背景 : わが国では心肺停止状態を含む重症の高齢患者が救急外来に来院した場合, 来院後まもなく人工呼吸器装着などの積極的治療の適否を決めざるをえないことがある. この問題を初期研修医がどう認識しているかを探索的に調査し, より効果的な研修方法を提案する.
方法 : 初期研修修了時の研修医に対し半構造化インタビューを行い, 質的解析を行った.
結果 : 研修医は患者家族に指導医が行う面談をもとに<医師が決める面談>または<中立的な面談>のいずれかを好むようになる傾向がみられ, 面談の見学が与える影響が大きいことが示唆された.
考察 : 指導医は研修医が救急外来で治療方針に関する面談を見学する機会を積極的に設けるべきである.
目的 : SimTikiシミュレーションセンターの日本人対象国際的シミュレーション指導者養成コース (Fundamental Simulation Instructional Method : FunSim) のアウトカムと日本人参加者にとってのシミュレーション教育導入の障壁を明らかにする.
方法 : 73項目から構成されるウェブベースのアンケート調査. 教育効果の評価にはKirkpatrickモデルを用いた. レベル1 (反応) とレベル2 (コンピテンシー, 学習) の質問では7段階Likert scaleを用い, レベル3 (行動変容) の質問では4つの「はい」または「いいえ」で答える質問を用いた. 障壁については, 12項目を5段階Likert scaleで評価した.
結果 : 283人中, 178人 (63%) が回答. 受講言語は英語47.8%, 日本語57.3%であり, 「言語障壁があった」と回答した人数に両群間で有意差は認めなった. レベル1 (コースへの反応) では, 「内容は役に立ったか」を問う質問に対して88%が7段階中5以上と回答し, レベル2 (自信とコンピテンシー) を問う質問では, 「受講直後」よりも「現在 (アンケート調査時) 」において有意に低下した (P<0.05) . レベル3 (行動変容) を問う質問では, 受講前後のシミュレーション教育活動を行っている人数は68人から112人へ有意に増加した (P<0.001) . シミュレーション教育導入の障壁は「施設・専用の部屋」に比較して, 「シミュレーションスペシャリストの確保」, 「指導, 指導者育成のための時間確保」, 「十分な指導教育を受けた指導者数」, 「施設内での指導者育成」, 「自分自身の指導技術」において有意にスコアが高かった.
考察 : FunSim受講者のコースに対する反応は概ね良好であった. 受講時の言語障壁は明らかではなかった. 受講者の施設でのシミュレーション教育導入の障壁に関して, 多くの受講者は人的要因が問題であると回答した. 仕事量軽減や適切な人材確保など, 組織全体を巻き込んだシステム構築が今後の課題である.
地域医療への志向性や診療科選択について地域枠学生と一般枠学生の比較をした意識調査は少ない. 本研究は岐阜大学医学部医学科の1〜5年生を対象に, 将来働きたい勤務地や医療機関, 希望する診療科, 地域医療のイメージに関する質問紙調査を行った. 欠損値のない回答者335名 (地域枠 : 一般枠=81 : 254) を分析対象にした. 一般枠学生に比べて地域枠学生は, 都市部より地方の中核・小規模病院での勤務を希望し, 小児科のようなプライマリ・ケアの要素が強い診療科を希望した. また, 学年を通して地域医療にポジティブなイメージを抱いていた. 今後は, 卒後, 地域枠学生が実際にどのように地域医療に従事していくのか追跡する必要がある.
プライマリ・ケアの基本的な診療能力を修得するには外来研修を行うことが必要と考えられる. しかし外来研修の実態は明らかにされていない. 全国大学病院の初期研修医の総合診療の外来研修に関する調査を行った.
全国の大学医学部付属病院 (本院) 80施設を対象に, 初期研修医の外来研修について質問紙調査を行い, 39施設から回答を得た. 初期研修医の外来研修を行っている病院は34施設あり, そのうち, 診療時間内の外来研修を行っているのは26施設であった. 関連病院との "たすき掛け" で外来研修を補完している施設もみられた. 問題点として頻度の高い疾患の患者が少ないことを, 今後の課題に地域との連携を挙げる施設が多く見られた.
カナダは広大な国土ゆえにへき地や遠隔地が多い. このような地域を支える医師の育成がNorthern Ontario School of Medicine (NOSM) で2005年から開始された. 4年間の医学部カリキュラムのうち1, 2年次には4週間のへき地のコミュニティー滞在実習が2回実施され, 3年次は8ヶ月間の地域の医療機関に滞在しての臨床実習を行う. このように学外での実習が大幅に取り入れられている. また, 入試でも面接などで地域指向性の高い者を優先して選抜している. その結果, 卒業生の約70%が北部オンタリオに残り勤務をしている. 教育体制の整備により地域の医療機関での学びと人材育成の可能性を感じた.
福間病院で長期臨床実習を行った作業療法学生11名を対象に, 当院で提示している課題が学生の教育にもたらす効果について調査した. 結果は, 知識面では過去の国家試験問題を再編成し利用したところ, 実習の前後で有意差はみられなかった. 技能面ではLASMIの「対人関係」と「労働または課題の遂行」の項目を利用し, 「対人関係」では有意差 (p<0.01) が認められ, 「労働または課題の遂行」では改善の傾向がみられた (p<0.10) . 態度面ではATDPを利用し, 山本らが抽出した3因子について比較した結果, 第2因子「能力の否定」について否定的な態度への変化に傾向がみられた (p<0.10) . 今回の結果から当院で提示した課題がどの程度影響を与えたかについて考察し, 今後の臨床実習についていくつかの提言をした.
医学生, 初期研修医やプライマリ・ケア医の学習目標の指針である, 医学教育モデル・コア・カリキュラムや卒後臨床研修制度における臨床研修の到達目標, 日本プライマリ・ケア連合学会基本研修ハンドブックにおいて眼底診察の必要性が述べられているが, 眼底診察に比べると前眼部診察を行う機会が多く, 非眼科医の眼科診療における学習目標として眼底診察よりも, 角膜, 結膜, 水晶体, 眼瞼を診察する前眼部診察をより重視する必要があると考える.
臨床研修病院は, 優れた指導医, 充実したプログラムや指導・評価のシステムおよび整備された研修環境が求められる. 社会医療法人宏潤会大同病院では, 優れた臨床研修指導医を育成するために, 第1回大同病院臨床研修指導医講習会を単独で開催した.
同年12月12日には卒後臨床研修評価機構を受審し, 研修病院として更なる改善の機会を得た. 平成27年3月7日には大同病院単独でOSCEを開催し, 臨床研修指導医, 指導者が臨床評価・指導に必要な能力の習得ができた. 大同病院が優れた臨床研修病院になるための努力, 「優れた指導医の養成, 研修環境の充実・整備への改善, 研修医が習得した臨床能力の評価」を, 継続して行っている.
背景 : eポートフォリオ (ePF) の医学教育での重要性が高まっている.
方法 : 全国医学部の医学教育ユニットに調査を依頼し, webフォームで回答を得た.
結果 : 回答のあった70大学のうち, ポートフォリオ導入は紙媒体が16, 電子媒体が14, 両者が8, 未導入が32大学であった. Mahara, manaba folio, WebClassが多く, 臨床実習などで導入されていた. ePFは, タイミングのよいフィードバックができ, データの保存性がよい. 一方で, 教員や管理者の負担, インフラ整備などの問題がある. 医学教育に適したePFシステムがない.
考察 : 医学教育で共通して使えるePF環境を構築することが望まれる.