増改築が行われて新年度より使用が始まった大学のキャンパス環境について在学生がどのような主観的認識を持っているのかを定性的に捉えるべく,3・4年生の学生を中心に半構成的インタビューによる聞き取りを行った。主な質問項目としてキャンパスの特徴・全般的印象・評価,好きな場所・嫌いな場所,大学の持つ意味・役割,大学への希望・不満,新しい施設について,などであった。インタビュー内容を定性的分析した結果,(1)大学との関係性,(2)教員に関する認識,(3)環境変化について,(4)他者との関係性,(5)自分自身の特徴,(6)キャンパス環境の評価,(7)他大学と比較して,という7つのカテゴリーにまとめることができた。キャンパス環境認識の全体的構造としてはカテゴリー(3)・(4)・(5)が基軸となって(1)と(6)を規定していることがわかった。この結果を踏まえて示唆されるのは,学生によるキャンパス環境の認識は,学年進行による時間的変化という特性と,キャンパスに展開する物理的・社会的・文化的環境の諸側面の総合化という特性の両方が絡み合ってなされている,ということである。さらに在学途中に増改築がなされると,学生は新しい環境への順応を要求されると同時になじんだ環境の喪失に直面させられる。キャンパスのあり方を考える際,教職員側の視点だけでなく学生の視点も考慮に入れることの必要性が再確認された。
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