松江市立病院医学雑誌
Online ISSN : 2434-8368
Print ISSN : 1343-0866
11 巻, 1 号
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  • 野津 長, 殿本 詠久, 芦田 泰之, 松井 泰樹
    2007 年 11 巻 1 号 p. 1-3
    発行日: 2007年
    公開日: 2019/08/05
    ジャーナル オープンアクセス
    腹部大動脈術後の回復には腸蠕動の開始時期および経口摂取の開始時期が早まることが望まれる。癒着予防で使用したセプラフィルムはこれらの点を改善する可能性が示唆されたため、2001年8月以降の9症例全例に使用した。1995年から2001年8月までの34症例を比較群とし、その有用性を検討した。セプラフィルム使用群では未使用群に比較し、入院日数、経口開始時期および腸雑音の聴取時期に関しては有意に短縮していた。即ち、セプラフィルム使用は腹部大動脈瘤に対する開腹術後の早期回復を可能にする大変有用な手術補助法となると結論された。
  • 奥野 啓介, 岡本 学, 田中 雄二
    2007 年 11 巻 1 号 p. 5-8
    発行日: 2007年
    公開日: 2019/08/06
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    平成17年10月から平成18年2月までの期間に当科に入院したRSV感染症症例42例(男児22例、女児20例)につき検討した。平成17年12月が流行のピークで19例の入院があった。入院時月齢6.5±5.9、入院日数4.7±1.3であった(数値は平均±SD)。入院時に37.5℃以上の発熱があった症例は32例(76%)、喘鳴を呈していた症例は28例(67%)であった。多呼吸や陥没呼吸など、呼吸窮迫症状を呈した症例は5例で、酸素投与を行った症例は3例のみだった。36例に胸部単純X線撮影が施行されたが、19例(53%)には明らかな異常所見がなく、血液検査でも、WBC、CRP、AST、ALT、LDHについて検討したが、軽度のCRP上昇(1.07±1.17mg/dl;平均±SD)以外に、一定傾向の異常はなかった。治療については、気管支拡張剤吸入療法が90%以上、抗生剤投与が74%の症例で行われた。治療薬として推奨されないステロイド静注は2例(5%)、テオフィリン静注は4例(10%)にとどまった。発症から入院までの期間が短い症例(4日以内)が、発症から退院までの期間が短い傾向にあった。経口摂取不良など消耗が予測される患児では早期からの入院加療が望ましいと考えられた。
  • 徳田 佳生, 吉野 陽三, 内藤 恵美子
    2007 年 11 巻 1 号 p. 9-13
    発行日: 2007年
    公開日: 2019/08/06
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    松江市立病院(以下、当院)リハビリテーション(以下、リハ)病棟は、2005年8月の新病院開院と同時に51床の回復期リハ病棟として新設されたが、2006年1月からリハ科の医師1名欠員のため同病棟を亜急性期病床38床と一般病床13床の混合病棟として運用することとなった。この変化に伴うリハ患者への影響を在棟日数、退院先、退院時ADLで比較検討した。回復期リハ病棟であった2005年9~12月と、混合リハ病棟となった2006年1~4月の各4ヵ月間をそれぞれ前期、後期とした。各期間に退院または転出した患者はそれぞれ92名、101名であり、年齢、性別に有意差はなかったが入院科別では有意差があり、後期で整形外科が減少して脳神経外科・神経内科が増加していた。平均在棟日数は前期37.2日、後期51.7日と後期で有意に増大しており、科別に比較しても主要3科である整形外科、脳神経外科、神経内科ともに後期で増大していた。自宅退院率は前期80%から後期61%へ有意に低下しており、施設入所、転院がそれぞれほぼ倍増していた。また合併症などで転棟となった患者が、前期3例に対し後期9例と増加していた。自宅退院率の低下は科別に比較しても同様であった。退院時ADLは機能的自立度(以下、FIM)総合得点で評価したが、後期で有意に低い得点分布を示し、科別でもすべて後期で低下傾向にあった。リハ病棟では患者をなるべく早期に高いADLに到達させて自宅復帰させることが主要な目的となるが、当院リハ病棟では今回の体制変化に伴い、退院リハ患者の在棟日数、自宅復帰率、退院時ADLといった主要3項目が全て悪化していた。原因として患者層の変化や季節的要因も考えられるが、リハ病棟専従医の不在による影響と、一般病床への疾病治療患者の入棟によるリハ看護能力の低下も、リハ病棟機能低下の要因と考えられる。
  • 川田 哲也, 浜本 順次, 堅野 比呂子, 小室 圭子
    2007 年 11 巻 1 号 p. 15-19
    発行日: 2007年
    公開日: 2019/08/06
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    当院に電子カルテが導入され、現在までに明らかとなった問題点を報告する。1番の大きな問題点は電子カルテ導入前に比べて診療業務に時間がかかるという事である。時間がかかる原因としては、(1)数値入力ソフトでの検査データ入力の手順が多い事(2)診察への呼び込み順を電子カルテ上で管理できない事(3)眼科スタッフの不足などが挙げられる。そしてこれらの問題点の改善策として、(1)眼科独自のサブシステムの改善と電子カルテとの連携を密にすること、(2)電子カルテのみの運用には今の時点では限界があるため、電子カルテと旧紙カルテとを併用すること、(3)眼科スタッフの増員などがある。これらの問題点を改善することで電子カルテを用いたスムーズな診療が可能になると考える。
  • ~2005年8月1日から2006年7月31日までの1年間の調査~
    木原 恭一, 山田 稔, 石原 研二
    2007 年 11 巻 1 号 p. 21-28
    発行日: 2007年
    公開日: 2019/08/06
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    ヒト; 乳児(1~23ヶ月); 成人(19~44); 中年(45~64); 高齢者(65~79); 高齢者(80~); 男; 女 Abstract:松江市立病院(以下、当院)における血液培養陽性例を市中感染と病院感染に分け、両群の臨床的な違いを比較検討した。当院は2005年8月1日に新築移転した。移転後から2006年7月31日までの1年間に404回の血液培養が行われ、46例の菌血症が抽出された。内訳は市中感染15例、病院感染31例であった。感染巣は両群で肺炎が最も多く、病院感染では肺炎に次いで血管カテーテル感染が多かった。起因菌は、市中感染でmethicillin-resistant Stapylococcus aureus(以下、MRSA)6例、Klebsiella sp.2例などであったのに対し、病院感染でMRSA 11例、Pseudomonas aeruginosa 5例、Klebsiella sp. 4例、Candida sp.3例などであった。両群で最も多く分離されたMRSA(35%、16/46例)について薬剤感受性を検討したところ、両群間の薬剤耐性に明らかな違いは認められなかった。血液培養で分離されたStapylococcus aureusのmethicillin耐性率(以下、MR率)は市中感染83%(5/6例)、病院感染85%(11/13例)で両群ともに極めて高率であった。菌血症を疑ったときは必ず血液培養を施行し、MRSAの頻度が最も高いことから血液検体塗抹でグラム陽性球菌を認めた場合には、培養や薬剤感受性結果が明らかになる前に患者背景を考慮し、抗MRSA薬の使用を検討すべきである。
  • 石倉 信造
    2007 年 11 巻 1 号 p. 29-33
    発行日: 2007年
    公開日: 2019/08/06
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    生体材料の開発はめざましく、中でも人工骨補填材料は古くから臨床に用いられてきた。未だ自家骨に勝るものはみられないが、骨採取にともなう侵襲や手術時間の短縮を目的として使用される場合がある。人工骨補填材料はブロック状のものは成形が容易ではなく、顆粒状のものは形態を付与することが困難であった。リン酸カルシウム骨ペーストは発熱が無く硬化し、初期より固定強度が得られ、硬化までに成形が容易であるという特徴を有しており、特に整形外科領域ではさまざまな分野に応用されている。われわれも顎口腔領域にリン酸カルシウム骨ペースト(以後、CPP)を使用し、その臨床経過について検討した。CPPを使用した27例中3例(11.1%)に術後感染がみられた。CPPは骨組織との親和性が極めて高く、骨伝導能および誘導能を有しているが、自家骨に置換しない。このため、変形を有する顎骨の再建には適しているものの、病的骨折の可能性の乏しい小さな腫瘍摘出腔などの補填やデンタルインプラントとの併用には適当とは思えない。またCPPと骨組織との間に血腫が形成されると感染が生じるため、充填時には十分な止血が必要である。
  • 小林 直紘, 太田 哲郎, 岩坂 徹, 井上 慎一, 岡田 清治, 大岡 敏彦, 曽根 啓司, 南京 貴広, 石原 修二, 村上 林兒
    2007 年 11 巻 1 号 p. 35-40
    発行日: 2007年
    公開日: 2019/08/06
    ジャーナル オープンアクセス
    背景:薬剤溶出性ステントであるCypherステントは経皮的冠動脈形成術の最大の課題である再狭窄を解決するものとして広く使用されているが、当院でも再狭窄率は4.6%と良好な成績が得られている。しかし、ステントの不十分な拡張は再狭窄やステント血栓症の原因になると報告されている。目的:本研究の目的はCypherステント留置後に行った後拡張時のステントの拡張径を使用するバルーンのコンプライアンスチャートの径と比較検討することである。方法:Cypherステントの後拡張時の圧に対応する製品のコンプライアンスチャートの径に対する拡張時の実際のバルーン径の比(%)(以下、BD/TD)、拡張後のステント径の比(%)(以下、LD/TD)を定量的冠動脈造影から求め、病変の性状や使用バルーンのコンプライアンス(以下、BC)がステントの拡張に与える影響を検討した。結果:BD/TDはCypherステント留置時が85.2±11.6%、後拡張時が90.3±6.3%(p<0.05)、LD/TDはCypherステント留置時が78.5±13.4%、後拡張時が84.9±7.2%(p<0.05)でそれぞれ有意差が認められた。BD/TDとBCにr=-0.384(p<0.05)、LD/TDとBCにr=-0.384(p<0.05)といずれも有意な負の相関関係が認められた。結語:Cypherステントの後拡張時にはバルーン径はコンプライアンスチャートの径の約90%まで拡張し、また、ステント内径はコンプライアンスチャートの径の約85%が得られ、この比率には使用するバルーンのコンプライアンスが関与すると考えられた。Cypherステントを使用する際にはこのことに留意してバルーンの選択や圧の設定をする必要があると考えられた。
  • 織部 貴広, 石倉 誠, 生田 浩司, 曽根 啓司, 南京 貴広, 中村 浩人, 小徳 綾子, 石原 修二, 阿武 雄一, 謝花 正信
    2007 年 11 巻 1 号 p. 41-50
    発行日: 2007年
    公開日: 2019/08/06
    ジャーナル オープンアクセス
    平成17年8月、新病院の開院と共に放射線科の診断・治療装置も新設され、放射線治療装置(以下リニアック装置と称す)も更新された。これまでの旧病院のリニアック装置では、治療に用いる放射線のエネルギーが1種類のX線(4MV)しかなかったが、新しく更新されたリニアック装置では、治療に用いる放射線のエネルギーがX線では2種類(4,10MV)、電子線では5種類(4,6,9,12,15MeV)に増え、装置の治療精度も向上した。それに伴い、周辺機器も増設され定位放射線照射も可能となった。定位放射線照射とは、外科的手術が困難な体内の小病巣に対し、他方向から放射線を集中させる治療方法で、通常の放射線治療方法に比べ1回の治療(定位手術的照射)または数回の治療(定位放射線治療)で小病巣に高線量を投与できるため、周囲の正常組織の放射線障害や負担を最小限に抑えられる治療である。定位放射線照射において、頭蓋内病変に対する適応疾患の一つとして頭蓋内脳動静脈奇形(以下、AVM)が挙げられる。今回、AVMの症例に対し、高エネルギーX線(10MV)を用いてリニアック装置よる定位放射線治療を山陰地方の病院施設で当院が初めて行った。病変への治療成績の評価は2~5年の期間を要するが、定位放射線照射を行ったことで、照射を行うための準備や改善部分、スタッフの患者様への対応、これからの治療を行う上での今後の課題等、多くの情報を得ることができた。
  • 松本 瑞恵, 中田 安真音, 伊藤 真弓, 赤名 祐美, 吉岡 佐知子
    2007 年 11 巻 1 号 p. 51-56
    発行日: 2007年
    公開日: 2019/08/07
    ジャーナル オープンアクセス
    看護師は、あらゆる視点から日常的に入院患者の危険度をアセスメントしなければならない。しかし、看護判断の多くは個々の経験や知識などに委ねられており、看護師の能力や視点の違い、「ちょっと変」など直感に頼るものとなると、みな同じ基準で対象を捉えられているかは疑問である。優れた看護師は患者の何をどのように捉え、危険を見極めるに至っているのか。転倒・転落の危険を捉える看護師の判断を明らかにすることを目的に、3名の看護師に半構成的インタビューを行った。その結果、《危険を捉える判断》には、2つのプロセス、[感覚的な予測]および[意味づけされた予測]が存在していた。その中で看護師は、患者の(漠然とした全体の様)、(行動能力の低下)、(不確かな依頼行動)、という3つ視点で患者の危険を捉え、これらを互いに行きつ戻りつしながら更に確信の段階を踏み、患者個々の対応策、(とりあえず対応)、(欲求をくみ取る)、(状況に合わせた何らかの対応ができる)、(状況に合わせた対応ができない)、へと展開していることが明らかとなった。
  • 樋原 悦子, 角 桂子, 中田 安真音
    2007 年 11 巻 1 号 p. 57-60
    発行日: 2007年
    公開日: 2019/08/07
    ジャーナル オープンアクセス
    亜急性期病棟では様々な職種が患者の退院に向けて関わっているが、必ずしも有効な働きかけになっているとは言えない状況もあった。そこで、退院に向けての他職種の働きかけが一覧で見えるシート(以下、退院促進シート)を作成した。退院促進シートを導入して2ヵ月が過ぎた現在、実際に退院を促進する効果があったのかどうか、看護師の退院促進への意識の変化がみられたのかを明らかにすることを目的に調査を開始した。その結果、退院促進シートの導入後、明らかな在院日数の短縮にはつながらなかったが、functional independence measure(以下、FIM)値の低下をもたらすことなく看護介入はでき、看護師らの意識調査からも退院促進シートの必要性は高く認識されていた。また、約半数から実際の行動変容にまで繋がったとの回答を得ることもでき、情報共有には有用であったと考えている。今後は、退院促進シートの内容や使用方法を検討し、より多くの看護師の退院に向けた行動変容へと繋がるようにしていくことが課題となる。更に、看護師のみならず、他職種とも退院促進シートを共有し有効な退院促進を行っていくことが必要である。
  • 結城 崇史, 木原 千尋, 楠 龍策, 三浦 将彦, 田中 新亮, 小林 淳子, 河野 通盛, 吉村 禎二, 山田 稔, 大西 里佳, 川崎 ...
    2007 年 11 巻 1 号 p. 61-65
    発行日: 2007年
    公開日: 2019/08/07
    ジャーナル オープンアクセス
    症例は29歳、女性。腹痛、皮疹を認め、Schoenlein-Henoch紫斑病(以下、SHP)と診断された。SHPは、毛細血管から細動脈の血管炎に起因して、皮膚症状、腹部症状、関節症状、腎障害を主な兆候とする疾患である。皮膚症状はほぼ全例に認められるが、腹部症状の頻度も高い。本症例では皮膚症状に加えて、消化管病変、主に胃に病変を有し、内視鏡的に経過を観察する事ができた。副腎皮質ホルモン投与にて著明に改善を認めている。
  • 吉岡 宏, 金治 新悟, 倉吉 和夫, 河野 菊弘, 金山 博友, 井上 淳, 吉田 学
    2007 年 11 巻 1 号 p. 67-70
    発行日: 2007年
    公開日: 2019/08/08
    ジャーナル オープンアクセス
    今回われわれは、後腹膜より発生したリンパ管腫の稀な1例を経験したので報告する。症例は72歳、男性。右下腹部に腫瘤を触知し当院受診。血液、生化学検査は正常で、腫瘍マーカー(CEA、CA19-9)も正常範囲だった。腹部超音波検査とCT検査にて右下腹部に10cmの嚢胞を認めた。腹部MRI所見:嚢胞内腔はT1強調像でlow intensity、T2強調像ではhigh intensityを呈した。後腹膜リンパ管腫の診断にて、開腹し腫瘤を完全に摘出した。摘出腫瘤は後腹膜から発生し、11×7.5×6cmの嚢胞であった。壁は薄く充実成分なく平滑であった。嚢胞の内容は漿液性で、腫瘍マーカー(CEA、CA19-9)は正常範囲内であった。病理組織所見では、壁は不規則な太さの平滑筋束の走行が目立ち内腔は単層の扁平な内皮細胞で被覆され、悪性所見もなくリンパ管腫と診断した。術後3年現在経過良好で再発も認めない。今回、若干の文献的考察を加え報告する。
  • 野津 長, 松井 泰樹, 芦田 泰之, 吉田 学
    2007 年 11 巻 1 号 p. 71-73
    発行日: 2007年
    公開日: 2019/08/08
    ジャーナル オープンアクセス
    発熱、前頸部腫脹および疼痛で受診した29歳男性は甲状腺乳頭癌に急性化膿性甲状腺炎を合併した希有な症例であった。診断には穿刺吸引細胞診が有用であった。画像診断は腫瘍の存在診断には有用であったが、炎症の合併を明確には指摘できなかった。白血球増多は軽微であるが、血中サイログロブリンとCRPは急性期には高値を示した。急性化膿性甲状腺炎の原因とされる下咽頭梨状窩瘻の存在は否定され、ここに下咽頭梨状窩瘻が存在しない急性化膿性甲状腺炎の存在が証明された。
  • 林 隆則, 山口 広司, 角 文宣, 原田 祐治
    2007 年 11 巻 1 号 p. 75-78
    発行日: 2007年
    公開日: 2019/08/09
    ジャーナル オープンアクセス
    症例は32歳、女性。肉眼的血尿にて受診。超音波検査、及び膀胱鏡検査にて膀胱左前壁に3.5×4cmの広基性腫瘍を認めた。CT検査では腫瘍は早期より強く造影され、浸潤性の腫瘍であることが予想された。その後、血尿による貧血が急速に進行したため、可及的に経尿道的切除および凝固止血を行った。切除組織より炎症性偽腫瘍の診断を得たため、後日、残存腫瘍に対し膀胱部分切除術を施行した。その後再発を認めていない。
  • 太田 靖利, 岡田 清治, 堀 郁子, 謝花 正信
    2007 年 11 巻 1 号 p. 79-84
    発行日: 2007年
    公開日: 2019/08/08
    ジャーナル オープンアクセス
    症例は88歳、女性。数週間前からの前胸部痛にて受診した。心電図上、心筋梗塞が疑われ、冠動脈造影施行されたが、冠動脈に有意狭窄を認めず、左室造影ではたこつぼ様壁運動を認めた。心筋逸脱酵素上昇無く、心筋シンチグラフィーでは心尖部に集積低下を認めた。血栓評価のために心臓CT施行し、冠動脈狭窄、左室壁運動の評価を行い良好な結果を得た。さらにCT画像と心筋シンチグラフィーとの融合画像を作成することにより診断に有用な画像を得ており、心臓CTとシンチグラフィーの有用性を示す興味深い症例と考えたため、報告する。
  • 杉浦 涼子, 高木 美和, 土居 靖子, 大竹 徹, 今岡 雅史
    2007 年 11 巻 1 号 p. 85-87
    発行日: 2007年
    公開日: 2019/08/08
    ジャーナル オープンアクセス
    近年うつ病の治療には比較的副作用の発現が少ない選択的セロトニン再取り込み阻害薬(以下、SSRI)が使用される頻度が高まってきており、その有効性も認められている。しかし高齢者においては、加齢による薬物動態の変化、多様な身体疾患の合併など薬物療法を施行するにあたり注意が必要である。今回我々は、SSRIであるparoxetineによる高齢患者のうつ病治療開始早期に著しい低Na血症を来たし、薬剤性SIADHと診断された症例を経験したので報告する。症例は71歳男性。不安焦燥感が強く、うつ病を疑いparoxetine、clonazepam、risperidone投与を開始。paroxetine一日投与量を20mgから40mgに増量して14日後に急激な嘔吐、意識障害が出現、血清Na濃度(最低値)は106mEq/lであった。paroxetineを含むすべての内服薬投与を中止し、水制限を行って血清Na濃度の補正を行ったところ速やかに上記症状は消失し、各種検査より薬剤性のSIADHが示唆された。原因薬剤としてparoxetineの関与が強く疑われた。高齢者においては薬物による有害事象の発現も多く、比較的安全な薬剤であったとしてもできるだけ少量投与から開始し頻回に検査を行って、十分に観察することが必要であると考えられた。
  • 河瀬 真也, 金治 新悟, 倉吉 和夫, 河野 菊弘, 吉岡 宏, 金山 博友, 井上 淳, 三浦 将彦, 吉田 学
    2007 年 11 巻 1 号 p. 89-94
    発行日: 2007年
    公開日: 2019/08/08
    ジャーナル オープンアクセス
    症例は29歳、女性。平成18年3月22日に十二指腸潰瘍による症状にて当院受診した。腹部CTと腹部超音波検査にて、膵体部に境界明瞭で被膜を有する約2cmの腫瘤を認めた。周辺部は充実性で中心部は多房の嚢胞様成分がみられた。腹腔動脈造影にて軽度の濃染像を認めた。膵Solid-Pseudopapillary Tumor(以下SPT)を疑い、膵体尾部切除術兼摘脾術を施行した。切除標本にて境界明瞭で被膜を有する腫瘍が膵体部にみられ、腫瘍の割面は暗赤色充実性で、出血・嚢胞化を伴っていた。病理組織学的所見では、腫瘍の充実部分に小型・類円形の核を持つ比較的均質な腫瘍細胞を認め、嚢胞部分には偽乳頭状構造が認められSPTと診断した。免疫組織化学染色では内分泌マーカーが広範囲に陽性であった。以上より、臨床的にはSPTと診断したが、術後の免疫化学染色で内分泌腫瘍の特徴も併せ持った非典型的なSPTを経験した。
  • 大西 大和, 石倉 信造, 藤江 朋子
    2007 年 11 巻 1 号 p. 95-99
    発行日: 2007年
    公開日: 2019/08/08
    ジャーナル オープンアクセス
    矯正治療はD.B.S.(direct bonding system)や可撤性矯正装置をもちいるのが一般的であるが、固定源である大臼歯の位置異常を改善するのは難しい。特にtelescopic biteの症例の場合はD.B.S.のみによって改善するのは困難である。このような症例に対して近年歯科矯正治療に用いられるようになったセルフドリリング・セルフタッピングの歯科用インプラント(jeil medical社製Dual-top Anchor System)に歯の移動方向をコントロール可能なPalatal Traction Applianceとしてのフック付きメタルフレームを併用して2例の女性に歯科矯正治療を行ったところ、良好な結果が得られたので報告した。治療期間はおよそ4ヵ月程度で、その間の合併症、清掃不良によるフレーム下粘膜炎、咀嚼・嚥下障害などもみられなかった。しかしチタンスクリューを単独で用いた症例では、強い矯正力を負荷することによりメタルフレームが回転してしまったため、正確な方向性を求めるためには複数のチタンスクリューでの固定が要求されることを経験した。
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