細胞の成長と分裂を制御するタンパク質であるKRASを阻害する分子は、各種固形がんに対する画期的な新薬として期待される。筆者らは、KRASなどの細胞内難標的に対する創薬プラットフォームを確立すべく、膜透過性と代謝安定性を有するペプチドに必要な構造/物理化学的性質を特定し、その性質を満たすペプチドヒットを取得しうるmRNAディスプレイライブラリーを構築した。本技術より取得されたKRAS阻害剤AP8784は高度に非天然化された11残基の環状ペプチドである。AP8784から臨床化合物LUNA18に至る構造最適化はスキャフォールド・ホッピングなしに達成され、膜透過能の獲得とともに14,000倍以上の細胞活性の増強を実現した。LUNA18は動物モデルにおいて強力な抗腫瘍効果と経口吸収性が確認され、現在、固形がんを対象とした経口薬を目指し第一相臨床試験(日本/米国)が進行中である。
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