松江市立病院医学雑誌
Online ISSN : 2434-8368
Print ISSN : 1343-0866
19 巻, 1 号
選択された号の論文の16件中1~16を表示しています
  • 野津 長, 内田 尚孝, 松井 泰樹
    2015 年 19 巻 1 号 p. 1-6
    発行日: 2015年
    公開日: 2019/07/10
    ジャーナル オープンアクセス
    松江市立病院で1991 年から行われたバセドウ病手術症例89 例を検討した.症例は女性65 例,男性24 例であった.平均年齢は40.4 歳であった.手術法は2010 年から被膜下甲状腺亜全摘から全摘・準全摘へと意図的に変えた.出血量に大きな変化はなかった.しかし,全摘・準全摘は手術時間の短縮にはつながった.2002 年から皮膚切開を3 cm 程度の小切開に変えたが,意外にも当時から急激に進んだ医療器具の開発により,手術時間の短縮と出血量の減少に大きく貢献することが判明した.手術時間と出血量の間に相関はあったが,強い相関関係には無かった.良性疾患であるバセドウ病に癌は7 例(7.9%)合併していた.術後合併症では一過性の反回神経麻痺3 例,緊急止血手術を要した後出血は2 例あり,バセドウ病手術が時に生命の危険を伴うことを周知させる必要がある.
  • 辻 靖博, 呉 彰, 岡本 学, 田中 雄二
    2015 年 19 巻 1 号 p. 7-10
    発行日: 2015年
    公開日: 2019/07/10
    ジャーナル オープンアクセス
    川崎病において,時に発熱と頚部リンパ節腫脹が先行し,頚部リンパ節炎の初期診断のもと加療開始され,後に川崎病と診断され,ガンマグロブリン投与が施行される症例を経験する.川崎病の診断の遅れは冠動脈瘤合併のリスクの増加につながるため,できるだけ早期に鑑別診断することが重要となる.最近当科で経験した発熱と頚部リンパ節腫脹を初発症状とし最終的に川崎病と診断された9 症例を振り返り,頚部リンパ節炎と診断された15 症例を対照に,頚部リンパ節炎との鑑別について検討した.初期に血清Na 値,血小板数が低めで,好中球比率が高い場合,また頚部リンパ節がエコー上,多房性で葡萄の房状を呈している場合,川崎病を強く疑い注意深い観察と積極的な血液再検が肝要と考えた.
  • 南京 貴広, 石倉 誠, 織部 貴広, 石原 修二
    2015 年 19 巻 1 号 p. 11-16
    発行日: 2015年
    公開日: 2019/07/10
    ジャーナル オープンアクセス
    強度変調放射線治療(intensity modulated radiaton therapy;IMRT)を実施するうえで,セットアップの精度および適切なマージン設定は治療効果を左右する重要な因子である.画像誘導放射線治療(image guided radiation therapy;IGRT)をおこなうことによって,セットアップの精度を向上することができ,また安全域(マージン)の縮小も図ることができる.しかし,臓器照合をおこなえるコーンビームCT(cone beam computed tomography;CBCT)撮影には放射線被ばくの増加に対する十分な注意が必要となり,撮影は必要最小限に抑えることが求められる.今回,過去のセットアップエラーを解析し,当院のセットアップマージンの評価をおこなった。皮膚およびサーモプラスチックシート(Thermo Plastics Sheet;TPS)上のマーカーによる照合のみの場合とon board imager(OBI)撮影による骨照合を追加した場合ともに現行のマージンにおさまっていることが確認できた。また,皮膚およびTPS 上のマーカーによる照合のみの場合に比べて,OBI 撮影による骨照合を行うことで,セットアップマージンは縮小が図れることが確認できた.
  • 植野 直子, 松井 寛, 中谷 綾子, 福永 典子, 徳田 佳生, 吉岡 佐知子, 福田 里子
    2015 年 19 巻 1 号 p. 17-24
    発行日: 2015年
    公開日: 2019/07/10
    ジャーナル オープンアクセス
    嚥下チームは平成20 年6 月に発足し,院内での嚥下障害患者への迅速な対応,食事や嚥下に関わる様々な問題点の改善に向け活動している.今回嚥下チームの6 年間の活動を①嚥下チーム発足,②嚥下チーム院内啓発,③嚥下ラウンド開始の3 つの転換期で分け,それぞれの活動内容と問題点を分析した.また嚥下チームの主要な活動の一つである嚥下ラウンドについて,開始前後及び開始1 年後での評価患者数を比較・分析し,病棟看護師へのアンケートを用いて嚥下チーム・ラウンドに対する意識調査も実施した.嚥下評価依頼患者数は嚥下チームの院内啓発では増加の維持は困難で,嚥下ラウンドを開始することで飛躍的に増加し維持可能であった.ラウンド開始後1 年後にはラウンドからのチーム登録率および嚥下リハ開始率が増加し,アンケート結果からも嚥下について相談しやすくなったとの結果を得た.一方,嚥下ラウンドに参加経験のある看護師は約半数であった.誤嚥・窒息防止のためには経口摂取に関わる看護師の嚥下に関する知識・技術の向上が必要である.今後「摂食・嚥下障害看護認定看護師」の参加も得て,病棟と嚥下チームの更なる連携強化が望まれる.
  • 原 江実, 佐藤 暢子
    2015 年 19 巻 1 号 p. 25-34
    発行日: 2015年
    公開日: 2019/07/10
    ジャーナル オープンアクセス
    クリニカルパスの導入などにより,急性期病棟における在院日数はさらなる短縮化が図られているが,その中で,受け持ち看護師として患者と関わりをもてずに退院を迎えられることも少なくない.今回私たちは,病棟看護師が受け持ち看護師の役割をどのように感じ,また受け持ち患者とどのように関わっているかについて現状を把握することにより,受け持ち看護師の役割に支障をきたす要因,問題点を明らかにした.そして,その要因に対してアプローチした過程を評価・考察した.その結果,受け持ち看護師の機能改善には,受け持ち看護師としての意識の向上と,患者と関わりやすい環境を整えることが必要と考えられた.
  • ― 配属後3 年未満の看護師を対象に―
    朝倉 美鈴, 高井 美佳, 山本 文子
    2015 年 19 巻 1 号 p. 35-42
    発行日: 2015年
    公開日: 2019/07/10
    ジャーナル オープンアクセス
    精神科閉鎖病棟では,医師により治療上必要と判断された場合,精神保健福祉法に基づいた行動制限によって病棟外に出かける患者を看護師が「同伴する」という業務がある.一日に複数回行われる院内同伴に対し,経験年数の浅い看護師は同伴時の判断と関わりに不安を抱えていた.そこで精神科経験が3 年未満の看護師を対象に半構成的面接を行ない,データを分類・分析した.精神科閉鎖病棟における院内同伴時の看護師の困難感について,インタビューの結果,【常にリスクと隣合わせ】【非力・未熟さ】【上うわて手な患者】【倫理的ジレンマ】の4 個のカテゴリーが抽出された.またこれらの困難感を緩和する方法として,「院内同伴に関する判断基準を明確にする」「カンファレンスなどを通して患者像を共有する」「先輩看護師の院内同伴を見学する」「事例検討,ロールプレイなどの勉強会を行う」「看護師同士が思いを語り合える雰囲気を築き,共有する場を持つ」などが示唆された.
  • 阿武 雄一, 瀧川 晴夫, 萩原 伸哉, 堀 郁子, 吉田 学, 福永 典子
    2015 年 19 巻 1 号 p. 43-46
    発行日: 2015年
    公開日: 2019/07/10
    ジャーナル オープンアクセス
    当初鬱病と診断された41 歳の男性患者が,実は両側前頭葉を圧迫する巨大傍矢状洞髄膜腫による前頭葉症候群であったことが判明した.術前みられた鬱症状が摘出術により軽快した事から,両側前頭前野の圧迫が原因であったと思われる.近年,大鬱病患者において背外側前頭前野(DLPFC)の機能低下が生じることが注目されている.脳科学的観点から本患者の現象につき,若干の考察を加え報告する.
  • 萩原 伸哉, 瀧川 晴夫, 阿武 雄一
    2015 年 19 巻 1 号 p. 47-50
    発行日: 2015年
    公開日: 2019/07/10
    ジャーナル オープンアクセス
    左島皮質から放線冠にかけて脳梗塞を来した患者が,発症3 日目から14 日目までの短期間に右片側舞踏運動を来した.舞踏運動の責任病変として大脳皮質大脳基底核ループが関与しており,われわれの症例では脳梗塞周囲に生じた浮腫によって一時的に左被殻領域の虚血を呈したことが原因であると推察している.若干の文献的考察を加えて報告する.
  • 市山 友子, 成相 義樹, 石邊 紀章, 小田原 聖, 石倉 信造, 工藤 勝, 関根 浄治
    2015 年 19 巻 1 号 p. 51-54
    発行日: 2015年
    公開日: 2019/07/10
    ジャーナル オープンアクセス
    口腔外科手術には,外科的ストレスを抑制するために静脈内鎮静法を適応することが多い.今回,術前肝機能に異常を認めなかった29 歳の女性に対する口腔外科手術時に,ミダゾラム単回投与とプロポフォール持続投与を併用した静脈内鎮静法で,覚醒遅延を経験した.術後ミダゾラムとプロポフォールの血中濃度シミュレーションを行ったところ,酸素投与終了時の予測血中濃度は覚醒濃度以下であった.しかし,実際には本症例のように覚醒遅延を起こすこともある.鎮静薬の過量投与に注意し,とくに日帰り手術では覚醒レベルの評価を確実に行うことが重要である.
  • 小田原 聖, 石倉 信造, 成相 義樹, 市山 友子, 石邊 紀章
    2015 年 19 巻 1 号 p. 55-58
    発行日: 2015年
    公開日: 2019/07/10
    ジャーナル オープンアクセス
    症例は66 歳7ヶ月,男性.20 年以上の長期に渡り使用した義歯が不適合となり近医受診されその後当科紹介初診となった.極めて高度な義歯性線維腫により口腔内に義歯作成は不可能な状態であり,手術的加療を行い口腔粘膜面の修正を行い良好な結果を得た.義歯性線維腫は不適合義歯による慢性刺激により生じるものであり予防し得るものであるため,かかりつけ医による定期的な口腔内メインテナンスが重要であると考えられた.
  • 河野 菊弘, 山田 敬教, 大谷 裕, 倉吉 和夫, 梶谷 真司, 吉岡 宏, 金山 博友
    2015 年 19 巻 1 号 p. 59-62
    発行日: 2015年
    公開日: 2019/07/10
    ジャーナル オープンアクセス
    症例は54 歳女性.38 度の発熱,食思不振あり腹部CT検査で巨大肝膿瘍を認め肝膿瘍穿刺ドレナージと保存的加療で軽快した.しかし3 か月後に再度熱発を認め紹介となった.この時の腹部CT 検査では肝膿瘍は認めず右水腎症,右骨盤壁膿瘍とS 状結腸内に異物陰影を認めた.腹膜炎症状を認めなかったため,大腸内視鏡検査でS 状結腸内の爪楊枝を2 本除去した.処置後1 か月後で退院となった.異物誤飲の多くの症例では自然に排泄されるが本例のように消化管穿孔を生じた場合には治療の対象となる.われわれは当初,肝膿瘍治療時に右水腎症を認めていたが.S 状結腸内異物の存在の診断には至らず再入院時の上下腹部の3D-CT 検査で異物の存在を指摘することが出来.内視鏡検査で処置出来た1 例を経験したので若干の文献的考察を加えて報告する.
  • 倉吉 和夫, 山田 敬教, 大谷 裕, 梶谷 真司, 河野 菊弘, 吉岡 宏, 金山 博友, 吉田 学
    2015 年 19 巻 1 号 p. 63-68
    発行日: 2015年
    公開日: 2019/07/10
    ジャーナル オープンアクセス
    症例は33 歳男性.半年前より間欠的に食後の腹部膨満感,上腹部不快感を自覚し内服加療を受けていた.入院当日,昼食後より心窩部痛,嘔吐が出現.夕方より右下腹部痛の増強,発熱を認め,当院救急外来の受診となった.右下腹部の強い圧痛と反跳痛を認め,CT にて急性虫垂炎による限局性腹膜炎と診断した.このCT 画像検査において左下腹部の回腸にtarget sign を示す小腸の重積所見を認め,腸管拡張所見など通過障害は認めないものの,細長い腫瘍を先進部とする回腸腸重積の併存を疑った.緊急手術として全麻下に下腹部正中切開にて開腹した.まず,蜂窩織炎性急性虫垂炎を確認し,虫垂切除術を施行.左下腹部には回盲部より約60 cm 口側の回腸に順行性腸重積を認め,腸間膜対側の漿膜から内翻した巨大ソーセージ様腫瘍性病変が漿膜を牽引しているのが観察された.内翻の整復は不能にて,この部位の回腸部分切除術を施行した.切除標本で腸間膜対側回腸に内腔に突出する暗赤色の60×22×20 mm の隆起性病変を認め,先端部に肉芽腫様の所見が認められた.病理所見で,内翻した真性憩室と診断され粘膜上皮の一部に壁細胞を有する異所性の胃型粘膜が確認され,Meckel 憩室の内翻と診断された.術後経過は良好にて退院.退院後,以前に認めていた食後の腹部膨満感や下腹部痛などの症状は消失していた.虫垂炎発症にて判明したメッケル憩室の内翻による稀な腸重積の1 例を経験したので文献的考察を加えて報告する.
  • 寳意 翔太朗, 石飛 ひとみ, 加藤 順, 谷村 隆志, 村脇 義之, 三浦 将彦, 堀江 聡, 河野 通盛, 吉村 禎二, 山田 稔
    2015 年 19 巻 1 号 p. 69-74
    発行日: 2015年
    公開日: 2019/07/11
    ジャーナル オープンアクセス
    症例は70 歳,女性.皮膚黄染,全身倦怠感,尿の濃染を主訴に,当科を受診した.CT 検査で膵鉤部に3 cm 大の境界不明瞭な乏血性腫瘍を認め,膵腫瘍による閉塞性黄疸であることが判明した.また,通常の解剖学的位置関係と異なり,膵頭部の実質は十二指腸下行部を全周性に取り囲むように存在していた.内視鏡的逆行性膵胆管造影(endoscopic retrograde cholangiopancreatography;ERCP)では,十二指腸下行部を背側から腹側へ取り巻くように走行する膵管が描出され,輪状膵と考えられた.膵鉤部の腫瘍に対して超音波内視鏡下穿刺術(endoscopic ultrasound-guided fine needle aspiration;EUS-FNA)を施行し,病理組織学的に腺癌であることを確認した.同腫瘍は,上腸間膜動・静脈浸潤に加え,さらに大動脈外膜への浸潤も疑われ,最終的に局所進行切除不能膵癌と判断した.輪状膵は,膵組織が十二指腸を取り囲む稀な先天性の膵形成異常である.さらに,輪状膵に膵癌を合併した報告は非常に少なく,貴重な症例と考えられたため,文献的考察を加え報告する.
  • 奥田 亮, 赤堀 匠, 大竹 徹
    2015 年 19 巻 1 号 p. 75-78
    発行日: 2015年
    公開日: 2019/07/11
    ジャーナル オープンアクセス
    現在では稀となった中毒にメタノール中毒がある.メタノール中毒ではその代謝産物であるホルムアルデヒド,ギ酸が主に毒性を発揮するため潜伏期間を経ることが特徴である.入院時,向精神薬の過量服薬による急性薬物中毒の疑いとして入院したが,入院27 時間後に急変し,肺塞栓等の合併症や他の疾患の突然発症などを考慮するも原因を特定できず,当初急変の原因は不明であった.その後,ご家族からの情報提供により本人のインターネット閲覧履歴からメタノール中毒と推察するに至った.メタノール中毒は早期診断が重要となるが,本症例では向精神薬,制吐薬等を重複して服用していたこともあり,早期の診断に至ることができなかった.稀な自殺方法であってもインターネットなどから情報を得ることが可能で,特に周到,詳細な方法までもが記載されていることに注意しておく必要がある.
  • 内田 尚孝, 松井 泰樹, 野津 長, 吉田 学
    2015 年 19 巻 1 号 p. 79-82
    発行日: 2015年
    公開日: 2019/07/11
    ジャーナル オープンアクセス
    乳腺線維腺腫は頻度の多い疾患であるものの,両側の多発性乳腺線維腺腫の報告例はまれである.症例は,22 歳女性.右乳房腫瘤を主訴に,近医から当科へ紹介となった.視触診では,右乳房C領域に6 cm 大1 個,両側乳房に1 cm 大数個の腫瘤を触知した.マンモグラフィ検査では,右乳房にカテゴリー3 の腫瘤影を認めた.超音波検査では,複数の境界明瞭・内部エコー低の腫瘤を認めた.最大径を有する腫瘤に対して針生検を実施した結果,線維腺腫であった.右乳房C 領域の腫瘤は,巨大で乳房の変形を伴い本人の摘出希望があったことから,当該腫瘤の摘出術を実施した.摘出標本の病理所見は,線維腺腫であった.両側多発性乳腺線維腺腫に対する治療方針については,一定の見解はえられていない.多発性の場合,全病変の細胞診または組織診の実施は困難であること,線維腺腫が悪性化することは極めてまれであること,年齢とともに線維腺腫が消退することもあることから,3 cm を超える病変または大きさが3 cm 以下でも患者の年齢が40 歳以上で針生検でも確定診断が得られない病変を除き,原則として経過観察でよいと考えられる.
  • 星野 由樹, 大谷 裕, 山田 敬教, 梶谷 真司, 谷村 隆司, 村脇 義之, 三浦 将彦, 河野 通盛, 吉村 禎二, 山田 稔
    2015 年 19 巻 1 号 p. 83-86
    発行日: 2015年
    公開日: 2019/07/11
    ジャーナル オープンアクセス
    症例は44 歳,男性.嘔吐後に急激な心窩部痛の出現があり救急搬送された.CT 検査で下部食道を中心とした縦隔気腫像,食道造影で下部食道より縦隔内へ造影剤が漏出する所見を認め,特発性食道破裂と診断した.搬送から約3 時間後に緊急手術を施行し,胸部下部食道後壁に約2 cm 大の穿孔を確認し,同部を縫合閉鎖した.術後は順調に経過し,第27 病日に退院した.特発性食道破裂の早期診断の為には,嘔気・嘔吐を契機とした胸背部・心窩部の激痛の病歴から,本症の可能性を積極的に疑い,速やかに画像検索を行うことが重要である.
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