MEDCHEM NEWS
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30 巻, 4 号
選択された号の論文の16件中1~16を表示しています
巻頭言
創薬最前線
  • 近澤 和彦, 寺坂 忠嗣, 德井 太郎
    2020 年 30 巻 4 号 p. 162-170
    発行日: 2020/11/01
    公開日: 2021/05/01
    ジャーナル フリー

    AMED創薬事業部創薬企画・評価課(iD3)は、アカデミア創薬シーズの実用化の加速および製薬企業への橋渡し支援を目的に産学協働スクリーニングコンソーシアム(DISC)を立ち上げ5年が経過した。DISCは国内製薬企業22社から提供された化合物ライブラリーとハイスループットスクリーニング(HTS)を基盤とする産学のオープンイノベーションの取り組みである。アカデミアにとっては、iD3による創薬総合支援(創薬ブースター)を受けつつ、実践的な大規模ライブラリーおよび最先端機器によるHTSがAMEDの経費で実施でき、かつ、製薬企業への導出機会を得られる等、多くのメリットがある。近年、ライブラリーの拡充等、種々の改善も行っており、多くのアカデミアがDISCを活用し、画期的な新薬が創出されることを期待している。

WINDOW
  • 田中 大輔
    2020 年 30 巻 4 号 p. 171-176
    発行日: 2020/11/01
    公開日: 2021/05/01
    ジャーナル フリー

    2012年英国で誕生したExscientiaは、人工知能(AI)創薬における世界のフロントランナーである。本年1月には大日本住友製薬との共同研究で生み出された化合物が臨床試験入りし、世界で最初のAIがデザインした治験薬として多くのメディアに採り上げられるなど、その実力と実績を「成果物」として世に知らしめた。その結果、ExscientiaはAIによるドラッグデザインをする企業であると理解されがちであるが、それは主要であるものの一部に過ぎない。Exscientiaではドラッグデザインに止まらず、これから注目される新規標的分子の提案にもAIを活用している。筆者らのAI創薬プラットフォームを紹介するとともに、世界のAI創薬の最前線に身を置く立場からこれからの創薬化学者のあり方についても私見を述べてみたい。

ESSAY
特集:創薬の未来を拓くペプチド化学の新展開
  • 林 良雄
    2020 年 30 巻 4 号 p. 177-179
    発行日: 2020/11/01
    公開日: 2021/05/01
    ジャーナル フリー

    最近、創薬を取り巻く環境の変化の中で、分子量500~2000程度のペプチドが新たな創薬モダリティとして注目されている。本特集では、このペプチド創薬を支える最新のペプチド合成化学を取り上げた。ペプチド合成化学への基質支配の反応概念の導入やマイクロフローの化学による新しいペプチド合成、タンパク質合成をも視野とする化学選択的ライゲーション反応を利用したペプチド合成、そして芸術的ともいえる糖タンパク質の化学合成である。いずれも独自の方法論を用いて、当該分野の最前線で精力的に合成研究を進める研究者によるご執筆である。本特集を通じて、最先端のペプチド合成化学をご堪能いただきたい。

  • 大高 章
    2020 年 30 巻 4 号 p. 180-185
    発行日: 2020/11/01
    公開日: 2021/05/01
    ジャーナル フリー

    ペプチドチオエステルとN末端システインペプチド間の選択的な反応であるNative Chemical Ligation(NCL)法をはじめとする無保護ペプチド間の化学選択的ライゲーション反応の開発により、タンパク質合成が有機化学者の手によって達成できる時代となった。さらに、NCL法に関連した各種方法論の開発・改良も加わり、150残基を超える修飾タンパク質を含むさまざまなタンパク質も十分に合成標的の範疇に入りつつある。本稿ではNCL法とともに最近新たに開発された化学選択的縮合法であるSer/ThrおよびKAHAライゲーションについて概説する。

  • 岡本 亮, 真木 勇太, 梶原 康宏
    2020 年 30 巻 4 号 p. 186-192
    発行日: 2020/11/01
    公開日: 2021/05/01
    ジャーナル フリー

    タンパク質への糖鎖付加は重要な翻訳後修飾であり、タンパク質の安定性や活性を制御している。しかし、生体試料や遺伝子組み換え技術によって得られた糖タンパク質上の糖鎖はさまざまな構造の混合物となっており、一般に糖鎖付加がタンパク質へ及ぼす影響を分子レベルで評価することは難しい。そこで筆者らは、均一な構造の糖鎖を用いて糖タンパク質を化学合成し、タンパク質上糖鎖の詳細な機能解明を進めている。本稿では、バイオ医薬品としても重要な糖タンパク質エリスロポエチンの化学合成とその生理活性評価、および糖鎖付加によるインスリンの凝集抑制について紹介する。

  • 布施 新一郎
    2020 年 30 巻 4 号 p. 193-200
    発行日: 2020/11/01
    公開日: 2021/05/01
    ジャーナル フリー

    ペプチド医薬品はその重要性を増しており、特に近年では、環状ペプチドやN-メチル化ペプチドを含む特殊ペプチドが注目を集めている。一方で、これらペプチドの低コスト生産の実現は未だ道半ばである。Theodor Curtiusによる初のペプチド結合形成の報告から140年近くの歳月が経過し、すでに無数の合成法が開発されてきた中でペプチド合成に革新を起こすことは極めて挑戦的な課題といえる。1990年代半ばに登場した、微小な流路を反応場とするマイクロフロー合成法は、これまでのバッチリアクターの利用を基盤とする合成法では制御困難な反応に新たな価値を付与するものである。本稿ではペプチド合成に革新を起こすべく推進してきた、マイクロフロー合成法を駆使したアミド化反応の開発について紹介する。

  • 山本 尚
    2020 年 30 巻 4 号 p. 201-204
    発行日: 2020/11/01
    公開日: 2021/05/01
    ジャーナル フリー

    有機合成は反応剤支配の化学反応から発展し、今日に至っている。反応剤支配の反応とは、基質の官能基を反応剤として用いて別の官能基に変換する反応を指す。一方、基質支配の反応は比較的少なく、反応剤支配の反応ほど反応例は多くない。しかし、基質支配の反応は、最近増加の傾向になっているのは、これによって、すでに存在している官能基の立体化学的情報を新たに発生させる官能基に反映させることが比較的容易であるからである。基質支配の反応をペプチド合成に用いることで、ペプチド合成の懸案の問題がいくつか解消し、ペプチドが安価で市場に提供できるようになった。この現況をまとめた。

SEMINAR
  • 白木 賢太郎
    2020 年 30 巻 4 号 p. 205-208
    発行日: 2020/11/01
    公開日: 2021/05/01
    ジャーナル フリー

    相分離生物学は、新しい生命科学の分野である。相分離生物学は、分子と細胞との間に焦点を当て、生体分子の集合物であるドロプレットを主役として扱う分野である。タンパク質が液-液相分離したドロプレットはさまざまな生命現象と関連しており、遺伝子の転写や翻訳、タンパク質フォールディング、シグナル伝達、細胞内品質管理など多岐に及ぶ。本稿では、タンパク質の液-液相分離の基本的な性質をまず紹介する。さらに、ターゲットのタンパク質がドロプレットを形成している場合、低分子薬の機能がどのように変化するのかを考察する。最後に、神経変性疾患の発症の原因だと考えられてきたアミロイド仮説が、相分離生物学によってどのように捉えなおすとよいのかを考察する。

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