医学教育
Online ISSN : 2185-0453
Print ISSN : 0386-9644
ISSN-L : 0386-9644
35 巻, 4 号
選択された号の論文の8件中1~8を表示しています
  • Robert F. SABALIS, 椎名 久美子, 石井 秀宗, 柳井 晴夫, 奈良 信雄, 齋藤 宣彦
    2004 年 35 巻 4 号 p. 221-228
    発行日: 2004/08/25
    公開日: 2011/02/07
    ジャーナル フリー
    米国における医師資格取得のための医学教育プログラムとして, 4年制大学教育終了後に入学する125校のメディカルスクール (MS), および, MSの約3分の1に配備されている高校卒業後から開始される医学教育 (PHM) プログラムがある.米国において, 医師の人間関係や患者に対するふるまいに対する失望が頻繁に報告されるようになり, 医学教育関係者は, 医師免許取得志願者に, 医師としての人格的にふさわしく行動する必要性が強調されるようになった. 1984年に, 医師の一般教育と医学部入試のためのプロジェクト報告書 (GPEPレポート) が出版された. このレポートは, MSで学ぶ学生がより活動的な学習, より統合された学習, より患者本位の学習を行う機会に触れることを保証するものであった.この米国の経験に鑑み, 著者は日本における医学教育の改善のために, 4年制大学教育に4年制のMSを上乗せする医学教育の改善を提唱し, それに伴い, MSへの入学試験の改善も提案している.
  • 山口大学医学部における3年間の検討
    福本 陽平, 村上 不二夫, 小早川 節, 小野 咲弥子, 村上 泰昭, 田村 周, 川崎 勝
    2004 年 35 巻 4 号 p. 229-234
    発行日: 2004/08/25
    公開日: 2011/02/07
    ジャーナル フリー
    OSCEの医療面接評価には, 教員と模擬患者の間で多少の差があると思われる. そこで, 過去3年間に山口大学医学部で行った面接評価の成績について, 同時に行われた教員による評価の合計点と態度面の合計点, および模擬患者による合計点を比較検討した. その結果, 教員と模擬患者の評価はよく一致し, 相関性があると考えられた. 一方, 模擬患者の概略的評価が不良であった学生群で行った同様の検討では, この三者についての教員と模擬患者の間の相関は薄く, 教員による態度面の合計点と模擬患者による合計点との間には相関性が認められなかった. そこで, 教員と模擬患者の間には評価の観点に差があると思われ, OSCEにおける模擬患者の評価は重要であると考えられた.
  • 白鳥 さつき, 佐藤 公美子, 比江島 欣慎
    2004 年 35 巻 4 号 p. 235-244
    発行日: 2004/08/25
    公開日: 2011/02/07
    ジャーナル フリー
    本研究は看護学生・医学生の職業適応に関する特徴を把握することを目的とした. 青年期にある学生が職業人としての自己像を捉える際, 自我状態は大きく影響を及ぼすものと考え, 適応状態を「職業レディネス」尺度を用い, 自我状態を「東大式エゴグラム」によって測定し関連を明らかにした. さらに人文学系学生の調査結果との比較から特徴を考察した. 職業レディネスでは看護学生は職業選択を重要な課題と考え, 真剣に取り組んでいる傾向が高く, 医学生では職業を医師と限定して考えている傾向の高いことがわかった. 教育学科生は教師としての自己の適性と能力を客観的に評価している傾向が見られた. 社会学科生では, 現時点で職業を決めている学生は10%未満で, レディネスも低かった. エゴグラムおよび職業・大学選択状況との関連では, 職業を早い時期に決定した学生ほどレディネスが高かった. 職業レディネス高位群のエゴグラムはNurturing Parent (NP) とFree Child (FC) が高いことが特徴で, 低位群ではAdapted Child (AC) が高い傾向が見られた.これらの結果から自我状態が安定してポジティブであるほど職業への成熟度が高いことが示唆された.
  • 心疾患診察ステーションの試み
    出口 寛文, 林 哲也, 寺崎 文生, 浮村 聡, 北浦 泰, 津田 司, 畑尾 正彦
    2004 年 35 巻 4 号 p. 245-253
    発行日: 2004/08/25
    公開日: 2011/02/07
    ジャーナル フリー
    近年, わが国の大学医学部, 医科大学では基本的臨床技能を評価するために客観的臨床能力試験 (OSCE) が広く取り入れられている. われわれは第6回医学教育セミナーとワークショップ (岐阜市) で, 卒業時 (臨床実習後) の学生を評価するための心疾患診察ステーションのトライアルを行った. ステーションは15分間で「心不全を伴う僧帽弁逆流症の患者」を想定し, 医療面接, 身体診察とカセットテープによる心音・心雑音の聴診を課した. 評価は3人の評価者で行った. 医療面接の平均点は22.3±4.0点 (34点満点), 身体診察と聴診の平均点は15.2±2.9点 (22点満点) であった. 各評価項目ごとの一致度をスコア化し, 評価者間の一致度を検討した. 一致度を示すkappa係数は医療面接では0.596~0.697, 身体診察では0.653~0.736といずれも良好な一致が認められた. 参加型臨床実習では知識, 技能, 態度のみならず, 解釈や問題解決までの能力が要求される. 実習後の評価ではこれらのすべての要素が検討できるOSCEが望ましい. ステーションの後半部分に診療録記載や治療計画を問うなどの設問を加えれば, 解釈や問題解決までのレベルも評価できる. 今回試行した心疾患診察のステーションは医学部卒業時のOSCE (Advanced OSCE) の1つのあり方を示すものと考えられる.
  • 学生が主体的に参加する双方向性の教育
    熊谷 晶子, HIROSE KUMAGAI, Sachie ODA, 玉井 幸恵, 礒橋 文秀
    2004 年 35 巻 4 号 p. 259-264
    発行日: 2004/08/25
    公開日: 2011/02/07
    ジャーナル フリー
    高等学校の学習指導要領の変革に伴い, 生命科学分野を学ばずに入学してくる医学生が急増し, 医学教育に支障をきたしている. そこで, 医学部1年生の生命科学教育に, 身近な問題から, 学生の興味を引き起こす「日常生活のサイエンス」という講義を開設し, メディアを活用し学生が主体的に参加する双方向性の新しい教育方法を導入した. 従来の一方向の講議ではすぐに飽き, 私語の多い学生も講義に集中し, ビデオ教材や簡単な実験に意欲的に取り組み, 活発に討論し, 発表した. 学生の学習意欲は高まり, 質問が増えた. 2年生になり放課後, 夏休み, 冬休みなどに教材ビデオや参考図書を活用して学習する学生が, 増加した. 平成12年度, 平成13年度の「日常生活のサイエンス」の成績は, 高校生物の履修の有無の影響は少なかった. 学生の意欲を引き出す教育の試みは, 一定の効果を挙げた.
  • 医局員の意識調査から
    岡田 一義, 斎藤 穎, 松本 紘一, 上松瀬 勝男
    2004 年 35 巻 4 号 p. 265-271
    発行日: 2004/08/25
    公開日: 2011/02/07
    ジャーナル フリー
    医局員を対象に卒後生命倫理教育についての意識調査を行った. 約90%の医師は, 生命倫理教育の重要性を認識していたが, 研修医へ生命倫理教育を施行したことがなく, 過去2年間に生命倫理に関する本を読んでいないと回答した. 約80%の医師は, 討論形式により研修医の生命倫理および死生観についての認識を確認することは必要であるが, 生命倫理観を深めるために研修医および医局員に読書とレポート提出を義務づけることは不必要であると回答した. 自分自身の生命倫理観をさらに向上させる意欲が薄れている医局員が多く, 研修医だけではなく, 医局員への卒後生命倫理教育も必要であることが明らかとなった.
  • 田中 雄二郎, 森尾 友宏, 増田 美香子, 伊藤 康太, 鎮西 亮子
    2004 年 35 巻 4 号 p. 273-279
    発行日: 2004/08/25
    公開日: 2011/02/07
    ジャーナル フリー
    臨床実習導入を目的とした, 小グループ (約9人) のローテーション (9コース各2週間) からなる総合診断実習において, 学生全員による教官評価を行った. すなわち, 平成13年度実習に参加した医学科5年生82名が, 担当した教官全員を評価した. 実習終了ごとに7項目につきおのおの5段階の評価をマークシートへ記入した. 出欠票も兼ねたため実習出席者からの回収率は100%であり, 重回帰分析により指導技術, 実習内容, 難易度の順に総合評価に与える影響が大であることが明らかとなった. 他方, シラバスの活用については有意な相関が認められなかった. 以上のように改善に向けて具体的な方向が明らかとなり学生による教官評価の有用性が示された.
  • 宮下 次廣, 志村 俊郎, 足立 好司, 荒牧 琢己, 清水 一雄, 檀 和夫
    2004 年 35 巻 4 号 p. 281-285
    発行日: 2004/08/25
    公開日: 2011/02/07
    ジャーナル フリー
    本医科大学の第6学年で行われている25科目の講座別卒業試験 (講座卒試) と綜合試験を医師国家試験 (国試) と比較し総括的評価の手段としての有用性を検討した. 2002年度第6学年93名のうち, 卒業後に国試成績を大学に報告してきた58名を対象に, 第1学年から第5学年までの進級試験 (進級試験), 講座卒試, 国試模擬試験 (業者模試) そして綜合試験の成績を国試の成績と比較した. 国試成績と進級試験, 講座卒試, 業者模試, 綜合試験の各試験成績間の相関係数はそれぞれ0.62, 0.46, 0.68, 0.63であった. 綜合試験は総合能力を評価する方法として有用であろう. 一方, 講座卒試はほかの試験と比べ国試成績の予測能はやや劣るかもしれない.
feedback
Top