〈目的〉客観的臨床能力試験 (OSCE) での脈拍・血圧測定の課題において, 評価者間較差の原因となる評価システムおよび脈拍・血圧測定技能教育の問題点を検討するため.〈対象〉4グループ8名の評価者による医学部4年生のOSCE対象学生93名に対する186の評価結果.〈方法〉脈拍測定, 血圧測定, 口頭試問の全15評価項目につき, 各評価者グループの2人の評価者間の評価の差と評価内容の一致回答率を求めた. 一致回答率95%以上と, 95%未満の設問に対し少なくとも1つの評価者グループで学生2人以上に正負双方の不一致評価のある「双方向不一致」, それ以外の「一方向不一致」とに分類した.〈結果〉一致回答率95%以上となったものは,「了承確認」「内容告知」「水銀柱コックの解除」「触診法による推定」と口頭試問の「正常収縮期血圧」と「測定間隔・回数」であった. 一致回答率95%未満のうち一方向不一致は,「言葉遣い」, 脈の「触れ方」,「聴診器の留置」「マンシェットの減圧」「血圧所見の提示」と口頭試問の「絶対性不整脈」であった. 双方向不一致は「脈拍所見の提示」「マンシェットの装着」「マンシェットの加圧」であった. 考察: 評価者間信頼性を高めるためには,(1) 評価は単一のチェック項目による2段階評価のみとすること,(2) 触診法による予測された収縮期血圧の提示,(3) 口頭試問の廃止,(4) マンシェットの種類による適切な装着の指導,(5) 評価基準の明確化と十分な評価者トレーニングが必要と考えられた.
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