松江市立病院医学雑誌
Online ISSN : 2434-8368
Print ISSN : 1343-0866
20 巻, 1 号
選択された号の論文の12件中1~12を表示しています
  • 中村 浩人, 生田 浩司, 小林 直紘, 岩坂 徹, 田代 真人, 南京 貴広, 石原 修二
    2016 年 20 巻 1 号 p. 1-4
    発行日: 2016年
    公開日: 2019/07/08
    ジャーナル オープンアクセス
    肝臓の精査に非イオン性ヨード造影剤を用いたダイナミックCT が行われている.今回,除脂肪体重での至適ヨード量の検討を行うため当院で行われた116 例を対象に肝実質濃染の評価を行った.総体重に規定される体重あたりのヨード量では,高体重症例はヨード過負荷になる可能性が示唆された.そこで除脂肪体重でのヨード量で評価を行うと,肥満症例ではヨード量の低減が可能であると考えられた.
  • 石邊 紀章, 市山 友子, 小田原 聖, 阿久津 純一, 石倉 信造, 成相 義樹
    2016 年 20 巻 1 号 p. 5-10
    発行日: 2016年
    公開日: 2019/07/08
    ジャーナル オープンアクセス
    口腔内環境を整えることは,周術期において肺炎や創部感染等の合併症を予防し,緩和ケアにおいてquality of life( QOL)を向上させるために重要である.当院は平成26 年4 月から口腔ケアチームを新たに発足し,口腔ケアに積極的に取り組んでいる.今回,平成26 年4 月から平成27 年9 月に至るまでの活動をまとめたので報告する.
  • 殿岡 真夕子, 池田 貴美江, 景山 ミサエ, 保田 和子
    2016 年 20 巻 1 号 p. 11-18
    発行日: 2016年
    公開日: 2019/07/08
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究の目的は,外来における慢性心不全患者の自己管理にあたりどのような支援を行うことが効果的であるのか明らかにすることである.2011 年8 月~ 2012 年2 月に医師が心不全と診断し継続治療を行っている外来通院患者で,対象者は3 名ですべては男性,A 氏は40 代EF40%,心不全入院回数1 回,B 氏は80 代EF35%,心不全入院回数5 回,C 氏は80 代EF31%,心不全入院回数4 回を対象に自己管理聞き取り調査表を用いて,半構造化面接法で患者の現状把握を実施.自己管理ノートを元に患者の状態把握を行い,症状悪化時,原因・理由を明確にして,患者と共に方法を再検討した.個別面接を行い,得た情報を基に看護介入し,介入前後の反応を比較検討した.今回の結果から,自己管理ノートの活用は患者自身が病状把握でき,医療者も看護支援を探る糸口となる.セルフモニタリングができる患者に対し自己管理ノートは効果的な支援につながった.多様な家族関係,高齢者独居も多く,身体機能に配慮しながら患者と共に実行しやすい方法を考え指導していく事は効果的な支援につながる.個々の患者に対し相談できるという安心感を与えることが,信頼関係構築にもつながる.患者の言葉を傾聴し共感することで思いを引き出し,気がかりを明確にしてそれを踏まえた療養指導など患者と共に考え実践することが効果的な支援につながるのではないかと考えられた.
  • 足立 恵里, 朝倉 英里香, 福場 まり子, 伊藤 都七子
    2016 年 20 巻 1 号 p. 19-26
    発行日: 2016年
    公開日: 2019/07/08
    ジャーナル オープンアクセス
    過活動型のせん妄を発症した高齢脳神経疾患患者に薬剤を効果的に使用できるよう,薬剤使用に対する看護師の臨床判断の過程について検討した.対象看護師は3 名,経験年数は10 ~ 17 年,脳神経病棟の経験年数は3 ~ 16 年であった.データを分析した結果,一人前看護師が薬剤使用するまでには《せん妄かもしれないと心に留める段階》《薬剤を使用する前にケアを先行させる段階》《せん妄か病態か性格かを見極める段階》《患者の安全と睡眠確保のための薬剤の使用決断する段階》《看護師の知識と経験を基に安全かつ確実に与薬する段階》の5 つの過程があった.インタビューの中で,一人前看護師は,薬剤の使用に関して「病院に入院すると結構安易に使われやすい傾向にあるが,なるべくなら使いたくない」という思いを語っておりその背景には脳血管障害の急性期に薬剤を使用することで,病態の進行を判断することが困難となる可能性や,予想以上に効果が持続しADL 低下の要因となることが挙げられた.一人前看護師は,確かな根拠はないものの,患者情報や言動から引っかかりを感じ,頻回に訪室するなど患者の様子を注意深く観察し,患者の行動変化から何らかの対応をしなければ転倒,転落など二次障害の危険性が高まる考え,薬剤使用によるリスクを考慮し不安を抱えながらも,より安全で確実な与薬ができるよう他スタッフと病態やせん妄の状態をカンファレンスし,慎重に決断していることが分かった.患者個々に対するせん妄ケアが行えるよう,スタッフの知識を高め,せん妄発症リスクのある患者の1 日を通して様々に変化する状態を経時的に記録しスタッフ間で共有することも重要と考える.脳血管疾患患者への薬剤投与に関する先行研究はほとんどなく,今回のインタビューで語られた一つひとつの判断過程が,経験の浅い看護師らにとってはさらに安全で効果的な薬剤投与に結びつける一助となると考えている.
  • 小野 浩太, 奥田 亮, 大立 博昭, 大竹 徹
    2016 年 20 巻 1 号 p. 27-32
    発行日: 2016年
    公開日: 2019/07/08
    ジャーナル オープンアクセス
    自損行為の実態を明らかにするため,松江市立病院救急外来における自損行為受診者について分析を行い,時間外選定療養費増額前後の受診動向についても検討を行った.自損行為受診者は若年層及び女性が多く,世界的傾向と同様であった.若年層では外来対応可能な場合が多く,非若年層では入院対応となるケースが多かった.自損行為によって入院が必要なケースでは感情障害の割合が多かった.時間外選定療養費増額によって自損行為の受診者数は減少傾向となり,特にリストカット等の自傷行為,衝動行為による外傷の減少が明らかとなった.自損行為の受診者数は減少傾向にあるが,実際に自損行為が減少しているのか,病院受診を控えるようになったためなのか,今後更なる検証が必要と考えられる.
  • 梶谷 真司, 山田 敬教, 大谷 裕, 倉吉 和夫, 若月 俊郎, 河野 菊弘, 吉岡 宏
    2016 年 20 巻 1 号 p. 33-40
    発行日: 2016年
    公開日: 2019/07/08
    ジャーナル オープンアクセス
    症例は67 歳女性.腹痛と便秘を主訴に紹介された.CT 所見にて滑脱型の巨大食道裂孔ヘルニアと診断.血行障害はないと判断し,PCI 後の抗凝固療法中であったことから,ヘパリン化の後に開腹によりToupet 噴門形成,食道裂孔縫縮,メッシュによる補強手術を行った.術後早期に縦隔膿瘍を生じたが,軽快し術後6 日目に経口摂取開始した.術後23 日目に横隔膜下膿瘍と縦隔膿瘍を生じ,CT ガイド下ドレナージを行ったが軽快せず,その後の検査で上部消化管穿孔と診断.術後45 日目に再開腹手術を行った.再手術ではメッシュによる腹部食道穿孔と横隔膜下膿瘍,縦隔膿瘍が認められ,メッシュ除去と食道穿孔部T チューブドレナージを行った.再手術後治癒退院した.近年食道裂孔ヘルニアに対する手術としては噴門形成と食道裂孔縫縮に加えてメッシュによる補強が推奨されているが,鼠径ヘルニアや腹壁瘢痕ヘルニア根治術後に散見されるようなメッシュによる消化管穿孔が,本疾患の術後にも起こりうることに留意する必要があると考えられた.
  • 阿久津 純一, 石邊 紀章, 小田原 聖, 市山 友子, 石倉 信造, 成相 義樹
    2016 年 20 巻 1 号 p. 41-44
    発行日: 2016年
    公開日: 2019/07/08
    ジャーナル オープンアクセス
    骨粗鬆症や骨転移性癌のような骨吸収症状に対し,bisphosphonate やdenosumab のような骨吸収抑制剤が使用されている.しかし,これら骨吸収抑制剤は,まれに顎骨壊死を引き起こすことが知られている.症例は,62 歳女性.denosumab 投与経験のある乳癌患者で,広範囲の下顎骨壊死を生じ,近医歯科医院より当科紹介となり,保存的に経過観察を続けている.骨吸収抑制剤投与により生じた顎骨壊死への対処,および頻用されるbisphosphonate とdenosumab の相違について文献的考察も加えて報告する.
  • 辻 靖博, 呉 彰, 岡本 学, 田中 雄二
    2016 年 20 巻 1 号 p. 45-48
    発行日: 2016年
    公開日: 2019/07/08
    ジャーナル オープンアクセス
    出生前および後も特に異常指摘されていない生後2 ヶ月の男児.当科での予防接種時に高度徐脈に気付かれ,心電図で心拍数60 回/分前後の2:1 の高度房室ブロックを認めた.その後体重増加不良あり,24 時間ホルター心電図で2:1 ~完全房室ブロックも認められ,生後6 ヶ月時に島根大学でペースメーカー植え込み術を施行.術後経過は良好で体重増加も改善した.基礎疾患のない小児の高度房室ブロックは比較的まれであるが進行し重篤な症状を発症する危険性が高く,早期発見と慎重なフォローが重要である.また,小児のペースメーカー植え込み術は成人以上に慎重な判断が必要であるが,乳児の場合,体重増加も一つの判断材料として有用と考えられた.
  • 阿武 雄一, 神原 瑞樹, 瀧川 晴夫, 福永 典子
    2016 年 20 巻 1 号 p. 49-52
    発行日: 2016年
    公開日: 2019/07/08
    ジャーナル オープンアクセス
    未破裂左中大脳動脈瘤と同側円蓋部髄膜腫に対し,それぞれ脳動脈瘤頚部クリッピング術および腫瘍摘出術を同時に施行した患者において,術後36 時間後に失語症と右片麻痺が出現した.頭部単純CT では髄膜腫摘出腔より尾側に血腫を形成していた.MRI の所見より,髄膜腫上に接して存在していた架橋静脈が閉塞した事による静脈性梗塞が原因と考えられた.このまれな合併症の原因について考察する.
  • 河野 菊弘, 山田 敬教, 大谷 裕, 倉吉 和夫, 梶谷 真司, 若月 俊郎, 吉岡 宏
    2016 年 20 巻 1 号 p. 53-56
    発行日: 2016年
    公開日: 2019/07/08
    ジャーナル オープンアクセス
    症例は66 歳,男性.右鼠径部痛と右陰嚢腫大で来院した.右鼠径部から陰嚢に至る大人手拳大2 個分の腫大を認めた.腹部単純レントゲン写真で小腸の1 条のイレウス所見と,腹部CT 検査でヘルニア内容に小腸末端と虫垂と思われる陰影を認め,右鼠径ヘルニア回盲部嵌頓と診断した.外来で用手的に還納を試みるも用手整復不能であったため,採血検査で異常所見は認めなかったが疼痛強く絞扼の可能性も懸念し緊急手術とした.ヘルニア内容は回腸末端約50 cm と虫垂を認めた.小腸間膜には出血と引きつれを認めた.小腸に壊死所見なく虫垂も正常と判断し,脱出腸管を還納し虫垂切除は施行せずバードメッシュ(L)で修復した.回盲部を内容とする鼠径ヘルニア嵌頓の本邦報告例は自験例を含めて20 例であった.稀な症例と考えられ若干の文献的考察を加え報告する.
  • 山下 太郎, 堀江 聡, 石飛 ひとみ, 竹田 和希, 加藤 順, 谷村 隆志, 村脇 義之, 三浦 将彦, 河野 通盛, 吉村 禎二, 山 ...
    2016 年 20 巻 1 号 p. 57-60
    発行日: 2016年
    公開日: 2019/07/08
    ジャーナル オープンアクセス
    症例は35 歳男性と67 歳男性.いずれも検診時の内視鏡検査にて黄白色調の食道粘膜下腫瘍を認め,生検を行い顆粒細胞腫と診断した.超音波内視鏡所見で,病変は粘膜下層までに局在することから,内視鏡的に切除可能と判断し,内視鏡的粘膜下層剥離術を施行し完全切除した.切除標本の組織学的評価から,悪性度は低いと判断した.内視鏡的粘膜下層剥離術による垂直断端を確保した切除を行い,病変の悪性度評価を行うことは有用と考えられる.
  • 小林 惇平, 岡田 清治, 広江 貴美子, 足立 優也, 松田 紘治, 太田 庸子, 竹田 昌希, 吉田 学, 太田 哲郎
    2016 年 20 巻 1 号 p. 61-68
    発行日: 2016年
    公開日: 2019/07/08
    ジャーナル オープンアクセス
    73 歳女性.16 年前より高血圧・高脂血症・糖尿病で近医に定期受診していたが,心電図検査でⅡ,Ⅲ,aVf,V4-6 の陰性T 波の新たな出現が認められた.胸痛,動悸,労作時の息切れなどの自覚症状はなく,無症候性心筋虚血を疑われ当院に紹介受診された.8 年前に高血圧で当院受診歴があり,検査所見を比較することができたが,心エコー図検査では新たに下後壁の菲薄化と壁運動低下認め,EF41%と低下していた.心臓カテーテル検査では下壁に瘤を認めたが,冠動脈に狭窄病変を認めなかった.心筋シンチグラフィでは同部位の集積低下を認め,心臓MRI でも遅延造影効果を認めた.心筋生検で非乾酪性類上皮性肉芽腫を認め心サルコイドーシスと診断した.本症例は新たに出現した陰性T 波を契機に多種の画像診断(マルチモダリティー)による評価と心筋生検による組織診断により診断に至ったが,心電図と心エコー図検査の経時的変化は心サルコイド病変の進展を示唆するものと考えられた.
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