地域医療を取り巻く環境が大きく変化する中で, 地域医療にかかわる卒前医学教育の充実が求められている. その中で, 各大学において地域医療現場での臨床実習の導入が進んでいるが, 効果的な実習内容が求められている. そこで, 我々は, 地域医療現場での臨床実習に対する学生の感想と全般評価への実習施設や実習項目の影響を調査した.
1) 地域医療臨床実習を履修した医学部5年生499人を対象に自己記入式質問紙調査を行った. 主な調査項目は, 実習施設実習項目, 実習の感想, 実習の全般評価で, これらの関連を解析した.
2) 解析対象は96.8%であった. 実習の感想と全般評価のVisual Analogue Scaleスコアは, 実習施設では診療所のみが最も高かったが, 統計学的有意ではなかった.
3) 健康教育・患者教育は, 「実習が楽しかったj」, 「教員の熱意を感じた」, 「教員と接する時間が多かった」が有意に高かった. 逆に, 病棟診療は, 「実習が楽しかった」が有意に低く, 「実習が必要である」が低い傾向を示した.
4) 実習を行った項目数 (全11項目) では, 8項目以上に実習できた群に比べて4項目以下しか実習しなかった群では「教員の熱意を感じた」が有意に低かった. また, 5-7項目実習群に比べて4項目以下の実習しか経験していない実習群では, 「実習は意義があった」が低い傾向を示した.
5) 実習項目数が少ない場合は, 地域医療臨床実習の効果が上がらない可能性がある. また, 健康教育・患者教育の実施は実習の効果を高め, 逆に病棟診療はその効果を下げることが示唆される.
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