廃棄物資源循環学会誌
Online ISSN : 2187-4808
Print ISSN : 1883-5864
ISSN-L : 1883-5864
最新号
選択された号の論文の14件中1~14を表示しています
巻頭言
特集:リペア・リユースと循環経済
  • ―「リペア・リユースと循環経済」特集にあたって―
    山川 肇
    2024 年 35 巻 3 号 p. 153-160
    発行日: 2024/05/31
    公開日: 2024/08/05
    ジャーナル フリー

    気候変動問題,資源制約等を背景として循環経済の実現が大きな課題になっている。その実現のためには長期使用の拡大が必要であり,こうした観点から,近年,欧米を中心に「修理する権利」が注目されている。本稿では,本誌で修理・リペアに関する特集を組むに至った背景と特集の各記事について概説する。加えて, リペアの抑制要因と対策の可能性について既往研究に基づいて紹介するとともに,家電,情報機器,衣類・生活用品,家具等各種製品について,日本の消費者の修理状況,ならびに直らなかった理由,しなかった理由に関する調査結果を報告する。「部品/材料がなかった」,「メーカーが修理に対応していなかった」,「修理しようとしても高すぎた」などが主な理由となっている。あわせて日本の修理に関する政策として,資源の有効な利用の促進に関する法律 (資源有効利用促進法),公正競争規約,民法の契約不適合責任制度,国等による環境物品等の調達の推進等に関する法律 (グリーン購入法) 等について概説する。

  • ―現状と課題―
    小島 道一
    2024 年 35 巻 3 号 p. 161-166
    発行日: 2024/05/31
    公開日: 2024/08/05
    ジャーナル 認証あり

    欧米での「修理する権利」に関する取り組みを受け,アジア諸国でも「修理する権利」に対する関心が高まり,法令に盛りこむ,あるいは,情報提供をする政府機関も出てきている。本稿では,アジア諸国における「修理する権利」に関する取り組みについて,国ごとに概観するとともに,「修理する権利」による長期利用が省エネルギー製品の普及を遅らせる可能性のあること,修理のための貿易に関して議論する。

  • 粟生木 千佳
    2024 年 35 巻 3 号 p. 167-175
    発行日: 2024/05/31
    公開日: 2024/08/05
    ジャーナル 認証あり

    本稿では,EU・一部の欧州国の修理に関する各種施策や取り組みについて整理を行い,修理事業・修理行動のさらなる促進に向けて,修理の障壁と政策とのギャップについて触れた。

     主な施策としては,製品要件への修理可能性の適用,修理可能性や修理へのアクセス方法に関する情報開示,修理妨害行為の禁止,修理による法定保証期間の延長,修理業者の情報開示による修理へのアクセスの改善,修理費用の補助等があげられよう。また,修理業者のアクセス改善や,製造・輸入業者のみならず,消費者との接点となる販売者に対しても情報開示等を求めており,バリューチェーン全体での修理促進策がはかられ,体系的な修理政策の枠組みができつつあるといえる。また,これらの施策は,修理促進の障壁となる製品設計や部品の入手可能性改善を通じた技術的要因や修理コスト等の経済的要因の解消,また,情報提供を通じた消費者の行動変容等につながりうると考えられる。

  • 椎名 葉
    2024 年 35 巻 3 号 p. 176-186
    発行日: 2024/05/31
    公開日: 2024/08/05
    ジャーナル 認証あり

    米国では21世紀に入り,「修理する権利 (“Right to Repair”)」法制化の動きが,合衆国連邦・各州のふたつのレベルで活発化している。「修理する権利」とは,製品の購買者(所有者) や独立系(製造元専属・指定ではない) 修理業者が「修理に必要な情報・部品にアクセスする権利」を指す。モノのデジタル化が大幅に進んだ今世紀において,なぜ,どのように「修理する権利」法制化の動きが活発になったのか,なぜ米国ではこれが競争法,消費者保護法,知的財産法を軸に展開されているのか,本稿ではこれらの点について,歴史的経緯と法的根拠の説明,および立法・行政・司法の異なる政府機関と消費者・修理業者に代表される民間当事者がどのように動いてきたのかを辿る。

  • Elizabeth Chamberlain, Kyle Wiens
    2024 年 35 巻 3 号 p. 187-197
    発行日: 2024/05/31
    公開日: 2024/08/05
    ジャーナル 認証あり

    iFixitは,カリフォルニアの大学で設立されて以来,20年以上にわたってより修理可能な電子機器の普及を推進してきた。同社は,Apple製品の修理方法を手順ごとに説明するWebサイトとしてスタートしたが,現在では世界的な修理推進団体へと発展し,世界中で修理をしやすくする法制化を支援し,Google LLC や Lenovo Corporation を含むメーカーと協力して,より修理可能な製品作りに取り組んでいる。この記事では,iFixitの歴史を振り返った後,世界的な「修理する権利」運動の成長(米国,EU, アジアでの法制化等を含む) を説明し,修理推進上の残されたフロンティアについて述べる。

  • 佐藤 多加子
    2024 年 35 巻 3 号 p. 198-206
    発行日: 2024/05/31
    公開日: 2024/08/05
    ジャーナル 認証あり

    近年,サーキュラーエコノミーへの移行は,気候変動対策に次ぐ地球規模の課題であることが共通認識となっている。将来にわたり限りある資源を利用していくためには,天然資源の効率的・持続的な利用を可能にすることが不可欠であり,所有から利用,廃棄から循環への流れが加速している。リコーグループは,1994年に循環型社会実現のコンセプトとして「コメットサークルTM」を制定し,長期にわたりライフサイクル全体での資源の有効活用を推進し,循環型社会実現に向けた取り組みを進めてきた。本稿では,「循環型社会の実現にむけた取り組み・複合機の再生事業」と題し,循環型社会の実現のための指標・目標,具体的な取り組みとして複合機,プリンターの製品再生・部品再生事業,ならびに再生機の環境負荷低減について紹介する。また修理体制についてもふれる。

  • ―(株)ビリーブの事例―
    高須 康之
    2024 年 35 巻 3 号 p. 207-211
    発行日: 2024/05/31
    公開日: 2024/08/05
    ジャーナル 認証あり

    本稿では,筆者が運営しているリユース店3店舗の事例に基づき,需要の多い修理の内容や利用者の実態,またコロナ禍前後の利用者や修理内容の変化について報告する。コロナ前には冠婚葬祭用衣類等,高価な衣類のお直しや紳士革靴,婦人ピンヒール等の修理が多かったが,コロナ後にはこれらが激減した。高齢者のマインド変化やリモートワークの増加等が影響しているのではないかと考えられた。またコロナ禍で激減した需要は少しずつ回復してきているが,高齢者の客足の回復が遅れている。そこで,高齢者施設や個人宅を巡回訪問し,お直しを行うサービスを開始した。今後,他の支援ニーズにも対応する予定で,お直しの需要の掘りおこしのみならず,高齢者の安心・安全の確保にも貢献する事業としていく予定である。そのほか,修理サービスにおいてコミュニケーションが重要であること,次世代への技術の継承や経営改善等が今後の課題であることを述べる。

  • 花嶋 温子, 鈴木 榮一, 東 飛郎, 江尻 京子, 高根 美保, 柳 富哉, 関野 正
    2024 年 35 巻 3 号 p. 212-219
    発行日: 2024/05/31
    公開日: 2024/08/05
    ジャーナル フリー

    ごみ問題の啓発のために,修理やリユースに実際に取り組んでいる施設は多い。まず,ごみ焼却工場のリサイクルコーナーに始まり,「リサイクルプラザ」として国の施設建設補助により,全国に広まった。家具・自転車・衣類・書籍・食器・おもちゃ・傘・家電等が修理やリユースの対象となった。しかし,家具の低品質使い捨て化等によって,全体としては縮小傾向にある。しかしながら,愛着のあるもの,由来のあるもの,上質なものが,今後の修理やリユースを牽引する可能性があることがわかった。

会議報告
令和5年度廃棄物資源循環学会セミナー報告
廃棄物資源循環学会研究部会報告
支部特集/支部だより
書評
feedback
Top