松江市立病院医学雑誌
Online ISSN : 2434-8368
Print ISSN : 1343-0866
17 巻, 1 号
選択された号の論文の14件中1~14を表示しています
  • 花田 卓也
    2013 年 17 巻 1 号 p. 1-4
    発行日: 2013年
    公開日: 2019/07/14
    ジャーナル オープンアクセス
    最近,低出生体重ならびに胎内発育障害がCKD(慢性腎臓病:Chronic Kidney Disease)の危険因子であることが大規模なコホート研究で示された.糸球体数の減少と糸球体容積の増大が起こり,結果として巣状分節性糸球体硬化症となる可能性が示されている.若年女性の痩せ願望や不規則な食生活など様々な要因があるが,現在本邦では年間10 万人以上の低出生体重児が出生している.低出生体重や早産が原因で低張尿や蛋白尿が出現するのは腎機能障害が進行してからのため,学校検尿では早期に発見できない可能性があり,小児科医は低出生体重にて出生した児に対して積極的なフォローを行っていく必要がある.また多くがcarry over していくことが予想されるため,成人で原因不明のCKD に遭遇したら出生体重と出生週数を問診することが必要である.
  • Shengjuan Hu, Naoki Ueda, Michimori Kono, Takaaki Sugihara, Takashi Ta ...
    2013 年 17 巻 1 号 p. 5-10
    発行日: 2013年
    公開日: 2019/07/14
    ジャーナル オープンアクセス
    [Objectives]: Colonic diverticular disease has become a common condition among the Japanese elderly. Diverticular bleeding also turns it into an acute and life-threatening problem. In some cases, it is difficult to manage the bleeding. This study reviews the diagnosis and therapeutic methods in 37 patients with diverticular bleeding at Matsue City Hospital, with the hope our experiences may inspire others. [Patients]: 180 patients with colonic iverticulosis (mean age 53.6± 57 yrs, males / females = 123/57) hospitalized in Matsue City Hospital were enrolled in this study from August 2005 to June 2012. 37 of these patients suffered from diverticular bleeding (mean age 71.5 ± 11.2 yrs, males / females = 26/11). The therapeutic methods and outcomes of these 37 patients are here reviewed. [Results]: These 37 patients had a mean initial hemoglobin level of 11.7 g/dl (ranging from 5.3 to 15.9 g/dl) on admission, and their mean lowest hemoglobin level during initial hospitalization was 9.0 g/dl (ranging from 5.3 to 13.7 g/dl). 14 patients (37.8%) needed blood transfusions. At the time of admission, 12 patients (32 5%) were on anticoagulant and/or antiplatelet therapy. Prior to colonoscopy, an urgent dynamic CT scan was performed on all patients for the diagnostic purposes. Emergency or planned colonoscopy was performed on 34 cases (91.9%). Colonoscopy permitted definite identification of bleeding sites in 12 cases (35.3%) (4 cases in the ascending, 2 in the transverse, 1 in the descending and 5 in the sigmoid colon). In 8 of these cases, the bleeding was successfully stopped by endoscopic hemostatic procedure alone. In the 4 other cases, successful hemostasis was ultimately achieved with the aid of interventional radiology (IR). Altogether, a total of 15 patients received IR, whereby bleeding was successfully stopped in 8 cases. Eventually, bleeding stopped spontaneously in 21(56.8%) patients. There were no surgical cases or therapy-related deaths during the period. [Conclusion]: Identification of bleeding sites is essential for the treatment of colonic diverticular bleeding but often difficult because diverticula are usually multiple. Colonoscopy is widely used as it allows direct visual diagnosis and immediate therapy. But when endoscopic hemostasis fails or in severe cases, the timely choice of IR is an important alternative.
  • 谷口 千枝, 笹川 真紀子, 泉 正彦, 三島 リエ, 中岡 明子, 赤堀 匠, 三浦 明彦, 大谷 徹
    2013 年 17 巻 1 号 p. 11-18
    発行日: 2013年
    公開日: 2019/07/14
    ジャーナル オープンアクセス
    当科では平成6 年から統合失調症入院患者への集団SST が取り組まれていたが,平成23 年度から統合失調症患者に限定しない他疾患患者も参加できるように,主な訓練目標を「対人スキル課題」と限定し実施した.また,対象者も限定し,プログラムを構造化する取り組みを行った.構造化したことでSST 参加者の対人関係に変化が起こったが,中でも有効であった3 症例を報告する.「対人スキル課題」と限定したことで,各人の対人関係の問題が明確になり,課題解決に役立った.そして,各症例とも,他者との友好な交流を可能にし,入院中や退院後の人間関係が円滑になった.我々の集団SST は統合失調症に限定しない他疾患患者にも適応でき,対人関係の構築・改善に有効であった.
  • 田代 真人, 南京 貴広, 小林 直紘, 岩田 綾子, 生田 浩司, 石原 修二
    2013 年 17 巻 1 号 p. 19-24
    発行日: 2013年
    公開日: 2019/07/17
    ジャーナル オープンアクセス
    当院に新たにMagnetic Resonance Imaging(以下,MRI)装置の受信コイルとして導入された4ch Flex coil(以下,4ch coil)と,それまで使用していた1ch CP Flex coil(以下,1ch coil)とを信号雑音比(signal-to-noise ratio:以下,SNR)を測定することで比較検討した.被写体を寝台の中心にセットした場合と,寝台の中心から10 cm 外れた場所にセットした場合のいずれの場合においても4ch coil の方が高いSNR を示した.また寝台の中心から10 cm 外れた場合においては,4ch coil の方が画像内の信号の位置依存性が少なかった.以上より,4ch coil の有用性を確認した.
  • ~転倒・転落アセスメントスコアシート運用方法改善の事例から~
    吉畑 むつみ, 宇田川 智美
    2013 年 17 巻 1 号 p. 25-34
    発行日: 2013年
    公開日: 2019/07/14
    ジャーナル オープンアクセス
    整形外科病棟において,転倒・転落予防対策に対し,あきらめや憤り,行き詰まりを感じている看護師の意識を変えるため,転倒・転落アセスメントスコアシートに着目し,アクションリサーチ法を用いたアプローチを行った.スコアシートを使用していない現状に対し,スコアシートに問題があるのではないかと考えたが調査した結果,看護師のスコアシートに対する認識やスコアシートを十分に使用できる運用方法がないという問題が明らかになった.スコアシートの運用方法を改善し,4 つの局面で13 のアプローチを行ったところ,看護師の意識は転倒予防に意欲的に取り組めるまでに変化した.またその変化の過程が,参画的変化サイクルのプロセスを辿っていたため,個人の意識だけでなく,集団の行動変化まで起こすこととなった.スコアシートという一点に注目し,アプローチを起こしたが,その他の方向からアプローチを起こしても,同じ結果が得られたのではないかと考えられる.大きな事象に関わらなくても,小さい事に視点をおいて,そこに行動変容,推進力となるアプローチを起こすことができれば,看護師という集団には変化がおこせることが示唆された.
  • 福永 典子, 徳田 佳生, 吉野 陽三, 藤本 一夫
    2013 年 17 巻 1 号 p. 35-38
    発行日: 2013年
    公開日: 2019/07/14
    ジャーナル オープンアクセス
    嚥下リハビリテーション(以下リハ)実施中に嚥下障害が悪化し,その原因として低ナトリウム血症が考えられた症例を経験したので報告する.症例は73 歳の男性で,肺炎のために入院となり,入院3 日目に嚥下評価・リハ依頼で当科へ紹介となった.ビデオ嚥下造影検査(VF)で嚥下障害は軽度であることを確認して全粥とペースト食を介助で開始したが,その後むせや発熱があり,経口摂取を一旦中止とした.VF を再検したところ誤嚥の悪化が認められたものの,頭部MRI では新たな脳病変は認めなかった.胃瘻による栄養管理となり自宅退院した.血清Na 値は入院時134 mEq/L から2 回目のVF 前に118 mEq/L まで低下し,胃瘻造設後に改善して,退院時は144 mEq/L と正常になっていた.外来でVF を実施し嚥下機能の回復を確認した.本症例は嚥下機能の悪化と回復が,低Na 血症の進行と改善に同期しており,低Na 血症以外には嚥下機能悪化の原因が見当たらなかった.嚥下リハ実施にもかかわらず悪化する嚥下障害例では,低Na 血症による悪化の可能性も念頭に置く必要があると思われた.
  • 石飛 ひとみ, 三浦 将彦, 杉原 誉明, 谷村 隆志, 村脇 義之, 田中 新亮, 河野 通盛, 吉村 禎二, 山田 稔
    2013 年 17 巻 1 号 p. 39-42
    発行日: 2013年
    公開日: 2019/07/14
    ジャーナル オープンアクセス
    症例は50 歳代の女性.突然の上腹部の激痛を主訴に当院を受診した.腹部CT にて十二指腸下行脚から水平脚を取り囲むように広がる異常影を認め,血液のCT 値と一致することから後腹膜血腫と診断した.緊急腹部血管造影検査を施行したところ,後上膵十二指腸動脈に4 mm 径の動脈瘤を認め,同部を出血源と判断し,経カテーテル的にマイクロコイルを留置した.止血に成功したが,間もなくして,食後の悪心,嘔吐が出現するようになり,十二指腸下行脚の狭窄が明らかとなった.血腫による圧迫が原因と考え,絶食,補液,胃液吸引による保存的治療を行った.その後,血腫が吸収されるとともに,狭窄症状は消失した.また,本症例は,腹腔動脈起始部に狭窄を認めており,これによる上腸間膜動脈領域の相対的な血流増加が,膵十二指腸動脈瘤の形成・破裂に影響した可能性が示唆された.膵十二指腸動脈瘤破裂の報告例は少なく,さらに保存的治療が奏功した貴重な症例と思われるため,文献的考察を含め報告する.
  • 多田 裕子, 佐々木 基史
    2013 年 17 巻 1 号 p. 43-48
    発行日: 2013年
    公開日: 2019/07/17
    ジャーナル オープンアクセス
    症例1 は75 歳女性.自己免疫性肝炎に対してprednisolone(以下PSL)30 mg を投与開始後に,HbA1c 6.5%(以下NGSP 値)と上昇したため精査したところ,Glutamic Acid Decarboxylase(以下GAD)抗体56.0 U/ml を認めた.その後Miglitole 50 mg のみでHbA1c 6.9%未満にコントロールされた.症例2 は29 歳女性.バセドウ病と関節リウマチで加療中であった.挙児希望であったため精査したところ,HbA1c 5.4%,GAD 抗体95.7 U/ml,Insulinoma-associated protein-2(以下IA-2)抗体16 U/ml を認めた.いずれの症例もHuman Leukocyte Antigen(以下HLA)検索にて,日本人1 型糖尿病感受性ハプロタイプを有していたものの,グルカゴン負荷試験にてインスリン分泌能は保たれており,約2 年経過した現在でもインスリン非依存状態を維持している.糖尿病の成因を考える上で示唆に富む症例と考え文献的考察を加えて報告する.
  • 田代 稚惠, 平川 絵莉子, 田頭 由紀子, 入江 隆
    2013 年 17 巻 1 号 p. 49-54
    発行日: 2013年
    公開日: 2019/07/17
    ジャーナル オープンアクセス
    腹膜癌は病理組織学的に進行漿液性卵巣癌と類似していることから,治療は上皮性卵巣癌に準じて行われることが多く,化学療法の奏功率も同等であると考えられている.しかしながら,その治療方針は確立されていない.当院で経験した一症例を提示する.患者は60 歳.腹部膨満感と経口摂取困難を主訴に当院内科を受診.多量の腹水貯留と腹膜播種のため婦人科疾患を疑われ,当科紹介となった.腹膜癌の診断であったが,初回手術完遂は困難と判断したため,化学療法を行ったのちに拡大子宮全摘+両側付属器摘出+骨盤内・傍大動脈リンパ節郭清術を施行できた.病変が広範囲に及ぶ腹膜癌では,術前化学療法(NAC:neoadjuvant chemotherapy)を行うことが有用である可能性が示唆された.
  • 武本 啓
    2013 年 17 巻 1 号 p. 55-58
    発行日: 2013年
    公開日: 2019/07/17
    ジャーナル オープンアクセス
    形成外科の診療において,足の潰瘍は糖尿病患者や末梢動脈疾患(PAD)などで頻繁に遭遇する疾患である.今回,30 年に及ぶ両足背の潰瘍に対し,手術を行わず,カデキソマー・ヨウ素軟膏による保存的加療が奏功した症例を経験した.症例は67 歳男性.30 年前からの両足背の潰瘍にて,種々の保存的加療にても改善せず,当科紹介受診した.浸出液のコントロール目的にカデキソマー・ヨウ素軟膏を試したところ,ゆっくりと潰瘍が縮小し,右足は軽快した.左足はわずかに潰瘍の残存を認めるも,大部分は上皮化している.
  • 野津 長, 芦田 泰之, 松井 泰樹, 榎本 卓朗, 多田 裕子, 吉田 学
    2013 年 17 巻 1 号 p. 59-62
    発行日: 2013年
    公開日: 2019/07/17
    ジャーナル オープンアクセス
    症例は68 歳男性.左前頚部痛,嚥下痛で耳鼻科受診.耳鼻科医は甲状腺が原因ではないかと考え,当科に紹介.受診時,急性炎症所見はなく,経過観察となった.症状の改善が無く,再度当科紹介.視診では前頚部腫大はないものの,甲状腺左葉上極に圧痛あり.超音波検査では触診の圧痛域に低エコー領域を認めた.造影CT を施行したところ,甲状軟骨左下部に炎症による破壊域を認めた.咽頭食道造影で左梨状窩瘻の陰影を認めた.自覚症状改善後,再度超音波検査を施行し,径1 mm の索状エコーを確認しえたので手術を施行した.手術は前頚部小切開で行った.甲状腺左葉の上極を検索し瘻孔らしき部位を結紮切離,甲状腺左葉を脱転し裏面の炎症部位を確認後切除した.病理では炎症細胞の浸潤と管腔組織は存在を認めたが,管腔上皮の確認までには至らなかった.術後咽頭食道造影では梨状窩瘻は消失しており治癒とした.超音波検査は炎症沈静後の梨状窩瘻確認に有用であると考える.
  • 花田 卓也, 岡本 学, 辻 靖博, 田中 雄二
    2013 年 17 巻 1 号 p. 63-66
    発行日: 2013年
    公開日: 2019/07/17
    ジャーナル オープンアクセス
    2011 年9 月から2012 年1 月までの5 か月間に当院小児科にてマイコプラズマ肺炎と診断した21例の臨床所見,血液検査,胸部単純レントゲン検査,治療を後方視的に検討した.年齢は5 歳から15 歳(平均9.2 歳)だった.血液検査では白血球数が10,000 万/ l 未満だが,核の左方移動を示す例が多かった.マイコプラズマIgM 迅速検査は発症から6 日から8 日経過しても陰性の例が少なからず存在し,急性期のマイコプラズマ感染症の診断方法としては信頼性に乏しいと考えられた.マクロライド系抗菌薬投与から2-3 日後に症状の改善がなかった例が17 例中16 例(94%)を占め,多くの肺炎マイコプラズマがマクロライド耐性となっている可能性が示唆された.マクロライド系抗菌薬に不応だった16 例をミノサイクリン(MINO)もしくはトスフロキサシン(TFLX)に変更したところ,16 例全例(100%)が48 時間以内に解熱し,すみやかに咳嗽が減少した.マイコプラズマ肺炎は非定型肺炎の重要な起炎菌でまれに重症化することがあり,早期からの適切な診断ならびに抗菌薬使用が重要と考えられた.
  • 赤堀 匠, 三浦 明彦, 大竹 徹
    2013 年 17 巻 1 号 p. 67-72
    発行日: 2013年
    公開日: 2019/07/17
    ジャーナル オープンアクセス
    選択的セロトニン再取り込み阻害薬(Selective Serotonin Reuptake Inhibitors:SSRI)は三環系抗うつ薬より副作用が少ないとされており,現在抗うつ薬の主流になっている.中でもMANGA Study(Meta-Analysis of New Generation Antidepressants Study)で有効性と認容性のバランスが最も良いとの評価を得ている薬剤としてエスシタロプラムがある.抑うつ状態を伴う転換性障害の60 代女性に対してエスシタロプラムを使用し,使用後18 日目に混合型の肝機能障害を生じた1 例を経験した.効果があまり期待できない同系統への薬剤変更,必要十分量・必要期間の観察なしに薬剤を変更もしくは追加することは,多剤併用の原因になってしまい,重篤な副作用を起こしかねないことを再認識した.
  • 阿武 雄一, 瀧川 晴夫
    2013 年 17 巻 1 号 p. 73-76
    発行日: 2013年
    公開日: 2019/07/17
    ジャーナル オープンアクセス
    脳出血で発症した脳動静脈奇形を周囲グリオーシスとともに一塊にして全摘したのにも拘わらず,導出静脈がred vein のままであった症例を経験した.最終的には,当該静脈周囲の脳実質を焼灼することにより通常の静脈に転じた.nidus 周囲にいわゆるreserved nidus を伴っていたものと考えられたので報告する.
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