医学教育
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36 巻, 3 号
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  • 入学後1年修了段階での追跡調査結果
    八木 文雄, 倉本 秋, 大塚 智子, 奥谷 文乃, 三木 洋一郎, 上原 良雄
    2005 年 36 巻 3 号 p. 141-152
    発行日: 2005/06/25
    公開日: 2011/02/07
    ジャーナル フリー
    問題解決型学習への取り組み, 医療スタッフや患者さんとの円滑なコミュニケーションなどをはじめとして, 医学生に要求される態度・習慣領域の課題は多い. また一方では, 入学後における態度・習慣領域の教育には大きな限界があることは, 医学教育に携わる誰もが認識していると思われる. 高知大学医学部では, 入学前の成育歴において長期間を要して培われた, 態度・習慣領域の能力を入学者選抜時に評価することを主眼として, 平成15年度から一部の入学定員についてAO (態度評価) 方式を導入した. 現在, その入学者が1年次を修了した段階であるが, この方式による入学者選抜が良好な結果をもたらしていることが, 1年次履修全科目を対象とした入学後の追跡調査において検証された.
  • 判例からの分析
    前田 まゆみ
    2005 年 36 巻 3 号 p. 153-157
    発行日: 2005/06/25
    公開日: 2011/02/07
    ジャーナル フリー
    本稿では, 医療過誤訴訟で争点となることが多く, 事実認定において重要な役割をはたす診療録について調査・考察を試みた. 現在まで, 診療録が争点となった判例を対象に, 診療録をめぐる問題点の整理や具体的改善策を研究した報告はされていない. そこで, 訴訟上争点となった診療録の基本的事項に判例を対応させ, 診療録の法的位置づけ (役割) や所有権の所在 (持主) を考察した. 特に所有権については, 理想と現実がかけはなれているといえた. 私見では, 診療録は患者に所有権があり, 病院に管理する義務が課され, 医師にはその使用と記録の義務があると考える. したがって, 診療録は医療サイドと患者の共有物だと考えることもできよう. 本研究の判例分析からは, 訴訟回避のポイントも探ることができた.
  • 効果的な問題基盤型学習のために
    藤原 哲也, 横山 和仁, 津田 司
    2005 年 36 巻 3 号 p. 163-166
    発行日: 2005/06/25
    公開日: 2011/02/07
    ジャーナル フリー
    医学生の全人格的な教育の実現に向けて, 医学教育の質的向上への期待が高まっている. こうした背景をふまえ, ほかの教育機関の新しい教育システムを考察することは意義がある. 米国アイオワ大学 (The University of Iowa) のディスカッション・クラスで援用されている教育技術は, 医学部で実施されている問題基盤型学習をはじめとする医学教育全体の質的向上に効果的であろう. また, 学生と教員の相互的なコミュニケーションを重視した同大学の教育システムは, 将来医療に従事する医学生が患者への温かみのある対応を学ぶ一助になるものと期待される. このような, 包括的で応用範囲が広い教育システムは, 今後, 医学部がもつ優れた人材養成教育の使命を遂行する上で参考になるものと考えられる.
  • 相馬 仁, 宮本 篤, 加納 英雄, 今井 浩三, 神保 孝一
    2005 年 36 巻 3 号 p. 167-171
    発行日: 2005/06/25
    公開日: 2011/02/07
    ジャーナル フリー
    教員の業績評価の一環として, 平成13年度より学生からの科目別講義企画評価が10設問で実施されている. 各設問の評価は5段階で行い, 平成13年度および14年度の結果を比較し検討した. 平成14年度の評価結果の全平均は, 13年度に比べて0.15ポイントの増加が認められた. 全体を一般教育系科目, 基礎医学系科目, 臨床医学系科目の3系統に分けて平均点を比較すると, 一般教育科目と臨床医学系科目ではそれぞれ0.18, 0.27ポイントの増加であったが, 基礎医学系科目では, 0.03ポイントの増加であった. 評価結果が考慮され, 改善に向けた取組があったものと推察できる. 試験に関する設問を除く8種の設問それぞれの評点の標準偏差は, 一般教育科目と基礎医学系科目では, ほぼ同じような値を示したのに対し, 臨床医学系科目ではばらつきがほかに比べて小さかった. 今後, 追跡調査を行い, この評価をより有用なものにしていきたいと考えている.
  • 増田 康治, 吉田 素文
    2005 年 36 巻 3 号 p. 173-176
    発行日: 2005/06/25
    公開日: 2011/02/07
    ジャーナル フリー
    医学部学生に対する「緩和医療」に関する教育内容を改善するための1つの方法として, 「ターミナルケア」受講後10年を経た医師を対象に, 緩和医療教育の必要性, 講義時間数や内容などについてのアンケート調査をし, その内容を分析した. 2学年の卒業生247名のうち, 有効回答は56名で, 有効回答率は23%であった. 臨床医は, 全員何らかの形で, それまでに緩和医療に携っていた. 学生時代の緩和医療に関するカリキュラムの必要性は全員が認めていた. 自分たちが受けた学生時代の講義内容については, 大半が有意義であったと回答した. 資料や話題を提供して学生に緩和医療について考えさせるという基本方針には, 修正意見もみられたが賛意を表するものが最も多かった. 内容についても同様に, 修正意見もみられたが, 現行でよいとの意見が最も多かった. 時期は臨床講義が一通り終わった後の臨床実習の前あるいは後, 時間数は10~20時間程度とする意見が比較的に多かった. 実習については大半がその必要性を認めていた. しかし, 緩和医療は各診療科で日常診療の一部としては行っているとはいえ, 専用病棟もなく, 専門の診療科もないという九州大学の現状からすると, 大学での実習実現については否定的であった. また, 仮想実習についてはリアリティーに欠けるなどの理由から否定的であった.
  • 模擬診療場面ビデオの作成と内容妥当性の評価
    谷山 牧, 甲斐 一郎, 高橋 都
    2005 年 36 巻 3 号 p. 177-183
    発行日: 2005/06/25
    公開日: 2011/02/07
    ジャーナル フリー
    微笑み, うなずき, 視線, 姿勢, 身体の向き, 声のトーンといった医師の非言語行動の違いが, 患者が医師に対して抱く印象にどのような影響を与えるのかを検討するために, 上気道炎のため受診するという診療場面において, 医師が異なる非言語行動を示す2種類のビデオを作成した. ビデオに出演した医師が表現する非言語行動の内容妥当性を検討するために, それぞれのビデオに含まれる非言語行動の頻度と持続時間の測定を行い, 各非言語行動に対する観察者の認知に差があるかについて, 看護短大1年女子学生66名を対象とした質問紙調査によって把握した. 結果, それぞれのビデオに含めた非言語行動は想定の通りに認知され, 医師に対する印象もビデオ間で差異があり, 医師が表現する非言語行動の内容妥当性が確認された. 今回作成したビデオは患者調査や医学教育に活用できる可能性が示唆された.
  • 平川 仁尚, 益田 雄一郎, 植村 和正, 葛谷 雅文, 木股 貴哉, 井口 昭久
    2005 年 36 巻 3 号 p. 187-192
    発行日: 2005/06/25
    公開日: 2011/02/07
    ジャーナル フリー
    癌告知および脳死・臓器移植に関する医学生の意識を明らかにするため, 2001~2003年までの3年間にわたって, 名古屋大学医学部5年生を対象にアンケート調査を行った. この2つの問題に関して, 3年間で学生の間に大きな意識の変化はみられなかった. 癌告知に関して, 肯定的に考えている学生が多かったが, 家族への告知には慎重であった. 脳死・臓器移植に関して, 学生の関心は高いとはいえなかった. また, ドナーカードの所持率は30%以下であった. わが国の学生の意識は, 欧米の学生のそれとは異なる可能性がある. わが国の実情に合った癌告知および脳死・臓器移植に関する教育が行われるべきであろう.
  • 担任制とローテーション制との比較
    前田 光一, 藤本 眞一, 團野 大介, 水野 麗子, 神野 正敏, 松村 雅彦, 藤本 隆, 中村 忍
    2005 年 36 巻 3 号 p. 193-198
    発行日: 2005/06/25
    公開日: 2011/02/07
    ジャーナル フリー
    臨床実習開始前の基本的臨床技能教育における実習方法として, 神経系および外科系以外の領域において1人の教員が全体の分野を通して教える担任制と, 診療部門別に分担して教えるローテーション制との2システムについて, 学生および教員に対するアンケート調査を行い比較検討した. 学生からの回答では両システムとも実習に対する感想は良好であり, 担任制は教員とのコミュニケーションが取りやすい点が良く, ローテーション制は多くの教員から専門的教育が受けられる点が良いとの意見が多かった. しかし, いずれのシステムにおいても指導内容の不一致を指摘する意見が多かった. 教員からは担任制は全体を一貫して教えられる点が, ローテーション制は専門領域のため教えやすい点がそれぞれの良い点として挙げられた. 今回の調査から教員・学生間の良好なコミュニケーションの構築と指導内容の充実が実習を行う上で重要と考えられ, またシステムにかかわらず指導内容を統一することの困難さが明らかとなった. 基本的臨床技能の教育法についての国内で報告は少なく, この分野の研究がさらに必要と考えられた.
  • 性別, 現役と高校卒業後1年以上経た者, 入試での生物選択で比較して
    宮本 学, 西村 保一郎, 鏡山 博行
    2005 年 36 巻 3 号 p. 199-204
    発行日: 2005/06/25
    公開日: 2011/02/07
    ジャーナル フリー
    大学をストレートに卒業すること, 医師国家試験に1回目の受験で合格することの2つを医学教育課程が順調であったことの判断の指標として, 大阪医科大学に平成3年から平成9年までに入学した715名について, 性別, 入学までの期間 (現役・高校卒業後1年以上経た者) に分けて, 医学教育課程の順調さを比較した. 医学教育課程が順調であった者の比率 (あるいは1回目で国家試験に合格した者の比率) は現役の方が高校卒業後1年以上経た者よりも高かった. さらに性別で見ると女性では現役・高校卒業後1年以上経た者の差がなかったが, 男性では現役の方が高校卒業後1年以上経た者よりも高い比率を示した. 次に, 入試の理科における生物学の選択群・非選択群の両群の間に医学教育課程の順調さに差があるかどうかを解析したが, 差はほとんど見られなかった. 生物学を入試科目として選択していなくても, 医学教育課程に支障はないという結論となった. ただし, 女性の現役に限定すると, 生物選択群の方が非選択群よりも医学教育課程がより順調であった.
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