高等学校の学習指導要領の変革に伴い, 生命科学分野を学ばずに入学してくる医学生が急増し, 医学教育に支障をきたしている. そこで, 医学部1年生の生命科学教育に, 身近な問題から, 学生の興味を引き起こす「日常生活のサイエンス」という講義を開設し, メディアを活用し学生が主体的に参加する双方向性の新しい教育方法を導入した. 従来の一方向の講議ではすぐに飽き, 私語の多い学生も講義に集中し, ビデオ教材や簡単な実験に意欲的に取り組み, 活発に討論し, 発表した. 学生の学習意欲は高まり, 質問が増えた. 2年生になり放課後, 夏休み, 冬休みなどに教材ビデオや参考図書を活用して学習する学生が, 増加した. 平成12年度, 平成13年度の「日常生活のサイエンス」の成績は, 高校生物の履修の有無の影響は少なかった. 学生の意欲を引き出す教育の試みは, 一定の効果を挙げた.
抄録全体を表示