近年, 医療者と患者・社会の関わりに大きな変化がみられるようになり, 欧米では “医師憲章” が作成され医療におけるプロフェッショナリズムの議論が盛んになりつつある. “医師憲章” に関する日本と米国医師の意識の差を明らかにすることで, “医師憲章”を日本のプロフェッショナリズム議論に適用することが可能かどうかを検証する.
1)“医師憲章” にある10の責務に対する意識を探る質問票を作成し, 2006年2月と4月に日米の総合診療科医師それぞれ661名, 50名に配布し回収した.
2) 憲章の内容を理解している者は日米医師とも約30%で, 憲章は未だ医師全体に浸透しているとは言えなかった.また両者とも約60%が憲章はどの国にも適用可能と考えていた.
3) ほとんどの責務について米国医師の方が, 緊急性が高いと考える者, 実際にその事例に遭遇している者の割合が多く, 一部の責務については日米医師の問で緊急性に明らかな意識の差が認められた.また, 日本人医師群の中で年代間における優位な意識の差がみられた.
4) 本邦医師が遭遇した具体的なプロフェッショナリズム事例は多岐にわたっていた.
5) “医師憲章” は本邦でも適用可能と思われたが, 一部の責務に関する意識は本邦と米国医師で異なっており, 本邦の医療のコンテクストに合わせて “医師憲章” を適用する必要があると思われる.
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