医学教育
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40 巻, 2 号
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原著-探索的研究
  • 宮田 靖志
    2009 年 40 巻 2 号 p. 95-104
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/08/06
    ジャーナル フリー
    医師と製薬会社との関係はしばしば社会問題となってきた.近年,医学教育においてプロフェッショナリズムに関する教育の重要性が認識されつつあり,製薬会社との適切な関係を保つことの重要性が指摘されている.本研究は,現在,医師が製薬会社からの利益供与に対してどのように行動しているかを把握することを目的とした.
    1) 医師を対象とした民間の調査会社に登録している医師1200人を無作為に抽出し,インターネットを用いてアンケート調査を実施した.
    2) ボールペン,メモ帳はほとんどの医師が受け取っており,診療ガイドライン,弁当,懇親会出席,タクシーチケットは多くの医師が受け取っていた.
    3) 卒後年数が経過した医師・診療所の医師の方が提供を受けやすい傾向があり,研究会出席の費用負担は公立病院・大学病院勤務医師が利益供与を受けていた.
    4)多くの医師が製薬会社から利益供与を受けており,卒後年数・勤務先によりその頻度が異なっていた.
    5)医師と製薬会社との適切な関係についての教育方法を議論する上で,本研究結果は有用な基礎資料となると思われる.
  • 三品 浩基, 横山 葉子, 川上 浩司, 福原 俊一
    2009 年 40 巻 2 号 p. 105-112
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/08/06
    ジャーナル フリー
    【背景】わが国の臨床研究者の不足は深刻であり,臨床研究を実施できる臨床医の育成は医学教育の重要課題である.臨床研究基盤整備を目的とした臨床研究者養成のための教育が始められつつあるが,臨床研究の中心的役割を担うべき臨床医の臨床研究実施への関心度および教育へのニーズはこれまで明らかにされていない.
    1) 臨床研究の実施および教育に対する臨床医の関心度を調査することを目的とし,インターネット上での横断的アンケート調査を行った.
    2) 30歳以上45歳未満の臨床医2176人に調査依頼メールを送付し310人(回答割合14.6%)より回答を得た.回答者のうち臨床研究実施に関心をもつ臨床医は85%,教育の受講希望者は78%であった.
    3) 教育は臨床研修修了後に教育セミナーや研修の受講生として受講したいとの意見が多く,ある程度の臨床経験を得た後,臨床医の仕事を中断することなく学べる教育環境が望まれている.
    4) 学位(博士)取得希望者に教育の受講希望が多い(90%)傾向であったが,学位取得に興味がない医師の受講希望も76%と多く,また既に学位がある医師の受講希望も74%と多かった.
    5) 臨床研究の教育は大学院教育を軸に,学位取得希望が無い臨床医にも教育プログラムが柔軟に提供される教育システムが臨床医にとって望ましいと考える.
Opinion
報告
  • 松井 健志, 金川 里佳, 児玉 聡, 赤林 朗
    2009 年 40 巻 2 号 p. 117-122
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/08/06
    ジャーナル フリー
    近年,公衆衛生に関する様々な倫理的課題が生じる中,英米を中心に,「公衆衛生の倫理(public health ethics)」に関する教育実践が重視され,研究が進んでいる.しかし,わが国ではこれまで,教育実践の実態や必要教育カリキュラムに関する研究は行われてきていない.そこで,全国の医育機関を対象に調査研究を実施した.
    1) 医学部・医科大学及び国立保健医療科学院を含む全国81医育機関のうち,全国医育機関衛生学・公衆衛生学教育担当者名簿に登録された201講座の長を対象に自記式質問票調査を実施した.
    2) 公衆衛生の倫理に関する教育の実態(授業時間割合など),及び,公衆衛生の倫理教育として扱うべきテーマをはじめとする教育カリキュラムのあり方に関する意識について尋ねた.
    3) 有効回答101講座のうち,60.4%が担当授業の中で倫理教育を行っていたが,倫理教育への現在の充当時間割合は8.0%であり,望ましいと考える時間割合(8.8%)よりも少なかった.
    4) 公衆衛生の倫理に関する科目の履修必修化については肯定的な意見が大半であり,公衆衛生政策と関連したテーマおよび医学研究の倫理に関するテーマに対する教育ニーズが高かった.
    5) 公衆衛生の倫理に関して,現状における教育実践の不備,及び,専門的かつ体系的教育の必要性・重要性が示された.また,今後の必要教育カリキュラムについて,一定の方向性が示された.
  • 後藤 道子, 津田 司, 横谷 省治, 竹村 洋典, 佐川 典正, 新保 秀人
    2009 年 40 巻 2 号 p. 123-127
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/08/06
    ジャーナル フリー
    1) 学生は白衣授与式に参加して,医療専門職の卵として受け入れられ,医学部というコミュニティーの仲間入りが出来たと60%が回答し,86%が将来患者さんの治療をするときには真摯に取り組まねばならないと思いはじめたと回答した.
    2) 白衣授与式は,学生に医師になるという意識を芽生えさせ,臨床実習に当たって心構えを新たにする機会を与えた.また,学生と教員との距離が縮まるという効果をもたらした.
    3)白衣授与式は学生のプロフェッショナリズム教育としての効果が高いので今後も継続して行って行きたい.
  • 阿部 恵子, 奥野 友香
    2009 年 40 巻 2 号 p. 129-131
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/08/06
    ジャーナル フリー
    1) 2008年の模擬患者教育者学会(ASPE)年次大会に参加した.
    2) 今年度よりASPE国際委員会がより国際化を目指し,参加国の増大を期待し,各国の研究者・教育者の参加を呼びかけている.
    3) 今年の動向として,チームコミュニケーション教育,シミュレーションとSP合体の複合型プログラムが更に進化し,高度になっていた.
  • 小野 咲弥子, 浜田 久之
    2009 年 40 巻 2 号 p. 133-136
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/08/06
    ジャーナル フリー
    1)新医師臨床研修制度開始後の当院でのマッチ率低下を機に,臨床研修システムの改善を行うこととした.
    2) 臨床研修管理委員会の再編,およびLeadership理論を用いた組織改革を行った.研修に対する問題の抽出,解決に教育のトライアングル,教育の循環モデルという教育理論を用いた.
    3) 委員会運営が改善され,問題点を個別化し迅速に解決することができるようになり,病院の教育システムが大きく改善された.
  • 櫻井 晃洋, 古庄 知己, 伊藤 寿満子, 加藤 祐美子, 松本 あつ子, 丸山 ひさみ, 福嶋 義光, 多田 剛, 相澤 徹
    2009 年 40 巻 2 号 p. 141-145
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/08/06
    ジャーナル フリー
    1) 信州大学医学部医学科では,平成16年度から3年次生に対して日勤帯および夜勤帯の看護業務を体験する集中実習(含事前講義,事前レポート,実習,実習後レポート,報告会)を開始した.
    2) 実習終了直後の学生へのアンケート調査では,全員が実習内容に満足もしくはほぼ満足と回答し,指導層の看護師からも,将来の良好なチーム医療の担い手を養成する意義を認める意見が多かった.
    3) 夜間の安全管理体制確保や患者急変時の学生実習のあり方,指導にあたる看護師の業務負担増による病院機能への影響などは,今後検討と改善を要する.
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