廃棄物資源循環学会誌
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28 巻, 2 号
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巻頭言
特集:PCB処理の経緯と処理完遂への展望
  • 高橋 真, 田辺 信介
    2017 年 28 巻 2 号 p. 99-111
    発行日: 2017/03/31
    公開日: 2020/02/13
    ジャーナル フリー
    日本等の先進諸国では,1970 年代に PCB の生産と新たな使用を禁止したが,広域汚染やゆくえの解明,廃棄物処理対策等に関しては,現在も多くの課題が残されている。先進諸国における規制の強化と途上国や新興国における産業活動の拡大により,PCB や類縁 POPs (残留性有機汚染物質) の発生源と汚染分布は大きく変化している。熱帯・亜熱帯地域における環境負荷の増大は,地球規模での POPs 汚染を拡大することから,問題解決に向けた国際的な支援と連携が必要である。また,大気・海洋循環を介した長距離輸送によって,その汚染は外洋域等の遠隔地まで拡大し,とくに極域や深海環境は PCB ・ POPs の 「たまり場」 として機能することが示唆されている。生態系においては,野生の高等動物,とくに海棲哺乳類において PCB 汚染は顕在化しており,内分泌系や免疫系への影響がうかがわれる事例も多い。汚染の動向を継続的に監視するとともに,国際的な化学物質管理の適正化に向けた関係機関の協力体制強化が今後の課題であろう。
  • 福井 和樹
    2017 年 28 巻 2 号 p. 112-119
    発行日: 2017/03/31
    公開日: 2020/02/13
    ジャーナル フリー
    高濃度 PCB 廃棄物は,全国 5 カ所の JESCO の処理施設で処理が進められているが,定められた期限を遵守して,一日も早く高濃度 PCB 廃棄物の処理を完了させるため,2016 (平成 28) 年に PCB 特措法を改正して,制度的な措置が講じられた。これは主な措置として,政府一丸となって取り組むため,従来環境大臣が定めることとしていた基本計画を閣議決定により定めるものとすること,使用中も含めて高濃度 PCB の計画的処理完了期限より前の廃棄・処分の義務づけ,都道府県等による報告徴収や立入検査の権限強化,高濃度 PCB 廃棄物の処分義務を負う事業者が不明等の場合の都道府県等による代執行を柱とする改正である。今後は,都道府県市および電気関係事業者等とともに,使用中のものを含むすべての廃棄物を把握するための掘り起こし調査等,足下の取り組みを確実に進めていく必要がある。また,適時的確な進捗管理を行い,必要に応じて迅速な対策を講じることが必要となる。
  • 由田 秀人
    2017 年 28 巻 2 号 p. 120-126
    発行日: 2017/03/31
    公開日: 2020/02/13
    ジャーナル フリー
    中間貯蔵・環境安全事業 (株) (JESCO) は,国の全額出資により設立された特殊会社であり,地元自治体の理解のもとに設置が成功した福岡県北九州市,愛知県豊田市,東京都,大阪府大阪市および北海道室蘭市の全国 5 カ所の拠点的広域処理施設において,世界でも類をみない化学処理による無害化処理によって高濃度 PCB 廃棄物の処理を進めている。2016 (平成 28)年の PCB 特措法の改正により,わが国の期限内処理に向けた体制が整備されたところであり,JESCO では,環境安全対策の取組強化,総ざらいへの対応,PCB 廃棄物の長期的な処理見通しの作成,PCB 廃棄物処理施設の解体撤去等の諸課題への対応を行いつつ,安全・確実な操業を大前提に,一日も早い高濃度 PCB 廃棄物の処理の完了を進めていく。
  • 宮金 満
    2017 年 28 巻 2 号 p. 127-132
    発行日: 2017/03/31
    公開日: 2020/02/13
    ジャーナル フリー
    全国初の高濃度PCB廃棄物の処理施設が北九州市民の理解と協力のもと,北九州市に立地し,2004 年 12 月から処理が進められてきた。本市は,市内の高濃度 PCB 廃棄物の処理の完了に向けて,掘り起こし調査を全国に先駆けて行ってきた。この調査では,調査対象事業者を自家用電気工作物の届出事業者のみとするのではなく,市内のほぼ全事業者とした。アンケート調査表の未回答事業者に対しての再アンケートの実施,電話調査,事業所立入といったフォローアップも行った。調査において処理対象物を見逃しやすい場所等の情報を事業者へ提供することも重要であった。このような取り組みを 2008 年度から 2012 年度にかけて計 4 回,延べ約 50,000 事業者に対して実施した結果,本市における処理対象物の把握はおおむね完了することができた。
  • 長田 容
    2017 年 28 巻 2 号 p. 133-142
    発行日: 2017/03/31
    公開日: 2020/02/13
    ジャーナル フリー
    低濃度 PCB 廃棄物とは,PCB 濃度が 0.5 mg/kg を超える絶縁油を含む微量 PCB 汚染廃電気機器等および PCB 濃度が 5,000 mg/kg 以下の PCB 汚染物等をいう。その量は,変圧器やコンデンサー等が約 120 万台,OF ケーブルが約 1,400 km に上ると推算されている。
     これらの廃棄物の処理には,存在量が膨大で PCB 濃度が低いといった特性を踏まえ,2009 年に廃棄物処理法の無害化処理認定制度が適用され,現在,同制度で認定を受けた事業者と許可事業者により焼却処理または洗浄処理が進められている。一方,使用中の微量 PCB 汚染絶縁油を含む変圧器の処理には,汚染絶縁油を新油に入れ替えた後に通常の使用条件で一定期間使用し続けることで浄化する課電自然循環洗浄法が適用可能となっている。
     低濃度 PCB 廃棄物の処理期限である 2027 年 3 月 31 日まであと 10 年ではあるが,それまでに着実に処理を進めていくためにも,早急に汚染の有無確認を促す施策に加え,さらに処理体制の充実・多様化を図っていくことが求められる。
  • 平井 康宏, 酒井 伸一
    2017 年 28 巻 2 号 p. 143-148
    発行日: 2017/03/31
    公開日: 2020/02/13
    ジャーナル フリー
    PCB 廃棄物 (電気機器) からの PCB 揮発量を,PCB 保管庫 10 カ所での実測調査により推定した。他の発生源 (熱工程の非意図生成) とあわせて大気中 PCB 濃度を予測し,実測値との比較により,PCB 発生源および PCB 処理効果について考察した。PCB の揮発係数は気温が高いほど高く,保管事業場での保管状況による影響を受けていた。PCB 廃棄物からの揮発量は 2003 年度から 2013 年度にかけて約半減しており,PCB 処理による保管ストック量減少に加え,PCB 特措法の施行による保管状況の改善の効果があったと推定された。熱工程の非意図的生成は同期間ほぼ横ばいで推移しており,1 塩素化 PCB では主要な発生源であるが,総 PCB では PCB 廃棄物からの揮発の方が大きかった。2 塩素化物や 5 塩素化物以上については,顔料不純物やシーラント中 PCB 等の他の発生源の影響が示唆された。
廃棄物アーカイブシリーズ/『ゴミ戦争』の記録
平成28年度廃棄物資源循環学会企画セミナー報告
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