数学教育学会誌
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59 巻, 1-2 号
選択された号の論文の7件中1~7を表示しています
  • 関数指導の体系に着目して
    二澤 善紀
    2018 年 59 巻 1-2 号 p. 1-10
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/10/16
    ジャーナル フリー
    先行研究や各種調査より,児童生徒の関数についての理解に課題があることが示されてい る。その課題の要因を分析するために,本稿では横地らの関数の指導体系に着目する。まず, 先行研究の知見をいかして関数指導のあり方についての理論的な枠組み(関数の指導モデ ル)を設定した。それは指導過程を,事象認識の段階,抽象化途上の段階,抽象的表現の段 階の3 段階に設定したものである。次に,これに基づいて横地らの関数の指導内容について 分析した結果,(Ⅰ)事象の変化を量化して捉える,つまり事象から変量を抽出する,(Ⅱ) 抽出した2 つの変量を対応させる,に関する途上概念を形成するようなものであることが 示された。さらに,これに関する調査データを考察した結果,児童生徒はこの途上概念の 形成が十分でないことが示唆された。
  • 河崎 雅人, 藤井 涼太, 小池 守, 梅澤 実
    2018 年 59 巻 1-2 号 p. 11-18
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/10/16
    ジャーナル フリー
    本研究は,かけ算九九の習熟を図るための3つの教材を用いた学習後の習熟状況により, 児童の習熟度に応じた適切な教材を明らかにしようとしたものである.本調査では,ゲーム 教材,ドリル教材,パズル教材を対象とした.乗法の学習終了後に,6回の朝学習の時間を 利用して,学級ごとに,それぞれ一つの教材を用いて学習した.朝学習前,6回の朝学習の 終了直後に調査を実施し,3学級の習熟状況を比較した.その結果,次の示唆を得た. ・ゲーム教材は,学習直後には正しく答えられない九九がわずかな児童には適しているが, 正しく答えられない九九が多い児童には適していない ・ドリル教材は,習熟度の高い子どもには効果が少なく,習熟度の低い児童は逆に習熟度を 低下させる可能性をもつ ・パズル教材は,習熟が不十分な児童には習熟度の向上に有効であるが,記憶を確実にする ことには適していない 以上のように,3つの教材の持つ特性が明らかになり,習熟状況や目的に応じた教材を選 択する上での示唆を得ることができた.
  • 日常生活における数学用語の活用に焦点を当てて
    小泉 健輔
    2018 年 59 巻 1-2 号 p. 19-29
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/10/16
    ジャーナル フリー
    算数・数学学習を中心とした教科横断的な学習を考えるために,メタファーという視点に 着目した.そして,算数・数学学習で獲得される用語において,日常生活の中でメタファ ーとして活用されている用語の具体例を抽出し,どのような学習活動が可能であるかにつ いて分析・考察することを目的とし,二つの知見を得た.一つ目は,日常生活における数 学用語の意味を解釈する,数学的概念の性質を振り返る,日常生活と数学とで整合する要 素を探る,何故その数学用語が用いられたのかを考える,の4つのプロセスで表現を解釈 する活動自体がメタファー思考の育成に資することである.二つ目は,それらの活動が事 例に応じて3通りの方向から数学的概念を豊かにすることを具体的に示したことである.
  • 中村 好則, 本田 卓, 山崎 友子, ホール ジェームス
    2018 年 59 巻 1-2 号 p. 31-42
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/10/16
    ジャーナル フリー
    日本の数学教育はアジア諸国から注目を集めている。2017 年秋,岩手大学教育学部を訪問 したタイのPIM(パンヤピワット経営大学)とPIM 附属校(サティット中等学校)の教 員は,本学の附属中学校の数学の授業を参観し,本学の教員養成において培ってきた数学 教育に強い関心を示し,今後の連携への期待が述べられた。2018 年1 月に,岩手大学教育 学部数学教育科では,英語教育科の協力を得て,タイのPIM 附属校で学生の数学科海外教 育実習を実施した。本研究では,その概要について述べ,教育実習の活動内容と実習日誌, アンケート,事後報告書をもとに,その成果について考察した。
  • RSA 暗号システムの教材化を例として
    佐々木 隆宏
    2018 年 59 巻 1-2 号 p. 43-51
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/10/16
    ジャーナル フリー
    第4 次産業革命を間近に控えた今日,人工知能,データ・サイエンス,情報セキュリティ ーに関する人材育成が日本における喫緊の課題である.人材育成の一端を担う数学教育に おいても,高校生がこれら諸領域に興味をもつ教材を開発することが必要である.平成 2009 年に改訂された高等学校学習指導要領の数学Aにおいて「整数の性質」が扱われるよ うになり従前の課程よりも整数をより深く学ぶ高校生が増えたことを受け,RSA 暗号シス テムの教材開発が行いやすくなっている.RSA 暗号システムは初等整数論の知識で学習が 可能なだけではなく,現在の社会において用いられている暗号システムにおいても重要な 位置を占めていることから,人材育成,数学教育いずれの視座からみても学習する意義の ある教材である.しかしながら,学習に必要な概念や知識が多いことから学習者に認知的 負荷をかけることになる.そこで,本研究ではダイレクト・アプローチ(4.3.1 節)により学 習者の認知的負荷を軽減させたRSA 暗号システムの教材開発を行った.
  • 田中 博, 森 竜樹, 四ツ谷 晶二
    2018 年 59 巻 1-2 号 p. 53-57
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/10/16
    ジャーナル フリー
    高校数学の数列の学習において,「統一的な見方」の導入が重要であると考える.特に「累乗の和 の公式」については,統一性のない表記による指導法に工夫の余地があるのではないかと考える. ここでは,より統一性を持った表記を提案する.この表記法は単に覚えやすいというだけでなく, 4 乗和,5 乗和等への発展にも繋がる.また,その計算手法は,「等比数列の和の公式」等へも応 用できる.
  • フロー理論に着目して
    中橋 葵, 岡部 恭幸
    2018 年 59 巻 1-2 号 p. 59-66
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/10/16
    ジャーナル フリー
    本稿では、フロー(「楽しさ」が動機付けとなり、そこでの感情が内的報酬となって次の行 動への動機付けとなる活動に没頭する心理状態)に着目して、先行実践での幼児の姿を分 析し、「遊びを通しての指導」の再検討を行った。その結果、本稿で分析を行った実践にお いては、幼児は遊びに没頭する中で葛藤解決に取り組むことにより、数学概念の獲得や認 識の質の高まりが生じる可能性が明らかとなった。今後、遊びへの没頭の中で葛藤解決に 取り組むことによって発達し得ることと、そのプロセスでは発達しないこととを整理し、 保育内容「環境」領域について数学としての内容の検討を行う必要がある。
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