世界的な環境への関心の高まりと建築部門の影響の大きさから,わが国では建築の環境性能を広範に評価するCASBEE (Comprehensive Assessment System for Building Environmental Efficiency:建築物総合環境性能評価システム) が開発され,省資源の観点では耐久性やリサイクル材,有害物質の使用等が評価されている。第三者による客観的評価・認証システムを採用することで健全な建築の普及に寄与することが望まれている。しかし,建築の寿命には物理的耐用年数だけではなく社会的耐用年数も大きく関わっており,そのことは古くから指摘されてきたが解決していない。
社会的耐用年数を決める要因は広範で,建て替えが進む因果関係の検証に時間がかかることもあって,部分的局面を掘り下げた調査・研究はあるが,知見を集積して体系的分析に繋げることは困難である。本稿では建築の寿命に影響する因子を建て替えのトリガーとなった事象を追っていくことにより抽出し,その変遷をたどることから現代の日本が直面している建替文化の問題について概括を試みた。
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