松江市立病院医学雑誌
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12 巻, 1 号
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  • -当院新築後2 年間の著者初診気分障害の調査から-
    今岡 雅史
    2008 年 12 巻 1 号 p. 1-9
    発行日: 2008年
    公開日: 2019/08/02
    ジャーナル オープンアクセス
    2005 年8 月から2007 年7 月までの新病院移転後2 年間の気分障害の実態を著者が初診者として診察した114 名について調査した。 研究の主な目的は30 歳代を中心とした気分障害の増加を確かめ、その特徴を把握することであった。 結果は30 歳代発病の気分障害が年代的に最も多く、20 歳代も多いことが明確になった。従来、臨床の場では気分障害(うつ病)は4,50 歳代中心に発病した例を診ることが多かった。日本では20 年程前から若年(2,30 歳代)の気分障害が少しずつ増加してきた。最近ではマスコミでも取り上げられてきた。国民にも、企業にも大きな問題となってきた。 若年者気分障害の特徴として、男性は仕事の厳しさに由来する「疲弊うつ病」として発病することが多かった。女性ではむしろ逃避的な「神経症的うつ状態」が多い傾向が窺えた。 これらの気分障害、特に若年者気分障害の増加は主要には激しい社会変動の賜物と思われる。しかし、他に国際疾病分類の普及による「うつ病概念」の拡大と、激増した精神科クリニックによる受診のし易さ、も関係あることを述べた。 共同体意識の後退と大競争時代に特徴付けられる現代の社会変動の中で、集団への帰属意識に根を持つ執着気質の利用価値は軽減した可能性を指摘した。それに伴い若年気分障害の自責感情や本格的自殺企図は多くなく、特に女性では他罰的傾向の増加、擬似自殺の増加をもたらした。自己に甘く、権利意識のみの一部の若年者の脆弱性も問題にした。 厚労省の労働災害に関する報告は「労災認定された精神疾患の40%が30 歳代であり、労災認定された自殺者の98%は男性であり、女性は2%だった。又30 歳代が多いこと」を示していた。最後に気分障害に陥らない予防について私見を述べた。
  • 齊藤 景子, 小西 恭子, 岡本 学, 田中 雄二
    2008 年 12 巻 1 号 p. 11-14
    発行日: 2008年
    公開日: 2019/08/02
    ジャーナル オープンアクセス
     2005 年8 月1 日から2006 年11 月10 日までの間に、当院で入院治療を行った川崎病小児例10例を検討した。 初回γグロブリン(以下、IVIG)大量療法不応率は50% であった。不応例に対しては、1g/kg または2g/kg のIVIG 追加投与にて全例解熱が得られた。冠動脈瘤を残した症例はなかった。不応率の高さの原因としては、年齢層がやや年長に偏っていたことや10 例という少数のための特性の偏りによるものが一因と考えられた。 初回IVIG 不応例と反応例の比較を行ったが、不応例では、反応例に比べ、有意に当院の初診が早く、診断時の好中球分画の比率が高く、Na が低値であった。また、全経過中の最大血小板数は不応例で有意に高く、Hb 低値、Alb 低値の傾向もみられた。 報告されている中から4 つの不応例を予測するリスクスコアを当院の症例に用いて検討した。陽性的中率は50 ~ 67%と高くはなかったが、佐藤のリスクスコアでは陰性的中率が100% と高く、IVIG 反応良好例を抽出するには有用である可能性が考えられた。
  • 徳田 佳生, 吉野 陽三, 藤本 一夫
    2008 年 12 巻 1 号 p. 15-20
    発行日: 2008年
    公開日: 2019/08/03
    ジャーナル オープンアクセス
    松江市立病院(以下、当院)におけるリハビリテーション(以下、リハ)患者の疾患別構成を調査し、他院と比較することで当院の特徴を検討した。 対象は平成16 年4 月~平成19 年3 月の3 年間にリハ科へ紹介となった新患2,569 例で、他院との比較および詳しい疾患別構成の検討は平成18 年度の859 例で行った。疾患群の分類方法には日本リハ医学会が指定する8 分類を用いた。 3 年度とも骨関節疾患が4 割強と多く、廃用症候群と摂食嚥下障害を含むその他が3 割強、脳疾患が2 割であり、この3 疾患群で大部分を占めていた。平成18 年度において、脳疾患では脳梗塞は多いが頭部外傷は少なく、また脊髄疾患では脊髄損傷は少なかった。一方、小児リハまたは循環器リハの対象者はなく、また神経筋疾患では神経難病はなく、切断、呼吸器リハも極わずかであった。他院との比較では、当院で特に骨関節疾患の比率が高かった。 当院において一次救急で来院する確率の高い骨関節疾患が多く、三次救急の対象となりやすい脳外傷、脊髄損傷や手指切断は少なく、また廃用症候群が比較的多いことは、一次救急と癌診療に比重をおいた地域中規模病院としての特徴を反映したものと思われる。一方、リハ科専門医養成のためのリハ研修施設としては、リハ患者が特定の疾患群に偏っており、広い範囲のリハ研修をするためには他病院との連携も必要と考える。
  • -最適濃度に関する実験-
    堀 郁子, 飴谷 資樹, 能谷 雅文, 謝花 正信, 生田 浩司, 南京 貴広, 小林 直紘, 石原 修二, 太田 靖利
    2008 年 12 巻 1 号 p. 21-28
    発行日: 2008年
    公開日: 2019/08/03
    ジャーナル オープンアクセス
    塩化マンガン四水和物(ボーズデル)原液250ml を膵胆道系のMRI 検査に臨床使用した際、十二指腸内がT2 強調画像で高度低信号になり、膵頭部・乳頭の輪郭が不鮮明となった症例が多くみられた。基礎実験を行い、3 倍・5 倍希釈液では、軽度の低信号になることが確認された。実際の臨床において3 倍希釈液250ml 内用を応用したところ、半数以上の症例では、十二指腸内部の信号は適度な低信号となったが、約1/4 の症例では、高度低信号であった。次に3 倍希釈液300mlに増量し、体位変換も併用した場合、十二指腸の高度低信号の割合は1/10 に減少した。また、MRCP においても胃・十二指腸液が高信号として残存する症例は少なかった。3 倍希釈による副作用も経験していない。ボーズデルの使用方法として原液ではなく、3 倍希釈の方が、T2 強調画像での情報が増加し、MRCP の画質も低下しないことが確認された。
  • 堀 郁子, 飴谷 資樹, 能谷 雅文, 謝花 正信, 生田 浩司, 南京 貴広, 小林 直紘, 石原 修二, 太田 靖利
    2008 年 12 巻 1 号 p. 29-36
    発行日: 2008年
    公開日: 2019/08/03
    ジャーナル オープンアクセス
    高齢人口の増加にともない、認知症の早期診断・早期治療が注目される中、MRI を用いた認知症の診断ソフトが無料提供され、当院でも臨床応用している。しかし臨床的な症状とソフトによるZ スコアという数値には、完全な一致は得られず、どこまでこのソフトが有用であるのか基礎実験と臨床例による検討をした。 若年ボランティア6 名による実験では、画質を低下してもZ スコアの変動は0.5 以下であった。 臨床例では、視覚的にみた海馬・海馬傍回の萎縮程度に従い4 群に分けた場合Z スコアの値は、全ての群間で有意差を認めた。長谷川式検査結果とZ スコアの間には多数例では有意な傾向が見られた。 検査後に改めて主治医にアンケートを実施した結果では、正常群と境界群のZ スコアの平均値には有意差を認めた。 認知症の診断ソフトは、海馬・海馬傍回の萎縮を反映した数値を算出していることが再確認された。認知症の診断には、画像診断と臨床情報とを複合して検討する事が肝要である。
  • 中村 浩人, 曽根 啓司, 南京 貴広, 石原 修二
    2008 年 12 巻 1 号 p. 37-41
    発行日: 2008年
    公開日: 2019/08/03
    ジャーナル オープンアクセス
    新病院移転に伴い、アンギオCT システムが更新されフラットパネルディテクタ搭載型血管撮影装置(以下FD 装置)が導入された。今回、新病院の血管撮影装置における散乱X 線の空間線量率を測定し旧病院で使用していたイメージインテンシファイア搭載型血管撮影装置(以下I.I. 装置)との術者被曝を比較検討した。更新されたFD 装置では、防護具(寝台つり下げ鉛カーテン、天井懸垂型防護ガラス)が装着されていることと、量子検出効率が向上したことにより、I.I. 装置に比べ散乱Ⅹ線を67%~ 83%低減することができた。
  • -ウイルス抗体検査とワクチン接種-
    西村 ゆう子, 境 洋子, 三島 リエ, 松崎 高明, 山崎 浩, 米田 桂子, 石原 研治, 田辺 美代子, 河野 菊弘, 山田 稔, 西 ...
    2008 年 12 巻 1 号 p. 43-46
    発行日: 2008年
    公開日: 2019/08/03
    ジャーナル オープンアクセス
    平成18 年に当院職員に対して、麻疹、水痘、ムンプス、風疹ウイルス抗体検査を実施した結果、その抗体陽性率は麻疹91.9%、水痘94.2%、ムンプス93.6%、風疹87.6%であった。平成19 年4 ~ 5 月には職業感染対策として、感染力の強い麻疹、水痘の抗体非保有者に対してワクチンを接種した。その後、ワクチン接種者に対して抗体検査を行ったところ、麻疹で93.1%(29 名中27名)、水痘で83.3%(6 名中5 名)が抗体を獲得したことが確認された。 麻疹、水痘、ムンプス、風疹はいずれもワクチンによって予防可能な疾患であり、職業感染のリスクが高い医療従事者の各ウイルスに対する抗体保有状況を把握し、ワクチン接種の対策をとることが必要である。
  • 大野 美幸, 野津 直子, 金津 久美子
    2008 年 12 巻 1 号 p. 47-52
    発行日: 2008年
    公開日: 2019/08/03
    ジャーナル オープンアクセス
    5 階西病棟は脳神経疾患の患者が7 割を占めている。多くは高次脳機能障害をきたし、点滴ルートや尿管、胃管カテーテルの自己抜去行為も頻繁に認め、安全のためミトンや抑制帯による抑制を行っている。しかし、抑制解除の評価が難しく、一度始めた抑制がなかなか外せない現状にある。そこで、抑制解除の要因を明らかにすることを目的に、看護師10 名に半構成的面接法を行い、そこから得たデータを質的帰納的に分析した。その結果、看護師が抑制を解除できると判断した要因として、3 つのカテゴリーと9 つのサブカテゴリーが抽出された。看護師は、【抑制解除につながる患者側の要因】として、《抜去に及ばない程度の理解力がある》《抜去しようとするしぐさがない》《看護師で補える程度のリスク状態》を見極めていた。また【抑制解除を促す看護師の介入】として、《抑制しない工夫》《他職種へのはたらきかけ》《ゆとり(業務のゆとり、看護師の経験からくるゆとり、目が届く)》を、さらに【抑制解除につながる看護師側の要因】として、《抑制への罪悪感》《家族への配慮》《抑制解除の成功体験》を挙げ、抑制解除につなげていることが明らかとなった。
  • ~ケアマネージャーとの連携に焦点をあてて~
    樋原 悦子, 江角 恭子, 中田 安真音, 門脇 由佳, 角 桂子
    2008 年 12 巻 1 号 p. 53-63
    発行日: 2008年
    公開日: 2019/08/03
    ジャーナル オープンアクセス
    患者が施設や自宅に退院しサービスを利用する場合、退院先での援助の参考になるように看護サマリーをケアマネージャーに渡しているが、看護師によって記入方法は様々である。一方「病院から家庭へもっとつなげることができたらよい」とのケアマネージャーからの意見もあり、継続看護を行うための情報が十分に伝わっていないのではないか、看護師が提供している情報とケアマネージャーが必要としている情報には差があるのではないかと考えられた。そこで、ケアマネージャーと看護師にサマリーに関するアンケート調査を行い、ケアマネージャーの求めている情報を明らかにし、サマリーの記入方法を検討した。その結果、ケアマネージャーの求めている情報の多くは既にサマリーに記入している内容であり、必要なのはサマリー記載の標準化であるとわかった。サマリーの記載方法を標準化したことで、ケアマネージャーが求めているサマリーに近づき、よりよい継続看護へとつなげられた。また、看護師の継続看護への意識づけにも繋がったことが明らかとなった。
  • 錦織 優, 吉村 禎二, 岡田 清治, 境 洋子
    2008 年 12 巻 1 号 p. 65-69
    発行日: 2008年
    公開日: 2019/08/03
    ジャーナル オープンアクセス
    大量の不正性器出血で発症し、子宮内膜癌と特発性血小板減少症として治療、経過観察中に溶血と造血不全が明らかとなり、末梢血中に発作性夜間血色素尿症(paroxysmal nocturnal hemoglobinuria,PNH)タイプ細胞をフローサイトメトリー法で検出しPNH の診断を得た症例を報告する。経過中少量のダナゾールが貧血と血小板減少に4 年以上有効であった。 PNH は比較的稀な疾患であるが、再生不良性貧血や骨髄異形成症候群と共に骨髄不全症候群に属する。病像が重なったり相互に移行しうるので鑑別診断が重要となるが、まずPNH を思いつくのが大切である。
  • 楠 龍策, 大國 智司, 河瀬 真也, 早渕 達也, 西 香代子, 加藤 順, 村脇 義之, 三浦 将彦, 結城 崇史, 田中 新亮, 河野 ...
    2008 年 12 巻 1 号 p. 71-75
    発行日: 2008年
    公開日: 2019/08/03
    ジャーナル オープンアクセス
    症例は76 歳、女性。上気道炎で加療され、約1 ヵ月後に全身倦怠感、食欲不振、発熱を認めたため精査・加療目的で入院となった。入院後も38℃以上の高熱が持続し、精査をすすめるも診断にいたらず意識障害、血圧低下をきたした。電解質異常などから副腎不全を疑い採血後にハイドロコルチゾン投与をおこなったところ、全身状態の著明な改善を認め、後日施行した内分泌学的検査によりACTH 単独欠損症と診断された。ACTH 単独欠損症の症状は多彩で非特異的であり、しばしば微熱を認める。しかし本症例のように高熱が持続することは比較的稀である。原因不明の発熱の診断において、副腎機能不全も鑑別にあげるべき疾患と考えられ、貴重な症例と考え報告した。
  • 金治 新悟, 倉吉 和夫, 河野 菊弘, 吉岡 宏, 金山 博友, 井上 淳
    2008 年 12 巻 1 号 p. 77-80
    発行日: 2008年
    公開日: 2019/08/03
    ジャーナル オープンアクセス
    症例は87 歳男性。腹痛、嘔吐を主訴に腸閉塞の診断で入院となった。腹部CT にて腸管内の結石像を認め、胆嚢十二指腸瘻を疑った。胆石イレウスの診断で手術施行したところ、回腸に嵌頓する3cm 大の結石を認め、小腸を切開し結石を摘出した。胆嚢と瘻孔は炎症が強く、大網が強固に癒着していたため胆道手術を付加しなかった。術前管理と診断の向上によって、近年胆石イレウスの一期的根治術も可能となった。しかし術前の全身状態や年齢を考慮して、術式の選択は慎重に行う必要があると考えられた。
  • 木原 恭一, 入江 隆, 豊嶋 直美, 佐藤 宗保, 吉田 学
    2008 年 12 巻 1 号 p. 81-87
    発行日: 2008年
    公開日: 2019/08/03
    ジャーナル オープンアクセス
    子宮原発骨肉種は極めてまれな疾患であり、検索しえた範囲ではわずか22 例しか報告されていない。今回、子宮原発骨肉腫の1 例を経験したので、若干の文献的考察を加えて報告する。 症例は60 歳女性。下腹部痛を主訴に受診され、子宮に小児頭大の腫瘤を認めた。検査結果より子宮肉腫を疑い、拡大子宮全摘出術、両側付属器切除術、骨盤リンパ節郭清術を施行した。腫瘍の一部は腹腔内に破綻していたが、腹膜播種性結節は認めなかった。組織学的には核異型高度で紡錘形腫瘍細胞が密に錯綜増生し、腫瘍細胞間に腫瘍性類骨と破骨細胞様巨細胞が介在した。上皮性腫瘍成分を認めず、免疫組織化学的に他の肉腫成分がみられなかったことから子宮原発骨肉腫のpuretype と診断された。放射線療法と抗癌化学療法(carboplatin とdocetaxel 併用)を追加するも、局所再発と腹膜播種性転移のために術後約6 ヶ月で死亡した。 本症例は上皮性腫瘍成分を認めず、免疫組織化学的に他の肉腫成分を否定しえた子宮原発骨肉腫のpure type と考えられた。子宮原発骨肉腫に対する治療法は確立されておらず、本症例を含め長期生存例は報告されていない。
  • 齋藤 とも子, 豊嶋 浩之, 久保田 倍生, 森 浩一, 徳永 紗織, 岩下 智之, 安部 睦美
    2008 年 12 巻 1 号 p. 89-93
    発行日: 2008年
    公開日: 2019/08/05
    ジャーナル オープンアクセス
     家庭でも汎用される防水スプレーは、直接吸入、さらには熱分解産物で毒性を増した成分の吸入により肺障害が引き起こされる。今回我々は、40+X 歳の男性が締め切った室内で防水スプレーを使用したところ呼吸困難を自覚し、約48 時間後に呼吸苦、咳嗽の悪化を認め防水スプレー吸入による化学性肺炎と診断した症例を経験した。その病態生理としては、撥水剤として用いられているフッ素樹脂により肺の表面活性物質が拮抗されて肺胞虚脱を生じ、一部が肺炎に移行する可能性が示唆されている。今回我々は暴露後数日たってから化学性肺炎を発症し、ステロイド、好中球エラスターゼ選択的阻害薬の投与、BiPAP(bi-level positive airway pressure)による呼吸管理を行うことで症状改善を得ることができた症例を経験したので若干の文献的考察を加えて報告する。初発症状が軽微でも呼吸器症状の経過を詳細に観察することが重要であると考える。
  • 木山 力哉, 石倉 信造, 吉田 剛, 田邉 敬一朗
    2008 年 12 巻 1 号 p. 95-98
    発行日: 2008年
    公開日: 2019/08/05
    ジャーナル オープンアクセス
    根尖性骨異形成症(periapical osseous dysplasias)は、1 ~数歯の根尖部組織にセメント質ないし骨様硬組織をともなって線維性結合組織の限局性増殖をきたす疾患である。根尖性骨異形成症は無症状であることから日常臨床で発見しにくく、X 線写真で偶然に発見なされることが多い。発生部位は一般に下顎前歯部に好発するとされるが、本邦においては、下顎小臼歯部~大臼歯部に好発するとされている。性差は女性に多く、好発年齢は40 歳~ 60 歳台に多いといわれている。病変部の大きさは直径1cm 以上に増大することは稀であるとされており、今回われわれが経験した単発性根尖性骨異形成症の1 例は16.3mm と比較的大きかった。本症例の概要とともに若干の文献的考察を加えて報告した。自験例では、患者は49 歳、女性。疼痛を主訴に当科を受診した。右下大臼歯に生じたセメント質腫をともなう下顎骨骨炎の臨床診断下、入院全身麻酔下に摘出術を施行した。病変周囲を十分掻爬した後に閉創した。摘出した硬組織病変は病理組織学的診断にて単発性根尖性骨異形成症であった。術後の経過は良好で、現在外来にて経過観察中である。
  • 吉田 剛, 石倉 信造, 吉田 学, 金森 一渓, 田中 宗亮
    2008 年 12 巻 1 号 p. 99-101
    発行日: 2008年
    公開日: 2019/08/05
    ジャーナル オープンアクセス
    神経鞘腫は有髄神経のSchwann 細胞の増殖からなる良性腫瘍であり、多くは周囲組織との境界が明瞭な腫瘤として認められる。好発部位は中枢神経系で、口腔領域での発症はまれである。今回われわれは、下唇に発症した神経鞘腫の1 例を経験したのでその概要を報告した。患者は26 歳、女性で、下唇の腫瘤を主訴に当科を受診した。下唇良性腫瘍の臨床診断のもと、局所麻酔下で、腫瘍摘出術を施行した。病理組織学的にはAntoni A 型の神経鞘腫であった。術後の経過は良好で、現在再発もなく、現在外来にて経過観察中である。
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