背景 : 臨床工学技士養成校の学生にユーザビリティ (製品の使いやすさ) 評価演習を行い, その妥当性を検証した.
方法 : ユーザビリティの評価観点 (知覚, 認知, 行動, フィードバック) を講義後, 学生に家電製品を評価させ, 自由記述で記録させた. 演習の妥当性検証では 59 名の記述を評価観点で分類した.
結果 : 学生は平均3.2個の評価観点を用い, ユーザビリティについて平均5.6個の評価をした. 評価観点のうち認知 (情報の分かりやすさ等) の評価数が平均2.2個と最も多かった.
考察 : 学生は多様な観点で家電製品を評価できた. 使い慣れた製品では発見が難しいとされる認知的問題を学生は複数発見でき, 本演習は妥当だったと思われる.
我々はグミを用いた結紮トレーナー (KTG) を開発し, 技術評価によりノットボードとの比較実験を行った. 当院に在籍する修練医 (外科専攻医・初期研修医) 18人, 熟練医 (外科専門医) 18人を対象とし結紮の所要時間を計測した. 結紮技術の評価は過去に報告された計算式を用いて算出した (Scott DJ. J Surg Res. 2007). ノットボードでは修練医27.1±22.6点, 熟練医37.3±18.7点で両群に有意差がなく, KTGでは修練医12.3±20.6点, 熟練医36.7±18.3点で両群に有意差を認めた (p<0.001). KTGでは熟達度に応じた技術評価が可能で, 練習により技術向上が期待される.
背景 : 長崎大学医学部 (医, 保健) と長崎純心大学 (福祉系) の共修授業を実施し, 授業目標の学習成果と授業形態との関連を検討する.
方法 : 授業目標の自己評価を測定し, 対面とオンラインの授業形態が異なる2年間で授業期間内の変化を検討した.
結果 : 医療と福祉の視点の評価は授業形態に関わらず統計的に有意に上昇したが, 各学科生に対する同じ視点は対面授業の方が多くの項目でプラスの変化が見られた.
考察 : オンラインでも医療と福祉のIPEに関する一定の成果が得られたと考えられた. また, 授業形態で異なる変化を示した項目はグループの相互理解の違いが考えられた. 今後, 効果的な共修授業に向けて長期的な検証の必要性が示唆された.
日本の社会が人口減少時代に入り, 患者・社会が求めているニーズの中には, たとえ病気を治すことができなかったとしても, "人生の最期まで伴走してくれる医師の存在" がある. 苦しむ人への援助には, 相手が誰であったとしても関わり方として共通する点は, 解決できる苦しみを解決すること, 解決が難しい苦しみでも, わかってくれる誰かの存在が必要であり, 穏やかになれる理由 (支え) を見いだすことを支援する存在である. 看取りの現場で整理され, 発展した対人援助 (スピリチュアルケア) の概念は, プロフェッショナリズムの実践の一つとして, 医学教育で扱われるべき内容であると考えられる.
高度複雑化しつつもより広い視点を求められるこれからの医療のニーズに応える医療者教育には, 臨床推論のような自然科学的思考に基づく実証主義重視の教育だけでは不十分であり, 生物心理社会モデルなどの患者の生活世界での経験とその意味を捉えようとする現象学的な視点に基づく教育が重要となる. 臨床実習前の医学部4年生を対象とした臨床推論の授業に, 構造化された事例検討を通じて, 臨床推論と生物心理社会モデルなどを同時に学ぶことができるオンライン授業を開発した. 実証主義的視点と現象学的視点を学び, 患者を生活者としてもみれるようになるため, 同一事例を通じて複眼的に学習できる本授業モデルの普及が期待される.