佐賀医大では学生が実際に感じている臨床倫理上の問題を把握し, 学生に臨床倫理を実践的に学ばせる目的で, 6年次総合外来実習 (必修) において, 臨床実習で経験した症例をもとに検討する「臨床倫理ケースカンファレンス」を開始した. 95名の対象学生中有効回答のあった87名のアンケートとケースレポートから, 学生が臨床実習中に経験し, 倫理的な課題が含まれると感じた症例 (以下「倫理的課題症例」) の内容とカンファレンスに対する評価を検討した. 87名中80名の学生が, 1人平均3.95±1.53件の倫理的課題症例を経験していた. 検討された倫理課題は全部で130項目 (1症例平均1.63±0.51項目) で, 多い順にインフォームド・コンセント, 治療法の選択, 治療拒否などが挙げられ, 少数ではあるが臨床倫理で重要な患者医療者関係の問題, 医療費の問題, 患者家族の問題なども挙げられていた. カンファレンス後のアンケートでは, 85%の学生がカンファレンスに参加して「良かった」と評価し, 87%の学生が, このカンファレンスによって,「倫理問題への気付きが増す」, 回答者全員が「このようなカンファレンスを必修の科目として今後も続けるべきだ」と答えていた. いかに学生の主体性を尊重して討議内容を充実させていくかが今後の課題である.
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