松江市立病院医学雑誌
Online ISSN : 2434-8368
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25 巻, 1 号
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  • 2021 年 25 巻 1 号 p. 0-
    発行日: 2021/12/01
    公開日: 2022/04/01
    ジャーナル オープンアクセス
  • 紀川 純三
    2021 年 25 巻 1 号 p. 1-6
    発行日: 2021/12/01
    公開日: 2022/04/01
    ジャーナル オープンアクセス
    最近の分子生物学の進歩にともない,遺伝子解析による診断法の確立や治療の個別化,分子標的治療薬の開発など,がん診療に大きな変化が生じており,遺伝子診断は身近な検査となりつつある.分子生物学を基盤とした細胞機能の理解は重要な課題である.分子生物学の視点からがんと細胞について概説するとともに,最近注目されている遺伝性乳癌卵巣癌(HBOC)とその原因遺伝子であるBRCA遺伝子についても解説した. DNAはアデニン(A),チミン(T),グアニン(G),シトシン(C)の4つの塩基からなり,その配列により細胞の生物学的特性が決まる.ゲノム(genome)は生物のもつ遺伝子(遺伝情報)の全体を指す言葉であり,遺伝子や遺伝子の発現を制御する情報などが含まれる.ゲノム情報をもとに転写・翻訳という過程を経てタンパク質が作られ,細胞の生存(survival signal)と死(apoptosis)を制御し,生体の恒常性が維持される. がんに関係する遺伝子には,遺伝子の発現や機能が活性化されることで発がんに関わるがん遺伝子と,不活性化されることで発がんに関わるがん抑制遺伝子がある.これらの遺伝子変異によって,細胞分裂の回数や周期のコントロールが失われ,無限に増殖を繰り返す. 乳癌および卵巣癌のうち,5 %〜10 %は遺伝性であり,BRCA遺伝子が関連する.BRCA遺伝子のような生殖細胞系遺伝子の検査に際しては,疾患の遺伝学的関与について,その医学的影響,心理学的影響および家族への影響を理解し,それに適応していくことを助けるための遺伝カウンセリングが重要である.
  • 牧野谷 真弘, 福本  陽二, 久光 和則, 梶谷 真司, 河野 菊弘, 若月 俊郎
    2021 年 25 巻 1 号 p. 7-12
    発行日: 2021/12/01
    公開日: 2022/04/01
    ジャーナル オープンアクセス
    噴門側胃切除術の適応および郭清範囲は2014年に改訂された胃癌治療ガイドライン第4版で記載されたが,標準的な再建法は未だ確立されてない.噴門側胃切除術の対象となる症例は,比較的予後の良いcT1N0症例であり,術後のQuality of Life(以下QOL)が重要となる.特に噴門機能喪失に伴う難治性の逆流性食道炎や胃癌の好発部位である残胃観察のしやすさが問題とされ様々な再建法が議論されてきた.その中で,近年,観音開き法の名称で知られるDouble Flap法再建が,喪失される噴門機能を形成する再建法として認識されつつある.ただ,手技上の煩雑さから導入している施設はまだ少ない.当院では2018年より噴門側胃切除術後にDouble Flap法再建を導入した.当院での再建手技の紹介および,手術成績からその有用性について検討した. 2018年11月より2020年4月に当院で胃上部癌に対して腹腔鏡下噴門側胃切除術後でDouble Flap法再建を行った5例を対象とした.全症例男性であり,年齢の中央値は60歳であった.手術時間は中央値462分(426~576),出血量は中央値10 mL(5~30)であった.術後合併症として,逆流性食道炎の発生は認めなかった.縫合不全とその後吻合部狭窄がみられた1例は,保存加療とバルーン拡張にて軽快した.さらに,術後フォローでの上部消化管内視鏡検査で吻合部潰瘍を1例に認め,プロトンポンプ阻害薬投与し経過観察中である.また,残胃の定期的な上部消化管内視鏡検査が困難となった症例はない. Double Flap法再建を導入した施設から報告されているように当院でもその有用性が示され,術後QOLを維持するための最適な再建法の一つであると考える.
  • ~入院中と産後1ヵ月時の比較~
    徳村 麻弥, 峰谷 沙也佳, 金井 眞理子
    2021 年 25 巻 1 号 p. 13-20
    発行日: 2021/12/01
    公開日: 2022/04/01
    ジャーナル オープンアクセス
    スマートフォン(スマホ)の長時間の利用が産後の心身の健康に影響を与えることが懸念されるが,これについての研究はない.【目的】出産のための入院時にスマホについての適切な指導やアドバイスを行うために,褥婦におけるスマホ利用と心身の状態の関連を明らかにすること.【対象と方法】当院に出産のために入院した81名を対象に無記名自記式アンケート調査を行った.【結果】スマホ平均利用時間は入院中が179.8分,出産1ヵ月後が142.0分.平均睡眠時間は入院中が179.8分,出産1ヵ月後が300.0分.エジンバラ産後うつ質問票(EPDS)は入院中,出産後1ヵ月それぞれ7例が産後うつリスク群となる9点以上であった.スマホ依存症リスク群であるスマホ利用時間が4時間を超える症例では入院時の身体不調症状多数群と有意な関係が認められた(p=0.0133).スマホ・睡眠比が高い群は産後うつリスク群と入院時(p=0.0357),出産後1ヵ月(p=0.0248)と有意な関連が認められ,EPDSスコア9点以上はスマホ・睡眠時間の比の0.4(入院時)および0.5(出産1ヵ月後)に対応した.【結語】スマホの利用は睡眠とのバランスが重要であり,睡眠時間に比してスマホを長時間使用することが産後うつハイリスクスと関連しており,スマホ・睡眠時間の比は産後のメンタルヘルケアに関する指導やアドバイスに有用な指標である可能性がある.
  • 青田 あゆみ, 千葉 純子, 白鹿 さくら
    2021 年 25 巻 1 号 p. 21-31
    発行日: 2021/12/01
    公開日: 2022/04/01
    ジャーナル オープンアクセス
    松江市立病院手術室では,終業時カンファレンスでその日の全症例の手術内容を共有していたが,手術の経過報告だけに終わってしまうことが多く,手術部での看護に関する目標や対策につなげられる機会とは言い難かった.そこで,終業時カンファレンスの充実を目指し,手術直後に担当看護師チームによる評価カンファレンスを導入した.その結果,終業時カンファレンスでの発言数は大きく増加し,発言内容にも変化が見られた.アンケート結果から,“視点の広がり”,“知識の底上げ”,“看護行為の言語化”,“学びを生かす場,根拠に基づいた振り返り”の効果が明らかとなった.また終業時カンファレンスを充実させるためには,“発言しやすい職場風土”の定着,“限られた時間”の有効活用が課題であり,評価カンファレンス用紙の使用が有効であり,経験や慣習化した暗黙知を言語化し,意識的に伝達していく必要性が示唆された.
  • ―呼吸代償開始点の重要性について―
    杉原 辰哉, 田中 和美, 松浦 佑哉, 井原 伸弥, 黒崎 智之, 森山 修治, 上田 正樹, 森脇 陽子, 山口 直人, 中村 琢
    2021 年 25 巻 1 号 p. 32-37
    発行日: 2021/12/01
    公開日: 2022/04/01
    ジャーナル オープンアクセス
    【目的】心肺運動負荷試験(CPX)における適切な最高酸素摂取量(Peak VO2)測定のための最大運動負荷レベルを示す指標を明らかにし,その指標と心機能や腎機能との関係を検討すること. 【対象と方法】10 W/minのRAMP負荷でCPXを実施し,Peak VO2時点のガス交換比(RER)が1.10以上で嫌気性代謝閾値(AT)と呼吸代償開始点(RCP)が同定できた57例(男性53例,年齢62.5±10.2歳)を対象とした.AT,RCP,Peak VO2時点のRER値と酸素摂取量の比率,差,運動時間の差について検討した.またBNP:100 pg/mL,LVEF:45 %,eGFR:60 mL/min/1.73 m2で2群に分類し,心機能や腎機能の影響について比較した. 【結果】RER値はAT:0.95±0.06,RCP:1.11±0.07,Peak VO2:1.23±0.08であり,RCP時点で57例中32例(56 %)が1.10以上,5例(9 %)が1.20以上であった.また心機能や腎機能低下症例ではAT以降の酸素摂取量の増加とRCP,Peak VO2までの時間経過に有意差がみられた. 【結語】CPXにおける適切なPeak VO2測定のためには,RCPの到達とRCPから90秒程度の負荷継続が望ましいと考えられた.また心機能や腎機能が低下している症例は,AT以降の酸素摂取量の増加や時間経過に注目して負荷を行う必要がある.
  • 仲西 友里奈, 野白 有里子, 周藤 真実, 若槻 美雪, 宇野 慶子, 坪内 敦志, 酒井 牧子, 河野 通盛
    2021 年 25 巻 1 号 p. 38-48
    発行日: 2021/12/01
    公開日: 2022/04/01
    ジャーナル オープンアクセス
    当院では保険薬局からの疑義照会は医師に直接電話で行われているが,一包化や規格変更など調剤上の形式的な疑義照会が多く,医師・保険薬局それぞれに負担をかけている場合がある.形式的な疑義照会を減らし,医師・保険薬局双方の負担軽減を図る目的で,院外処方せんにおける疑義照会簡素化プロトコール(以下プロトコール)を作成し,2019年7月より運用を開始した.プロトコール導入により医師及び保険薬局の負担軽減が出来ているか評価するため,プロトコール適応件数とその内訳を集計し,医師およびプロトコール合意締結薬局を対象としたアンケート調査を行った. 院外処方せん総枚数に対する直接電話で行われた疑義照会件数の割合はプロトコール導入前後で有意に減少した.アンケート調査では医師の約50 %がプロトコール導入後に疑義照会が減ったと回答し,保険薬局の約70 %が業務負担が減ったと回答した.以上の結果から,疑義照会簡素化プロトコールの導入は医師および保険薬局の業務負担軽減につながったと考えられる.
  • 松井 香奈枝, 新石 健二, 吉田  学
    2021 年 25 巻 1 号 p. 49-52
    発行日: 2021/12/01
    公開日: 2022/04/01
    ジャーナル オープンアクセス
    60代女性.7年前から抗SS-A/Ro抗体陽性と多発関節痛のため,他院で経過観察中だった.6年前から両側耳輪に発赤が出現し,1年前から耳鳴りと耳輪の痛みが出現した.耳鼻科を受診したが聴力の低下はなく,画像検査も含めた各種検査を受けたが明らかな異常はなかった.その後も耳輪部の赤みと痛みが続くため当科を受診した.当科初診時,両側耳輪部に淡い紅斑を認めた.耳輪部皮膚生検では,真皮-軟骨部境界域にかけてリンパ球を主体とする炎症細胞の浸潤を認めた.血液検査では抗Ⅱ型コラーゲン抗体価が上昇していた.呼吸困難や鞍鼻など気道-気管支に由来する症状は認めなかった.①関節痛,②耳鳴り,③耳輪の紅斑,④耳輪部皮膚病理所見,⑤抗Ⅱ型コラーゲン抗体価上昇より,再発性多発軟骨炎と診断した.耳輪部の腫脹はなく,発熱などの全身症状や聴力低下もないことから,ステロイドの全身投与はせず,慎重に経過をみることとした.再発性多発軟骨炎は,耳介軟骨をはじめとする全身軟骨へ炎症を来たす自己免疫疾患の一つである.難聴などの内耳障害,気管・気管支軟骨の変性や,それによる気管狭窄等の重篤な経過をたどる場合もあるため,早期発見が重要と考え今回報告した.
  • 松井 香奈枝, 新石 健二
    2021 年 25 巻 1 号 p. 53-57
    発行日: 2021/12/01
    公開日: 2022/04/01
    ジャーナル オープンアクセス
    88歳男性.数日前より背部の痒みと顔の腫れが出現し当科を受診した.受診時,両側上眼瞼に淡い浮腫性紅斑,背部にむち打ち様紅斑を認めた.両側手背部の角化性皮疹や,爪上皮出血点,爪囲紅斑は認めなかった.血液検査で抗アミノアシルtRNA合成酵素(aminoacyl-tRNA synthetase:ARS)抗体陽性であり,免疫ブロット法による筋炎関連抗体の検索を行い,抗KS抗体陽性の皮膚筋炎と診断した.初診時は皮膚症状のみで,筋力低下や呼吸器症状は認めず,画像検査上も間質性肺炎や悪性腫瘍を示唆する所見はなかった.ステロイド外用治療を開始し皮膚症状は軽快した.抗KS抗体陽性の場合,間質性肺炎の合併例が多く,自己抗体の同定が治療方針決定の一助となる.本例について,今後,間質性肺炎の出現がないか注意しながら経過観察中である.
  • 内村 昌裕, 吉金 努, 永井 秀政, 瀧川 晴夫, 阿武 雄一, 秋山 恭彦
    2021 年 25 巻 1 号 p. 58-64
    発行日: 2021/12/01
    公開日: 2022/04/01
    ジャーナル オープンアクセス
    小脳原発膠芽腫cerebellar glioblastoma(cGBM)は稀な疾患で,glioblastoma(GBM)のうち0.21~4.1 %を占めるのみである.GBMの生存期間中央値は14.2カ月であるが,cGBMのそれは5.9カ月と短いことが報告されている.我々ははじめに悪性リンパ腫と画像診断した多発性小脳原発腫瘍に対して,生検術を施行することでcGBMの診断に至り,また生検術後早期に合併した急性水頭症に対して,脳室腹腔短絡術が緊急で必要となった一例を経験したので,文献的考察を加え報告する.症例は86歳の男性.歩行障害,食欲不振を主訴に近医を受診し,頭部MRIで左小脳脚に腫瘍性病変を認めたため当科紹介となった.初診時,意識は清明で左小脳症状を認めた.頭部MRIでは左小脳脚と右小脳内側にT1W1で低信号,T2W1で高信号,Gd造影でring enhanceを呈する病変を認めた.高齢であるため,生検術は施行せず,画像所見から最も疑わしい悪性リンパ腫に準じた治療を行うことも考慮したが,確定診断目的に生検術を施行した.病理診断はGBMであり,GBMに準じた治療を開始した.生検術翌日に水頭症悪化による意識障害を認め,緊急で脳室腹腔短絡術を施行し,意識状態は速やかに改善した.cGBMは稀な疾患であり,多発病変を認めた場合,悪性リンパ腫との鑑別が非常に困難となるため,たとえ超高齢であっても治療方針の決定には生検術が重要であることを再認識した.また生検術であっても,中脳水道周囲の病変である場合は,術後早期に閉塞性水頭症となる危険性があり,注意が必要である.
  • 松井 雪子, 南場 徳子
    2021 年 25 巻 1 号 p. 65-67
    発行日: 2021/12/01
    公開日: 2022/04/01
    ジャーナル オープンアクセス
    高齢者の皮膚は菲薄化,脆弱化,ドライスキンなど傷を生じやすく,治りづらい傾向にある.加齢により表皮突起と真皮乳頭の突出が平坦化し,スキンテアを来しやすい状態である.また真皮の膠原繊維が減少し弾力が失われる.このためバリア機能破綻が生じやすく感染しやすく,治癒も困難となる.さらに筋力低下,運動機能低下により転倒,打撲の頻度も増し四肢に血腫,皮膚壊死を広範に生じやすく,皮下脂肪織と筋膜の間に巨大な血腫を作ってしまうことがある.このような創傷に治癒期間短縮目的で手術及び陰圧治療を行い,早期治癒が得られたので報告する.
  • 眞砂 俊彦, 山口 広司, 佐々木 基史, 豊嶋 浩之, 瀬島 健裕
    2021 年 25 巻 1 号 p. 68-71
    発行日: 2021/12/01
    公開日: 2022/04/01
    ジャーナル オープンアクセス
    症例は70歳,女性.発熱と無症候性肉眼的血尿を主訴に近医より当科へ紹介となった.右下腹部痛を認め,意識は清明であったが,収縮期血圧89 mmHgと低値を認めた.腹部CT検査で右腎の腎嚢胞内及び腎盂内にガス像を,右尿管内に1 cm x0.7 cm大の尿管結石を認めた.同日緊急入院となり,点滴加療を開始し,翌日に緊急的に開腹下右腎摘除術を実施した.腸管との癒着は認めなかったものの,一部の腹膜と強固に癒着しており,膿瘍を開放しないように慎重に剥離操作を行なった後,腎動脈と腎静脈を結紮して切断した.また右尿管内に結石を触知し,末梢側の尿管を結紮・切断して処理した.腎と周囲との剥離をシーリングデバイスで凝固・止血しながら切断して処理することで膿汁を術野に漏らすことなく,右腎を摘除することができた.術後経過は良好であり,術後18日目で自宅退院となった.術後4ヵ月が経過した段階で明らかな再燃所見は認めず,血清Cr 1.1 mg/dLと低値で推移し,発熱も認めず,経過は良好である.気腫性腎盂腎炎は依然として致死率の高い疾患だが,適切なタイミングで外科的加療を行うことで救命が可能であった1例を経験した.
  • 田中 良明, 武田 賢一, 新井 健義, 平山 勇穀, 龍河 敏行, 小西 龍也
    2021 年 25 巻 1 号 p. 72-76
    発行日: 2021/12/01
    公開日: 2022/04/01
    ジャーナル オープンアクセス
    83歳男性.急に出現した嚥下障害,発熱,咳嗽の症状があり,当院救急外来を受診した.胸部CTで両下葉に浸潤影を認め,誤嚥性肺炎として入院治療を開始した.入院後に,近医でアトピー性皮膚炎として経過観察されてきた皮疹から,皮膚筋炎を疑い,皮膚科紹介となった.ヘリオトロープ疹とゴットロン徴候,血清抗体検査で抗Transcriptional intermediary factor 1-γ(TIF1-γ)抗体陽性から抗TIF1-γ抗体陽性皮膚筋炎と診断した.ステロイドパルス療法,引き続きプレドニゾロンで治療を行ったが,効果は乏しく,皮膚筋炎による筋炎症状は改善しなかった.治療中に敗血症となり,入院53日目に永眠された.今回,皮疹と嚥下機能低下から診断された抗TIF1-γ抗体陽性皮膚筋炎を経験したので報告する.
  • 西上 美侑, 武田 賢一, 平山 勇毅, 新石 健二, 新井 健義, 龍河 敏行, 小西 龍也, 山﨑 章
    2021 年 25 巻 1 号 p. 77-82
    発行日: 2021/12/01
    公開日: 2022/04/01
    ジャーナル オープンアクセス
    67歳女性.手湿疹で治療を受けていたが,難治性であった.膵管内腫瘍の経過をみるために受けた腹部MRI検査で偶発的に肺内の異常信号を指摘され,胸部CT検査で両側肺底部の胸膜直下に散在するすりガラス様陰影を認めた.細菌性肺炎として外来で抗菌薬治療(アモキシシリン+アジスロマイシン)を開始したが,解熱せず,当院呼吸器内科へ入院した.入院後,抗菌薬をセフトリアキソンに変更して治療を行ったが,肺炎は悪化した.薬剤性肺炎や原因不明の間質性肺炎と考えプレドニゾロン内服治療を併用したが,症状は改善しなかった.手湿疹について皮膚科を受診し,メカニックハンド,爪上皮出血点がみられたため,皮膚筋炎と診断した.自己抗体を測定し,抗MDA-5抗体陽性で,抗MDA-5抗体陽性皮膚筋炎に伴う急速進行性間質性肺炎と診断した.ステロイド+タクロリムス+シクロホスファミドによる三者併用療法を開始した.ステロイド治療はステロイドパルス療法の後にプレドニゾロン(60 mg/日)内服で治療を開始したが,明らかな治療効果が得られず,ベタメタゾン(6 mg/日)内服へ変更した.その後改善傾向を示し,再燃なく治療継続できた.今回,私達はプレドニゾロンからベタメタゾンへの変更が有効であった急速進行性間質性肺炎を合併した抗MDA-5抗体陽性皮膚筋炎の1例を経験したため報告する.
  • 2021 年 25 巻 1 号 p. 144-
    発行日: 2021/12/01
    公開日: 2022/04/01
    ジャーナル オープンアクセス
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