松江市立病院医学雑誌
Online ISSN : 2434-8368
Print ISSN : 1343-0866
14 巻, 1 号
選択された号の論文の19件中1~19を表示しています
  • 金井 眞理子, 三島 和子, 中村 衣通子, 上田 真理子, 鯉田 碧
    2010 年 14 巻 1 号 p. 1-8
    発行日: 2010年
    公開日: 2019/07/30
    ジャーナル オープンアクセス
    母乳育児は母児相互作用の原点であり、母児双方にとって多くの利点があることは広く知られている。しかし、新生児の中には母の乳頭型には大きな問題が無いと思われるのに、乳頭の吸着・吸啜を拒む児がいる。このような直接授乳困難例の報告は多くあるにもかかわらず、その要因について検討された報告は極めて少ない。本研究では、早期新生児期において直接授乳困難をおこす要因を明らかにすることを目的に実施した。対象は、平成20 年1 月~平成20 年5 月までの期間に当院産婦人科病棟において、正期産で分娩した褥婦及び正常早期新生児とし、褥婦に研究の趣旨及び方法を説明し、同意の得られた49 例に分析を行った。その結果、対象母児49 例中8 例に直接授乳困難(A 群)を認めた。その要因として、初回吸着・吸啜困難、帝王切開、微弱陣痛、初産婦において関連性を認めた。さらにA 群の帝王切開群(8 例中5 例)の最終妊婦健診時BMI 値は平均27.9 と高く、また、正常分娩1 例を除く7 例において予定日超過などによる誘発分娩又は帝王切開などの医療介入があり、これらの結果、直接授乳困難へと連鎖する可能性が示唆された。また、分娩の集約化が進む周産期を取り巻く現状の中で、本研究においても紹介や里帰り事例が49%を占めた。妊娠から分娩、産褥までの一連の継続した指導が困難になっている状況にあるが、今後連携を含めた妊婦自身のセルフケア能力を高める日常生活指導がますます重要と思われる。ひいてはその事が正常分娩につながり、スムーズな母乳育児へのスタートにつながると思われる。
  • 石倉 信造, 吉田 剛, 金森 一渓, 松村 正啓, 扶風 大作
    2010 年 14 巻 1 号 p. 9-14
    発行日: 2010年
    公開日: 2019/07/30
    ジャーナル オープンアクセス
    歯科恐怖に関する疫学調査のために国際的によく用いられる質問票として小児用のDental Subscale of Children’s Fear Survey Schedule(CFSS-DS)と成人用のDental Fear Survey(DFS)がある。一般に強い歯科恐怖を抱くものの割合は5~22%と報告されており、それらの患者は静脈内鎮静法の併用や全身麻酔下でなくては十分な歯科治療ができない。歯科治療恐怖症の診断基準は無く、臨床的な判断が求められる。このため、平成21 年1 月から約3 か月間に当科を受診した初診患者を対象としてCFSS-DS またはDFS の質問票を自記筆していただき、60 点以上となったものを歯科治療恐怖症と診断し、治療を行った。それにより生じた問題点と歯科治療恐怖症の発症時期と原因に対しても調査した。その結果、一般歯科治療をおこなうことは可能であっても麻酔を含む観血的な外科処置に対するものだけに特別な恐怖心を訴える症例もあり、CFSS-DS またはDFS のみの判断では患者に苦痛を与える危険性が示唆された。発症時期は一般に幼児期に多いとされているが、非験者の記憶によるとその時期に限ったものではなかった。歯科治療恐怖症となる原因はトラウマ的な特に疼痛や苦痛をともなう歯科治療経験が引き金になると報告されており、当科でも同様な結果であった。
  • 飴谷 資樹, 堀 郁子, 謝花 正信, 南京 貴広, 小川 敏英
    2010 年 14 巻 1 号 p. 15-20
    発行日: 2010年
    公開日: 2019/07/30
    ジャーナル オープンアクセス
    【目的】皮下埋め込み型中心静脈ポート(CV ポート)留置例について留置部位と合併症について検討した。【方法】2005 年8 月から2009 年8 月までに当科でCV ポート留置を試みたのべ871 例のうち、ポート留置に至らなかった3 例をのぞいた868 例を対象とし、留置方法、留置部位、合併症について後ろ向きに検討した。【結果】CV ポート留置手技の成功率は、99.7%(868/871)であった。留置部位は右上腕が490 例(56%;US ガイド下10 例、透視下4 例)、左上腕が220 例(25%;US ガイド下6 例)、右前胸部が107 例(12%)、左前胸部が26 例(3%)、右下腹部が20 例(2.3%)、左下腹部が5 例(0.6%)であった。CV ポートの抜去や再留置を行う必要があった合併症例は全部で88 例10.1%(88/868)であった。留置から合併症による抜去までの期間は1-770 日(平均138 日)であった。合併症の内訳は、感染あるいは感染疑いにて抜去した例が5 1例5.9%(51/868)、閉塞で抜去した例は、27例3.1%(27/868)であった。留置部位と感染および閉塞の頻度には有意差は認めなかった。【結語】上腕留置によるCV ポート留置は安全に施行可能な手技で合併症も前胸部留置と差がなかった。
  • ~松江市薬剤師会におけるアンケート結果より~
    安部 睦美, 岩下 智之
    2010 年 14 巻 1 号 p. 21-28
    発行日: 2010年
    公開日: 2019/07/30
    ジャーナル オープンアクセス
    がん疼痛治療を行う上で、薬物療法は有効な治療法で、医療用麻薬はその中心的な役割を果たす。医療用麻薬を適正に使用することは医師にとってはもちろん習得しなければならないスキルであるが、薬剤師の医療用麻薬使用における役割も今後いっそう重要性を増してくるものと思われる。昨今、外来におけるがん治療患者の増加に伴い、医療用麻薬を服用する患者が増え、外来での服薬指導の必要性を感じている。今回我々は、松江市の薬剤師(主に保険調剤薬局)を対象に医療用麻薬に関する意識調査を行った。その結果、89%の薬剤師が緩和ケアは身体的、精神的、社会的、スピリチュアルな苦痛の緩和を行う分野であるということを認識しており、概念的には理解されていることが明らかになった。しかし問題点として、疼痛の評価・服薬指導の不十分さ、医療用麻薬への偏見、医療用麻薬の正しい知識の習得、薬薬連携、医師との連携の必要性が浮き彫りになり、「緩和ケアの充実」に対しては、患者・家族・医療者への啓発が挙げられた。薬剤師による服薬指導は、患者がより安心してがん疼痛治療に望むことができるためには重要で、保険調剤薬局と病院薬剤師がより密に連携を取ることが必要であり、さらに処方する医師との連携も重要であると思われる。
  • 黒崎 和美, 佐藤 万里, 明事 典子, 森山 純子, 田村 多江
    2010 年 14 巻 1 号 p. 29-34
    発行日: 2010年
    公開日: 2019/07/30
    ジャーナル オープンアクセス
    当院は2005 年4 月よりNST(Nutrition Support Team)設立準備のための小委員会を発足し、翌2006 年1 月より全科型のNST 活動を行ってきた。全国的にも多くの施設がNST を有するようになってきている。当院ではNST の名称は浸透したが、活動の定着を実感するまでには至っていない。NST 活動にもかかわらず、稼動開始から2009 年3 月までの約3 年間の介入症例数は年々減少傾向にある。NST 介入症例は70~80 歳代に多く、診療科別では整形外科が最も多かった。介入理由は経口摂取不良が最も多く、次いで栄養摂取経路の変更、摂取エネルギーの検討、褥瘡、下痢などの経腸栄養のトラブル、食形態の変更であった。NST 介入効果の評価として介入前後の血清アルブミン値の変化と、介入依頼者の印象的臨床評価の二つの指標を用いてそれぞれ改善・不変・悪化で示した。血清アルブミン値での評価と依頼者における印象的臨床評価はいずれも約半数から改善の評価が得られた。介入時の血清アルブミン値の低さによって介入症例を4 段階(グループ)に分けたが、ほぼ均等な症例数に分かれた。4 グループにおける介入後の血清アルブミン値の変化を検討すると、介入時の血清アルブミン値が低いグループほど改善が多く認められる傾向にあった。しかし、依頼者の印象的臨床評価を指標とした場合は、逆に血清アルブミン値良好例に改善が多く認められる傾向にあった。この逆相関の結果についてはまだ症例数も少ないため、今後とも介入症例を重ね検証する必要があると考える。
  • 森脇 陽子, 武田 沙織, 松本 圭子, 壺倉 由子
    2010 年 14 巻 1 号 p. 35-42
    発行日: 2010年
    公開日: 2019/07/30
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究は、心不全にて再入院した後期高齢患者とその家族各5 名を対象に、自宅での服薬管理の実態を明らかにすることを目的に実施した。その結果、4 名の患者は薬について十分に理解はしていないが、内服の必要性は感じ服薬の自己管理を行っていた。家族の4 名は服薬管理に直接関与しておらず、患者が確実に服薬しているかどうかまでは把握できていなかった。しかし、薬について一部なりとも知識をもっており、服薬の管理方法は把握していた。以上のことから、再入院予防として看護師が退院に向けて服薬指導をしていく際には、入院前の自宅での内服環境を知りそれを活かした服薬管理を患者・家族とともに考えていくことともに、家族にも患者が生活自立している時点から、服薬を含めた療養生活に対して関心をもってもえるよう援助してくことが必要と示唆された。
  • 岩坂 徹, 太田 哲郎, 岡田 清治, 伊藤 早希, 大岡 敏彦, 実重 英明, 南京 貴広, 小林 直紘, 石原 修二, 村上 林兒
    2010 年 14 巻 1 号 p. 43-48
    発行日: 2010年
    公開日: 2019/07/30
    ジャーナル オープンアクセス
    背景:薬剤溶出ステントは経皮的冠動脈形成術の最大の課題である再狭窄を改善したが、再狭窄やステント血栓症は完全に解決されたわけではなく、依然として不十分なステント拡張はその原因の一つとなることが報告されている。目的:本研究の目的はTAXUS Liberte ステント留置時の拡張圧に対するステントバルーンのコンプライアンスチャートの径(理論的に得られると予想されるステント内径)と、実際の径とを比較することである。方法:定量的冠動脈造影を用い計測した病変部位におけるステント留置時のバルーン拡張中の内径(BD)、留置直後の内径(LD)、また、カタログのコンプライアンスチャートを参照して得られる理論上の内径(CD)からBD/CD 比(%)、LD/BD 比(%)、LD/CD 比(%)をステント拡張の指標として求め、前拡張の有無、拡張圧、病変部の石灰化性状がこれらの指標にどのように影響を与えるかを検討した。結果:単変量比較ではBD/CD、LD/BD、LD/CD それぞれで前拡張有と高度石灰化無が有意に大で高圧拡張では有意差は認められなかった。多変量分散分析はBD/CD を目的変数とすると、前拡張と高度石灰化が有意な要因となり(p<0.05)、それぞれは独立した要因で、LD/BD を目的変数とすると、前拡張と高度石灰化が有意な要因で、LD/CD を目的変数とすると、前拡張と高度石灰化が有意な要因であった。結語:TAXUS ステントは留置時に、コンプライアンスチャートの径に対して平均79.4%の拡が得られていた。また、多変量分散分析の結果より、TAXUS ステントの拡張は前拡張の有無と病変部石灰化の影響を受けると考えられた。
  • 吉田 剛, 石倉 信造, 金森 一渓, 松村 正啓, 扶風 大作
    2010 年 14 巻 1 号 p. 49-54
    発行日: 2010年
    公開日: 2019/07/30
    ジャーナル オープンアクセス
    今回、われわれは2006 年1 月から2008 年3 月まで、当科で加療をおこなった口腔カンジダ症80 症例の性別・年齢・主訴・部位・基礎疾患・抗真菌薬の選択について、臨床的検討をおこなったので、その概要を報告する。性別は80 症例のうち、男性13 人、女性67 人と女性が全症例の84%を占めていた。年齢は男性では平均年齢は66.7 歳、女性では平均年齢は68.2 歳で、男女とも50~70 歳台が多くを占めていた。主訴としては、「疼痛」が51 人・64%と最も多く、ついで「違和感」22 人・28%と多かった。基礎疾患については、糖尿病と精神科疾患が15%と最も多かった。抗真菌薬を投与し、80 症例中、54 症例に奏効が認められた。非奏効例では、本症に加えて口腔心身症・舌痛症・口腔乾燥症が合併しており、ほとんどの症例で漢方薬や抗精神病薬または抗不安薬が投与され、16 症例中9 症例に改善傾向または症状の安定が認められた。
  • 土江 里奈, 柿丸 まち子, 石原 研治, 吉田 学
    2010 年 14 巻 1 号 p. 55-58
    発行日: 2010年
    公開日: 2019/07/30
    ジャーナル オープンアクセス
    当院ではHelicobacter pylori(以下、H.pylori)抗体検査は外注・血清ELISA 法(以下、現行法)により実施している。今回、H.pylori 抗体迅速検査キット「ラピランH.ピロリ抗体」「ミニットリード ピロリ抗体」「イムノカードH.ピロリ抗体」について、現行法との比較を中心に検討を行ったので報告する。一般的に迅速検査キットは特別な機器等の必要がなく、操作が簡便で迅速報告が可能であることは当然であるが、コスト面でのメリットも期待できる。今回検討した3 キットについても充分にその性能を有していた。現行法との比較については、それぞれ96.4%、82.1%、85.7%の一致率であった。不一致のものは現行法で陰性と判定され、迅速検査キットで陽性となったものが多かった。これらのH.pylori 抗体迅速検査キットは、健康診断やスクリーニング検査として有用であると思われた。
  • 藤本 正伸, 田本 直弘, 岡本 学, 田中 雄二
    2010 年 14 巻 1 号 p. 59-62
    発行日: 2010年
    公開日: 2019/07/30
    ジャーナル オープンアクセス
    2008 年1 月1 日から2008 年12 月31 日までの期間において、松江市立病院(以下、当院)小児科外来・救急外来に受診し、生後3ヵ月未満の発熱のため入院加療を必要とした86 例について、発熱から初診までの経過時間、血液検査結果、白血球数、CRP 値からの感染原因の推定、感染原因菌、などについて後方視的検討を行った。この期間における外来からの総入院患者数は822 例あり、うち86 例(10.5%)が生後3ヵ月未満の発熱患者であった。ここでは、経過中に認めた最高のCRP 値2.0mg/dl 以上で、抗菌薬への反応が良いものを細菌感染群とし、それ以外のものを非細菌感染群と定義したところ10 例(11.6%)が細菌感染群に該当した。細菌感染群は生後0-30 日までが5 例と多かった。症状については、発熱のみが36%で最多、咳嗽が26%、哺乳力の低下が20%と目立った。Not doing well を認めた症例は、細菌感染群で3 例に認めたが、非細菌感染群でも約3 割にNot doing well を認め、細菌感染の指標にはならないと考えられた。家族内に感冒症状等の症状を認めた家族感染症例の頻度を検討した結果、細菌感染群では40%、非細菌感染群では64.5%であったが、統計学的有意差はなかった。真の重症細菌感染症の頻度は低く、約9 割は非細菌感染群でウイルス感染が主体と考えられるが、病歴、症状、検査値等から細菌感染の有無を判断することは困難と思われた。そのため、低月齢ではfull sepsis work-up を施行し、積極的に抗菌薬を用いた治療を行うべきと考えられた。
  • 今岡 雅史
    2010 年 14 巻 1 号 p. 63-68
    発行日: 2010年
    公開日: 2019/07/30
    ジャーナル オープンアクセス
    4 症例を通して、統合失調症者を中心とした精神障害者の身体合併症へ対する治療の同意能力を中心にインフォームド・コンセントについて検討した。また、ターミナルについて報告した。①経験的に、長く治療関係を保っている精神障害者の同意能力は通常の人に劣ることはほとんどない。②治療を拒むことは精神障害の人でしばしばあることだが、有効性の高い身体疾患への治療について主治医は治療を勧めるべきであるが、最終的には本人の考えに委ねることが大切であろう。③身体合併症(特に癌)を持って最後をむかえる精神障害者(統合失調症者)は概して通常の人のそれに比べて淡々としている。④医療者は単なる延命だけを目的とするよりは本人・家族の意思による生き方と死に方に配慮する幅が必要である。⑤結局インフォームド・コンセントは本来、患者と治療者の共同意思決定のためのプロセスであり、治療的信頼関係を築く文脈で構成されるもので、客観的基準などを設けるとか、法的手続きとしてのみ強調されることには危うさがある。
  • 山田 稔, 塩地 英希, 大国 智司, 吉田 学
    2010 年 14 巻 1 号 p. 69-74
    発行日: 2010年
    公開日: 2019/07/30
    ジャーナル オープンアクセス
    症例は70 歳の女性で、新規に発症した頭痛、開口障害、顎跛行、乾性咳を訴え、検査では、血沈の高度亢進、CRP の高値を認めたため、入院した。精査の結果、側頭動脈炎の診断基準に合致しており、プレドニゾロン50mg を投与開始し、速やかに症状や検査成績は改善した。側頭動脈生検では、リンパ球を主体とする単核球細胞浸潤を認めたが、多核巨細胞はみられなかった。側頭動脈炎では頭痛、開口障害、顎跛行が典型的な症状であるが、非典型的とされる乾性咳などの呼吸器症状を伴うこともまれではないと報告されている。今回、乾性咳を伴った側頭動脈炎の1 例を経験した。
  • 高井 絵理, 入江 隆, 木山 智義, 高尾 成久, 豊嶋 直美, 佐藤 宗保, 吉田 学
    2010 年 14 巻 1 号 p. 75-78
    発行日: 2010年
    公開日: 2019/07/30
    ジャーナル オープンアクセス
    異型ポリープ状腺筋腫は、生殖可能な年齢の女性に発生するポリープ状の良性腫瘍で、子宮体癌(類内膜腺癌)との鑑別が重要となる。今回、私たちは過多月経を主訴に来院し、術後に子宮体癌を合併した異型ポリープ状腺筋腫と診断された症例を経験したので報告する。症例は43 歳女性、未経妊。全身倦怠感と過多月経を主訴に近医を受診。子宮頸管内腫瘤の精査と重症貧血(Hb 4.4g/dl)の治療を目的に当院へ紹介受診となった。子宮より出血を認め、経腟超音波検査で頸管内に3cm 大の辺縁不整な腫瘤を認めた。腫瘤より得られた組織検査の結果は、ポリープ状腺筋腫であり、単純子宮全摘術を行った。術後の組織検査では、子宮体癌を合併した異型ポリープ状腺筋腫と診断された。追加手術として両側付属器切除術及び骨盤リンパ節郭清術を行った。卵巣・リンパ節に転移はみられず、化学療法などの追加治療の必要性を認めなかったため、現在、外来にて経過観察中である。
  • 岡山 良樹, 大谷 裕, 岡 伸一, 倉吉 和夫, 河野 菊弘, 吉岡 宏, 金山 博友, 田中 新亮
    2010 年 14 巻 1 号 p. 79-82
    発行日: 2010年
    公開日: 2019/07/30
    ジャーナル オープンアクセス
    Meckel 憩室は胎生期の卵黄腸管の遺残であり、剖検例の1~2%に見られる1)。その多くは無症状にて経過するが、稀にイレウス、憩室炎などの合併症を起こすことが知られている。今回、我々はその中でも小腸間膜への癒着による内ヘルニアの1 例を経験したので、若干の文献的考察を加えて報告する。
  • 河野 菊弘, 大谷 裕, 岡 伸一, 倉吉 和夫, 吉岡 宏, 金山 博友
    2010 年 14 巻 1 号 p. 83-86
    発行日: 2010年
    公開日: 2019/07/30
    ジャーナル オープンアクセス
    症例は67 歳女性。左下腹部痛を主訴に来院。腹部CT 検査でS 状結腸穿孔と診断し緊急手術を施行した。S 状結腸は腸間膜側に3cm の長軸方向の破裂部を認め、硬便が穿孔部を塞いでいた。穿孔部を含めた結腸切除術を施行しハルトマン手術とした。当初、患者の症状が強くなく経過観察となったがCT 検査の慎重な読影が必要と反省し、文献的考察を加え報告した。
  • 阿武 雄一, 瀧川 晴夫, 吉田 学, 中里 洋一
    2010 年 14 巻 1 号 p. 87-90
    発行日: 2010年
    公開日: 2019/07/30
    ジャーナル オープンアクセス
    今回我々は、急速に増大した成人脳幹部腫瘍を経験したが、意外なことに最終的な病理診断が乏突起膠腫であったので報告する。症例は61 歳女性。激しい回転性めまいで発症した。MRI では左顔面神経核付近に主座を置くT1 強調画像では低~等信号域、T2 強調画像では高信号域の長径16mm の腫瘍で造影効果はなかった。びまん性星細胞腫と診断され経過観察されていた。MRI にて腫瘍の急速な増大が認められたため、後頭下開頭にて生検術を施行した。術中迅速ではmalignant glioma の診断であったが、永久標本では免疫染色の結果およびchicken wire pattern 類似の毛細血管や明澄な腫瘍細胞の存在を認めたため、乏突起膠腫と診断された。若干の文献的考察を加え、報告する。
  • 芦田 泰之, 松井 泰樹, 野津 長
    2010 年 14 巻 1 号 p. 91-94
    発行日: 2010年
    公開日: 2019/07/31
    ジャーナル オープンアクセス
    ePTFE 人工血管置換術後のseroma 形成は決して希ではないが、腹部大動脈置換術後に巨大に成長し、縮小術後もなお成長し続けるseroma を経験した。症例は76 歳、女性。2002 年2 月腹部大動脈瘤(最大横径10.5cm)に対してePTFE 人工血管を用いたY graft 置換術を施行した。人工血管は遺残瘤壁で覆った。術後のCT では人工血管周囲に液体貯留を認め、次第に瘤化していった。2003 年4 月16 日、イレウス症状が出現して入院した。CT でseroma は最大横径9cm に成長。Seromaによる圧迫が原因の腸閉塞を疑い開腹術をおこなったが、小腸の癒着性イレウスでありseroma とは無関係であった。seroma 壁の病理組織診断では硬化性変性を伴った動脈壁であった。人工血管を被覆した動脈壁が伸展したものと思われた。手術の際に、seroma 瘤壁を可及的に切除し内容物を除去した。しかし、術後4 年を経てseroma は横径6.5cm に拡大しており、遺残瘤壁が再び伸展している。seroma 再発防止には異種人工血管での置換が基本ではあるが、壁の薄い弾力に富んだ大動脈瘤では瘤壁を完全に切除することが望ましいと考えられた。
  • 林 隆則, 濱田 治, 岡 伸一, 山口 広司, 角 文宣, 吉田 学
    2010 年 14 巻 1 号 p. 95-98
    発行日: 2010年
    公開日: 2019/07/31
    ジャーナル オープンアクセス
    症例は56 歳女性。急性腹症を呈し、当院救急外来を受診した。膀胱破裂と汎発性腹膜炎の診断にて緊急手術を施行した。穿孔は膀胱頂部の筋層が欠如し菲薄化した膀胱壁に存在し、尿膜管膿瘍手術の既往歴があったことより、尿膜管憩室に発生したものと考えられた。
  • 河野 通盛, 清水  幸恵, 村脇 義之, 安積 貴年, 三浦 将彦, 大嶋 直樹, 田中 新亮, 吉村 禎二, 山田 稔
    2010 年 14 巻 1 号 p. 99-104
    発行日: 2010年
    公開日: 2019/07/31
    ジャーナル オープンアクセス
    症例は松江市在住の18 歳の女子高校生で、2008 年2 月初旬に1 週間大阪市内のホテルに滞在後、40℃の発熱と食欲不振を自覚して近医を受診し不明熱として当院に紹介となった。初診時は発熱を中心とした臨床経過と検査所見より、急性ウイルス感染を第一に考え入院経過観察となった。入院後熱型より敗血症を起こしている可能性が考えられ、投与中の抗菌剤中止後48 時間で静脈血培養2 セットを提出したところ、血液培養検査の1 つより腸チフス菌を検出して診断が確定した。診断後キノロン剤を投与して症状消失し、2 回の便培養陰性を確認して退院となった。本例は全く海外渡航歴がなく、現在では稀な国内発症の腸チフス例と考えられたので若干の文献的考察を加え報告する。
feedback
Top