松江市立病院医学雑誌
Online ISSN : 2434-8368
Print ISSN : 1343-0866
5 巻, 1 号
選択された号の論文の18件中1~18を表示しています
  • 阿武 雄一, 神部 敦司, 青木 秀暢, 佐々木 亮
    2001 年 5 巻 1 号 p. 1-6
    発行日: 2001年
    公開日: 2019/12/18
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    中枢神経系疾患の後遺症で一つである痙縮足を主訴とする8名の患者に対して施行した,脛骨神経選択的部分切断術の効果を検討した.患者の機能傷害や痙性疼痛に応じて,顕微鏡下に神経束を分離し,選択的に部分神経束切除を行った結果,新たな機能障害を引き起こすことなく症状が緩和した.術前に,下肢装具を使用しなければ起立,歩行が困難であった7名中6名では,装具なしでの屋内歩行が可能となり,痙性疼痛を認めた4名では,全員の疼痛が消失した.合併症は,創部治癒遅延が1名で認められた他,重篤なものはなかった.又,3例で術側下肢全体の筋緊張の低下だけでなく,上肢の筋緊張の軽減が認められた.本治療法は,従来,本邦においてはあまり行われていなかったが,今後標準的治療として行われるべきである
  • 野津 長, 殿本 詠久, 松井 泰樹, 芦田 泰之
    2001 年 5 巻 1 号 p. 7-13
    発行日: 2001年
    公開日: 2019/12/19
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    平成3~12年に手術を施行した,原発性上皮小体機能亢進症の7例(52~80歳)について検討した.高カルシウム血症は全例にみられ,術前に正確に上皮小体腫瘤の局在診断ができたのは6症例で,残り1症例は緊急手術例で,上皮小体嚢胞,腺腫の2病変を有し,2度の手術で腫瘍を摘出した.結果的には,全例で上皮小体腫瘍が摘出できた.術後病理診断は,主細胞腺腫6例,好酸性腺腫1例であった.骨病変は高齢者1症例でみられ,術後,高カルシウム血症は改善したが,骨病変は明らかな改善がみられなかった.高齢者の骨に対する術後管理は難しく,新たな治療法の開発が必要である.なお,腫瘍の局在診断はシンチグラフィが有用であったが,場合により観血的な検査も必要となることがあった
  • 山口 広司, 林 隆則, 角 文宣
    2001 年 5 巻 1 号 p. 15-18
    発行日: 2001年
    公開日: 2019/12/23
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    女性腹圧性尿失禁Type IIIと診断された2症例(57,64歳)に対し,tension-free vaginal tape(TVT)手術を施行したので,腹圧性尿失禁の分類,治療法を踏まえて報告した.2例とも,著明な合併症を認めず,失禁も消失した.手術法は,スリング手術,膀胱頸部吊り上げ術,コラーゲン注入術等が行われてきたが,効果の持続性,侵襲の大きさ,術後の疼痛持続,術後尿閉等,一長一短があった.TVT手術は,いまだ長期成績は不明であるが,侵襲が少なく,3年迄の短期成績も良好である.更に局所麻酔,日帰り手術も可能であり,術後牽引痛も殆どないことから,今後腹圧性尿失禁手術の主流となっていくものと考えられた
  • 和田 清, 野津 元秀, 石原 修二, 永瀬 明男, 堀 郁子, 謝花 正信, 小川 敏英
    2001 年 5 巻 1 号 p. 19-24
    発行日: 2001年
    公開日: 2019/12/23
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    1999年8月から約1年間の脳ドック受診者で,一過性虚血発作の既往のない270名(男123名,女147名,平均60.14歳)を対象に,MRI画像上にみられる大脳白質小虚血巣の出現頻度を年代性別に調べた.その結果,100名に小虚血巣がみられ,その数・頻度は加齢と共に増加し,その危険因子は高血圧であると考えられた.小虚血巣の数について,年代・性別の75パーセンタイルは40歳代,50歳代は男女ともに0個,60歳代男性は5個,女性は6個,70歳代男性は17個,女性は13個となった.一方,どの年代においても小虚血巣が11個以上みられる場合,無症候性脳梗塞の頻度が高く,高血圧等その原因となる危険因子を検索・管理する必要があると考えられた
  • 潘 偉華, 浜本 順次, 殿本 美奈子
    2001 年 5 巻 1 号 p. 25-28
    発行日: 2001年
    公開日: 2019/12/23
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    A型ボツリヌス毒素による眼瞼痙攣の治療経験を報告した.中国の銀川市第一人民病院眼科を受診した本態性眼瞼痙攣患者5名(男2名,女3名:37~62歳)に対し,A型ボツリヌス毒素2.5単位または,5単位を眼瞼の周囲5箇所と眉毛部両端2ヶ所に筋注した.その結果,全例で症状は改善した.効果持続期間は,投与回数が10回であった60歳女では,投与4回目までは8週であったが,5回目以降は6週と短くなった.その他の4症例では11週から14週であった.眼瞼痙攣の随伴症状としては,2例に顔面筋痙攣を認めた.ボツリヌス毒素投与による副作用として,閉瞼不全,流涙,頭痛があった.本療法は,眼瞼痙攣に有効な治療法であると考えられたが,副作用を減らす為に投与量の検討が必要である
  • 上野 敏克, 堀 郁子, 謝花 正信, 野津 長, 大岡 敏彦, 石倉 誠
    2001 年 5 巻 1 号 p. 29-33
    発行日: 2001年
    公開日: 2019/12/23
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    従来のプラナー像にsingle photon emission computed tomography(SPECT)撮像を追加し,乳癌への67Ga集積について検討した.対象は,細胞診で悪性と診断され,1999年7月から12月の間,67Gaシンチグラフィを施行した10症例10病変(全例女性,35~74歳)である.腫瘍径は12mm~100mmであった.その結果,プラナー像では2例,SPECTでは6例で病巣への集積が評価可能であった.腫瘍径や組織型による集積差も考慮されるが,SPECT撮像併用により,生理的集積や多臓器との重複を除外し,病変検出能を向上することができた
  • 渡辺 正敏, 山田 稔, 河上 登紀子, 藤原 きみよ, 梅木 富美, 岩成 久
    2001 年 5 巻 1 号 p. 35-39
    発行日: 2001年
    公開日: 2019/12/23
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    松江市立病院における感染対策チーム(ICT)の活動を紹介した.ICTによりMRSA発症率は平成10年で平均2.1%,翌11年は1.3%と明かに減少の成果を見出していた.平成12年の10月には,その平均が1.6%とやや増加したが,このことも踏まえて,平均発症率1%を達成するように活動を継続し,充実をはかるべきだ思われた
  • 黒崎 和美, 片山 郁子, 和田 典子, 岩田 篤子
    2001 年 5 巻 1 号 p. 41-44
    発行日: 2001年
    公開日: 2019/12/23
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    平成9年から胃手術を受けた患者の退院時に,栄養士による栄養指導を開始した.平成11年12月迄に指導した99例を対象に,その指導経過を振り返り,実状と問題点,今後の課題について検討した.この間,胃手術後に退院した患者は132例で,栄養指導の実施率は75%であった.指導を受けたのは男76名,女23名で,60~70歳代の高齢者が大半であった.指導時の家族同伴件数は,男47名であったが,女は3名であり,女性の場合は,殆ど本人だけの指導であった.栄養士は,各患者の摂食状況を十分に把握し,それぞれに見合った適切な食事・栄養指導を長期的に行う必要がある.又,現状からみた栄養指導の問題点を解決するには,栄養士だけでなく,主治医や病棟(外来)看護婦と一体になったチーム医療としての取り組みが重要である
  • 小川 美喜子, 山本 智香, 吉岡 みはる, 大脇 弘子
    2001 年 5 巻 1 号 p. 45-48
    発行日: 2001年
    公開日: 2019/12/23
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    心臓カテーテル検査後患者31名を対象に,食事に関する独自のアンケート調査を行い,食事内容および形態に若干の工夫を行って検討した結果を報告した.食べ易さを追求し,病院食の形態を主食はパン食,おにぎりに変え,副食はフォークで扱い易い一口大にして,カテーテル後食を作成したところ,自分で食べられるという満足感も味わえる結果となり,食事量が多くなった.患者の声を日常的に意識し,看護行動に移すことが大切であり,食事の改善案実現に,他部門との連携を図って進めていくことも肝要と思われた
  • 河野 通盛, 吉村 禎二, 前田 佳子, 奥村 剛清, 三浦 裕和, 星野 潮, 山田 稔, 原田 祐治
    2001 年 5 巻 1 号 p. 49-53
    発行日: 2001年
    公開日: 2019/12/23
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    33歳女.幼少時より癲癇治療を受けていた.心窩部痛を主訴とした.胃内視鏡検査により,胃体下部から前庭部にかけて大小不同の不整形の多発潰瘍を認めた.7箇所から内視鏡下生検を行ったが,特異的な所見はなく,抗潰瘍剤による治療は無効であった.原因精査のため入院となり,再度内視鏡下生検を行ったところ,Langhans型巨細胞を伴う類上皮肉芽腫が認められた.胸部CT検査では,左肺門および気管支リンパ節腫大と,肺左葉S6に肺内小結節を認め,肺結核が疑われた.ツ反も強陽性であった為,結核菌の証明はできなかったが,活動性胃結核,肺結核と臨床診断し,抗結核剤の投与を開始した.約1ヵ月後には,全ての潰瘍は完全に治癒し,自覚症状も消失した
  • 錦織 優, 前田 佳子, 上野 敏克, 堀 郁子, 謝花 正信, 原田 祐治, 泉 明夫, 前迫 善智, 大野 仁嗣
    2001 年 5 巻 1 号 p. 55-60
    発行日: 2001年
    公開日: 2019/12/23
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    61歳女.左上腹部膨満感,同部圧痛を主訴とした.巨大脾腫を呈したが,表在リンパ節は触知しなかった.末梢血・骨髄でリンパ球の増殖はなく,形態異常もないが,末梢血リンパ球表面のκ/λ比偏倚によりリンパ腫の白血化を疑い,脾原発リンパ腫と考えて摘脾を施行した.その組織像およびcyclin D1の陽性所見により,mantle cell lymphoma(MCL)と診断した.MCLは,現行の治療では治癒に至らず,予後は悪いとされているが,本例の腫瘍細胞は形態的に核のくびれのない小リンパ球様で,染色体異常もなかった.無治療で慎重に経過観察を行っているが,術後6ヵ月後も諸症状は軽快している.しかし末梢血リンパ球のκ/λ比偏倚は,なお残存している
  • 山田 稔, 奥村 剛清, 吉村 禎二, 河野 通盛, 三浦 裕和, 小林 淳子, 前田 佳子, 謝花 正信, 堀 郁子, 上野 敏克, 原田 ...
    2001 年 5 巻 1 号 p. 61-65
    発行日: 2001年
    公開日: 2019/12/23
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    77歳女.上腹部痛を主訴とした.各種画像診断により,多発性肝腫瘤と胆管,膵管の拡張を伴った膵頭部腫瘤を認めた.内視鏡検査では,Vater乳頭部の口側部に発赤した隆起があり,生検でカルチノイドと診断した.治療は動注化学療法と肝動脈塞栓術を施行したが,約1年の経過で黄疸が進行し,肝不全で死亡した.病理解剖所見では,十二指腸乳頭部から膵頭部に腫瘍があり,主膵管と総肝管に浸潤し,両管ともほぼ閉塞していた.組織学的には,小型で軽度の多形性の核と好酸性の胞体を持つ細胞が索状に管腔を形成し,増殖するカルチノイド腫瘍であった.肝臓は,最大径6.5cmの中心部が壊死に陥った転移結節を10個認めた.組織学的には,原発巣と同様な所見であった.十二指腸乳頭部カルチノイドは,本邦での報告例は稀で,60例にすぎない.本例の臨床経過と病理解剖所見を60例の臨床的特徴のまとめと共に報告した
  • 石倉 信造, 井上 貴央, 森野 慎一
    2001 年 5 巻 1 号 p. 67-70
    発行日: 2001年
    公開日: 2019/12/23
    ジャーナル オープンアクセス
    56歳男.右頬粘膜から摘出した小唾液腺唾石を,走査型電子顕微鏡により反射電子像を観察した後,エネルギー分散型X線分析装置で多点の定性分析とマッピングを実行し,元素の分布を調べたので,その概要を報告した.結果として唾石には微生物様構造物は認められず,単に石灰沈着によって生成されたのではないかと推察された
  • 大槻 明広, 玉川 竜平, 細田 幸子, 安部 睦美, 永井 小夜, 斉藤 憲輝
    2001 年 5 巻 1 号 p. 71-73
    発行日: 2001年
    公開日: 2019/12/23
    ジャーナル オープンアクセス
    39歳女.帝王切開術後4日目に歩行を開始し,意識を失っているのを発見された.救急隊到着時は,高度徐脈,呼吸停止状態であった.搬送中に心停止となり,心肺蘇生術(CPR)を開始し,搬入後も継続したが心拍の再開はなく,経皮的心肺補助装置(PCPS)を用いて循環を維持した.心拍再開後,肺動脈造影で広範囲な肺動脈の閉塞が認められた.症状が急激に進行してCPRを必要とした為,絶対的な外科手術適応と考えられた.又,帝王切開術後であること,蘇生の為にPCPS,IABPを使用していることから,血栓溶解療法では出血の危険性が高いと判断し,外科的に血栓除去術を施行した.術後,脳低温療法を施行した.救命はできたが,高次中枢神経機能障害の回復に困難を極めた.早期のCPRの開始,速やかなPCPS,脳低温療法の導入が行われたが,心停止をきたす以前から,広範な肺動脈閉塞により肺への有効な血流がなく,全身の著しい低酸素状態が続いていた為と考えられた
  • 宇奈手 一司, 清水 弘治, 河野 菊弘, 吉岡 宏, 金山 博友, 井上 淳
    2001 年 5 巻 1 号 p. 75-77
    発行日: 2001年
    公開日: 2019/12/23
    ジャーナル オープンアクセス
    74歳男.腹部膨満を主訴とした.1ヵ月前から腹部膨満を認めていたが放置していた.肺気腫で他院に通院中,腹部CTにて大量の腹腔内遊離ガスを認め,消化管穿孔を疑われ,松江市立病院に紹介入院となった.腹部膨満を認めたが,軟性で圧痛はなかった.腹部CTにて腹腔内遊離ガスと共に腸管の気腫性変化を認め,腸管嚢胞様気腫症と診断した.腹腔穿刺にてガスを吸引したところ,症状は消失した.腹腔穿刺後は腹腔内遊離ガスを認めず,全身状態も良好であり,退院に至った.急性腹症を呈しない腹腔内遊離ガスを認めた場合には,本症を念頭に置く必要がある
  • 野津 長, 殿本 詠久, 松井 泰樹, 芦田 泰之, 原田 祐治
    2001 年 5 巻 1 号 p. 79-83
    発行日: 2001年
    公開日: 2019/12/23
    ジャーナル オープンアクセス
    44歳女.右乳房腫瘤を主訴とした.右乳房C領域に1cm大の硬結を触知した.画像診断では乳癌が疑われ,穿刺吸引細胞診では異型乳腺上皮の大小の集塊と共に,破骨細胞様巨細胞が多く認められ,乳癌と診断された.治療として,乳房温存療法を施行し,経過良好である.腫瘤は9×9mmで被膜は認めなかったが,周囲への浸潤傾向は少なかった.病理診断は管状癌で,管腔内にCD68陽性の巨細胞を認めた.エストローゲンレセプタ及びプロゲステロンレセプタは陽性であった.管状癌に破骨細胞様巨細胞がみられるのは稀である
  • 清水 弘治, 宇奈手 一司, 河野 菊弘, 吉岡 宏, 金山 博友, 井上 淳, 神田 美津子, 原田 祐治
    2001 年 5 巻 1 号 p. 85-89
    発行日: 2001年
    公開日: 2019/12/24
    ジャーナル オープンアクセス
    56歳女.来院3ヵ月前から増大する左乳腺腫瘤を主訴とした.左乳房DC領域に5×3cm大,表面平滑で弾性硬,境界明瞭で可動性良好な腫瘤を認めた.穿刺吸引細胞診で悪性リンパ腫が疑われ,手術を施行した.術中病理組織学検査で,悪性リンパ腫の診断を得,胸筋温存乳房切除術を施行した.術後病理組織学所見で悪性リンパ腫と診断され,免疫組織染色により腫瘍細胞はL-26及びMB-1に陽性,UCHL-1,MT-1に陰性で,B細胞由来であることが判明した.所属リンパ節には転移を認めなかった.術後,Gaシンチグラムを施行したが,異常集積はなく,臨床分類はstage Iと診断された.術後3週目からCHOP 3クールを施行し,術後1年の現在,健在で外来経過観察中である
  • 川田 里美, 田村 裕子, 松本 瑞恵, 秦 和子, 木村 すみ子
    2001 年 5 巻 1 号 p. 91-93
    発行日: 2001年
    公開日: 2019/12/24
    ジャーナル オープンアクセス
    透析中に患者と積極的な対話が行えた際には,血圧低下がみられなかった例に着目し,有効な時間帯に対話刺激をすることで血圧低下が防止できるのではないかと考え,65歳女に対し対話刺激を試みた.その結果,透析中の補液や昇圧剤の使用頻度が減り,かけ離れていたドライウェイトに近づいていった.又,検査結果も好転し,服装や化粧,表情にも変化がみられ,透析に対する前向きな姿勢が窺えるようになった.この経験について,今後の課題,方向性も踏まえて報告した
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