MEDCHEM NEWS
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34 巻, 3 号
選択された号の論文の17件中1~17を表示しています
巻頭言
創薬最前線
  • 大野 浩章, 秋葉 宏樹, 金尾 英佑, 石濱 泰
    2024 年34 巻3 号 p. 128-133
    発行日: 2024/08/01
    公開日: 2024/08/01
    ジャーナル フリー

    2020年7月に京都大学大学院薬学研究科(京大薬)と医薬基盤・健康・栄養研究所(NIBIOHN)が包括的な連携協定を締 結してから、4年が経とうとしている。本連携は、京大薬の基礎研究に関する強みと、NIBIOHN の独自技術と社会実装に関 するノウハウを融合させるとともに、研究者や学生の相互交流や研究設備の共同利用を行うことによって、未踏創薬分野へ挑 戦と将来の創薬研究を担う人材育成を行うことを目的として締結された。本稿では、連携協定締結の経緯、新設した連携研究 室「バイオ医薬品化学分野」および「創薬プロテオミクス分野」における最新の研究成果、および本連携に関する将来像と決 意について述べる。

WINDOW
ESSAY
DISCOVERY 2023年度 日本薬学会 医薬化学部会 MSC優秀賞 受賞
  • 山田 若菜, 佐藤 伸一, 石川 稔, 友重 秀介
    2024 年34 巻3 号 p. 145-149
    発行日: 2024/08/01
    公開日: 2024/08/01
    ジャーナル フリー

    標的タンパク質分解誘導が新規創薬手法として注目されており、Proteolysis Targeting Chimeras(PROTACs)をはじめとして多くの標的タンパク質分解誘導薬が開発されている。本研究では、標的タンパク質分解誘導手法をミトコンドリア内タンパク質に展開すべく、ミトコンドリアがもつタンパク質分解酵素caseinolytic protease P(ClpP)を利用し、任意の標的タンパク質を分解する手法の確立を目標とした。そこでClpP活性化薬と標的タンパク質のリガンドを連結した化合物は、標的タンパク質を強制的に活性化ClpPに近づけ、標的タンパク質の選択的な分解を誘導すると考え、コンセプト証明の実験とミトコンドリア形態の制御を見据えた展開を行った。

  • 原田 一人, 大竹 和樹, 小川 直樹, 生方 実, 判谷 理恵
    2024 年34 巻3 号 p. 150-154
    発行日: 2024/08/01
    公開日: 2024/08/01
    ジャーナル フリー

    酸化ストレスは、慢性腎臓病(CKD)の進行の一因である。Keap1-Nrf2タンパク質間相互作用(PPI)の阻害によるNrf2の活性化は、CKD治療の新たな手段として注目されている。筆者らは、ハイスループットスクリーニング(HTS)により、物性に優れた新規PPI阻害剤2を見出した。その後、構造および計算機化学を用いた解析を行い、メチル基とフルオロ基のみの導入により400倍以上の活性向上を示すリード化合物6の創製に成功した。これら劇的な置換基効果は、等温滴定カロリメトリー(ITC)による解析により説明可能であった。化合物6は、高い経口吸収性と持続性を示し、ラット腎臓で抗酸化タンパク質heme oxigenase-1(HO-1)を増加させた。本稿では、構造活性相関(SAR)とともに、メチル基とフルオロ基の効果について紹介したい。

  • 淵上 龍一, 坂槇 茂輝, 丹羽 靖哉, Lars Granberg Kenneth
    2024 年34 巻3 号 p. 155-159
    発行日: 2024/08/01
    公開日: 2024/08/01
    ジャーナル フリー

    RXFP1(Relaxin family peptide receptor 1)作動薬は、心不全・腎不全など、幅広い疾患への治療効果が期待されている。実際に、RXFP1の内因性ペプチドリガンドrelaxin-2の遺伝子組み換え製剤であるserelaxinが、急性心不全などを適応症として臨床試験に進んでいる。しかしserelaxinは点滴などの非経口投与の剤形で開発されていることから、経口投与可能なRXFP1作動薬の創製は患者さんの利便性に大きく貢献できるものと考えられる。今回、筆者らは、多くの試行錯誤の中で「カルボン酸の導入」「メチル基の導入」および「アルキルアミドへの変換」などの構造展開により、世界で初めて経口剤として臨床試験へ進んでいるRXFP1作動薬AZD5462の創製に成功した。

  • 金田 龍太郎, 神子島 佳子, 樋口 才飛, 内藤 博之
    2024 年34 巻3 号 p. 160-164
    発行日: 2024/08/01
    公開日: 2024/08/01
    ジャーナル フリー

    EP300およびCBPは、ヒストンアセチル化酵素(Histone Acetyltransferase:HAT)の一種で、タンパク質のアセチル化を触媒することでさまざまな遺伝子の発現を制御する。EP300/CBPの過剰発現や変異は多くの腫瘍で認められ、がんの発生や進展に深く関与していることから、その阻害薬は新たながん治療の有望な選択肢の一つとなることが期待されている。筆者らは、オキサゼパン構造をもつヒット化合物1の最適化により、新規EP300/CBP HAT阻害薬DS-9300を見出した。DS-9300は去勢抵抗性前立腺がんマウスモデルにおいて、経口投与で強力な抗腫瘍効果を示した。本稿では、ヒット化合物からDS-9300に至る化合物最適化の経緯および薬理試験の結果を報告する。

  • 棚田 幹將, 田宮 実, 鷹野 宏治, 松尾 篤, 白石 拓也
    2024 年34 巻3 号 p. 165-170
    発行日: 2024/08/01
    公開日: 2024/08/01
    ジャーナル フリー

    細胞の成長と分裂を制御するタンパク質であるKRASを阻害する分子は、各種固形がんに対する画期的な新薬として期待される。筆者らは、KRASなどの細胞内難標的に対する創薬プラットフォームを確立すべく、膜透過性と代謝安定性を有するペプチドに必要な構造/物理化学的性質を特定し、その性質を満たすペプチドヒットを取得しうるmRNAディスプレイライブラリーを構築した。本技術より取得されたKRAS阻害剤AP8784は高度に非天然化された11残基の環状ペプチドである。AP8784から臨床化合物LUNA18に至る構造最適化はスキャフォールド・ホッピングなしに達成され、膜透過能の獲得とともに14,000倍以上の細胞活性の増強を実現した。LUNA18は動物モデルにおいて強力な抗腫瘍効果と経口吸収性が確認され、現在、固形がんを対象とした経口薬を目指し第一相臨床試験(日本/米国)が進行中である。

SEMINAR
  • 湯田 浩太郎
    2024 年34 巻3 号 p. 171-177
    発行日: 2024/08/01
    公開日: 2024/08/01
    ジャーナル フリー

    コンピュータ時代からデータ駆動型情報時代への移行は明白である。ChatGPTの出現は、情報時代におけるAI革命を顕著にしている。特に現在差し迫った課題に直面している研究業務において、AI革命が何を変えるのかを考えることは非常に重要である。情報化時代におけるAI、特に大規模生成AIは、知的作業や創造的作業など、以前は人間だけが行っていた業務に革命をもたらす。研究の大部分を占める自律的な研究は長い間人間の専門知識に依存してきた。この分野に最新のAIは浸透可能である。筆者は、研究業務を自動化型と自律型に分類することを提案した。本稿ではAIが自律型研究に与える影響に焦点を当てて討論する。今後の研究において(大規模)生成AIを研究に統合することは、研究効率、速度、精度、オリジナリティ、決定等のさまざまな観点で不可欠である。人間主導の研究とAI主導の自律型研究は互いに補完し合い、研究効率を高めるのに理想的と考える。

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