廃棄物資源循環学会誌
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30 巻, 4 号
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巻頭言
特集:廃棄物の熱エネルギー利用の高度化に向けて
  • 藤井 実
    2019 年 30 巻 4 号 p. 233-238
    発行日: 2019/07/31
    公開日: 2020/07/31
    ジャーナル フリー
    気候変動の緩和に向けて,化石燃料を代替しうる廃棄物を効率的に利用することが一層重要になっている。国内では,廃棄物からのエネルギー回収の手段としては,焼却発電が主流である。しかし,特に一般廃棄物の焼却炉においては,燃焼ガスが腐食性に富むなどの理由により,その発電効率は 20 数 % 程度に留まっている。抜本的な効率向上には,熱利用を行うことが望ましい。しかし,熱は温度帯によってその価値が大きく異なる。暖房や給湯レベルの温度の熱は,ヒートポンプによって効率的に供給することが可能であり,さらにヒートポンプの電源を太陽光発電等の再生可能エネルギーに求めることもできるなど,競合技術の進歩も考慮する必要がある。本稿では,エネルギーの質を考えることの必要性について解説し,エネルギー効率の高い,高温の熱需要のある工場への蒸気供給と,廃熱を活用した低温の熱供給とについて,その有効性を解説する。
  • ――ごみ焼却施設の廃棄物エネルギー利活用による低炭素化――
    大沼 康宏
    2019 年 30 巻 4 号 p. 239-244
    発行日: 2019/07/31
    公開日: 2020/07/31
    ジャーナル フリー
    2018 年に閣議決定された第五次環境基本計画,第四次循環型社会形成推進基本計画および廃棄物処理施設整備計画の方向性を紹介するとともに,ごみ焼却施設等の廃棄物処理施設を中心とした廃棄物分野における低炭素化に向けた政策の内容について,廃棄物処理施設整備計画を中心に概説した。また,廃棄物分野における低炭素化を進めるための施策として,廃棄物エネルギーを利活用するための設備導入補助や指針の策定など技術的援助を進めていることを紹介した。さらに,廃棄物エネルギーを利活用する取り組みを推進していくことで廃棄物処理施設を核とした地域循環共生圏の構築につなげたいとする考えを紹介した。
  • 深栖 大毅, 三上 恒生
    2019 年 30 巻 4 号 p. 245-252
    発行日: 2019/07/31
    公開日: 2020/07/31
    ジャーナル フリー
    本稿では,廃棄物の焼却処理が比較的普及しており,その排熱を地域熱供給に活用している諸外国の制度を整理し,日本への示唆を論考する。諸外国の熱供給にかかわる制度を整理すると,料金規制等,各種経済的インセンティブを活用する手法と,原則市場に任せる手法の 2 つに分けることができる。前者は熱供給が電力等の代替エネルギーに対して相対的に競争力が低い場合に採用されることが多く,このような状況が当てはまる日本にとっても相応しい制度体系であるといえる。また,民生需要を対象とした地域熱供給は北欧等,比較的寒冷な気候の地域で普及しているのが一般的で,日本の場合は一部地域を除いてその普及は難しいと考えられる。一方で,工場等の産業向けの熱供給のポテンシャルは十分にあると考えられる。その上で,廃棄物焼却施設からの排熱利用を普及させるためには,焼却施設を産業集積地区に隣接して立地することなどを促す制度作りが望まれる。
  • 松原 弘直
    2019 年 30 巻 4 号 p. 253-263
    発行日: 2019/07/31
    公開日: 2020/07/31
    ジャーナル フリー
    1970 年代の石油ショック以降,欧州各国 (特に暖房需要の大きい北欧) では化石燃料を有効にエネルギー利用するために地域熱供給 (District Heating) が積極的に導入されてきた。デンマークでは 2050 年までに脱化石燃料を達成し再生可能エネルギー 100 % とすることを目指しており,全人口の約 6 割に地域熱供給が普及する中で,スマートエネルギーシステムの重要な要素として第 4 世代地域熱供給への移行に向けた研究や実証が進められている。パリ協定 (COP21) を受けた欧州の気候変動・エネルギー政策の中で,再生可能エネルギー熱分野での脱炭素化に向けた再生可能エネルギー 100 % への取り組みと,デンマークを中心とした第 4 世代地域熱供給の動向について整理し,日本国内での地域熱供給の展望についてまとめた。再生可能エネルギー熱利用の分野では,欧州の豊富なノウハウと日本国内の再生可能エネルギーとしてバイオマス資源等のポテンシャルを活用したさまざまな取り組みが進むことを期待されている。
  • ――オーストリアの事例――
    稲葉 陸太
    2019 年 30 巻 4 号 p. 264-269
    発行日: 2019/07/31
    公開日: 2020/07/31
    ジャーナル フリー
    欧州連合 (EU) では,リユース,リサイクルだけでなく修理,シェアリング,長寿命化,ストックの活用等さまざまな手段で資源の利用効率の最大化を目指す循環経済の取り組みが 2015 年から進んでいる。循環経済の行動計画でも言及されている廃棄物ヒエラルキーでは,廃棄物エネルギー利用は低く位置づけられているが,選別や洗浄が困難な廃棄物等については依然としてエネルギー利用が有効となる可能性がある。この中でも,オーストリアはごみのマテリアル利用とエネルギー利用がいずれも高い水準を示している。それに関して,同国の都市ごみ管理フローの分析によると,選別プロセスの進展が貢献している可能性が示されている。また,同国では都市公社による運営や,都市部での地域熱供給網の存在等も有効な廃棄物エネルギー利用を実現する要素と考えられる。これらの要素は,日本を含む他の地域においても持続的な資源循環を促進させるための参考情報となりうる。
  • 大西 悟
    2019 年 30 巻 4 号 p. 270-276
    発行日: 2019/07/31
    公開日: 2020/07/31
    ジャーナル フリー
    韓国で普及をみせている,清掃工場内で廃棄物から製造した蒸気を近隣の工場に供給する事業を報告し,その成立要因と日本での普及に向けた示唆を論じる。韓国では,2005 年より国家エコ・インダストリアル・パーク (EIP) 計画を通じて,EIP 事業の推進体制が整備されてきた。一般廃棄物の焼却炉と化学工場間での熱交換事業を具体例として,その実態を明らかにする。特に着目すべき点は,地域 EIP センターの役割であり,日本での普及に向けて参考になる点が多い。地域 EIP センターは,地道な Awareness Raising (意識啓発) 活動,利害関係者への説明,低コスト化を実現するビジネスモデルの知識・ノウハウの集約を継続し,次なる発展を見据えている。今後,国内で,廃棄物からの高度なエネルギー回収を低コストで推進するための示唆として,韓国の地域 EIP センターの機能を有する中間組織を創設し,戦略的に EIP 事業を進めることで継続的に知識集積を図る社会インフラを構築の必要性を提起している。
  • 宮田 治男, 箱崎 忍, 大橋 輝, 秦 三和子, 村上 友章
    2019 年 30 巻 4 号 p. 277-284
    発行日: 2019/07/31
    公開日: 2020/07/31
    ジャーナル フリー
    廃棄物から安定してエネルギーを回収し,地域の施設で熱や電気として利用することができれば,低炭素化効果と事業性を両立させる新たな廃棄物の処理・エネルギー回収事業への展開が考えられる。本稿では,大容量の熱需要がある施設の隣接地に廃棄物処理施設 (未活用エネルギー熱電併給施設) を設置し,エネルギー利用されていない廃プラスチックを中心とした可燃性未活用廃棄物の広域回収と,回収量と質の調整を図るシステムを導入して熱と電力を安定供給する地域低炭素化モデル事業を構築し,低炭素化と事業性を評価した。その結果,地域にエネルギーと経済の好循環をもたらす事業となる可能性が示唆されたので紹介する。特に,化学工場等においては,24 時間 365 日いずれかの生産工程が稼働していることから,廃棄物焼却施設から供給する熱・電力とのベストマッチが期待できる。
令和元年度廃棄物資源循環学会・春の研究討論会報告
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