたパワートレインを用いるマルチソリューション戦略で進めている。そのためには電動化とともに,将来の再生可能燃料の普及も見据えた内燃機関の効率改善が重要である。その1つの取り組みとして,新型3.3L直列 6気筒ガソリンターボエンジンを開発した。内燃機関の理想を追求した高圧縮燃焼技術と,排気量を現行の2.5Lから3.3Lに拡大することによって,高出力と中低速域の力強いトルクとレスポンスを実現し,同時に高熱効率での運転を広範囲で達成した。これらによって高次元の「走る歓び」と「優れた環境性能」を実現した。本稿では,その実現に向けて導入した技術を紹介する。

  • 谷所 正彦, 濱詰 嘉浩, 吉武 勇人, 徳島 和宏, 山谷 光隆
    原稿種別: 特集
    2023 年 40 巻 p. 20-24
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/12/22
    研究報告書・技術報告書 フリー

    マツダは,技術開発の長期ビジョン「サステイナブル“Zoom-Zoom”宣言2030」にて,クルマ本来の魅力である走る歓びによって「地球」,「社会」,「人」それぞれの課題解決を目指すと宣言した。今回,マツダの技術開発ビジョンに基づき,走る歓びと優れた環境性能を高次元で両立することを目指して直列6気筒ガソリンターボ縦置きエンジンSKYACTIV-G3.3Tを開発した。この新型エンジンは,SKYACTIVエンジン群の一括企画構想に基づき,さまざまな要件に適合させCX-90へ搭載した。本エンジンのパッケージ開発で注力したポイントは,マツダ独自の価値である魂動デザインや人馬一体といった,人間中心のクルマ作りに貢献している。本稿では,SKYACTIV-G3.3Tのパッケージ開発について紹介する。

  • 服部 之総, 桂川 貴弥, 大槻 修平, 河越 三郎, 三宅 昭範, 高﨑 神風, 神谷 稔
    原稿種別: 特集
    2023 年 40 巻 p. 25-28
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/12/22
    研究報告書・技術報告書 フリー

    CX-90のエンジンサウンド開発では,6気筒エンジンサウンドの共通コンセプトとして,トルクに対してリニアな音の変化と,干渉音の変化によって“高揚感”を呼び起こし,回転上昇に伴う加速感の続く伸びの良さを周波数上昇の変化で“伸び感”のあるエンジンサウンドを目指した。走りの開発部門も共創して,アクセルを踏み込むほどに走りと一致した意のままの運転をサポートするサウンド開発に取り組んだ。

  • 木戸 啓人, 本地 宏昌, 澤田 庸介, 古賀 俊之, 中桐 涼平, 松下 幸治, 安藤 亮, 芦浦 礼子
    原稿種別: 特集
    2023 年 40 巻 p. 29-34
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/12/22
    研究報告書・技術報告書 フリー

    マツダでは,「走る歓び」と「優れた環境・安全性能」を目標に,安全・安心なクルマと社会の実現を目指した商品開発に取り組んでいる。その中で,衝突安全性能開発は高い安全性能と軽量化という背反の関係を高次元で両立させるために,MBD(Model Based Development)を駆使して車両構造を開発している。「SKYACTIV-VEHICLE ARCHITECTURE」に代表される車体開発では,高精度CAE技術を用いて,衝突時の荷重を効率的に吸収し,分散して支えるマルチロードパスを進化させた新しいアーキテクチャーを作り上げた。

    CX-90では,新しい後輪駆動方式をベースとしたラージ商品群で最大サイズのプラットフォームに,実際の事故・傷害形態の分析からバックキャスティングした衝突安全技術として,高いエネルギー吸収効率を備えた車体構造,相手車保護性能及び歩行者保護性能を進化させ,米国の衝突安全アセスメントであるUS NCAPやIIHSでもトップレベルの性能評価を得ることを目標として開発した。本稿では,代表的な衝突形態である前面衝突,側面衝突,後面衝突及び歩行者保護について織り込んだ車両構造技術を紹介する。

  • 寳山 修士, 三村 夏海, 岡本 圭一, 山根 貴和, 野中 隆治
    原稿種別: 特集
    2023 年 40 巻 p. 35-40
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/12/22
    研究報告書・技術報告書 フリー

    車両製造工程の中でも多くのCO2を排出している塗装工程では,一貫して環境への取り組みを継続しており,更なる進化に向けた工程革新や生産技術開発に取り組んでいる。その中でマツダは「カラーも造形の一部」という考え方の基,魂動デザインの造形をより美しく見せるためのカラーを追求してきた。職人が丁寧に手塗りしたような美しい塗装を量産ラインで実現する「匠塗」は,意匠性と環境性能を両立させながら,これまで多くの技術的な課題に取り組み,その進化を続けてきた。今回,「匠塗」カラー第1弾のソウルレッドプレミアムメタリックの生産開始から10周年の節目を迎えるにあたり,ブランドの熟成・深化をメッセージに込めた新たな「匠塗」カラーであるアーティザンレッドプレミアムメタリックを開発した。

    本稿では,10年という年月の中で進化してきた匠塗技術の軌跡を振り返ると同時に,これまでの「匠塗」カラー開発で培ってきた技術を織り込んだアーティザンレッドプレミアムメタリックの取り組みについて紹介する。

  • 守田 雄一, 安楽 健次, 長澄 徹侍, 村上 義典, 吉川 速人, 玉置 周平
    原稿種別: 特集
    2023 年 40 巻 p. 41-46
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/12/22
    研究報告書・技術報告書 フリー

    まるで命が宿っているような,美しい表情を放つ,それが「魂動デザイン」。私たちはお客様に,このデザインが発する生命感から,愛馬と騎手のような特別な絆を感じていただきたいと考えている。ラージ商品群の第2弾となるCX-90ではクルマに光が当たった際のリフレクションによる連続した陰影表現を高品質な状態で実現することが必要となる。そこで本稿ではCX-90でプレミアム品質の量産化をプレス成形部品で実現するために,金型の製作とプレス成形工程の最適化を行った取組について紹介する。

特集:MAZDA MX-30 Rotary-EV
  • 上藤 和佳子, 西河内 研, 岡田 譲太, 松田 陽一, 信本 昇二, 佐藤 雅哉
    原稿種別: 特集
    2023 年 40 巻 p. 47-51
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/12/22
    研究報告書・技術報告書 フリー

    MX-30は,新しい価値の創造に挑戦し人とクルマの新しい関係を提案したモデルであると同時に,マツダの電動化戦略のリードも担っている。マツダ初の量産電気自動車,マイルドハイブリッド車に続き,第三弾として導入した新型ロータリーエンジン8C型(以下,8C型RE)で発電するプラグインハイブリッドモデルについて,提供価値や特徴を紹介する。

  • 森本 博貴, 宮本 亨, 中嶋 勝哉, 菊地 拓哉, 田中 清喬, 砂流 雄剛, 野本 哲也, 若林 良努
    原稿種別: 特集
    2023 年 40 巻 p. 52-58
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/12/22
    研究報告書・技術報告書 フリー

    マツダは,約11年ぶりとなる新型ロータリーエンジン8C型を開発した。小型高出力な本ユニットをMX-30にシリーズ式プラグインハイブリッドの発電用として搭載することで,地球温暖化抑制という社会的課題へのマルチソリューション戦略の1つを体現する。8C型は,理想的な燃焼を追求するために前モデル13B型から圧縮比を高め,燃料供給を直噴化及びCooled EGRシステムを採用,更に燃焼室形状を変更した。また,発電機専用ユニットとして排気量を最適化した。その結果,熱効率の大幅な改善と全域 λ(空気過剰率)=1運転を実現したことで13B型からユニット燃費が最大25%向上し,最新のエミッション規制である欧州Euro6d規制にも適合した。

  • ―軽量で低燃費,高信頼性を両立した構造系技術―
    横尾 健志, 新井 栄治, 坂井 隆則, 緒方 佳典, 橋本 真憲, 森永 裕太, 宮田 晋輔
    原稿種別: 特集
    2023 年 40 巻 p. 59-65
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/12/22
    研究報告書・技術報告書 フリー

    マツダは,約11年ぶりに復活となる新型ロータリーエンジン8C型を開発した。小型高出力な本エンジンを発電機として,シリーズハイブリッドで活用するものであり,地球環境を守るための施策として掲げているマルチソリューション戦略の1つである。本エンジンの開発でも「飽くなき挑戦」の精神を継承し,内燃機関の進化ビジョンを実現する熱効率改善技術,構造技術の進化と最適化に取り組んだ。ロータリーエンジンで課題となる冷却損失は,基本諸元を見直し最適化した。従来鋳鉄製であったサイドハウジングは材料をアルミに置換し軽量化した。また,燃焼進化にあわせて適宜レシプロエンジン構成技術の活用と高負荷燃焼に耐えうる構造強化を行った。レシプロエンジンと比べ,求められる出力性能をよりコンパクトなユニットで実現できる特長を活かし,サイズの大きな高出力モーター,ジェネレーターと組み合わせて同軸上に配置しながらも,MX-30の車体フレームへの搭載を可能とした。

  • 川田 卓二, 添田 征洋, 枝廣 育実, 白石 卓也, 光永 誠介
    原稿種別: 特集
    2023 年 40 巻 p. 66-69
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/12/22
    研究報告書・技術報告書 フリー

    EVモデルの第一弾として2020年に量産開始したMX-30 EV MODEL(以下,EV MODEL)をベースに,マツダ独自の新型ロータリーエンジン8C型(以下,8C型RE)を発電機として搭載するプラグインハイブリッドモデル「MX-30 Rotary-EV」を開発した。パワートレイン制御開発の重要課題は,EV MODELで好評を得た走行性能を継承し,航続距離を大幅に改善させることであった。本稿では,ハイブリッド走行モードにおいてエンジン運転頻度を減らしてEVらしさを追求しながらも,発電時はドライバー操作に応じたリニアなエンジン回転数変化によって人馬一体感を実現した取り組みについて紹介する。

  • 山本 真司, 中田 行俊, 髙橋 宏和, 池田 雄一郎, 岸田 高穂, 岡田 保彦
    原稿種別: 特集
    2023 年 40 巻 p. 70-76
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/12/22
    研究報告書・技術報告書 フリー

    マツダは走る歓びと優れた環境性能を実現する一つの選択肢として,マツダ独自の軽量,コンパクトなロータリーエンジン(以下,RE)によるバッテリーへの充電を可能とするe-SKYACTIV R-EVを開発し,お客様に提供している。従来のREでは,その大型構成部品であるサイドハウジング(フロントハウジング及びリアハウジング)は鋳鉄製であり,ユニットの軽量化による更なる運動性能と環境性能を追究するためには,この2部品のアルミニウム(以下,アルミ)への材料置換が重要課題となっていた。しかし,硬度の低いアルミでは,回転運動するローターに装着されたシール部材の摺動に対する耐久性が得られないため,高い耐摩耗性を有する硬化層を摺動面にコーティングする必要がある。そこで,摺動面の耐摩耗性を確保するコーティング手段として,高速フレーム(以下,HVOF)溶射技術を適用した。本技術の適用にあたり,摺動面に要求される機能と品質の関係,溶射皮膜の品質特性に影響する要因とそのメカニズムを明確にした。これらの検証を積み重ね,技術を手の内化することにより,要求機能,品質を確保しつつ,必要最小限の投資,コストで量産適用を実現した。本稿ではこの取り組みについて報告する。

  • 坪井 涼介, 刀祢 英男, 曽根 雅治, 小島 仁志, 山光 一央, 髙垣 真人
    原稿種別: 特集
    2023 年 40 巻 p. 77-83
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/12/22
    研究報告書・技術報告書 フリー

    e-SKYACTIV R-EVの発電用動力として採用した新型ロータリーエンジン8C型(以下,8C型)は,バッテリーEVのような快適な室内空間の実現を目指して静粛性の向上を図っており,それにはローターのアンバランスが大きく影響する。ローターサイズが従来モデルの約1.3倍に大型化された8C型は,その分素材の出来栄えの影響も増大するため,より厳しい目標に挑戦した。鋳型から机上でアンバランスを求める解析ツールを開発し,改善効果を定量的に予測することで目標を達成する確度の高い対策を講じ,そのツールを応用することでタイムリーな金型の維持管理を実現した。これにより既存アセットを有効活用しつつ,鋳造ばらつきの極小化を究めた鋳造工程を確立した。

  • 林 政男, 園田 尊正, 春木 佳奈, 高場 宣弘
    原稿種別: 特集
    2023 年 40 巻 p. 84-89
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/12/22
    研究報告書・技術報告書 フリー

    ロータリーエンジンにおいて,ローターハウジング摺動部のトロコイド面には耐摩耗性向上を目的としたクロムモリブデンめっきを施している。ローターハウジングは緻密なめっき形成による高強度なめっき皮膜の確保とめっき表面の油だまり溝への潤滑油膜の保持により耐摩耗性を確保してきた。今回,ロータリーエンジンの復活にあたり,新しいめっき工法を適用しつつCO2低減を課題として取り組んだ。具体的には生産工程において,6.5時間ものめっき処理時間を要し,更に油膜保持のため逆電処理による油だまり溝形成工程を要していた。めっき液中に触媒を添加することでめっきの析出効率を高め,処理時間を従来の半分以下の3時間に短縮しつつ,めっき処理と同時に油だまり溝を形成する工法案はあったが,複雑形状のワークへのめっき析出速度のバラツキを低減し,ねらいどおりの均一なめっき皮膜を得ることが量産化の課題であった。この課題に対し,CAEを活用して電極形状と処理条件を最適化することにより量産化を実現し,生産効率を大きく向上させ,同時にめっき処理の際に発生するCO2を45%低減することができた。

論文・解説
  • 石原 教示, 鶴本 徹, 廣部 敏之, 土路生 修, 住谷 章, 中村 直樹, 新川 貴大
    原稿種別: 論文・解説
    2023 年 40 巻 p. 90-97
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/12/22
    研究報告書・技術報告書 フリー

    近年,社会とクルマの共存の観点から,車外騒音規制の強化が進められており,内燃機関搭載車は,エンジン音の低減が求められている。特に,エンジン音の中でも排気吐出音は,この車外騒音規制に加えて,お客様が静粛性やサウンドといった車の価値を感じ取るための重要な要素の一つとなっている。こうした中,これまで開発効率化のために排気吐出音の予測技術開発に取り組んできたが,厳しい規制対応とサウンド進化を両立していくためには,これまでよりも綿密な排気吐出音のコントロールが必要であり,それには従来よりも高い予測精度が求められる。そこで,排気吐出音を構成する気流音と脈動音に対して,新たに計測結果の分析技術の構築や,CFD(Computational Fluid Dynamics)や音響解析モデルの改良により,予測精度を大幅に向上させた。本稿では,その取り組みについて報告する。

  • 小林 謙太, 矢野 佑樹, 和田 幸史朗, 森実 健一, 柚木 伸夫
    原稿種別: 論文・解説
    2023 年 40 巻 p. 98-104
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/12/22
    研究報告書・技術報告書 フリー

    マツダは従来から取り組んできたMBDプロセスに加えて,機械学習を活用することによるクルマの進化に挑戦している。具体的な取り組みとして,エンジンに搭載されているセンサーが抱える課題を解決するために,物理量をNeural Networkモデルで予測することで,センサーと置き換える「バーチャルセンサー開発」がある。本稿ではディーゼルエンジンのインテークマニフォールド温度とターボチャージャー回転数を予測するために,Neural Networkモデルを開発するプロセスを紹介する。また,多種多様な条件下で使用されるクルマへの適用を想定し,入力パラメーターが学習領域外に存在する場合の対応についても示す。

  • 白 雪峰, 本城 創, 末冨 隆雅
    原稿種別: 論文・解説
    2023 年 40 巻 p. 105-110
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/12/22
    研究報告書・技術報告書 フリー

    CASE(Connected, Autonomous, Shared, Electric)を代表とする100年に一度の変革を迎え自動車のシステムはますます複雑となり,そのソフトウェアの規模は増大している。開発規模が増大し,開発が破綻しないためには開発の効率化が必須となっている。これまでエンジン制御や運転支援システムなどの動的制御系に対してはモデルベース開発を適用してきたが,今後もソフトウェア規模が増大するインフォテイメントなどの情報制御系において,モデルベース開発による早期の仕様検証と,自動コード生成によるソフトウェア実装の効率化に取り組んだ。本稿では,情報制御系のモデリング手法及びモデル交換や検証の開発環境について述べる。

  • 三明 祐大, 中丸 和之, 坪山 真之介, 國川 隆, 角本 千恵, 坂本 貴弘
    原稿種別: 論文・解説
    2023 年 40 巻 p. 111-115
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/12/22
    研究報告書・技術報告書 フリー

    近年,自動車はCASE領域(コネクテッド技術,自動運転技術や電動化技術)での進化が著しく,ソフトウェアが自動車の価値に大きな影響を与えるようになってきた。更に,通信技術やITシステムの進歩により,既販車に対してソフトウェアを更新できるようになり,それによりお客様に最新の機能/性能を提供することが可能となってきている。

    マツダでは,スモール商品群から出荷前の工場や出荷後の市場において,品質よくソフトウェア更新を行う基盤を整えている。そして,2021年9月にはソフトウェア更新による既販車の性能向上を行う「MAZDA SPIRIT UPGRADE D1.1」のサービスを開始した。その後,UN-R156 Software update and software update management system(以降,UN-R156)が施行されたことに伴い,法規としてもソフトウェア更新の確実な実施と管理が求められるようになったため,スモール商品群で構築したプロセス及びITシステムを拡張し,UN-R156の能力証明書及び,型式認可を取得した。

    本稿では,上記のマツダにおける車載ソフトウェア更新に関する取り組みと,UN-R156対応に向けて構築したプロセス及びITシステムを紹介する。

  • 二宮 仁, 三好 滋, 安井 尚志, 松下 洋, 山根 克之, 田中 博己, 藤下 祐司
    原稿種別: 論文・解説
    2023 年 40 巻 p. 116-122
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/12/22
    研究報告書・技術報告書 フリー

    マツダは,2050年までに自動車のライフサイクル全体においてカーボンニュートラル(以下CN)を達成することを目指している。CNの実現には,革新的な技術を開発・導入するだけでなく,現時点で利用可能な技術を最大限に活用し,即座に取り組みを開始することも不可欠である。本稿では,CN実現に向けた基盤となる「省エネ」に関して,全社的な取り組みの中で重要な影響をもつ空調設備の事例を紹介する。オフィスビルや工場の空調に使用される冷凍機や冷却塔などの設備が能力低下する課題に対し,単一の設備内で洗浄薬品を循環させる局所洗浄技術を導入することで,低コストかつ容易にエネルギー「効率」を改善させた。更に,温度設定などの季節変動を考慮して空調設備の運転方法を工夫することで,「運用」の改善を実現した。また,これらの取り組みを定着させるために,改善効果を可視化し,PDCAサイクルを回す仕組みを導入した。

  • 上川路 太雅, 森田 直輝, 水篠 友哉
    原稿種別: 論文・解説
    2023 年 40 巻 p. 123-129
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/12/22
    研究報告書・技術報告書 フリー

    カーボンニュートラルの実現に向け,車体組立領域において消費エネルギーの占める割合が大きいスポット溶接のエネルギー削減を進めている。しかし高強度材料の適用拡大等を背景に,溶接品質の安定確保のためスポット溶接のエネルギーは増加傾向にある。そこで品質安定確保と消費エネルギー削減を両立させるため溶融プロセスを必要エネルギーの観点で見直し,加圧力をナゲット形成過程に合わせて変えることが有効であることを明らかにし,多段加圧スポット溶接システムを開発した。このシステムは既存設備を活用し低コストで展開が可能なシステムとして開発し,量産導入した。本稿では溶融プロセス最適化の内容と,これを実現するための設備の開発について紹介する。

  • 大路 潔, 富岡 沙絵子, 吉本 淳, 安永 亨, 庄司 明, 藤田 弘輝
    原稿種別: 論文・解説
    2023 年 40 巻 p. 130-136
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/12/22
    研究報告書・技術報告書 フリー

    電動車両においては,リチウムイオン電池の充放電能力を引き出すことが車両性能に直結することから,電池マネジメント技術の開発が進められている。特に,電気化学反応が発生している電池セル内部の温度挙動を推定するモデル化手法は,電池能力を引き出す重要な技術である。一方,モデルベース開発を実現するには,高い推定精度を持ちつつ,高速に演算できる温度予測モデルが求められている。そこで,車載用リチウムイオン電池セルを対象に,車載で想定される温調環境下においても内部温度を推定可能なモデリング技術を開発した。内部熱特性の計測/同定,及び内部熱流れを解明することで,高速かつ高精度化を実現し,電池内部温度の実測値と予実差検証を行った。

  • 曽利 僚, 胡本 博史, 為貝 仁志, 吉末 知弘
    原稿種別: 論文・解説
    2023 年 40 巻 p. 137-144
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/12/22
    研究報告書・技術報告書 フリー

    自動変速機(以下,AT)を搭載した車両のドライバビリティ向上のため,湿式多板クラッチ(以下,クラッチ)の高精度制御が求められている。実現には荷重・速度・摩擦面温度依存性をもつ,クラッチの摩擦係数(以下,μ)を正確に推定する必要がある。しかし,逐次発生する摩擦熱によって変化する摩擦面温度の考慮は困難である。そこで,クラッチの摩擦現象が流体摩擦と境界摩擦で構成されると考え,物理モデルを構築することで各種依存性を考慮可能な高精度μ推定を実現した。モデル構築のため,従来,外乱の影響により実測が困難であったAT実装環境下でのクラッチ摩擦特性を,AT内部の運動方程式に基づいた計測手法を構築することで明らかにした。次に,取得したクラッチ摩擦特性を基に,流体摩擦は3D-CFD,境界摩擦は分子吸着膜のせん断応力の実験式,摩擦面温度変化は熱等価回路でモデル化し,これらを連成することで物理モデルを構築した。モデル連成は,各モデルの共通因子である摩擦対の面間距離hをタイムステップごとに計算し,計算結果を各モデルへ入力することで実現している。本稿ではこれら取り組みについて報告する。

  • 江﨑 達哉, 浅田 照朗, 佐々木 將展, 足立 崇勝, 重永 勉, 髙見 明秀
    原稿種別: 論文・解説
    2023 年 40 巻 p. 145-150
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/12/22
    研究報告書・技術報告書 フリー

    自動車の防錆品質は,お客様の安全・安心に,直結し非常に重要である。自動車には世界のさまざまな過酷な環境でも腐食しないように,塗装などの防錆対策が施される。これまで著者らは,塗装部の耐食性を迅速に定量評価する技術を開発した。この技術の活用により,防錆品質を閾値によって定量的に管理できることに加えて,耐食性の定量評価により得られる電流と電圧からなるプロファイルの解析に機械学習を適用することで,品質異常の予兆を検知することが可能となった。

  • 山川 啓介, 桂 大詞, 山本 崇史, 井上 実, 畠山 望, 三浦 隆治, 岡島 淳之介, 稲葉 賢二, 石澤 由紀江, 遊川 秀幸, 伊 ...
    原稿種別: 論文・解説
    2023 年 40 巻 p. 151-157
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/12/22
    研究報告書・技術報告書 フリー

    マツダでは,クルマの価値を向上させる革新的な材料を効率的に開発する材料モデルベースリサーチ(MBR)の考え方に基づき,多機能同時制御モデル技術の開発を進めている。これまでに,車室内の静粛性や快適性に寄与する多孔質材料に対して,限られた質量と容積の中でねらいの吸音機能,断熱機能を実現するために,その微視構造を効率的に設計する技術を開発した。今回,これまで構築した技術を応用して,新たに防振機能設計のための基礎的な微視構造モデルを構築し,主要因子である弾性の発現メカニズムを検討したので報告する。

  • 田中 耕二郎, 島田 聡子, 杉本 幸弘
    原稿種別: 論文・解説
    2023 年 40 巻 p. 158-161
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/12/22
    研究報告書・技術報告書 フリー

    摩擦攪拌点接合のアルミニウム製車体骨格部材への適用性を明らかにするため,接合パラメーターの強度への影響を調査した。A6111/ADC3ダイカストの板組みでは,プローブ径が大きいほど強度が高く,安定的に抵抗スポット溶接JISA級平均を超えるせん断強度が得られることを確認した。断面観察の結果,安定して強度を得るためには,塑性流動状態や上板残厚,それらを決定付ける接合ツールの実挿入量を適切に管理することが重要であることが分かった。

  • 中村 優佑, 清水 圭吾
    原稿種別: 論文・解説
    2023 年 40 巻 p. 162-167
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/12/22
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    空気抵抗低減とデザインの両立のために,空気抵抗に寄与する低圧旋回渦を同定する手法を開発した。自動車空力の分野で用いられる従来の渦同定手法は,煩雑な同定結果を与え,更に必ずしも低圧旋回渦を同定しているとは限らなかった。そこで,筆者らは,乱流の基礎研究において,低圧旋回渦の渦中心軸を同定する圧力断面極小旋回法に着目し,自動車周りの流れ場にも適用できるように拡張した。具体的には,既存手法を自動車空力のシミュレーションで用いられる非構造格子にも対応できるよう理論を拡張した。更に,煩雑な同定結果をもたらす渦中心軸の断片化を抑制するために,渦中心点の物理的情報を考慮した渦中心軸構築アルゴリズムを開発した。本手法を自動車周りの流れ場に適用した結果,自動車周りに発生する既知の特徴的な渦を同定することができた。更に,本手法は従来手法と比較して,渦中心軸の断片化を抑制することができた。これらの結果から,本手法は自動車周りの低圧旋回渦を同定するのに有効であるといえる。今後は,渦が定量的に評価できるように本手法を進化させ,空気抵抗と渦のモデル式を構築することで,空気抵抗低減とデザインの両立に貢献していく。

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