松江市立病院医学雑誌
Online ISSN : 2434-8368
Print ISSN : 1343-0866
8 巻, 1 号
選択された号の論文の21件中1~21を表示しています
  • 豊嶋 直美, 大畑 順恵, 佐藤 宗保
    2004 年 8 巻 1 号 p. 1-6
    発行日: 2004年
    公開日: 2019/08/30
    ジャーナル オープンアクセス
    平成10~14年に産婦人科外来を初診した10代女性136例(平均16.7歳)について,retrospectiveに検討した.初診時の主訴は月経関連41例,下腹部痛37例,妊娠32例,外陰部掻痒と帯下の訴えが14例であった.卵巣機能不全13例,月経困難症14例,その他機能性疾患と診断された症例に対しては,教育及び経過観察,必要ならホルモン剤投与或いは鎮痛剤投与を行った.原発性無月経は1例のみで視床下部性の1度無月経であり経過観察とした.性感染症20例には抗生物質投与,卵巣腫瘍6例に対しては手術を施行した.10代の妊娠は計32例で15歳からはじまっていた.初診時妊娠週数は平均13.4週であった.妊娠を継続し分娩まで至った妊婦は23例いたが,8例は未婚のままであった.妊娠合併症は,クラミジア感染症が14例中5例,貧血17例中12例と成人に比較し高値であったが,その他の合併症及び分娩の状況は成人女性と変わらなかった.
  • 織部 貴広, 生田 浩司, 南京 貴広, 嘉本 登, 大岡 敏彦, 和田 清, 実重 英明, 石倉 誠, 曽根 啓司, 八幡 亜希, 小林 ...
    2004 年 8 巻 1 号 p. 7-10
    発行日: 2004年
    公開日: 2019/08/30
    ジャーナル オープンアクセス
    インバータ式で据置型の一般撮影装置に対して,新しく導入したインバータ方式病室撮影(ポータブル撮影)装置での胸部仰臥位正面の肺野の写真濃度を近づけるよう検討した.一般撮影装置を用いて胸部正面臥位撮影条件で胸部ファントムを仰臥位で撮影し,撮影フィルムにおける右側第5~6肋骨間での肺野の濃度を測定したところ,測定値は2.05±0.01となった.ポータブル撮影装置を用いて同様に胸部ファントムを撮影して得られた測定値の中から,2.05±0.01と最も近い管電圧・電流時間積の組み合わせを検討したところ,7通りの撮影条件が至適条件候補に挙げられた.7通りの写真の画質を5人の担当技師で検討したところ,管電圧(kv)74kv,電流時間積(mAs)4mAsの撮影条件がベストであると判断された.
  • 八杉 晶子, 山田 稔, 三島 優子, 森沢 剛, 小林 淳子, 河野 通盛, 吉村 禎二
    2004 年 8 巻 1 号 p. 11-15
    発行日: 2004年
    公開日: 2019/08/31
    ジャーナル オープンアクセス
    平成5年1月~平成15年3月に新規に経験した肝細胞癌165例のうち,閉塞性黄疸をきたした7例ついて検討した.全例に閉塞性黄疸精査の目的で内視鏡的逆行性胆道造影を施行した結果,肝門部肝管或いは左右の肝管の圧排,狭窄所見を6例に認めた.胆道出血は7例中4例にみられた.全例で積極的な減黄治療を行った.総胆管内の血餅が原因と考えられた2例ではバスケット及びバルーンで血餅を除去した.7例中5例で内視鏡下に胆管内にステントを留置し,その中で左右肝管に狭窄を認めた2例では左右の肝管に1本ずつ,計2本のステントを留置した.治療効果は,全例で総ビリルビン値の低下を認め,5例では総ビリルビン値の3mg/dl以下への低下を認めた.減黄術後の総ビリルビン値の平均は2.2±2.1mg/dlであった.閉塞性黄疸の治療後原発巣に対して追加治療ができたのは1例のみで,TAEを施行し,減黄術後346日生存した.追加治療を行わなかった6例の生存期間は11~175日であった.
  • 細田 眞司, 大竹 徹, 今岡 雅史
    2004 年 8 巻 1 号 p. 17-21
    発行日: 2004年
    公開日: 2019/09/06
    ジャーナル オープンアクセス
    せん妄に対する精神科コンサルテーション・リエゾン活動について報告した。せん妄予防への取り組みとして、1) 身体科スタッフのせん妄理解を深める活動、2) 術後せん妄に対する看護研究へのサポート、3) せん妄のリスクの患者に対する早期の精神科コンサルテーションをおこなった。また、せん妄発症後の対応として、1) 各病棟に患者が離床したり体動が激しくなった時にナースコールが鳴る装置を導入、2) 抗精神病薬の早期投与を身体科主治医がおこなうように推奨した。これらの取り組みにより、身体科スタッフの診断が正確になり、予防的、早期対応がなされるようになった。
  • 渡辺 正敏, 山田 稔, 三代 美知子, 米田 桂子, 梅木 富美, 坂本 治
    2004 年 8 巻 1 号 p. 23-27
    発行日: 2004年
    公開日: 2019/09/06
    ジャーナル オープンアクセス
    シグノールカウンターをディスペンサーに取り付け,ゲル状速乾性擦式手指消毒剤の使用回数をカウントし,患者一日あたりの使用回数について病室別及び病棟別に検討した.1回目の調査は非通知で行った.4西病棟の1回目の調査では,重症室である603号から611号室の6部屋で患者一日当たりの使用回数は平均6.37回と多かった.また,一般病室である612号から622号では平均使用回数は0.70回と明らかに少なかった.1回目の患者一日当たりの平均使用回数は1.86回であった.リンクナースによる啓発後の2回目は平均2.48回と増加し,院内研究会後の3回目は平均3.33回と更に増加した.各病棟を比較すると,リンクナースと感染対策チーム(ICT)による手指消毒剤の使用啓発活動の回を重ねるごとに,使用頻度は順次増加した.一方,3北病棟では1回目は2.50回であったが,2回目は132回と減ったものの,3回目は3.23回と増加した.全体の平均使用回数は啓発前には1.35回であったが,2回目は1.39回,3回目は2.12回と増加した.
  • 松浦 真里, 石倉 信造, 勝部 芳江
    2004 年 8 巻 1 号 p. 29-36
    発行日: 2004年
    公開日: 2019/09/06
    ジャーナル オープンアクセス
    当科では平成12年度以降,インプラント療法とメインテナンスを開始した.現在まで250本/年以上,合計600症例以上行っており,感染によってインプラントの除去を行った症例は1例で,インプラントと同時に行った手術に起因し,骨とインプラントがインテグレーションしなかったため除去した症例が4例,インプラントが被断した症例が1例であった.感染によって除去した症例においては,他院から紹介された咽頭癌術後の症例に対し,インプラント植立したが,術直後の評価にて再発がみられ,他院にて化学療法が行われたことにより,メインテナンスは十分に行うことができず,再来された時には既に感染しており,インプラントを除去した.他の除去した症例においては感染はみられない.
  • 徳永 志保, 山田 稔, 吉村 禎二, 河野 通盛, 小林 淳子, 森沢 剛, 河野 菊弘, 吉岡 宏, 謝花 正信, 松井 泰樹, 原田 ...
    2004 年 8 巻 1 号 p. 37-41
    発行日: 2004年
    公開日: 2019/09/06
    ジャーナル オープンアクセス
    2001~2003年に上腸間膜動脈閉塞症6例(男2例,女4例,全例65歳以上)を経験した.全例が急激な腹痛で発症したが,初診時に腹膜刺激症状を認めた例は1例もなかった.基礎疾患として4例は心房細動があり,1例は胸部大動脈瘤と高度な動脈硬化を合併し,1例は心臓弁膜症を認めた.診断までの時間は3~87時間であった.診断方法は造影CT検査で診断できた例が2例,臨床症状,経過から本疾患を疑い,開腹にて診断した3例,診断できないまま死亡し,病理解剖にて診断した1例であった.造影CT検査にて早期診断が可能で腸管壊死がなく血栓除去術のみ行ったもの1例,慢性の経過をたどり抗凝固療法を行ったもの1例及び小腸広範切除術を施行したもの3例であった.予後は1例が短期間に死亡したが,その他は生存中である.
  • 斎藤 由美子, 須磨田 理恵, 朝倉 美鈴, 大森 深雪
    2004 年 8 巻 1 号 p. 43-47
    発行日: 2004年
    公開日: 2019/09/06
    ジャーナル オープンアクセス
    端座位の不安定な患者のactivities of daily living(ADL)拡大のため,安価で誰でも簡単に取り付け可能で,しかも安定感のあるリハビリ用端座位保持装置を試作した.座面の幅は上半身が自由に動かせる幅で,座面の奥行きは膝裏を圧迫しない,膝の動きを制限しない長さ,そして座面の高さは深く腰掛けて裸足でかかとがつく高さで背もたれの高さは座面後端から肩甲骨下端までとし,端座位君1と命名し,更にこの改良型で,側面を除去した端座位君2も作製した.看護師同士で端座位君の使用調査を安定感,安心感及び設定時間について自己記入式で行った結果,端座位君は,ベッド柵の穴を利用しているため安定感があり,端座位君を使用することにより,操作が簡単で看護の負担が軽減できた.端座位君の使用により,患者が起きようという意欲を引き出し,生活の幅が広がり,発語の出現や表情の変化など多くの反応がみられた.背面を開放して座る,ベッド上で腰を動かし移動できることが,端座位君を除去する指標となると思われた.
  • 浜本 順次, 殿本 美奈子, 河野 通盛, 山田 稔, 小林 淳子
    2004 年 8 巻 1 号 p. 49-53
    発行日: 2004年
    公開日: 2019/09/06
    ジャーナル オープンアクセス
    高ウイルス量のC型慢性活動性肝炎にインターフェロン・リバビリン併用療法を行い,網膜症がみられた4例(男2例,女2例,48~61歳)を経験した.genotypeは1bが3例,判定不能が1例で,全例高ウイルス量群であった.網膜出血,軟性白斑が2例,軟性白斑が2例にみられた.4例とも治療中,白血球減少及び溶血性貧血によるヘモグロビンの減少がみられた.3例が精神症状,網膜出血,全身倦怠感のため治療を中断した.軽度の糖尿病の1例で網膜症がみられた.インターフェロン・リバビリン併用療法では,インターフェロン単独投与に比べ溶血による貧血が急速に進行しやすいため,網膜症の発症に注意し,投与中の定期的な検査が必要であると考えられた
  • 岩田 美津枝, 渡部 瞳, 小川 真理, 原田 久美子, 鞁嶋 彰子
    2004 年 8 巻 1 号 p. 55-58
    発行日: 2004年
    公開日: 2019/09/06
    ジャーナル オープンアクセス
    大動脈解離の84歳女性(事例1)と交通事故による脳挫傷及び多発骨折の23歳男性(事例2)の家族を対象者とし,その家族と看護師の人間関係に,対人関係を基盤にしているペプロウの看護論を応用し分析した.ありのままの相手を知ることで,自然なことではあるが互いに持つ相手への先入観を明確化することができた.具体的には看護師から患者家族に対する早期の歩み寄りが,より早く家族を知るきっかけになり,相互信頼関係を築く大きな要因となった.そしてお互いが理解を増していくと,事例1では「いろいろな相談ができます」との言葉,事例2でも「息子のことが知りたい」と率直な言葉を述べるようになり,看護師からの声かけも増えるという好ましい変化につながった.方向付けの段階,同一化の段階及び開拓利用の段階の各段階で分析を行い,ペプロウの看護論が集中治療室での看護師及び家族に有用であることを確認した.
  • 吉岡 宏, 倉吉 和夫, 河野 菊弘, 金山 博友, 井上 淳, 小林 淳子, 原田 祐治
    2004 年 8 巻 1 号 p. 59-64
    発行日: 2004年
    公開日: 2019/09/07
    ジャーナル オープンアクセス
    52歳男.主訴は3年間で20kgの体重減少と血糖コントロール不良.腹部超音波検査で肝(S5)と膵体部に境界明瞭でやや高エコーの腫瘍が認められ,内視鏡的逆行性胆道膵管造影で膵体部に膵管の途絶が認められた.造影CTでは膵腫瘍に著明な造影効果が認められ,CTAの後期に肝腫瘍の辺縁にリング状の造影効果が認められた.MRIのT1とT2強調像では低信号でd-DTPAの投与にて造影効果が認められた.グルカゴン産生膵腫と診断し,膵体尾部切除兼摘脾と1群のリンパ節郭清,肝(S5)の腫瘍に対しラジオ波焼灼治療を施行した.切除標本では膵腫瘍は境界明瞭で被膜の形成のない大きさ3.0×2.3×2.0cmで白色充実性の腫瘍が認められた.病理組織学的所見で腫瘍細胞は硝子化した結合織の中に増生し,被膜のない索状からリボン状の構造が認められた.免疫組織学的にはグルカゴン強陽性,ソマトスタチン弱陽性であった.以上より,グルカゴン産性膵腫瘍と診断した.術後1年経過した現在,再発徴候もなく血中グルカゴン正常値内で健在である
  • 中村 信一郎, 石倉 信造, 多賀 智治
    2004 年 8 巻 1 号 p. 65-68
    発行日: 2004年
    公開日: 2019/09/09
    ジャーナル オープンアクセス
    63歳男.口底癌にて腫瘍切除術,右側頸部郭清術,左顎下リンパ節摘出術及び腹直筋皮弁による再建術を施行した.その後,左中頸部リンパ節に転移を認めたため,左頸部郭清術を施行した.更にその後,右上顎前歯部唇側歯肉に有茎性腫瘤が生じ徐々に増大し,右上顎前歯に咬合痛を認めた.デンタルX線写真,パノラマX線写真にて右上顎前歯歯根部にび漫性骨吸収像を認めた.有茎性腫瘤局所麻酔下に健常組織を含めた拡大切除を施行した.切除した腫瘤の割面所見では壊死巣はなく充実性で,創部は完全に上皮化し正常組織にて被覆された.病理組織学的診断の結果,T-cell Lymphomaであった.CT写真,シンチグラフ,エコーにて上顎前歯部歯肉に原発したPeripheral T-cell Lymphomaの確定診断にいたり,CHOP療法を2週間ごとに3クール施行した.放射線治療終了後,口内炎は改善し,現在,再発はみられていない
  • 芦田 泰之, 殿本 詠久
    2004 年 8 巻 1 号 p. 69-73
    発行日: 2004年
    公開日: 2019/09/09
    ジャーナル オープンアクセス
    77歳女.主訴は進行する嗄声.胸部造影CT所見で弓部大動脈に瘤化した限局性解離があり,一部に血栓を認めた.最大径は5cmで,内膜の石灰化が著明であった.胸骨正中切開で心嚢を切開し,上行大動脈送血,上下大静脈脱血で手術を開始した.術後,脳障害なく覚醒し,翌朝には人工呼吸から離脱し抜管した.第7病日迄には順調に解熱し,白血球数は高値であったが,CRPは減少していた.第19病日からは血清総蛋白値,アルブミン値,カリウム値が減少し,胸部X線写真で左胸水の著明な増加を認めた.胸部CTでは人工血管に連なる被包化された胸水を認め,グラフト感染によるものかは判定できなかった.ドレイン留置のため予防的抗生剤使用を継続した.また,抗炎症薬(aspirin)を開始した.CRPは42病日に正常化しリハビリの後,術後76日目に独歩退院した.退院時の胸部CTでは胸水は完全に消失していた
  • 林 隆則, 山口 広司, 角 文宣, 原田 祐治
    2004 年 8 巻 1 号 p. 75-79
    発行日: 2004年
    公開日: 2019/09/09
    ジャーナル オープンアクセス
    63歳女.主訴は尿閉.超音波検査で近位尿道周囲に前立腺を思わせる腫瘤像を認めた.CTでは会陰部から膀胱下部にかけて計2.5cmの被膜を有する腫瘤様変化が認められた.MRIでは尿道周囲腫瘍部は,全体として同心円状層状の病巣があり,尿道周囲の炎症が疑われた.腫瘤を穿刺したところ血性膿様の内容液が吸引され,これを細胞診に提出すると低分化移行上皮癌の診断であった.また,経腟的に施行した腫瘍生検では中~低分化腺癌であった.以上より尿道癌と診断し,膀胱尿道全摘除術,子宮腟前壁付属器合併切除及び回腸導管造設術を施行した.組織分類はadenocarcinoma >transitional cell carcinoma,発育様式はnon-papillary invasive typeであった.抗癌化学療法の追加治療を勧めるも承諾が得られず,その後,左肺転移,傍大動脈リンパ節転移,腰痛,左鎖骨上窩リンパ節転移が出現し,化学療法を施行した.Partial Responseが得られたが脳転移が判明し,ガンマナイフ治療により脳転移による症状は軽快したが,死亡した
  • 田中 雄二, 堀 郁子, 福永 真紀, 小玉 永生
    2004 年 8 巻 1 号 p. 81-84
    発行日: 2004年
    公開日: 2019/09/09
    ジャーナル オープンアクセス
    12歳男子.主訴は腹痛,水様性下痢.初診時腹部CT所見で上行結腸壁の著明な肥厚と粘膜下層の低濃度化を認め,その厚さは最高19mmまで達していたが,急性虫垂炎を示唆する所見は得られなかった.結腸炎と診断し,便細菌培養(便培養)実施後,輸液,フロモキセフ(FMOX)点静にて治療を開始した.第3病日腹部CTを再検すると,壁肥厚は上行結腸だけでなく,横行結腸や下行結腸にも及び,最大28mmにも達した.O157感染症を疑い,便を検査対象とした迅速検査を試み,分離寒天平板上に出現していたコロニーからO157抗原を検出した.まだ第3病日であったため,ホスホマイシン内服をFMOX点静に変えて開始し,良好な感受性も確認されたため5日間継続した.激しい腹痛に対しては,ペンタゾシン皮下注とヒドロキシジン点静で乗り切った.溶血性尿毒症症候群を併発することなく,第7病日には便中のO157消失を確認,第10病日には退院となった
  • 板垣 友子, 倉吉 和夫, 河野 菊弘, 吉岡 宏, 金山 博友, 井上 淳, 森沢 剛, 原田 祐治
    2004 年 8 巻 1 号 p. 85-90
    発行日: 2004年
    公開日: 2019/09/10
    ジャーナル オープンアクセス
    61歳男.主訴は下腹部痛及び腹部腫瘤.腹部に鵞卵大の可動性良好な硬い腫瘤を触知した.腹部CT検査所見で下腹部に周囲組織への浸潤を認めない内部不均一な充実性腫瘤を認め,腫瘤による下大静脈(IVC)の圧排を認めた.腹部血管造影検査所見では腫瘤による右結腸・回結腸動脈の圧排,IVCの圧迫と腫瘤部のAVシャントの発達を認めた.小腸造影検査所見では腫瘤による小腸の圧排を認め,注腸造影検査所見では腫瘤による回腸末端部の圧排を認めた.腹部MRI所見では腫瘤は境界明瞭で周囲への浸潤は認めず,T1強調画像で低信号,T2強調画像で内部不均一な高信号を示し,meglumine gadopentetate投与による造影効果を認めた.以上より,腸間膜腫瘍と診断し開腹手術を施行した.開腹時,トライツ靱帯より約10cm肛門側の上腸間膜内に鵞卵大,表面平滑,可動性良好な腫瘤を認め,腫瘍摘出術を施行した.重量680g,径12×10×8cmの境界明瞭で辺縁平滑な腫瘤であった.病理組織所見,免疫組織化学染色所見より,腸間膜由来のsolitary fibrous tumorと診断した.術後経過は良好で,術後第14病日に退院した.
  • 小川 洋史, 謝花 正信, 堀 郁子, 栗岡 聡一
    2004 年 8 巻 1 号 p. 91-94
    発行日: 2004年
    公開日: 2019/09/10
    ジャーナル オープンアクセス
    67歳男.主訴は糖尿病のコントロール不良.膵癌除外目的に行った腹部造影CTにて膵頭部に3.0×2.7cmの血栓化の進んだ動脈瘤を認めた.腹部血管造影施行し,胃十二指腸動脈本幹に径1.5cm大の紡錘型の動脈瘤が認められた.胃十二指腸動脈瘤頸部の遠位部から近位部にかけて,マイクロコイルを計4個用いて経カテーテル的血管塞栓術(TAE)を行った.TAE後,動脈瘤内への血流が遮断されたことを血管造影にて確認し終了した.術後合併症もなく,糖尿病のコントロールが安定した時点で退院した.TAE施行2ヵ月後にfollow upの腹部造影CTを行った.その結果,胃十二指腸動脈瘤は退縮し,CT上では同定困難となっていた.その後の経過も良好で,現在経過観察中である
  • 小田 直治, 川西 正高
    2004 年 8 巻 1 号 p. 95-98
    発行日: 2004年
    公開日: 2019/09/10
    ジャーナル オープンアクセス
    7歳男.歯ブラシをくわえたまま転倒し,歯ブラシが口腔内に刺入,抜去できなくなり救急車にて受診した.CTを施行したところ,歯ブラシは左口蓋から扁桃周囲隙を通り副咽頭間隙に達していた.また,歯ブラシ上下の副咽頭間隙には気腫がみられた.全身麻酔の上,抜去を試みた.経口挿管はやや困難であったが,操作時の出血等はなかった.開口器を掛け,刺入創の血腫を吸引除去したところ,歯ブラシ先端の植毛部分が視認できた.新たな出血は認めなかったため,慎重に歯ブラシを抜去した.摘出後剥離層を確認すると,上極はほぼ扁桃被膜に沿って剥離されていたが,刺入部は扁桃被膜を被って筋層に達しており,一部には筋層下の脂肪織が確認できた.術後,抗生剤を投与しつつ経過観察したが,感染を示す徴候なく通常の口蓋扁桃摘出術後と同様に白苔が付き,周囲粘膜が徐々にのびてきたため術後4日目で抗生剤投与を中止,術後2週間目には創はほぼ粘膜に覆われており治癒と判断した.
  • 野津 長, 松井 泰樹, 殿本 詠久, 芦田 泰之, 原田 祐治, 神田 美津子
    2004 年 8 巻 1 号 p. 99-102
    発行日: 2004年
    公開日: 2019/09/12
    ジャーナル オープンアクセス
    66歳女.甲状腺癌術後経過観察中,頸部不快感があるとのことでCTを施行した際,右乳房に腫瘍陰影を指摘された.細胞診で悪性と診断されたため,乳房温存手術及び腋窩郭清を施行した.部分切除した乳腺内には,径6mmの割面白色で浸潤性の腫瘤を認めた.病理学的には原発巣は硬癌で周囲脂肪織に浸潤し,腋窩リンパ節転移は4個認められた.エストロゲンレセプタ,プロゲステロンレセプタは共に陽性であった.術後の局所照射50Gyと共にアナストロゾール,ドキシフルリジンを経口投与した.術後合併症無く退院し,再発無く快適な日常を送っている
  • 野津 長, 松井 泰樹, 殿本 詠久, 芦田 泰之, 原田 祐治, 神田 美津子
    2004 年 8 巻 1 号 p. 103-107
    発行日: 2004年
    公開日: 2019/09/12
    ジャーナル オープンアクセス
    33歳女.主訴は右乳輪上外側部腫瘤形成.超音波診断ではおむすび型の30×20×16mmの低エコー腫瘍を認め,マンモグラフィでは25×19mmの濃い腫瘍陰影を認めた.穿刺吸引細胞診では乳腺上皮で異型を示す細胞集塊,更には間質細胞集塊も認められた.診断は線維腺腫であった.総合的には良性腫瘍と診断したが,悪性の可能性が完全には払拭できず,切除術を施行した.標本は30×22×18mmで割面では被膜は薄く,凹凸のある不整円様で,決して平滑と表現できるものではなかった.そして,割面は光沢を有するものの,モザイク用の文様と軽度の顆粒状凹凸を示していた.術後経過は良好で手術創部の感染も無く,1週後には創治癒を得た.病理診断は若年性線維腺腫が適当と考えられた.エストローゲンレセプタは陰性で,プロゲステロンレセプタは陽性であった.
  • 2004 年 8 巻 1 号 p. 109-114
    発行日: 2004年
    公開日: 2019/09/13
    ジャーナル オープンアクセス
    68歳男.完全房室ブロックのためVVIモードのペースメーカー植込み術を施行され,その後,肝腫瘍を反復していた.今回,発熱と悪寒が出現し,多発性肝腫瘍と敗血症と診断された.肝膿瘍の細菌培養検査ではKlebsiella pneumoniaeが検出され,抗生剤投与を行った.経胸壁心エコー図検査所見ではペースメーカーリードが右房内から三尖弁を通過して右心室に至るのが観察できたが,右房内のペースメーカーリードには,これを取り巻くようにやや輝度の高いエコーが認められ,近位部には輝度の高い部分と低い部分が混在する塊状エコーが認められた.また,この塊状エコーの一部にひも状の細かく振動する輝度の低いエコーが認められた.心エコー図所見と臨床所見から,possible感染性心内膜炎と診断した.開心術を行い,ペースメーカーシステムの除去と心筋電極を用いた再植込みを施行した.術中の観察では,右房内のリードの表面に柔らかい房状のvegetationが付着していた.摘出したvegetationはペースメーカーリードを取り巻くように付着しており,病理所見からこの組織は1~2週間経過したvegetationであると考えられた.その後の経過は良好で,退院1年9ヵ月後では肝膿瘍の再発は認められなかった.
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