水晶体 (crystalline lens) は眼内マトリックスにおける唯一の細胞集合体であり, その機能は屈折性と翻性の維持にある. そして丸ごとの水晶体 (whole lens) ばまhomogeneityの性状を常に保持して, 外界の像を網膜面に結像させる.
一方, この細胞集合体は周辺でカプセルで被覆されており, 決して細胞を脱落せず一生その内部に閉じ込めている器官である. しかも同一細胞の寄り合い世帯ではなく, 形も代謝活性もそして老化度も異なる細胞たちの寄せ木があって, 完全にheterogcneityなものである.
このhomogeneityとheterogeneityの両方を矛盾なく結びつけているのが, 水晶体を構成する細胞の膜である. つまり膜を介して水晶体は, 細胞レベルから細胞集団の器官レベルへと連結しhomogeneityの性質を発揮する.
透明性が失なわれた現象を臨床的には白内障 (cataract) とよんでいるが, これは眼内環境における独立器官としての水晶体の白濁現象である.白濁化に対して他からのaffectはあっても, 白濁水晶体から他の組織へのa旋ctはない. すなわち, 白内障はその器官だけの孤独な病気である.
ここでは, 主として丸ごとの水晶体の透明性維持に関する膜の役割と, 膜を介しての非生理的透過現象がどうして白内障に結び付くのかを述べ, 細胞集団の水晶体の特性をさらに探索しようとしたものである.
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